児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ拡散防止 サイト遮断で「一歩前進」2010.05.04 読売新聞

 「いつまでも議論しているわけにはいかない」って言われても、あまり公開で議論されてきたとは思えません。
 ブロッキングが導入されても、ディープな愛好家はP2Pとか会員サイトとかその他の巧妙な回避手段で児童ポルノを交換するんじゃないでしょうか。
 ブロッキングでリストアップされるのは、公然と提供・陳列しているサイトだけですから、ブロッキングで影響を受けるのはそういうのを検索して探すとかしてこれから児童ポルノを集めようとする人とかたまたま児童ポルノサイトにアクセスしてそっちに向かう人です。
 そういうのをやめるために、すべてのインターネットユーザーは通信の秘密を制限されてアクセス先を把握されるということなんです。全員行き先を質問され回答させられるという職務質問みたいです。

 「被害児童の心身に重大な影響をもたらす権利侵害。いつまでも議論しているわけにはいかない」。原口総務相は強い口調でこう述べた。
 ブロッキングはすでに英国やイタリアなどで導入され、児童ポルノの拡散防止に一定の効果を上げている。国内では、警察庁が導入に強い意気込みを示す中、業界で作る「安心ネットづくり促進協議会」も3月末、自主的な取り組みを進める姿勢を表明。ところが、総務省は「通信の秘密を侵す」などとして、導入に消極的な姿勢を崩していなかった。
 警察庁幹部は「やや遅い感もある」としながらも、「政治主導で決断してくれてよかった」と評価する。ただ別の幹部は「ブロッキングだけではなく、児童ポルノすべてを網羅するリスト作りが大事」としている。
 一方、情報セキュリティー専門家の高木浩光氏は「ブロッキングありきの議論には疑問」とする。有害サイトへの接続を遮断しても、ファイル交換ソフトの利用者が児童ポルノ画像を持っていれば、何度でもウェブ上に逆流する可能性があり、「ファイル交換ソフトの問題にメスを入れなければ単なるモグラたたきに終わる」と警告する。

 オーバーブロッキングの問題があるんですが、このリストが公表されないわけですよ。日本警察を信用してくれと。
 リスト作りに精を出すくらいなら、外国警察と協力して、摘発すればいいと思います。
 法的根拠がないとか検閲禁止に触れるとかで国ができないことを、「民間に任せて」と言いながら国が深く関与してやらせるというのでは、限界が見えているとおもうんですよね。

名誉毀損罪とわいせつ図画販売罪の観念的競合っぽい事案

 被害女性が名乗り出れば、名誉毀損罪でも起訴される可能性がありますが、名誉毀損罪は1名ごとに行為1回1罪の併合罪
 他方、わいせつ図画罪は包括一罪なので、何回販売しても被害者何人分販売しても科刑上一罪。
 名誉毀損罪とわいせつ図画罪は観念的競合だから、結局、わいせつ図画罪で串刺しになって、全体として科刑上一罪。

女性の承諾なくエロ動画を販売 被害者はどこ
http://www.sanspo.com/shakai/news/100502/sha1005021457010-n1.htm
影された痴態を販売されてしまっていた女性被害者の数は、男の供述によると「10〜15人」に上るそうだ。だが、彼女らに自分の写ってしまっているDVDが販売されていた事実が伝えられるのかといえば、それは「被害者女性が特定できれば連絡する可能性はあるが、出会い系サイトやデリヘルで知り合った男に、『私はここに住んでいる』などと住所や連絡先を教える女性もいないだろうから、難しいだろう」(世田谷署)とのことだった。納得。
 「知らぬが仏」という言葉があるが、こういった場合、被害者の女性たちは知らない方が幸せなのだろうか。
 ちなみに、供述によると、女性たちはHの撮影については同意していたそうだが、販売されることは知らされていないという。