児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

2016年04月29日のツイート

2013年6月に「懲役1年6月執行猶予3年」の宣告を受けた人が2016.4.28に懲役4月の実刑判決を受けた場合、上訴による「弁当切り」によって執行猶予は取り消されない(=前刑の懲役刑は執行されない)。

 実刑判決の確定を延ばせば、いわゆる「弁当切り」の可能性があります。
 前刑の執行猶予は、後刑の実刑判決が確定してから、執行猶予取消請求と取消決定があって初めて取り消されます。
 前刑の確定日=執行猶予期間の起算点が、2013年の何月かが問題ですが。

下村忠利弁護士「刑事弁護人のための隠語俗語実務用語辞典」
弁当
執行猶予のこと(刑法25条)。「弁当持ち」が猶予期間を満了させることを「弁当切る」.満了できずに取り消されてしまうことを「弁当食う」という。「先生,弁当切れるように弁護して下さい」「あかん,無理。もうあきらめて弁当食えよ」。
・・・
城祐一郎検事「捜査・公判のための実務用語・略語・隠語辞典」
弁当持ち(べんとうもち)(隠語)
執行猶予期間中の者のこと。その由来の詳細は不明だが.執行猶予判決が弁当に相当するものとして.それを持っていることから言われているものと思われる。

(執行猶予の必要的取消し)
刑法第二十六条  次に掲げる場合においては、刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。ただし、第三号の場合において、猶予の言渡しを受けた者が第二十五条第一項第二号に掲げる者であるとき、又は次条第三号に該当するときは、この限りでない。
一  猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき。
・・・
条解刑法
禁錨以上の刑に処せられその刑を言い渡した判決が確定したことをいう(最決昭54・3・27集33-2155)。執行力を生じただけでは足りないから,控訴棄却決定に対する異議申立て棄却決定がされてもその特別抗告中に執行猶予期間が経過した場合には,取り消しできないことになる

判例の事案は、
s52.2.1 懲役1年執行猶予2年(前刑)
s53.9.29 懲役1年2月(後刑 実刑)→控訴趣意書不提出
s54.2.1 福岡地裁 刑の執行猶予言渡取消決定
s54.3.27刑の執行猶予言渡取消請求に関する特別抗告事件
ということですので、今なら1審で時間を稼いで控訴上告すれば執行猶予が切れると思われます。

       刑の執行猶予言渡取消請求に関する特別抗告事件
最高裁判所第1小法廷決定/昭和54年3月27日
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集33巻2号155頁
       最高裁判所裁判集刑事214号195頁
       裁判所時報762号2頁
       判例タイムズ384号91頁
       判例時報923号131頁
【評釈論文】 警察研究54巻9号71頁
       ジュリスト臨時増刊718号189頁
       判例評論256号183頁
       法曹時報32巻5号134頁
       主   文
 原決定及び福岡地方裁判所が昭和五四年二月二日にした刑の執行猶予言渡取消決定は、いずれもこれを取り消す。
 本件刑の執行猶予言渡取消請求を棄却する。
       理   由
 本件抗告の趣意は、憲法三一条違反をいう点もあるが、その実質はすべて単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四三三条の抗告理由にあたらない。
 しかし、職権をもつて調査するに、刑法二六条一号によれば、刑の執行猶予の言渡は、猶予の期間内にさらに罪を犯し禁錮以上の刑に処せられその刑につき執行猶予の言渡がないときは、必要的に取り消されるべきものとされているが、ここに「禁錮以上の刑に処せられ」というのは、そのような刑の言渡をした判決が確定したことをいうものと解すべきである。
 これを本件についてみるに、記録によれば、申立人は、昭和五二年二月一日福岡簡易裁判所において賍物故買罪により懲役一年及び罰金七万円に処せられ右懲役刑について二年間その執行を猶予され(以下、右の懲役刑を前刑という。)、その猶予期間内にさらに犯した覚せい剤取締法違反の罪により同五三年九月二九日山口地方裁判所下関支部において懲役一年二月に処する旨の判決の言渡(以下、右の刑を後刑という。)を受けた者であるが、右後刑の判決に対して控訴を申し立て、その控訴審において控訴趣意書提出最終日の指定通知を受けながらその指定期間内に控訴趣意書を控訴裁判所である広島高等裁判所に提出しなかつたため、同裁判所は決定で控訴を棄却し、申立人は右決定に対し異議を申し立てたが、同裁判所は前刑の執行猶予期間内に右異議申立を棄却する決定をし申立人に告知したところ、申立人はさらに右決定に対して特別抗告を申し立て、当裁判所が右抗告を棄却する決定をし申立人に告知する以前に前刑の執行猶予期間が満了したことが認められる(なお、本件刑の執行猶予言渡取消の決定がされたのは、右特別抗告申立の後これに対する棄却決定のされる前であつた。)。そうすると、本件は刑法二六条一号の刑の執行猶予言渡取消の要件を欠いているものというほかはない。
 しかるに、控訴棄却決定に対する異議申立棄却決定が申立人に告知されたことにより後刑につき執行力が生じ適法にその執行が開始されている場合も右規定にいう「禁錮以上の刑に処せられ」にあたるものとして前刑の執行猶予言渡を取り消した福岡地方裁判所の決定及びこれを維持した原決定は、法令の解釈適用を誤つた違法があり、これを取り消さなければ、著しく正義に反すると認められるから、刑訴法四一一条一号を準用して、右各決定を取り消すべきものとする。
 よつて、同法四三四条、四二六条二項により、主文掲記の各決定を取り消し、本件執行猶予言渡取消請求を棄却することとし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
  昭和五四年三月二七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官  団藤重光
            裁判官  藤崎萬里
            裁判官  本山 亨
            裁判官  戸田 弘
            裁判官  中村治朗

 執行猶予期間中は自重自戒するという約束で服役を逃れたのに、執行猶予中に罪を犯しておいて、取り消されないというのはずるいですが、弁護人は被告人の利益のために、やります。

元懲役4月 阿曽山「あの時話していれば」
2016.04.29 サンスポ  無免許運転で道交法違反罪に問われた元お笑いコンビ、被告の判決公判が28日、東京地裁で行われ、懲役4月(求刑懲役7月)の実刑判決を言い渡された。被告は約3年前にも無免許運転で有罪判決を受け、執行猶予中だったため、収監される。ラジオ番組で初公判の模様を明かし、この日も傍聴した裁判傍聴芸人、阿曽山大噴火(41)はサンケイスポーツの取材に「立ち直ってほしい」と力を込めた。

 黒のスーツ、黒のネクタイ姿に、茶髪だった髪を黒く染め直し、ひげもさっぱりとそって被告は入廷した。

 判決宣告前に弁護側から、今月15日付で所属事務所、よしもとクリエイティブ・エージェンシーとの契約を解除されるなど、社会的制裁を受けたことについての被告人質問があった。同被告は契約解除について「罪の重さを考えれば仕方がない。相方やファンの皆さんを裏切り、反省しています」と、か細い声で述べた。

 田中結花裁判官は判決理由について「2013年に免許取り消し処分を受けた後も複数回運転していた。交通ルールを守る意識に問題がある」と指摘。摘発された際に、被告がベイビーギャングの相方、りんたろー(30)の本名(中島臨太朗)を述べ、同乗者にも同様のことを要求するなど悪質な行動から、執行猶予はつかなかった。

 同被告の初公判が今月13日に行われたことを翌14日のラジオ番組で報告した阿曽山が、この日も最前列で傍聴。被告は判決を言い渡された後、阿曽山と目を合わせ「すみませんでした」と頭を下げて退廷した。

 サンケイスポーツの電話取材に応じた阿曽山は、苦しかった胸中を吐露。「3年前の彼の判決公判を傍聴したときは誰にも話さず、週刊誌から取材依頼がきたときも、レギュラー番組を持ち始めた被告の今後を配慮して断ったんです」と告白した。

 同被告が再犯で摘発され、実刑となったことに「あの時、世間に話していれば、被告も再び罪を犯すことにならなかったかもしれないという思いがあり、ラジオ番組で話しました。(私も)罪悪感が残ってしまった」と悔やみ、同被告の今後について「更正してほしい」と願った。


追記2016/05/12
 前刑はH25.6~7月に確定してそこから執行猶予期間がカウントされます。
 控訴審判決はいくら速くても8月ころですから(さらに上告も可能ですから)、前刑の執行猶予が取り消されることは事実上ないと思われます。

http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0512/spn_160512_3993370602.html
無免許運転をしたとして、道交法違反罪に問われた元お笑い芸人被告(32)の弁護側は11日までに、懲役4月の実刑とした4月28日の東京地裁判決を不服として控訴した。
 10日付。弁護側は執行猶予付き判決を求めていた。被告はお笑いコンビ「ベ」として活動。2013年6月にも無免許運転などで懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けており、今回の実刑判決が猶予期間内に確定した場合は、この執行猶予が取り消されることになる。

追記2016/09/23
控訴棄却 東京高裁h28.9.15
道路交通法違反

執行猶予期間が経過したので、取り消されることはなくなりました。
行刑期は4ヶ月(-未決勾留)になると思われます。