児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

少女の裸をサイトに掲載した生徒追送検

 webに児童の裸を掲載して名誉毀損するというのは、児童ポルノ公然陳列+名誉毀損の観念的競合なんですが、保護法益の関係で、名誉毀損罪では被害者を特定する必要があって、被害者1名1罪、児童ポルノ公然陳列罪では、被害児童を特定する必要がなくて、被害者数名でも数回でも包括一罪になるというのが判例
 児童数人の裸を断続的に掲示すると、名誉毀損罪は併合罪ですが、児童ポルノ公然陳列罪の包括一罪でかすがいされて、科刑上一罪。
 児童ポルノ公然陳列の方が法定刑も重いのですが、保護法益をわいせつ公然陳列と誤解しているのだと思います。「公然陳列」と聞くと条件反射で包括一罪にしてしまう。
 なんで児童ポルノの方が重いのかというと、それが性的虐待だからなんですが、罪数処理の時には忘れてしまうんです。
 これに気づいた高裁がなんとかかすがいの連鎖を切ろうとするのですが、多勢に無勢。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080304-00000051-san-l14
少女の裸をサイトに掲載した生徒追送検
3月4日7時50分配信 産経新聞
 同級生の少女(16)の裸の画像が掲示板サイトに掲載された事件で、県警少年捜査課は3日、名誉毀損(きそん)の疑いで、横浜市内に住む県立高校1年の男子生徒(16)=児童買春・ポルノ禁止法違反容疑(公然陳列)で逮捕=を追送検した。調べでは、男子生徒は昨年11月、別の生徒が携帯電話のカメラで撮影した少女の裸の画像を入手し、インターネットの掲示板サイトに張り付け、不特定多数に閲覧可能な状態にして少女の名誉を毀損した疑い。

児童ポルノ提供・陳列罪における被害児童の特定↑→

 児童ポルノ法2条3項の要件はいずれも個人の属性ですよね。
   描写された人が児童かどうか、
   児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為
   他人が児童の性器等を触る
  衣服の全部又は一部を着けない児童
というのは、人物1人1人について問題になる。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第2条(定義)
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

 そこで、氏名不詳の場合でも、警察は「甲は×歳くらい、乙は×歳くらいで、いずれも児童」として小児科医などのコメントをもらって証拠作ってきて、検察官立証も、「甲は×歳くらい、乙は×歳くらいで、いずれも児童」という証拠を積んでくる。
 にもかかわらず、どうして検察官が「甲に対する児童ポルノ罪、乙に対する児童ポルノ罪」とは考えずに、「児童ポルノ罪の包括一罪」として処理してしまうのが不可解です。

 まあ、奥村がどういっても、東京高裁は包括一罪説で上告も棄却されてますので、動かないでしょう。

横浜地裁h15.12.15
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
(法令の適用)
1 罰条  被害者ごと(画像が複数ある被害者については,その複数は包括して)に,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条1項
2 科刑上一罪の処理  刑法54条1項前段,10条(一罪として,犯情の最も重い別紙一覧表番号1の被害者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反罪の刑で処断)

東京高裁h16.6.23
2所論は,要するに,原判決は,被害児童ごとに法7条1項に違反する罪(児童ポルノ公然陳列罪)が成立し,結局これらは観念的競合の関係にあるとして,その罪数処理を行っているが,本罪については,被害児童の数にかかわらず一つの罪が成立するというのが従来の判例であるから,原判決には,判決に影響を及ばすことの明らかな法令適用の誤りがある,と主張する(控訴理由第16)。
 そこで,本件に即して検討すると,法7条1項は,児童ポルノを公然と陳列することを犯罪としているから,同罪の罪数も,陳列行為の数によって決せられるものと解するのが相当である。確かに,所論もいうように,児童個人の保護を図ることも法の立法趣旨に含まれているが,そうであるからといって,本罪が,児童個人に着目し,児童ごとに限定した形で児童ポルノの公然陳列行為を規制しているものと解すべき根拠は見当たらず,被害児童の数によって,犯罪の個数が異なってくると解するのは相当でない。
 そして,本件では,被告人は,22画像分の児童ポルノを記憶・蔵置させた本件ディスクアレイ1つを陳列しているから,全体として本罪1罪が成立するにすぎないものと解される。したがって,この点に関する所論は正当であって,被害児童ごとに本罪が成立するとした原判決の法令解釈は誤りである。

違法とする範囲を「収集の意思があった場合」などに限ることも含めて検討する。

 やっぱりわからん要件を入れてくるようですね。
 保護法益の侵害危険性に照らしてきわめて違法性が高いから単純所持を処罰しようというのに、そんな主観的な要素はかえって不明確だから、「譲り受けた」とか、「正当事由なく所持した」とか、スパっと決めてほしいところです。
 長期間大量にダウンロードしても「一時ファイル」に保管しておけさえすれば「収集の意思はなかった」と言えるようですね。

http://www.asahi.com/national/update/0304/OSK200803040051.html
単純所持をめぐっては、04年の法改正時にも与党が禁止条項の創設を検討した。しかし、たまたまダウンロードしたり、迷惑メールなどで一方的に送りつけられたりした場合も摘発対象となる可能性があり、「捜査権の乱用を招くおそれがある」との指摘があった。「表現の自由を侵すことにつながる」という批判もあり、このときは創設が見送られた。
 森山元法相は「事態は深刻化しており、前回の改正時とは状況が違う」としている。ただ、プライバシーの侵害を懸念する意見も強く、小委員会では違法とする範囲を「収集の意思があった場合」などに限ることも含めて検討する。

早速
  「ゴミ箱」に置いて削除しないのはどうか? 
  未必の故意のプロバイダはどうなる?
という質問がありました。

輸出入罪の着手と既遂

 これは考え出すと難しいんです。
 客体によっても違うし、立法趣旨も違うし。
 本件のような事案に対しては、関税法みたいに既遂も未遂も予備も法定刑同じにしておけば解決できます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080304-00000099-san-soci
同被告らは、北朝鮮の貨物船から海中に投下された覚醒剤を小型船で回収。悪天候のために覚醒剤を見つけられなかったケースについて、同小法廷は「覚醒剤が陸揚げされる客観的な危険性が発生したとはいえず、輸入罪の実行の着手があったとは解されない」と述べ、検察側が主張した輸入未遂罪ではなく、輸入予備罪にとどまると判断した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080304-00000045-mai-soci
審・東京地裁は11月事件について「着手後」に失敗したとして同法違反の密輸未遂罪を適用。一方、2審・東京高裁は「国内に陸揚げされる現実的な危険はなかった」として「着手前」の予備罪と判断していた。未遂罪の法定刑は「無期懲役か懲役3年以上」で、予備罪の「懲役5年以下」より重いため争点になっていた。<<>

 覚せい剤は有体物だから、「覚せい剤が陸揚げされる客観的な危険性」でみるんですよね。
 児童ポルノの場合は、領海に入った時点で、メールとかで送れて必ずしも陸揚げの必要はないので、「法益侵害の客観的な危険性」が違うと思うんです。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=35920&hanreiKbn=01
平成19(あ)1659
事件名 覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件
裁判年月日 平成20年03月04日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
外国で覚せい剤を密輸船に積み込んだ上,海上に投下し,回収担当者において小型船舶で回収して本邦に陸揚げするという方法による覚せい剤輸入を計画し,本邦内海の湾内で覚せい剤を投下したが,悪天候等のため,回収できなかった場合について,覚せい剤取締法所定の覚せい剤輸入罪及び関税法所定の禁制品輸入罪の実行の着手があったとはいえないとされた事例

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080304111401.pdf
検察官の事件受理申立て理由について
検察官の所論は,事件受理申立理由書記載のとおりであるが,要するに,原判決が第1審判決判示第3の事実に代えて認定した罪となるべき事実(以下「本件」という。)について,覚せい剤取締法41条の輸入罪及び平成17年法律第22号による改正前の関税法109条1項,3項の禁制品輸入罪(以下「本件各輸入罪」という。)の各実行の着手を認めず,被告人らの行為がいずれの犯罪についても予備にとどまると判断した原判決は,本件各輸入罪の実行の着手に関する法令の解釈適用を誤ったものであるから,原判決を破棄して相当の裁判を求める,というのである。

オ密輸船から投下された覚せい剤8個のうちの4個は,遅くとも翌28日午前5時30分ころまでに,上記投下地点から20km程度東方に位置する美保湾東岸に漂着し,さらに,その余のうち3個が,同日午前11時ころまでに,同海岸に漂着し,これらすべてが,そのころ,通行人に発見されて警察に押収された。
カ一方,回収担当者は,そのことを知らないまま,同日午後,覚せい剤を回収するため,再度,上記境港中野岸壁から小型船舶で出港したが,海上保安庁の船舶がしょう戒するなどしていたことから,覚せい剤の発見,回収を断念して港に戻った。その後,被告人らは,同日中に,本件覚せい剤の一部が上記のとおり海岸に漂着して警察に発見されたことを知って,最終的に犯行を断念した。
キ同年12月27日,前記覚せい剤の包みのうちの最後の1個が,美保湾東岸に漂着しているのが通行人によって発見され,警察に押収された。
(2)以上の事実関係に照らせば,本件においては,回収担当者が覚せい剤をその実力的支配の下に置いていないばかりか,その可能性にも乏しく,覚せい剤が陸揚げされる客観的な危険性が発生したとはいえないから,本件各輸入罪の実行の着手があったものとは解されない。これと同旨の原判断は相当であり,所論は理由がない

名古屋高裁H18.5.30
所論は,原判決は「児童ポルノDVDを航空機に搭載させ,もって,児童ポルノを輸出した」(原判示第1)と判示するところ,児童ポルノ輸出罪は,児童ポルノをB国の領域外に搬出させた時点で既遂に達するのであって,航空機に搭載させた時点では既遂にならないから,原判決の(罪となるべき事実)は犯罪を構成せず,原判決は刑訴法335条1項に反し,訴訟手続の法令違反がある,というのである。
そこで,児童ポルノの外国からの輸出罪の既遂時期について検討する。
性交又は性交類似行為に係る児童ポルノを製造,提供するなどの行為は,児童ポルノに描写された児童の心身に有害な影響を及ぼし続けこのような行為が社会に広がるときには,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに,身体的及び精神的に未熟である児童一般の心身の成長にも重大な影響を与えるため,児童ポルノ処罰法7条もこれらの行為を処罰しているところ,そのうち同条6項は,外国の児童が児童ポルノの描写の対象とされて性的に搾取されている実情があることなどにかんがみ,これに対する国際的な対処が必要であることから,日本国民が同条4項に掲げる行為の目的で児童ポルノを外国に輸入する行為及び外国から輸出する行為をも処罰の対象にしたものと解される。そして,外国からの輸出罪の場合,同条4項に掲げる行為の目的をもって児童ポルノを他の国に搬出するため,その地域に仕向けられた船舶,航空機等の輸送機関にこれを積載ないし搭載させれば,現代の輸送機関の発達等にもかんがみると,児童ポルノが他の国において流通し,ひいてはこれに描写された児童の性的搾取が重ねられるという危険が現実化したものということができる。これに加えて,輸出という概念の日常的な用法や,輸出罪を処罰する各種法令においても積載ないし搭載の時点で既遂に達していると解されていることなどにも照らすと,児童ポルノの外国からの輸出罪は,輸送機関が輸出国の領域を出るのを待つまでもなく,上記のような輸送機関へ積載ないし搭載した時点で既遂に達すると解するのが相当である。

日清食品 本社機能、東京に移転

 奥村も、事件の分布からみると、もう少し東(名古屋〜東京)に動いた方が効率的だと考えています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080303-00000966-san-bus_all
これまで大阪と東京の2本社制を敷いてきたが、グループ戦略の企画立案、実行機能の強化を図るため東京本社に一本化する。

 東京に支店を出すとか、東京の事務所の支店になるとかして、東京の拠点が欲しいところです。

事件捜査へ携帯電話2万台超を解析・07年警察庁まとめ

 メールとか写真とか、どの程度まで解析されるか、弁護人も戦々恐々です。
 民事の立証に使えないかと業者に見積もりを頼んだら、「30万円以上」って言われたことがあります。

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080304STXKC006404032008.html
事件捜査へ携帯電話2万台超を解析・07年警察庁まとめ
 証拠隠滅のため、携帯を破壊したり、メールや画像、通話記録などを消去したりするケースが多く、警察庁は昨年から消去されたデータを復元する手法などをまとめたマニュアルを作成。捜査現場で技能向上のために利用できるようにしており、年間の解析数も今回初めて明らかにした。
 警察庁によると、携帯の解析数は05年には1万2865台、06年は1万7675台だった。