児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

<児童ポルノ>被害者1696人特定できず 07年検挙事件

 この記事の意図は知りませんが、1999年からそうなんです。謙抑的に運用されているので氏名不詳の16~17歳のは児童ポルノにならないことが多いし、氏名不詳の被害者は数えにくい。だから被害者統計は当てにならないと言ってます。
 でも氏名不詳でも児童ポルノとして処理してるので、だからといって児童ポルノ犯が不当に逃れているわけではないし、鑑定で児童と証明できないものは、単純所持を規制しても、取り締まれません。
 打開するには「児童と推定する」という年齢推定規定作るしかないでしょうね。でもえん罪増えますよ。
 しかし、氏名不詳でも児童ポルノに取り込んだために、被害者性が稀薄になって、包括一罪になったんですよね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080602-00000009-mai-soci
児童ポルノ>被害者1696人特定できず 07年検挙事件
 全国の警察が07年に検挙した児童ポルノ事件で、被害者が判明せず医師が身体的特徴を鑑定して児童(18歳未満)と判断したケースが143件、延べ1696人に上ることが、毎日新聞の調べで分かった。本人を特定できない画像がインターネットの普及で大量に出回っているためで、鑑定でも児童と判断できなかった例も多い。ネット社会で児童ポルノのはんらんに歯止めが掛けられない実態が明らかになった。

 現行法は18歳未満の子供を写した性的画像の販売や公然陳列などを禁止している。警察庁によると、07年検挙の児童ポルノ事件は567件、被害児童は延べ304人だった。

 だが被害児童数は、本人を特定できたケースだけで、画像鑑定で児童と認定された人数は集計されていない。鑑定により児童と認定し立件した事例について、毎日新聞が各警察本部に調査したところ、23都道府県で143件、被害児童数は延べ1696人に上った。

 この問題は研修634の本田論文で指摘されています。
判例研究 児童ポルノビデオテープの画像自体から,被撮影者が実在する18歳未満の者であると認定した事例児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項各号に掲げる「児童」は,実在する者であることを要するが,具体的に特定することができる者であることを要しないとした事例(大阪高判平成12.10.24) / 本田 守弘 研修. (634) [2001.4]


 名前がわからないと集計できないというのはこういうことです。

ケース
5/1 甲県警で「××援交シリーズ62」などの提供犯を摘発した。
 被害児童
  氏名不詳児童1(実はA子)
  氏名不詳児童2(実はB子)
  氏名不詳児童3(実はC子)

6/1 乙県警で「××援交シリーズ62」などの提供犯を摘発した。
 被害児童
  氏名不詳児童1(実はA子)
  氏名不詳児童2(実はB子)
  氏名不詳児童3(実はC子)

 これをカウントすると、甲県警も3、乙県警も3で、「全国集計6」になってしまうというので、氏名不詳はカウントしてないのです。
 しかし、氏名不詳だからカウントされないというのは被害を矮小化してますよね。戦争とか大災害なら氏名不詳もカウントするわけで。
 事件の性質上そういうダブりがたぶんにある数字だということを断れば、「全国集計6」で公表してもいいと思いますね。ダブった分というのは、複数回被害に遭ったという意味なので、被害規模とか被害の特性を示してると思うのですよ。

児童ポルノの罪数と性犯罪の罪数

 強姦・強制わいせつ罪の犯行現場を録画した場合の児童ポルノ罪の罪数については、実務では、被害者数を考慮しないので、一罪ですよね。えらい違いですよね。

内田文昭判例タイムズ738号69頁
これに対して'強制わいせつ罪・強姦罪では'事情が違う。これらにあっては'財産上の所有と占有の分離・分割などの関係がおよそ考えられない' 一身専属的な性的自由侵害の個数が、罪数決定の基準となるのであるから'まさにその性的自由を害された個人の数だけの犯罪が成立するのである。殺人罪や傷害罪が'現実に死んだ人、傷ついた人の数だけを単純に計算すればたりるのと全く同様であるといわなければならない。ましてや'数人の被害者に対する強制わいせつ罪・強姦罪の包括一罪を価値的に考えることなどは到底許されないのである。

児童買春罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)を観念的競合とした事件の上告棄却(H20.5.30)

 観念的競合という高裁判決はひっくり返らないですね。
 併合罪説の控訴審判決に上告して、札幌高裁を判例として判例違反を主張しないと判断出ませんね。

 児童ポルノ・児童買春の上告事件はあと3件。

児童が写真を製造・販売していた場合に、児童を正犯、買った者を教唆犯とするのは現場に抵抗があるらしいよ。

 よその弁護士さんからの報告でした。
 強要・脅迫で間接正犯になるような場合だけでしょうね。

 児童ポルノ罪は被害児童数にかかわらず包括一罪となっているのに、製造のところだけは被害者性にこだわるのね。

児童買春をして地元の弁護士に自首の相談をしたら「バレないから忘れた方がいい」とアドバイスされ、その後逮捕され刑が確定したが、その弁護士になにかクレーム言えないか?

 普通の弁護士に聞いてもその程度の認識だと思います。
 アドバイスが違っていたら結果も違っていた可能性はありますが、結局、自分の事件について適法に逮捕され有罪になっているのだから、言えるとしても少しだけでしょうね。

消せない:児童ポルノと性犯罪/1 広がるネット流通

 こういう残留物が後日流出して、弁護人が青ざめることがありますから、弁護人も所持の現場を確認してほしいものです。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080602ddm041040135000c.html
捜査でレコーダーは没収されたが、愛蔵のテープ20本は袋に入れて手元に置いたままだ。「法律が変わって持っているだけでも処罰される日が来たら、保管場所を変えればいい。これだけは墓場まで持っていく

 墓でも「所持」ですよね。

製造罪は、強制わいせつ罪とは観念的競合で、強姦罪とは併合罪か?

 撮影行為を「わいせつ行為」と評価してきた以上、強制わいせつ罪や青少年条例違反(わいせつ)とは観念的競合ないし混合的包括一罪とせざるを得ないところ、強姦とはどうか?
 この点を考えるには、強姦罪の機会のわいせつ行為の評価の方法が参考になる。判例を引用すると格調高く聞こえるが、強姦やる奴が、姦淫のみを敢行するはずがなくて、たいてい、わいせつ行為もいっしょにやってるわけだから、包括評価してしまうのです。

判例コンメンタールP303
7 他罪との関係及び罪数
強姦目的のわいせつ行為は、強姦未遂のほかに強制わいせつが成立し、両者は法条競合で強姦未遂1罪となる(大判大3・7・21)。同一被害者に対する強制わいせつと強姦とは、包括一罪として強姦1罪が成立する(東京地判平元10・31)

東京地方裁判所平成元年平成元年10月31日
判例タイムズ729号228頁
判例時報1363号158頁
判例タイムズ738号69頁
判例評論388号201頁
本件のように、強制わいせつとこれに接着して強姦が行われた場合はこれを包括して一個の強姦行為と評価すべきであること、強盗強姦罪が成立する場合において、犯人がその強盗の機会(あるいは強姦の際)に加えた暴行により生じた傷害はもとより強盗強姦以外の別罪を構成するものではないが、強盗強姦罪の重要な量刑評価の対象となるものであり、右傷害の点を判示すべきことも多言を要しないところである。)

判例タイムズ729号228頁
 まず、本判決は、強制わいせつとこれに接着して強姦が行われた場合は、これを包括して1個の強姦行為と評価すべきであるとしている。
参考となる判例として、岐阜地判昭46・3・11刑月3巻3号432頁がある。
右判決は、強制わいせつに接着して強姦が行われ、強姦は未遂に終わったものの被害者に傷害を負わせたところ、右傷害を発生させた暴行が強姦の犯意発生の前か後か不明な事案につき、強制わいせつと強姦未遂の包括一罪の結果として刑法181条の致傷罪の構成要件に1回該当すると判示している。
右判決につき、木村栄作・警論25巻2号148頁は、強制わいせつ行為と強姦未遂行為とを包括して1個の強姦未遂行為と評価するのが相当であるから、刑法181条の致傷罪というのではなく、同条の強姦致傷罪の一罪が成立すると評釈している。
本件では致傷の結果は生じていないが、強制わいせつと強姦の関係については、本判決も右のような考え方に従ったものと思われる。
 いわゆる包括一罪の用語は、判例上かなり広い概念で用いられているが、本判決の場合は、強制わいせつが強姦に吸収されるといういわゆる吸収一罪的な趣旨で用いられたものと理解するのが相当であろう。
これに対し、右岐阜地判に触れた森井□「強姦・強制わいせつ」判例刑法研究5巻257頁は、右判決につき、強制わいせつ、傷害及び強姦未遂の併合罪とすべきであると評しているが、強制わいせつと強姦の罪質と被害法益の同一性、行為の一体性等を考慮すると、一罪説の方が相当なように思われる

 撮影行為が「わいせつ行為」だとすれば、強姦の機会の撮影は、強姦行為に接着した「わいせつ行為」であるから、強制わいせつ罪としては強姦と包括一罪である。
 同じ撮影行為について、保護法益の違う別罪と評価するとすれば、それは、強姦と包括一罪となるわいせつ行為と一個の行為であるから、強制わいせつ罪とは観念的競合となり、さらに、強姦罪とは包括一罪となるのである。

ということで、強姦と児童ポルノ製造罪は科刑上一罪。東京高裁H19.11.6は疑問。