児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

逮捕・判決報道がないのに、処分報道で実名が明らかにされる例。

 医事新報に若干の事実関係が掲載されています。
 医師・歯科医師については、全件、検察庁から厚生労働大臣に通報されますので、刑事処分されると、実名公表は避けられません。
 

会員制画像掲示板における公然陳列罪の投稿者・管理者の共謀成立時期は、パスワードの付与時点である。(大阪高裁H23.10.20)

掲示板開設の時点で、公然陳列罪の単独正犯の着手があって、投稿されると、単独正犯が既遂になるという判例ありますけど。

阪高裁H23.10.20
わいせつ図面陳列罪の共謀があったといえるためには,利用者がわいせつ画像データをアップロードして,サーバーコンピューターのハードディスクに記憶・蔵置させることにより,わいせつ画像を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことの共謀があれば足りるのであって,利用者がアップロードする個々の画像データの具体的認識まで要するものではない。
そうすると,掲示板を管理・運営する被告人が,掲示板の閲覧や投稿を希望する利用者に上記のパスワードを交付した段階で,利用者はいつでもわいせつ画像データをアップロードすることが可能となるのであるから,この段階で上記の共謀が成立することは明らかである。

児童ポルノのファイル共有は、公然陳列罪か4項提供罪(不特定多数)か?

 道警は公然陳列説を採るんですが、判例ははっきりしません。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111024-00000009-maiall-soci
容疑は同日までに、同小の職員室で、村教育委員会から貸与されているパソコン内に、女子児童を撮ったとみられるわいせつな動画など2点を記録、ファイル共有ソフトCabos](カボス)利用者が閲覧できる状態にしたとしている。同署によると、容疑を認めており、動画の入手経路などを調べている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111023-00000069-jij-soci
職員室パソコンに児童ポルノ=小学教諭、容疑で逮捕―北海道警
逮捕容疑は23日、小学校の職員室の公用パソコンに保存した子どもと大人のポルノ動画各1点を、共有ソフトを使ってネット上で閲覧できる状態にした疑い。
 同署によると、動画はネットで入手したとみられ、数カ月前から閲覧可能になっていた。道警がネット上を巡回するサイバーパトロールで発見し、発信元のパソコンを突き止めた。パソコンは容疑者の机の上にあり、ほぼ専用で使っていたという。 

小学校のパソコンから児童ポルノ公開した教諭
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111023-00000750-yom-soci
容疑者は同日午前、同校職員室でパソコン内に児童ポルノの動画などを保存し、ファイル共有ソフトCabos(カボス)」を利用して不特定多数の人が閲覧できるようにした疑い。調べに対し、児童ポルノの動画などを保存したことを認めているという。

 公然陳列罪しかないという大阪の湯川裁判長は別として、データがあっちに行ってる場合は4項提供罪(不特定多数)ですよね。
 いつも弁護人を悪者にするのではなく、
 いっぺん、湯川 VS 志田・小川で議論して欲しいものです。
 

 札幌高裁H21.6.16
児童ポルノ提供罪の成立時期についての補足説明)
 弁護人は,本件における児童ポルノ提供罪は,不特定多数の第三者がアクセスできる状態においた時点で成立する旨主張するが,本件犯行態様をみると,購入者によりその代金が振込入金されたことを確認した被告人が,犯罪事実1の児童ポルノ動画ファイルのダウンロードに必要なIDとパスワードを購入者に電子メールで送信し,購入者は,そのIDとパスワードを使って,被告人のファイルサーバーから上記児童ポルノ動画ファイルをダウンロードして自己のパソコン等に記憶,蔵置させた上,ダウンロードした上記児童ポルノ動画ファイルを再生して画像を見るというものであるから,本件における提供というためには,購入者が購入した上記児童ポルノ動画ファイルを実際にダウンロードして自己のパソコン等に記憶,蔵置することを要するというべきであり,弁護人の主張は採用することができない。
裁判長裁判官 小川育央

名古屋高裁H23.8.3
論旨は,本件起訴状の公訴事実には,児童ポルノ公然陳列罪に該当する事実を超えて,インターネット利用者に対し本件各画像を送信して閲覧させた事実まで記載されており,いかなる事実が児童ポルノ公然陳列罪に当たるとして起訴しだのかが不明確であり,Aに対して本件各画像を送信して閲覧させた事実を別途起訴するものとも読めるので,訴因が不特定であり,また,起訴状に余事記載があるところ,・・・というのである。
しかしながら,本件起訴状は,児童ポルノ公然陳列罪に該当する事実のみならず,法7条4項後段の罪に該当し得る事実が公訴事実に記載されている点,法7条4項が前段,後段を区別することなく罰条に掲げられている点において,起訴状の記載として適切さを欠くもめといわざるを得ない
裁判長裁判官 志田洋

阪高裁h23.3.23
第2  控訴理由に対する判断
 1  法令適用の誤りの主張について
 刑法175条が定めるわいせつ物を「公然と陳列した」とは,その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい(最高裁平成13年7月16日第三小法廷決定・刑集55巻5号317頁参照),児童ポルノ法7条4項前段の児童ポルノ公然陳列罪における「公然と陳列した」との要件についてもその文言に照らしてこれと同旨であると解するのが相当であるところ,本件は,児童ポルノを含むわいせつ図画の画像情報が記憶,蔵置された, わいせつ物であり児童ポルノに当たるハードディスクを内蔵したパソコンをインターネットに接続してファイル共有ソフトの共有機能を作動させ,不特定多数のインターネット利用者にこれらの画像が閲覧可能な状況を設定したというものであるから, わいせつ物陳列罪ないし児童ポルノ公然陳列罪が成立することは明らかである。なお,弁護人の主張にかんがみ,付言するに,児童ポルノ法の平成16年改正で,電磁的記録の提供(同改正後の同法7条4項後段)を新たに処罰の対象として新設し,かつ,児童ポルノの定義(同法2条3項)に「電磁的記録に係る記録媒体」を明記した趣旨は,同改正前の同法において,児童のポルノに係る電磁的記録である画像情報を記録煤体に記憶,蔵置させ,これをインターネット上で不特定多数の者に閲覧可能な状態にした場合には,裁判実務上,上記画像情報が記憶,蔵置された記録煤体を有体物としての児童ポルノとし,その公然陳列があったとして児童ポルノ公然陳列罪が成立すると解されていたところ,改正法では,そのような解釈を前提として,同改正前の同法では処罰の対象として含めることに疑義があった電子メールにより児童のポルノを内容とする電磁的記録を送信して頒布する等の行為の処罰規定を新設するとともに,この改正に伴い,解釈上の疑義が生じないように児童ポルノの定義中に「電磁的記録に係る記録媒体」が含まれることを明らかにしたもの,すなわち記録媒体自体の公然陳列等の行為が電磁的記録に係る記録煤体に係る罪, つまり有体物である児童ポルノに係る罪により従来通り処罰されることを明示したものと解される。このような同法の改正の趣旨・内容にかんがみれば,本件で児童ポルノ公然陳列罪が成立することは明白である。以上と異なる弁護人の主張は,結局のところ,独自の見解に基づくものであって採用できない。
 以上のとおり, 一審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りはない。弁護人の主張は理由がない。
平成23年3月23日
 大阪高等裁判所第2刑事部
   裁判長裁判官  湯川哲嗣
      裁判官  武田義紱
      裁判官  岡崎忠之

阪高裁h21.9.2
第2控訴理由に対する判断
1法令適用の誤りの主張について
また,弁護人は,本件は,児童ポルノ公然陳列罪ではなく,児童ポルノ提供罪が成立する旨主張するが,本件が児童ポルノ公然陳列罪に該当することは,一審判決が「補足説明」の項で正当に説示するところである。
なお,弁護人の主張にかんがみ,付言するに,児童ポルノ法の平成16年改正で,電磁的記録の提供(同改正後の同法7条4項後段)を新たに処罰の対象として新設し,かつ,児童ポルノの定義(同法2条3項)に「電磁的記録に係る記録媒体」を明記した趣旨は,同改正前の同法において,児童のポルノに係る電子データを記録媒体に記憶させ,これをインターネット上で不特定多数の者に閲覧させた場合には,上記電子データが記憶・蔵置された記録媒体を有体物としての児童ポルノとし,その公然陳列があったとして,児童ポルノ公然陳列罪が成立すると解されていたところ,これを前提として,同改正前の同法では処罰の対象として含めることに疑義があった電子メールにより児童のポルノを内容とする電磁的記録を送信して頒布する行為の処罰を新設するとともに,この改正に伴い,解釈上の疑義が生じないように児童ポルノの定義中に「電磁的記録に係る記録媒体」が含まれることを明示したというものである。このような同法の改正の趣旨にかんがみれば,本件が児童ポルノ提供罪に当たらないことは明白であるo
以上のとおり,一審判決に法令の適用の誤りはない。弁護人の主張は,採用できない。

平成21年9月2日
 大阪高等裁判所第2刑事部
   裁判長裁判官  湯川哲嗣
      裁判官  榎本巧
      裁判官  武田義徳