児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

一時的な精神的苦痛やストレスを感じたという程度にとどまらず,いわゆる再体験症状,回避・精神麻痺症状及び過覚醒症状といった医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現していることなどから精神疾患の一種である外傷後ストレス障害(以下「PTSD」という。)の発症が認められた場合も刑法にいう傷害に当たると解するのが相当である。(最決H24.7.24)

 強姦致傷罪、強制わいせつ致傷罪等、刑法の傷害を構成要件とする罪に波及すると思われます。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82462&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120726101615.pdf
平成22年(あ)第2011号 監禁致傷,傷害被告事件
平成24年7月24日 第二小法廷決定
主 文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中370日を本刑に算入する。
理 由
弁護人長谷川紘一,同水野泰孝の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み,職権で判断する。
原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,本件各被害者を不法に監禁し,その結果,各被害者について,監禁行為やその手段等として加えられた暴行,脅迫により,一時的な精神的苦痛やストレスを感じたという程度にとどまらず,いわゆる再体験症状,回避・精神麻痺症状及び過覚醒症状といった医学的な診断基準において求められている特徴的な精神症状が継続して発現していることなどから精神疾患の一種である外傷後ストレス障害(以下「PTSD」という。)の発症が認められたというのである。所論は,PTSDのような精神的障害は,刑法上の傷害の概念に含まれず,したがって,原判決が,各被害者についてPTSDの傷害を負わせたとして監禁致傷罪の成立を認めた第1審判決を是認した点は誤っている旨主張する。しかし,上記認定のような精神的機能の障害を惹起した場合も刑法にいう傷害に当たると解するのが相当である。したがって,本件各被害者に対する監禁致傷罪の成立を認めた原判断は正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官小貫芳信)

刑法改正にまたがるわいせつ図画公然陳列罪とわいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪

 包括一罪で新旧両罪にまたがります。
 刑法6条の関係では、現行法の方が罰金任意的併科になっているので、重くなっているのですが、「包括一罪には、その完成前に刑の変更があっても、これを分割することなく、その全体に対して新法を適用する。(大判昭6・11・26刑集10-634)」という古い判例があるので、営利性があれば罰金の併科も可能です。
 併合罪だから改正前の行為には罰金併科できないという主張もあり得ますが、普通の弁護士には怖くてできないでしょう。

第6条(刑の変更)
犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。

現行法
第175条(わいせつ物頒布等)
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

 さらに、法定刑が2年だと公訴時効が3年になりますが、公然陳列罪は継続犯なので、法益侵害の状態が継続する限り犯罪行為は終了しないとされています。仮に10年前の画像も含めて同一サイトを運営していると、時効にかからないことになります。知らないふりして公訴時効の主張をしてみれば、裁判所にも勉強になるでしょう。

刑事訴訟法
第253条〔時効期間の起算点〕
1時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120724-00000045-mai-soci
インターネットの掲示板サイトにわいせつ画像を公開したとして、警視庁サイバー犯罪対策課は24日、容疑者(57)をわいせつ電磁的記録記録媒体陳列容疑などで逮捕したと発表した。
 逮捕容疑は10年4月〜今年1月、自ら運営していた掲示板サイト「NEO JJ」に携帯電話を使い、わいせつ画像を15回公開したとしている。「仕事のストレスでやった」と容疑を認めている。
 同課によると、容疑者は同小の学級担任と生活指導を担当。小中学校教諭と有識者による「全国生活指導研究協議会」の指名全国委員として講演や執筆活動も行っていた

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120724-00000061-jij-soci
 逮捕容疑は2010年4月〜今年1月、自分で開設したネット掲示板に携帯電話から計15回、わいせつな画像を投稿した疑い。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120724-00000548-san-soci
同課によると、容疑者は10年ほど前に画像掲示板を立ち上げ、毎晩のように、「せいさん」のハンドルネームでわいせつな画像を投稿していた。掲示板は自分のホームページからリンクできるようになっており、誰もが自由に閲覧、画像と書き込みを投稿できる仕組みだった。昨年11月〜今年7月、9万件を超えるアクセスがあったとみられる。
 逮捕容疑は、平成22年4月〜今年1月、携帯電話から自分で管理する掲示板に、下半身を露出した女性の画像など15画像を投稿したとしている。
 容疑者は学校では生活指導担当をしていた上、教育者向けに生活指導の雑誌を発刊している「全国生活指導研究協議会」の指名全国委員だった。また、生活指導に関する著書も出版していた。
 同市教育委員会は「逮捕が事実であれば誠に遺憾。関係者に謝罪したい」と話している。

 教員の被疑者・被告人はしばしば担当しますが、普通の人ですね。

事故で起訴の報告怠り停職 被害者連絡で発覚、大阪

 自由刑が確定すれば、改めて失職。
 報告を義務づける規定はいまのところ見当たらない。

http://www.city.hirakata.osaka.jp/soshiki/jinji/choukai2.html
職員の懲戒処分について(平成24年7月20日)
 7月20日付けで、本市職員を次のとおり懲戒処分としましたのでお知らせいたします。
【事案の概要】 平成23年12月8日、午後5時27分頃、本市職員が乗用車を運転し信号機のない交差点にさしかかった際、最徐行するなどの安全確認を怠ったため原動機付自転車と衝突し路上に転倒させる事故を起こした。
 その後在宅起訴され、平成24年7月3日には第一審判決(失職に値する量刑:禁錮6月執行猶予2年)があったにもかかわらず、上司に対してその旨の報告を怠っていたもの。
 なお、被処分者は第一審判決を受けて控訴しています。
【処分内容】  懲戒処分 停職(1月)
【処 分 日】  平成24年7月20日
【被処分者】  環境事業部 穂谷川清掃工場 主任 55歳
今後、本市職員がこのような非違行為を起こさないよう服務規律の確保を徹底し、市民の皆さまの信頼回復に努めてまいります。
このページに関するお問い合わせ先
人材育成室 人事課
〒573-8666 枚方市大垣内町2丁目1番20号 枚方市役所別館6階
電子メール:jinji@city.hirakata.osaka.jp
内線3413、3590、3418
Tel:072-841-1221(代)
Fax:072-846-2271
お問い合わせはこちらから

事故で起訴の報告怠り停職 被害者連絡で発覚、大阪
2012.07.20 共同通信
 大阪府枚方市は20日、交通事故で女性に重傷を負わせ在宅起訴されていたのに、就業規則に反し報告を怠ったとして、環境事業部の男性主任(55)を停職1カ月の懲戒処分とした。主任は有罪判決を受けていたが、被害者が連絡するまで市は把握していなかった。
 地方公務員法は、禁錮刑以上の判決が確定した場合、失職すると規定。しかし、市によると、裁判所や捜査機関から連絡はないため、本人が申告しなければ把握できないのが実態。
 このため、枚方市は起訴などの段階で報告を求めており、男性主任については「公務員としての自覚がない」として懲戒処分を決めた。
・・・・
 被害者の女性が判決翌日に男性主任の処分について問い合わせ事態が発覚したが、男性主任は「ここまで重い量刑になるとは思っていなかった」と話している。

有罪」報告せず、枚方市職員処分 猶予つき禁錮刑判決 /大阪府
2012.07.21 朝日新聞
 市によると、主任は昨年12月、軽乗用車で帰宅中、市内の交差点でバイクの60代女性と衝突。6カ月の重傷を負わせた。自動車運転過失傷害罪で在宅起訴され、大阪地裁で今月3日に禁錮6カ月執行猶予2年の有罪判決=大阪高裁に控訴中=を受けた。

 しかし、市に対しては事故翌日、係長に簡潔に報告しただけで、起訴や裁判については一切報告していなかったという。判決後、女性の身内から市へ、処分に関する問い合わせがあり判明した。地方公務員法によると、執行猶予付きでも禁錮刑以上が確定すれば失職する。


報告義務を定める規則の例

http://www.city.osaka.lg.jp/jinji/page/0000005235.html
大阪市 懲戒処分に関する指針
第3 報告義務
公務外においても、上記の標準例に掲げるような非違行為を行い逮捕された職員は、上司に報告しなければならない。また、無免許運転を行い検挙された職員、交通法規違反を起こし、免許停止又は免許取消の処分を受けた職員は、速やかに上司に報告しなければならない。
なお、部下からの報告を受けた上司は、各所属の人事担当へ報告するものとする。


横浜市職員服務規程
http://www.city.yokohama.jp/me/reiki/honbun/g2021639001.html
(事故報告)
第20条 職員は、公務上又は公務外において事故等があった場合は、別に定めるところにより、遅滞なく上司に報告しなければならない


http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/sikumi/kunrei/keimu_pdf/jin1/007.pdf
訓令甲第23号 警視庁警察職員服務規程(昭和39年2 ... - 警視庁

(事故報告).
第19条 職員は、職務に関連する紛争その他の事故等が発生した場合においては、その詳. 細を速やかに上司に報告しなければならない

(強制sexting)強要+3項製造罪の事案(福井県警)

 強制わいせつ行為の一部になるので、強制わいせつへの拡大危険があります。
 強要罪と3項製造罪の罪数については、岡山支部併合罪、大阪高裁は観念的競合(多数説)という状況です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120724-00000126-jij-soci
京都府立高校の教諭逮捕=少女脅迫し裸撮影―福井県
時事通信 7月24日(火)19時44分配信
 福井県の少女を脅迫して裸を撮影したとして、県警敦賀署などは24日、強要と児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで、を逮捕した。同署によると、容疑を認めているという。
 逮捕容疑は昨年12月24日、インターネットを利用したテレビ電話を通じて、当時16歳の少女を18歳未満と知りながら裸になるよう脅迫し、撮影した疑い。
 同署によると、2人は同日インターネットを通じて知り合ったという。容疑者の携帯電話に少女の画像が保存されていた。少女が敦賀署に被害相談し、事件が発覚した。 


参考文献
ネット上の児童ポルノに関する擬律の混乱(sexting・ファイル共有・リンク) 奥村 徹 2011.7.特集 ネットワーク社会における青少年保護 第35回法とコンピュータ学会研究会報告

セクスティングとチャイルド・ポルノグラフィ 紙谷 雅子2010.9.