児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

2015年07月13日のツイート

「同一の被害児童に対して平成○年4月30日から同年5月11日までの12日間,前後6回にわたり被告人を相手方とする性交その他の姿態をとらせ,これらを撮影,保存していた動画データ6点を,同月24日に本件ハードディスクに複製して児童ポルノを製造した」という行為は、社会的見解上一個の行為である。(仙台高裁秋田支部h27.6.30)

 併合罪と主張して観念的競合にしてもらう弁護活動
 無理して取り繕わなくても、包括一罪でいいんじゃないか。

 姿態をとらせ身分説は、最高裁判例解説で否定されてるけどな

児童福祉法34条1項6号違反の児童に淫行をさせる罪と児童買春・児童ポルノ等処罰法7条3項の児童ポルノ製造罪とが併合罪の関係にあるとされた事例 最高裁判例解説刑事編H21P463
イ 「姿態をとらせ」る行為は実行行為か
罪数の問題を考察する前提として, 「姿態をとらせ」る行為が実行行為か否かの問題をまず検討する。児童買春・児童ポルノ等処罰法上, 単なる「製造」は処罰されず, 3項においては「姿態をとらせ」ることも要件となっており, 「姿態をとらせ」たことにも当罰性の根拠が求められていると解されること, また, 「姿態をとらせ」 との文言は明らかに人の行為を意味していることからしても, 「姿態をとらせ」は, そのような、当罰性を基礎付ける行為を構成要件的行為として規定したものと解すべきものであろう (その怠味で, 東京高裁平成17年判決が「児童に姿態をとらせ』としみ行為をその犯罪構成要件として規定している」と判示しているのは, 正当であると思われる。)。
そうである以上「姿態をとらせ」る行為が, 「実行行為ではなく手段あるいは身分的なものにすぎない」との説明は, やや不自然さが否定できないように思われ,【判例③】もそのような理解を明示的に判示しているものでないことは前記のとおりである。
結局. 3項製造罪の要件の一部である「姿態をとらせ」るとの行為と,児童淫行罪の実行行為とが重なる部分があることを前提として考察を進めるべきものと思われる。

(注28) 東京高裁平成21年判決②は「姿態をとらせ」る行為が実行行為の一部であると解した場合も含めて検討している。
(注29) 一連の議論は, 「実行行為」概念をどう理解するかという問題とも関連していると思われる。すなわち,刑法の条文上は. 「実行」という語はあり,重要な怠味を持っているが(未遂犯の43条,共犯の60-63条), 「実行行為」という詰があるわけではなく, 「実行行為」概念を否定する有力説もあった(山口厚「刑法総論」初版(平成13年) 45頁)
「実行行為」の通説的定義は, 「構成要件に該当する行為」(団藤重光「刑法綱要総論」第3版(平成2年) 139頁)であるが「むしろ,原則として既遂結果発生の具体的危険すなわち未遂結果と相当因果関係を有する行為と定義されるべきであろう」という見解もある(西田典之「刑法総論」(平成18年) 78頁)。前者の定義によれば「姿態をとらせ」る行為は実行行為であることは明らかであるが,後者の定義によれば,評価が分かれる可能性がある。しかし, 3項製造罪には未遂処罰規定はないのであるから,実行の着手の関係で「姿態をとらせ」る行為が「実行行為」か否かに特に意味はなく,共犯の関係でも,それほど実益があるとはいえないように思われる。結品,本件の関係では, 「姿態をとらせ」る行為は,構成要件に該当する「行為」であることさえ押さえておけばよいようにも思われる。
東京高裁平成17年判決も正にそのような判示をしていると読める。

1論旨は,平成○年11月25日付け起訴状記載の公訴事実(以下「当初訴因」という。)には3項製造罪の構成要件である「姿態をとらせ」た事実の記−載がなく,訴因が特定されていないからこれによる公訴提起は刑事訴訟法256条3項に違反し,また当初訴因として記載された事実が真実であっても,何らの罪となるべき事実を包含していないから,公訴を棄却すべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
そこで検討すると,3項製造罪においては児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせこれを電磁的記録に係る記録媒体に記録する行為のみならず,このような行為をした者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを複製する行為も同罪に当たると解される(最高裁平成18年2月20日第三小法廷決定・刑集60巻2号216頁参照)。
後者の行為類型の場合,3項製造罪は身分犯的な犯罪と解されるから,実行行為(製造行為)は,自ら記録媒体に記録した電磁的記録を別の記録媒体に複製して児童ポルノを作成する行為,すなわち,複製行為であり,先行する「姿態をとらせる行為」は,製造行為とは別の行為であって,3項製造罪の実行行為には該当しない。
しかし,「姿態をとらせる行為」は後者の行為類型の主体であることを基礎付けるものであることからすれば,これをできる限り特定して記載する必要があるというべきである。
これを前提に弁護人の主張を検討すると,記録によれば,確かに当初訴因には「姿態をとらせ」た事実は明記されていないが,被告人が被害児童を相手方とする性交に係る姿態等を撮影,保存していた旨の記載があり,その罰条に児童ポルノ法7条3項,2条3項1号,3号と記載されていることからすれば,当初訴因が特定を欠くものとはいえない。
また,当初訴因は,その記載内容に照らすと,3項製造罪における後者の行為類型である複製行為を起訴したものと解されるから,それが3項製造罪を構成する犯罪事実を包含していない(刑事訴訟法339条1項2号)ものともいえない。
論旨は理由がない。
2論旨は,当初訴因は,3項製造罪について,平成○年4月30日から同年5月11日までの6回の撮影行為は被告人の犯意に照らすと3罪であり,これらは併合罪と評価され,同月24日の製造行為(複製行為)とは併合罪の関係に立つのに,これらを1個の訴因として記載しており,しかも平成○年2月4日付け訴因変更請求書に基づき変更が許可された訴因(以下「変更後訴因」という。
)においても,撮影行為については「秋田県内」で「6回」とされるのみで,それぞれの撮影行為の日時,場所が特定されておらず,訴因が特定されているとはいえないから,本件公訴提起は刑事訴訟法256条3項に違反し,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
しかしながら,本件3項製造罪は,同一の被害児童に対して平成○年4月30日から同年5月11日までの12日間,前後6回にわたり被告人を相手方とする性交その他の姿態をとらせ,これらを撮影,保存していた動画データ6点を,同月24日に本件ハードディスクに複製して児童ポルノを製造したというものであるところ,前述のとおり,当初訴因及び変更後訴因とも,上記のように撮影,保存していた動画データ6点を本件ハードディスクに複製した行為のみを3項製造罪の実行行為として起訴したものであり,それはー罪となると解される(原判決はこれを包括一罪と評価しているが,実行行為である複製行為は,被告人が複製の対象である動画データ6点を短時間に連続して複製しており,社会通念上一個の行為とみられるから,原判決の評価は相当ではない。)。
そして,変更後訴因において,その複製行為は日時,場所,方法をもって特定されており,行為類型の主体であることを基礎付ける事実である動画データ6点の撮影,保存行為についても,当初訴因よりも,期間,場所,回数,姿態の内容等がより具体的なものになっているから,全体として訴因の明示に欠けるところはない。
よって,本件3項製造罪の起訴は刑事訴訟法256条3項に違反するものとはいえない。
論旨は理由がない。