こんなところにもWINNYの話が。
「ハイテク犯罪捜査入門」法とコンピュ−タ22 P101
ハイテク犯罪捜査入門
大橋充直著
東京法令出版、2003年
1.本書では「法執行機関の皆さん・方々……」という言い方が随所にみられ違和感を持つかも知れないが、これは、「はじめにの部分」の執筆目的にも記載されているように、当初の連載草稿が、本来は身近な仲間達に向けた啓蒙・助言の意図で書かれたことを示している(123頁注85)。
(中略)丹念に読んでいくと、「ハッカー検事」は、電気通信や暗号技術のみでなく軍事・薬物関係にも高いレベルの知識を持つうえに、映画・小説等でも深い造詣を窺わせる記述が随所に見られる。独学か検察官として学習したのかは別として、この知識の幅が、本書の奥行きを一層深くし、単なるマニュアルや解説本に止まらない水準に至らしめているのは確かである
(中略)4.現代型ハイテク犯罪への対処例として、2004年5月10日に起きたP2Pファイル交換ソフトWinny開発者逮捕事件についても触れておきたい。直接の容疑は著作権法の「送信可能化権侵害の幇助」である。筆者がどのような見解を持つか尋ねたいところだが、公判(5月31日起訴された)を控え事実関係も不明な点が多いので、問題点の指摘に止める。
ここでも本書で指摘したインターネットの基本技術につき「技術論と法律論」とが噛み合っていないことが如実に示されたといえよう。(中略)
当初から高いハードル(規制・取締)を設定すると、古い仕組や既得権者を擁護する結果しかもたらさず、将来の重要なメディアの創成や我々の生活を支えるハード・ソフトの国際的市場を失う結果さえ導きかねないからである。著作権法は、社会統制のため必要だが、同時に「公正競争に留意しつつ」技術進歩や社会革新を止めず「文化の発展に寄与する目的」を持つこと(著作権法1条)も忘れてはならない。劇的に進行するインターネット技術の渦中では、Winnyは過渡的なソフトにすぎないし、現時点で、日本以外では「純粋P2Pソフト」作成者を逮捕している先進国はない。「法律論」からみても純粋P2Pにつき米国(上記)はじめ最近カナダ・オランダで示された判決(間接侵害を否定)は、技術進歩面からも、私は将来の正しい方向性を示していると考える。