児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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高市早苗議員の「児童ポルノ禁止法改正案」Q&A

 学者とか実務家が調べたというレベルのものではなく高市先生の私見ということでしょうが、これじゃあ、京都地裁判決だけしか知らないと言っているようなものですね。
 確かに、高市先生が挙げる京都地判H12.7.17は「性欲を興奮させ又は刺激するものであるか否かの判断は、児童の姿態に過敏に性的に反応する者を基準として判断したのではあまりにも処罰範囲が拡大してしまうことから、前記のとおり、児童ポルノの定義から最高裁判所判例の掲げる「普通人の正常な性的羞恥心を害し」という要件が割愛されているとしても、法の一般原則からして、その名宛人としての「普通人」又は「一般人」を基準として判断するのが相当である。」と言ってたんですが、その後大阪高裁H24.7.12が「本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。すなわち,「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば,感じない人もいるものと考えられる。本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での3号ポルノの製造も処罰しなければ,2項製造罪の規定の意味がそのような3号ポルノの範囲では没却されるものである。したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。」
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20130603#1370067883
と判示しており、かなり緩く解されています。

国政調査権というのは、確定判決に対してはガンガン行使できると思うので、熱意のある議員さんはちゃんと判例調べてほしいなあ。国権の最高機関なんだから。

わいせつ図画販売、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反(変更後の訴因わいせつ図画販売、わいせつ図画販売目的所持、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反)被告事件
京都地方裁判所判決平成12年7月17日
判例タイムズ1064号249頁

(争点に関する判断)
 一 弁護人は、判示一の事実(販売)に係る写真集一冊及び判示二の事実(販売目的所持)に係る写真集七冊並びにビデオテープ二巻(ほぼ同一内容であり、VHS方式のものとベータ方式のものとが、それぞれ一巻ずつある。なお、当初は他のビデオテープについても同様の主張をしていたが、第五回公判期日における被告人質間及び弁論によると、この主張は撤回したと認められる。)について、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)二条三項三号に規定する児童ポルノに該当しない旨主張し、被告人もこれに沿う供述をしている。そこで、これらの写真集及びビデオテープが児童ポルノに該当すると認定した理由を説明する。
 二 児童ポルノ法二条三項三号の解釈
 児童ポルノ法二条三項三号にいう児童ポルノ(以下「三号児童ポルノ」という。)とは、写真、ビデオテープその他の物であって、(1)衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって(2)性欲を興奮させ又は刺激するものを(3)視覚により認識することができる方法により描写したものに該当するものである(数字は条文にはないが便宜上付け加えた)。本件では、(1)、(3)は客観的に判断することができることから、特に(2)の「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の意味内容が問題となる。
 そもそも児童ポルノの販売等が禁止され、さらに、これらの目的での児童ポルノの製造、所持等が禁止されているのは、これらの行為による児童に対する性的搾取及び性的虐待が、児童ポルノの対象となった児童の心身に有害な影響を与え続け、児童の権利を著しく侵害するからに他ならない(児童ポルノ法一条参照)。
 このように、児童の権利を保護することの重要性にかんがみて、児童ポルノ法は、刑法におけるわいせつの定義、すなわち、「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、幣通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」という最高裁判所判例最高裁昭和三二年三月一三日大法廷判決参照)によって確立されている定義とは異なった観点から児童ポルノの範囲を定め、性欲を興奮又は刺激せしめる点は必要であるが、しかし、「徒に」興奮又は刺激しなくても処罰の対象とし(この点で刑法よりも規制対象を拡大しているといえる。)、また、禁止される行為の範囲も業としての貸与、頒布等の目的での製造等にまで広げ、国内外を問わず処罰することとしたのである(同七条参照)。
 そうだとすると、問題となっている写真、ビデオテープ等が、ことさらに扇情的な表現方法であったり、過度に性的感情を刺激するような内容のものである場合などに限るなど、特別な限定をしなくても、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められる以上は、三号児童ポルノに該当すると解すべきである。弁護人は、「性欲を興奮させ又は刺激する」との規定の意味を、児童のポーズが意味もなく局部を強調するものであったり、構図などから男女の性交を暗喩していると認められるような場合に限定すべきであると主張するが、そのように限定して解釈すべき理由はない。
 三 判断の方法
 そして、性欲を興奮させ又は刺激するものであるか否かの判断は、児童の姿態に過敏に性的に反応する者を基準として判断したのではあまりにも処罰範囲が拡大してしまうことから、前記のとおり、児童ポルノの定義から最高裁判所判例の掲げる「普通人の正常な性的羞恥心を害し」という要件が割愛されているとしても、法の一般原則からして、その名宛人としての「普通人」又は「一般人」を基準として判断するのが相当である。
 もっとも、三号児童ポルノの範囲が拡大すると、表現の自由や学問の自由等の憲法上の権利を制約することになりかねないという懸念もあろう。児童ポルノ法三条も、この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならないと定めているところである。
 そこで、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態(以下「児童の裸体等」という。)を描写した写真または映像に児童ポルノ法二条二項にいう」性器等」、すなわち、性器、肛門、乳首が描写されているか否か、児童の裸体等の描写が当該写真またはビテオテープ等ガ全体に占める割合(時間や枚数)等の客観的要素に加え、児童の裸体等の描写叙述方法(具体的には、(1)性器等の描写について、これらを大きく描写したり、長時間描写しているか、(2)着衣の一部をめくって性器等を描写するなどして性器等を強調していないか、3児童のとっているポーズや動作等に扇情的な要素がないか、(4)児童の発育過程を記録するために海水浴や水浴びの様子などを写真やホームビデオに収録する場合のように、児童の裸体等を撮影または録画する必然性ないし合理性があるか等)をも検討し、性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうかを一般通常人を基準として判断すべきである。そして、当該写真又はビデオテープ等全体から見て、ストーリー性や学術性、芸術性などを有するか、そのストーリー展開上や学術的、芸術的表現上などから児童の裸体等を描写する必要性や合理性が認められるかなどを考慮して、性的刺激が相当程度緩和されている場合には、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められないことがあるというべきである。
 四 各写真集等についての認定

http://rep.sanae.gr.jp/column_details621.html
6期目の永田町から 平成25年1月〜連載中
2013年06月02日
児童ポルノ禁止法改正案」Q&A
 2008年6月に公式サイトにアップしました内容と同様で恐縮ですが、今国会に自民党公明党日本維新の会の3党で提出しました「児童ポルノ禁止法改正案」(過去2回提出した法案と同内容)について、条文の解釈等に関するご質問メールを下さった方もおられますので、再びQ&A形式で掲載致します。

【問1】
 児童ポルノの所持が禁止されると聞きましたが、どのような猥褻物が対象となるのでしょうか?

【答1】
 改正法案では、「児童ポルノの定義」については変更を行っておりません。したがって、「児童ポルノ」の範囲が新たに拡大するものではありません。つまり、単純所持禁止の対象となる物も現行法と同じです。
 現行法第2条3項に基づき「児童ポルノ」の例を挙げますと、「性交や、性交に類似する手淫・口淫・同性愛などの行為を撮影したもの」、「児童の性器を触る行為、児童が大人の性器を触る行為を撮影したもので、性欲を興奮させ刺激するもの」、「全裸や半裸の児童に扇情的なポーズをとらせて撮影したもので、性欲を興奮させ刺激するもの」です。


7条3項は
1児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態(2条3項1号)
2他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの(2条3項2号)
3衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの(2条3項3号)
ですよ。3号ポルノは「全裸や半裸の児童に扇情的なポーズをとらせて撮影した」に限定されていません。入浴中とか予防接種中とか救急で診察中とかの例があります。どうも児童ポルノの範囲を狭く見せようとしてませんか?

【問2】
 処罰の対象となる行為は何ですか?

【答2】
 まず、現行法で既に処罰対象となっている行為は、「児童ポルノの提供(データ送信含む)」、「児童に姿態をとらせた上での製造(目的を問わず)」、「児童ポルノの公然陳列」、「提供や公然陳列目的での児童ポルノの製造、所持、運搬、輸出入、データ保管」、「日本人による外国における輸出入」です。
 改正法案で新たに処罰対象に追加した行為は、「自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持・保管すること」です。

 
【問3】
 「所持」と「保管」の違いは何ですか?

【答3】
 児童ポルノの「所持」とは、有体物(写真、DVD・ハードディスク記録媒体など)である児童ポルノを、自己の事実上の支配下に置くことをいいます。
これ対し、電磁的記録の「保管」とは、電磁的記録を自己の実力支配内に置いておくことをいいます。
 具体的には、当該電磁的記録をコンピュータのレンタル・サーバに保存する行為や、自己が自由にダウンロードできるリモートの記録媒体に保存する行為がこれに当たります。
 これに対し、自己の所持するパソコンのハードディスクに保存している場合は、ハードディスク(有体物)の所持罪に該当します。


【問4】
 PC上のキャッシュはどのような扱いになるのでしょうか?

【答4】
 「児童ポルノの所持罪」は、児童ポルノを所持・保管していることの認識がないと、処罰されません。PCのキャッシュに保存されていることを知らない場合は、処罰の対象とはなりません。


 所持の故意が問題になる薬物事案では「自らが所持する物の存在については, これを把握しているのが通常であると考えられ,所持の事実が肯定されれば,所持の認識の存在についても強く推認されるという関係にある。このようなことなどから,故意の要素という意味における所持の認識の問題については,前記平成10年東京地判が「本件覚せい剤は被告人の所持に係るものではな」いとしているように,実際には,所持の事実の成否という形で問題となることも多いものと思われる(「薬物事犯における故意の認定について」刑事事実認定の基本問題P309)」とされていることからすると、児童ポルノについても、事実として所持していた場合に、所持の認識を否定することは容易ではないと思われる。
 また、事実として所持していれば、所持の故意についてはおおかたあるということで、単純所持罪の逮捕状は出ると思われる。
 このQ&Aを読んだ後は、児童ポルノ画像を閲覧するとキャッシュとしてPCに保管されることを知ってしまっているので、「知らなかった」という弁解は通用しなくなります。


【問5】
 嫌がらせをするためにメールで児童ポルノを送りつけられた場合も、処罰の対象になりますか?

【答5】
 改正案では、「自己の性的好奇心を満たす目的」での児童ポルノの所持に限って処罰対象としています。そのような目的がない場合は、一時的にデータが保存されていた場合も、処罰の対象とはなりません。
 例えば、「嫌がらせなどによりメールで送りつけられた場合」、「PCがウイルスに感染して勝手に児童ポルノをダウンロードしてしまった場合」、「ネットサーフィンによる意図しないアクセス」、「ネット上の掲示板に児童ポルノが掲載されていた場合における掲示板管理者やサーバー管理者」などのケースは対象外になります。


2号3号ポルノについては一般人基準で「性欲を興奮させ又は刺激するもの」が送りつけられた場合であるし、1号ポルノについては性交・性交類似行為というほぼわいせつな画像が送りつけられてくる場合の話だが、そういういかにもエロエロな画像がPC上で所持していることが発覚した場合に、所持者が一般人であれば、所持者にとって「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であるはずであり、裁判所が所持者の「自己の性的好奇心を満たす目的」だと認定するのは容易であり、否定するのは一苦労だ。
 所持者としては、「所持していない」「(送りつけられただけで)所持の故意がない」点で頑張るしかないであろう


【問6】
 児童ポルノの「みだりな所持」を禁止している規定の趣旨は?

【答6】
 児童ポルノを所持する場合であっても、「警察の捜査、通報受理又は国際捜査共助の過程における警察職員又は鑑定受託者による所持」や「インターネット・ホットラインセンターの業務やフィルタリングソフト開発の過程での所持」など、社会的に相当と認められる場合があることから、そのような場合を除く趣旨です。


【問7】
 新たな規定として、インターネット業界の努力規定が置かれたと聞いていますが、何故ですか?また、その内容は?

【答7】
 インターネットを通じて児童ポルノが拡散した場合、その回収は困難であり、被写体となった児童の被害は甚大なものとなります。このようなネットの特性を踏まえて、置かれた規定です。
 適用事業者は、アクセスプロバイダ、掲示板等の管理者、掲示板等のために使用されているサーバーの管理者など、インターネット関連の事業者一般で、「捜査機関への協力及び送信防止措置」を努力規定として例示し、自主的措置を求めることと致しました。
 また、国の調査研究課題として、「ブロッキングに関する技術開発の促進」を規定しました。


 プロバイダの民事責任についてはプロバイダ責任制限法で限定したのであれば、刑事責任についても、法律で一定限度に減縮してはどうか。
 法律では「努力義務」といいながら、刑法では法律上の作為義務があるとされて、正犯になったり幇助になったりというのでは、プロバイダの地位が余りにも不安定であろう。


【問8】
 小学校の卒業アルバムには、プールでの水着姿が掲載されています。卒業アルバムの保管も、児童ポルノの単純所持になるのでしょうか?

【答8】
 改正案では、「児童ポルノ」の定義については、現行法から変更を行っておりません。したがって、「児童ポルノ」の範囲が新たに拡大するものではありませんので、現行法で規定する「児童ポルノ」に該当しないものは、改正案の単純所持禁止規定でも該当しません。
 卒業アルバムのように、児童の姿態を撮影・録画する必然性・合理性がある場合は、「児童ポルノ」には該当しません(京都地裁判決)。


 「小学校のプールでの水着姿」は「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」に当たらないので、「児童の姿態を撮影・録画する必然性・合理性」を持ち出すまでもなく、誰がどういう目的で撮っても児童ポルノには該当しません。

【問9】
 自分の子供をお風呂に入れている写真を持ち歩くと、処罰の対象になりますか?

【答9】
 繰り返しになりますが、現行法で規定する「児童ポルノ」に該当しないものは、改正案の単純所持禁止規定でも該当しません。
発育過程を記録するために、子どもをお風呂に入れている様子を写真やホームビデオに収録する場合のように、児童の裸体などを撮影・録画する合理性がある場合は、「児童ポルノ」には当たりません(京都地裁判決)。


 「児童ポルノ」という物の要件に「撮影録画する合理性」を加味すると、たとえば、親が撮影した「非児童ポルノ」が、転売されると児童ポルノ法が予定する法益侵害が発生するのに「非児童ポルノ」ということになります。それは不合理だとして転売されると「児童ポルノ」になるとすると、「子どもをお風呂に入れている様子」が持つ人によって「非児童ポルノ」になったり「児童ポルノ」になったりしておかしいよね。特別刑法の問題ですから、ここは、3号の要件を充たす限り「児童ポルノ」であって、「親が発育過程を記録するため撮影・所持する場合には正当化されうる」と説明すべきです。「自分の子どもの写真が児童ポルノ?」という批判をかわすためにわざとごまかしているのか、刑法が分かってないかということでしょう。


【問10】
 写真専門誌では、子供が裸で水遊びをしている写真や下着姿の写真がありますが、これも規制対象になるのでしょうか?

【答10】
 現行法でも、提供目的で児童ポルノを製造・運搬することは禁止されていますので、現在、合法的に普通に流通しているような写真専門誌が新たに処罰対象になるわけではありません。


「子供が裸で水遊びをしている写真や下着姿の写真」も、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの(2条3項3号)」に該当すれば、3号ポルノになる恐れがある。 
 上記大阪高裁判決が「比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。」としていることからは、現時点で合法的に販売されている「写真専門誌」だというだけで「性欲を興奮させ又は刺激するもの」でないと評価されるとは限らない


【問11】
 猥褻と芸術の線引きはどうなりますか?

【答11】
 猥褻と芸術の線引きについては、平成12年京都地裁判決で、「当該写真又はビデオテープ等全体から見て、ストーリー性や学術性、芸術性などを有するか、そのストーリー展開上や学術的、芸術的表現上などから児童の裸体等を描写する必要性や合理性が認められるかなどを考慮して、性的刺激が相当程度緩和されている場合には、性欲を興奮させ又は刺激するものと認められないことがあるというべきである」とされています。

 判決が示した判断基準では、「児童の裸体等を描写した写真・映像に性器等が描写されているか否か」、「児童の裸体等の描写が当該写真・ビデオテープ等の全体に占める割合(時間や枚数)」等の客観的要素の検討に加え、児童の裸体等の描写叙述方法として、
〔1〕性器等の描写について、これらを大きく描写したり、長時間描写しているか、
〔2〕着衣の一部をめくって性器等を描写するなどして性器等を強調していないか、
〔3〕児童のとっているポーズや動作等に扇情的な要素がないか、
〔4〕児童の裸体等を撮影または録画する必然性ないし合理性があるか
等を検討し、「性欲を興奮させ又は刺激するものであるかどうか」を一般通常人を基準として判断すべきであるとしています。


 その後、その京都地裁はこう判示しているのです。

京都地裁H14.4.24
6 弁護人は,前記「A」,「B!」,「C」の各作品は芸術作品であるから児童ポルノに該当しないと主張する。
 しかしながら,芸術的価値のあるものであっても,これを児童ポルノに該当するものとすることは差し支えないから,弁護人の主張は,その余について判断するまでもなく理由がない。

 芸術性で「性欲を興奮させ又は刺激するもの」が希釈されるかどうかについては、判例は決まってないんじゃないでしょうか。あんまり芸術作品が法廷に持ち出されないからでしょうが。

【問12】
 持っているだけで違法だということになると、警察がいきなり個人宅に乗り込んできてプライバシーを暴きたてるようなことになりませんか?

【答12】
 捜査権の濫用を懸念するご意見も寄せられていましたので、現行法の「適用上の注意に関する規定」(3条)を、より具体的に規定することとしました。
 「この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」としました。


 単純所持罪の法定刑が最高懲役1年だとすると、通常逮捕に刑訴法199条1項但書の制約はありません。普通に逮捕状が請求できるし、執行に制約はない。令状による捜索差押についても同じ。
 逮捕や捜索差押というのは、どんな罪であっても、対象者に取っては「警察がいきなり個人宅に乗り込んできてプライバシーを暴く」ことにほかならならず、それが「適法」に行われるのだから、単純所持罪が施行されたら、それは覚悟する必要がある。
 改正案の「国民の権利を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」というのは、この法文がなくても当然のことなので、捜査機関に対する牽制効果は乏しい。
 現に所持している人からの相談を聞いていると、大量なので処分もできず、捜索等で家族にバレると、自殺者も予想されます。切実な問題です。

第199条〔逮捕状による逮捕〕
1 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

【問13】
 既に児童ポルノを持っているのですが、法律施行前に入手したものは持っていてもいいのですか?

【答13】
 法案には、児童ポルノの被写体になった児童の保護という目的がありますので、法施行前に入手されたものであっても、法施行後は速やかに廃棄していただかなくてはなりません。
 罰則の適用については、経過的期間を設け、施行後1年間は適用しないこととしています。

 警察で受理してもらわないと、購入者リストに基づく捜索が入った時に捨てた証明に困る場合もあるでしょう。
 さらに、児童ポルノを持って警察に出頭した場合の必要的減免規定を設ければ、提供・製造犯人への端緒が増えるんじゃないでしょうか。

【問14】
 ゲームやアニメにも児童ポルノに近い表現があると思うのですが、これらは規制対象外なのでしょうか?

【答14】
そもそも児童ポルノ禁止法」は、被写体となった子供の保護・権利擁護を目的としていることから、実在する子供が被写体ではないゲームやアニメについてまで同法の改正案によって対象に加えることにはなりません。
 ゲームやアニメを規制するべきというご意見も、規制するべきではないというご意見も、それぞれ多く寄せられております。改正案では「政府の調査研究課題」と位置付けました。


 平成11年以降足かけ15年間、法14条、16条の「調査研究義務」が先生方のご尽力によって鋭意進んでいるものと思います。実在人の児童ポルノの悪影響についてもさぞかし充実した調査研究結果があると思います。(実は児童ポルノの実害が図れないので量刑も軽いんですが)構成要件や法定刑の見直しに大変役立つものと思いますし、実在児童ポルノの悪影響がすごくひどいという結果であればそれとの比較という意味やで非実在画像の議論にも影響すると思いますので、まず、それを公表して下さい。まさか15年間も実在児童の被害について調査研究はやってこなかったのに、いきなり「ゲーム」「アニメ」の調査研究に着手するということは、実在の児童を保護するというこの法律の趣旨にそぐわないと思います。

第14条(教育、啓発及び調査研究)
国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。
第16条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。

結局、1人興奮すれば、一般人基準で「性欲を興奮させ又は刺激するもの」と言えるという判例(大阪高裁H24.7.12)

 問題の画像は
https://www.google.co.jp/search?q=%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%80%80%E6%B8%A9%E6%B3%89&rls=com.microsoft:ja:%7Breferrer:source%3F%7D&oe=UTF-8&rlz=1I7GGLL_jaJP354&redir_esc=&qscrl=1&um=1&ie=UTF-8&hl=ja&tbm=isch&source=og&sa=N&tab=wi&ei=YY-pUayiCMGQkwW2r4HwCg&biw=1280&bih=683&sei=Y4-pUZTiI9DrlAWPuoDIDA
でヒットするような画像で、公衆浴場の男湯で盗撮したもので、女児がおっさんらと共に裸で写っていています。
 これが一般人が興奮するのであれば、男湯はウッホウッホの大騒ぎになるはずですが、そんなことはく、おおむね10歳未満の男女は混浴可能とされているところです

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/legionella/030214-1b.html
公衆浴場における衛生等管理要領
9 入浴者に対する制限
(1) おおむね10歳以上の男女を混浴させないこと。
(2) 入浴を通じて人から人に感染させるおそれのある感染症にかかっている者、下痢症状のある者及び泥酔者等で他の入浴者の入浴に支障を与えるおそれのある者を入浴させないこと。
(3) 浴槽に入る前に石ケン等を用いて身体をよく洗うとともに、出る際にもシャワー等で身体を洗い流すよう入浴者に衛生上の注意を喚起すること。
(4) 浴槽内で身体を洗うこと、浴室で洗濯をすること等、公衆衛生に害を及ぼすおそれのある行為をさせないこと。

 これを、「これを本件についてみると,本件各訴因及び原判示各事実は,いずれも,「銭湯で,他人に提供する目的で,入浴中の女児の裸を携帯型のビデオレコーダーで撮影した」という事実が記載されているところ,そのような場所,目的,態様での入浴中の全裸の女児の撮影,すなわち,盗撮された入浴中の全裸の女児の画像の記録が違法と解されるものであることは前記記載事実自体から認識できるのであり,これがおよそ学術的なものや家族等の人間関係に基づき許される描写でないことは明らかであると認められる。
そうすると,本件各訴因及び原判示各事実において,児童ポルノ法2条3項3号にいう「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との文言の記載そのものはないが,本件の事実摘示でも,3号ポルノの「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」のうち,社会的正当性の認められない場合であることが認識できる程度の記載はされているものと認められ,それが違法であることを示すものである性欲興奮刺激要件の摘示がされている場合と構成要件上同等に評価できるものと解することができる」といって、結局、盗撮ものの児童の裸であれば、特に「性欲を興奮させ又は刺激するもの」って認定しなくても、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であるっていうんですよ。
 単純所持罪に「自己の性的好奇心を満たす目的で」なんて要件を付けても、好色的な画像であれば、画像そのものから「自己の性的好奇心を満たす目的で」が認定されますので、何の絞りにもなりません。児童のレズものの画像が添付メールで送りつけられたきていて、興味が無いから放置していると、単純所持罪で令状が出ちゃいますし、法廷で「おれはホモ趣味だから」「おれは老け専だから」と弁解して、ホモ仲間や老け専仲間に証言してもらっても、「それと児童レズ趣味は両立しうる」とか判示されて、なかなか通らないでしょう。

 しかも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」は一般人を基準にするといいながら「本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。
そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要がある」といって。「多くの男性は違和感なく共に入浴している。そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる」場合でも「性欲を興奮させ又は刺激するもの」というんですよ。
 現行法の3号ポルノの定義で、児童の温泉混浴画像を持っていると、単純所持罪になっちゃいますよね。

大阪地裁H24.1.19
 被告人は,
平成25年6月1日,大阪府北区西天満所在のスーパー銭湯「天満温泉」において,入浴中の女児が18歳に満たない児童であることを知りながら,他人に提供する目的で,同児童の裸を携帯電話型のビデオレコーダーで撮影し,その電磁的記録を同レコーダー内蔵の記憶装置に記録して児童ポルノを製造しものである。

量刑理由
被告人のした各犯行は被害児童らの権利を害する許されないものではあるが,女湯や女子トイレ内での盗撮に比べると,犯行態様の悪質性は低い

阪高裁H24.7.12
            判    決
 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。
)違反被告事件について,平成24年1月19日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官熊谷保出席の上審理し,次のとおり判決する。

            主    文
  本件控訴を棄却する。

            理    由
 本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書及び控訴趣意補充書に各記載のとおりであるから,これらを引用するが,論旨は,原判決の不法な公訴受理,理由不備,訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り及び量刑不当の主張である。

1 控訴趣意中,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という児童ポルノ法2条3項3号の構成要件が記載されていない点に関する主張について
 論旨は,本件訴因には,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」としう児童ポルノ法2条3項3号の構成要件が記載されていないから,原審は,起訴状に罪となるべき事実を包含していない場合(刑事訴訟法339条1項2号)として公訴棄却の決定をすべきであったのに,審理して有罪判決を宣告している点で,原審には,不法に公訴を受理した違法(同法378条2号前段)があり,そのような訴因であるのに,原審は,検察官に対して何ら釈明を求めていない点で,原審には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反(同法379条)があり,また,原判決の罪となるべき事実には「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との記載がなく,児童ポルノ法2条3項3号の構成要件が記載されておらず,同号の犯罪は成立しないから,原判決には理由不備の違法(刑事訴訟法378条4号)がある上,そのような事実に児童ポルノ法2条3項3号を適用しているから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤り(刑事訴訟法380条)がある,というものである。

 そこで,記録を調査して検討するに,本件訴因に「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という文言が記載されていないこと,その訴因について,原審は,検察官に対して釈明を求めていないこと,原判決の罪となるべき事実に前記文言の記載がないこと,原判決は,原判示各事実に児童ポルノ法2条3項3号をそれぞれ適用し,被告人を原判示各事実についていずれも有罪としたこと,以上の点は弁護人が指摘するとおりである。
しかし,原審のそのような措置ないし判断は,いずれも是認することができるものと解される。

 所論は,原判示各事実で3号ポルノに該当する部分は,「入浴中の児童の全裸の姿態」であると解されるが,これは,3号ポルノの要件でいえば,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」に関するものであり,これだけではその姿態が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であるかについては何も記載されておらず,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」と「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは別個の要件であり,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」であっても,医学写真や芸術写真が適法とされるのは「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえないと解されるからであって,3号ポルノを認定するには,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」の記載を省略することは許されない,というのである。

 そこで検討するに,児童ポルノ法は,その2条3項において児童ポルノを定義しているが,その1号においては,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との要件(以下「性欲興奮刺激要件」という。
)の記載はなく(その内容からしてこの要件は当然存在するものと考えられたためである。
),同項2号及び3号においてはこの要件を付加しているのは弁護人が指摘するとおりである。
そして,この性欲興奮刺激要件は,犯罪的な描写とそうでないものとを区別する重要な要件であるから,3号ポルノの罪となるべき事実においては,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との文言を記載して性欲興奮刺激要件があることを明記するのが望ましい。
ただ,この要件が付加されたのは,弁護人も指摘するとおり,例えば医学書などの学術的な必要のために撮影されたものや家族間や親しい人間関係が介在するなかでの児童の自然な姿を撮影したものなど相応の社会的正当性のある場合を除外する趣旨のものであり,3号ポルノの「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」については,前記のように違法ではないとして除外される場合でないことがその判示事実から分かるような記載があれば,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との文言そのものの記載がなくとも,それに該当する事実摘示があるということができ,そのような場合には性欲興奮刺激要件は満たされるものと解される。

 これを本件についてみると,本件各訴因及び原判示各事実は,いずれも,「銭湯で,他人に提供する目的で,入浴中の女児の裸を携帯型のビデオレコーダーで撮影した」という事実が記載されているところ,そのような場所,目的,態様での入浴中の全裸の女児の撮影,すなわち,盗撮された入浴中の全裸の女児の画像の記録が違法と解されるものであることは前記記載事実自体から認識できるのであり,これがおよそ学術的なものや家族等の人間関係に基づき許される描写でないことは明らかであると認められる。
そうすると,本件各訴因及び原判示各事実において,児童ポルノ法2条3項3号にいう「性欲を興奮させ又は刺激するもの」との文言の記載そのものはないが,本件の事実摘示でも,3号ポルノの「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」のうち,社会的正当性の認められない場合であることが認識できる程度の記載はされているものと認められ,それが違法であることを示すものである性欲興奮刺激要件の摘示がされている場合と構成要件上同等に評価できるものと解することができる。

 したがって,原審が公訴棄却の決定をしなかったのは正当である。
また,原審が訴因について検察官に対して釈明をしなかったことに必ずしも訴訟手続の法令違反があるとはいえない。
さらに,原判示各事実は児童ポルノ法2条3項3号の性欲興奮刺激要件を含む構成要件事実が記載されているのと同等に評価できるから,原判決には理由不備の違法はなく,原判示各事実に児童ポルノ法2条3項3号を適用したのも正当である。
所論は採用の限りでなく,論旨は理由がない。

2 控訴趣意中,その余の法令適用の誤りの主張について
 論旨は,(1)本件各画像は,児童の裸が撮影されているが,一般人を基準とすると「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないから,児童ポルノ法7条2項の製造罪(以下「2項製造罪」という。
)は成立しないのに,原判決は原判示罪となるべき事実に同法7条2項,1項,2条3項3号を適用しており,また,(2)本件は,公衆浴場内での4件の2項製造罪であって,常習的に撮影,提供がされていたのであるから,それらは包括一罪となり,また,被害児童が特定されているのは1件だけであり,3件は被害児童が特定されておらず,結局被害児童は1名としか認定できないから,その意味でも包括一罪とすべきであるのに,原判決は,併合罪として処理しており,以上の各点で,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。

 そこで検討するに,(1)の点は,本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。
しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。
すなわち,「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば,感じない人もいるものと考えられる。
本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。
そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。
しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。
そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。
ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。
他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での3号ポルノの製造も処罰しなければ,2項製造罪の規定の意味がそのような3号ポルノの範囲では没却されるものである。
したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。

 したがって,原判決が原判示各事実に児童ポルノ法7条2項,1項,2条3項3号を適用したのは正当である。


 以上のとおりであるから,前記法令適用の誤りをいう論旨も理由がない。

4 よって,刑事訴訟法396条により本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。

 平成24年7月12日
    大阪高等裁判所第5刑事部
         裁判長裁判官 上垣 猛
            裁判官 佐堅哲生
            裁判官 坂本好司