児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

三尾有加子「実例捜査セミナー 毛髪鑑定を利用して覚せい剤使用を立証した事案」捜査研究683号p26

 実験的な事例を紹介したこういう文献もあります。
 自白がある場合の補強証拠としては使えるということです。

 解説は三尾有加子検事へどうぞ。

そして.これらの押収物のうち,計量秤,ガラス瓶.チャック付ビニール袋から微量の覚せい剤が検出されたが.被疑者の尿から大麻.覚せい剤は検出されなかった。
・・・・
そこで,被疑者については.毛髪鑑定を実施し,その大麻使用の事実及び覚せい剤使用歴を明らかにすることとした。
2 毛髭鑑定の方法及び結果
被疑者の頭髪50本をランダムな部位から切り取って1束にし.この束を1センチメートルことに切断して14の分画とした。そして.この14分画の頭髪の束を.それぞれエタノールで処理した上.分画ごとに.ガスクロマトグラフィーとガスクロマトグラフィー質量分析を併用して分析した。
その結果.被疑者の毛髪のうち.毛根からの距離が2--3センチメートル、4--5センチメートル、5--6センチメートル、8 --9センチメートル,9 --10センチメートル、10--11センチメートル及び13センチメートル~毛先の部位から.覚せい剤が検出された。
なお.大麻については.どの部位からも検出されなかった。
3 考察
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人間の頭髪は1日に0.35ミリメートル, 1 か月に約1センチメートル伸長するとされているため, 1センチメートルごとに分割して分析すれば.覚せい剤使用時期は1か月単位で推定することができるというわけである。
(2) 本件鑑定で.前記の覚せい剤が検出された毛髪の部位を時期に直すと.平成16年8月中ごろから11月中ごろまでの問と,平成17年1月中ごろから5月中ごろまでの間となる。

第3 覚せい剤使用についての処分
このように.被疑者から詳細な自白を得られたこと.その内容と毛髪鑑定がおおむね一致したことなどから毛髪鑑定による覚せい剤取締法違反の罪での起訴を積極的に検討することとなった。
この点,裁判例を調査したところ,毛髪鑑定の信用性を認め,証拠として採用した地裁裁判例(薬物の自己使用目的につき)は存在するものの,毛髪鑑定から直接的に薬物自己使用を認定した事案は見当たらなかった。これは,毛髪鑑定の場合,前記のとおり,その使用時期の推定方法が確立されたものとまでいえないこと.1度の覚せい剤使用で覚せい剤が毛髪に移行することはないと考えられていることなどから,結局毛髪から検出された覚せい剤が,起訴事実となる覚せい剤使用によるものであると特定できないために起訴自体がなされていないことによると考えられる。
しかし,被疑者が.覚せい剤使用の日時場所を含めて詳細に自白し.かつ,その自白に十分な信用性が認められ,毛髪鑑定により推定される薬物使用履歴と被疑者の供述内容が合致している場合には,その毛髪鑑定を自白の補強証拠として捉えれば覚せい剤使用につき,立証は十分であり,有罪判決を
得ることは可能であると考えた。
そこで,被疑者については覚せい剤取締法違反により起訴することとし,公訴事実は,被疑者の供述どおり「平成17年2月20日,自宅において炙りの方法で覚せい剤若干量を使用」とした。
第4 判決結果
本件被告人及び弁護人は.公判において公訴事実を認めて争わず,第1回公判で結審し,問題なく有罪判決を得ることができた。

性犯罪審理悩む裁判官 青森地裁「併合」仙台地裁「分離」選択

 分離しても両方の裁判所で異口同音に「(余罪とか前科とかを指摘して)性犯罪の常習性が顕著である・性的嗜好に問題がある」と書かれてしまいます。
 こういう判決を並べられると、被告人も弁護人も、「悪い情状が二重評価されてるやん」と思い込んで「併合審理の利益が害された」と控訴しますよね。
 刑期の点では、分離すると謙抑的になって、刑期を合算しても併合審理の場合よりも軽くなることもありますから(反対に重くなることもある)、不利益になるかはわかりません。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090821-00000008-khk-soci
 一人の被告が裁判員裁判対象の性犯罪を含む複数の事件で起訴された場合、審理を一括(併合)するか分離するかで裁判官の判断が分かれている。併合によって量刑の軽減が望める被告の利益と、分離による被害者のプライバシー保護。どちらを優先するかで刑期が左右される事態が現実味を帯びており、今後の各地裁の対応が注目される。
 青森地裁は9月2〜4日に開く裁判員裁判で、2件の強盗強姦(ごうかん)事件など4件を併合審理する。5月21日の裁判員制度開始前に起訴された強盗強姦1件を含む3件は対象外事件だが、4件は併合罪=?=の関係にあり、同地裁は被告の利益に配慮したとみられている。

 一方、仙台地裁は20日に公判前整理手続きの第1回協議が開かれた被告の公判をめぐり、同地裁に起訴された強姦致傷罪の審理を、強姦未遂罪、盛岡地裁から移送予定の強制わいせつ未遂罪と分離する方針。

放置している掲示板管理者の刑事責任の追及をも視野に入れた捜査などを進める

 管理者の刑事責任については2、3の判例と奥村の拙稿があるだけですよね。法律の明文が欲しいところです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090821-00000014-rbb-sci
警察庁では対策として、引き続き警察署を含めたサイバー犯罪対応能力の向上を図り、取締りを強化することを掲げるとともに、違法情報対策の推進として、インターネット上の違法情報の把握、児童ポルノなど悪質事犯に重点を指向した取締りと被害防止対策、違法情報の投稿・書き込みを認識しながらそのまま放置している掲示板管理者の刑事責任の追及をも視野に入れた捜査などを進めるとしている。

検察官求刑禁固1年6月、被害者求刑懲役2年実刑→宣告刑禁固1年6月、執行猶予3年(沼津支部H21.8.20)

 執行猶予つけるときは原則として刑期は検察官求刑通りなんですが、被害者の「求刑」を許しておいて反映しないというのは何なんですかね?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090821-00000004-mailo-l22
◇裁判官「配慮欠いた」
 法廷で被害者側が被告に質問でき、刑罰の意見を述べる機会がある「被害者参加制度」の県内初適用となった裁判の判決が20日、地裁沼津支部であった。自動車運転過失致死罪に問われた被告の女性(54)に、岡田龍太郎裁判官は禁固1年6月、執行猶予3年(求刑・禁固1年6月)を言い渡した。
 判決によると、07年12月29日深夜、被告は同乗の母と話をしながら前方に十分注意を払わずに運転し、小山町一色の県道の車道を歩いていた男性(当時58歳)に衝突、死亡させた。岡田裁判官は「被告は遺族への対応に配慮を欠いた。被害者の妻は公判に出席し懲役2年の実刑が相当と述べ、処罰感情が厳しい」と指摘。ただ、事故現場の歩道と車道が段差と白線で分けられていることを踏まえ「被害者にも一定の落ち度があった」と述べた。