児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp@okumura-tanaka-law.com)

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大口奈良恵 「児童買春罪と、その機会に行われた児童ポルノ製造罪とが、観念的競合ではなく、併合罪であるとした事例 東京高裁H19.11.6」(研修716 p387)

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20071106/1194318437
で速報した判決です。
 判決速報と「研修」で徹底するのに3〜4ヶ月かかるようですが、その間にも観念的競合で処理された事件があります。

 この事件は、どうしても一罪にまとまらない事件もあって、どうせ併合罪加重されるんですが、実際には量刑不当で破棄減軽しているにもかかわらず、東京高裁が必死に観念的競合にならないことを説いているところが注目されます。

 「観念的競合ではなく、併合罪である」というところに、検察がこれまで観念的競合だと考えていた節があります。その割にはほとんど併合罪で起訴してますが。
 東京高裁h17.12.26と違う判断だという評価です。大阪高裁は併合罪説、札幌高裁は観念的競合説なので、そっちも紹介してほしいところです。高裁は東京だけじゃないので。

 筆者は「今後、同種事案に関する裁判例の動向を注視する必要がある」なんて無責任なこと言ってますが、最高裁併合罪説ですよ。刑法の理屈。

大口奈良恵 「児童買春罪と、その機会に行われた児童ポルノ製造罪とが、観念的競合ではなく、併合罪であるとした事例 東京高裁H19.11.6」(研修716 p387)
【一審判決の内容及び弁護人の主張】
一審判決は,前記①,②.④ 及び⑥ につき児童買春罪が(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条).③及び⑤ につき児童ポルノ製造罪が(同法7条2項.1項,2条3項1号.3号),それぞれ成立するとした上で,各罪を併合罪として処断した。
これに対し,弁護人は,前記①及び②の各児童買春罪と③の児童ポルノ製造罪はいずれも観念的競合の関係にあり.③の罪がいわゆるかすがいとなって①ないし③の各罪は科刑上一罪となり,また,④の児童買春罪と⑤の児童ポルノ製造罪も観念的競合の関係にあり,さらに.③ と⑤の各罪は,提供目的に支配された一連の営業的行為であって,包括的一罪であるから,結局,① ないし⑤の各罪は科刑上一罪となり,⑥の児童買春罪との2個の併合罪として処断されるべきであるから,-審判決には法令適用の誤りがあるなどと主張して控訴した。

 東京高裁は開口一番「誰ですか札幌高裁の裁判官は?弁護人は裁判官名を含めて判決書を出して下さい。」と言ってましたね。「札幌の弁護人も奥村ですけど、札幌高裁刑事部は1箇部しかないから裁判体の構成もおわかりでしょう!」というやりとりがありました。


追記
 なお、札幌高裁刑事部には、裁判長以下4人の裁判官がいます。
 現在の顔ぶれ。
 ↓↓

http://www.courts.go.jp/sapporo-h/saiban/tanto/tanto.html
刑事部 矢村宏,市川太志,二宮信吾,水野将徳 毎週火曜,木曜 1号法廷

 観念的競合説の札幌高裁h19.3.8(児童淫行罪-製造罪)と札幌高裁h19.9.4(児童買春罪-製造罪)は裁判長も含めて構成が違います。噂によれば、近々観念的競合説の原判決をまた追認するようです。検察官も含めて、誰もおかしいと思わないのかが不思議です。
 こうなると、特にハメ撮りの児童淫行罪に伴う製造罪をどこに起訴していいのかわからないようで、「児童福祉法違反+児童ポルノ製造」として報道された事件で、製造罪が起訴されていないことが時々あります。甲府とか長野まで探しに行っても製造罪は起訴されてないのです。児童ポルノ犯人は大もうけです。
 児童ポルノ法の立法者が事物管轄に無知なまま、よくかんがえずに児童福祉法違反に密接な行為を通常管轄にした結果です。少年法37条の廃止に少なからず影響しています。

今林寛幸「漫画本が刑法第175条にいう『わいせつ画像』に当たるとされた事例」研修第716号p31

 実在の児童といいつつ、提供罪と陳列罪は包括一罪ですからね。よくわかりません。

第5 わいせつ図画等をめくる近時の動向
1 本判決は,わいせつな漫画本に関する事例であったが,近年では児童ポルノに関する規制に国内外の関心が集まっており,その中でも実在しない児童を題材とした漫画その他のポルノに関する規制が課題の一つとなっている
2 平成11年「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が制定されて,児童ポルノに関する規制が講じられ.平成16年には同法が改正されて,規制が強化された。しかし,同法が児童ポルノを規制対象とするのは.それが児童を性の対象とする風潮を助長することになるのみならず,描写の対象となった児童の人権を害すると考えたことによるとの整理であったことから.現時点では,実在しない児童を措写した漫画等のポルノについては,描写対象となった児童の人権を侵害したとは言えず,同法2条3項の「児童ポルノ」に該当しないと解されている。
3 したがって.現状では,実在する児童をモチーフにしたような漫画については,「児童買春.児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の規制対象となるものの.実在しない児童を措写した漫画については,同法の対象とはならず,刑法175条の「わいせつ物」の対象となるかを検討することとなる。

ちなみに最新号の「研修」って検察庁にあるんですが、絶対見せてくれません。検事に電話して読んでもらったこともあります。国会図書館では少し遅れて自由に閲覧謄写できますけど。

出会い系サイト運営業者に届け出義務 法改正を閣議決定

 常時監視義務なんでしょうか?
 最近は放置すると、書き込んだ人との共同正犯になるという判決も相次いでいるわけで、それに比べると、緩いような感じ。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080229/crm0802290932012-n1.htm
法案では、業者に対し、届け出を罰則付きで義務化する。大人が児童を誘ったり、児童(18歳未満)が異性を誘ったりする書き込みの削除も義務とし、違反を繰り返した場合には是正命令、事業停止命令の行政処分を科す。

 このほか(1)暴力団などの欠格事由を設ける(2)保護者や携帯電話事業者に対し、有害サイトへのアクセスを制限する「フィルタリングソフト」の積極的な利用を努力義務として課す−などの点が改正される。

 改正案がUPされていますが、誘引罪に、対償示さなくても児童との異性交際の相手となるよう誘引することも加わっています(5号誘引罪)。3号・4号から「対償を供与することを示して」を削っても同じですが。
 出会い系では、対償授受が暗黙の常識になっているから、また、対償授受なくても青少年条例違反や性犯罪になるので、児童と大人が誘い合うのを禁止するようです。

現行法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO083.html#1000000000002000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000
第六条  何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、次に掲げる行為をしてはならない。
一  児童を性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、他人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)の相手方となるように誘引すること。
二  人(児童を除く。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。
三  対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。
四  対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。

改正案
「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律の一部を改正する法律案」について
http://www.npa.go.jp/safetylife/index.htm
http://www.npa.go.jp/safetylife/cyber1/02_houritsuan.pdf
第六条  何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、次に掲げる行為 (以下「禁止誘引行為」という)をしてはならない。
一  児童を性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、他人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)の相手方となるように誘引すること。二  人(児童を除く。第五号において同じ。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。
三  対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。
四  対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。
五 前各号に掲げるもののほか、児童を異性交際の相手方となるように誘引し、又は人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。

(インターネット異性紹介事業者等の責務)
第三条インターネット異性紹介事業者は、その行うインターネット異性紹介事業に関しこの法律その他の法令の規定を遵守するとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に努めなければならない。
2 インターネット異性紹介事業に必要な電気通信役務電気通信事業法第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。) を提供する事業者(次項において「役務提供事業者」という。) は、児童の使用に係る通信端末機器による電気通信についてインターネット異性紹介事業を利用するための電気通信の自動利用制限( 電気通信を自動的に選別して制限することをいう。以下この項及び次条において同じ。)を行う役務又は当該電気通信の自動利用制限を行う機能を有するソフトウェアを提供することその他の措置により児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資するよう努めなければならない。


( 児童の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止措置)
第十二条
インターネット異性紹介事業者は、その行うインターネット異性紹介事業を利用して禁止誘引行為が行われていることを知ったときは、速やかに、当該禁止誘引行為に係る異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができないようにするための措置をとらなければならない。
2 前項に定めるもののほか、インターネット異性紹介事業者は、その行うインターネット異性紹介事業を利用して行われる禁止誘引行為その他の児童の健全な育成にを及ぼす行為を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない

(指示)
十三条インターネット異性紹介事業者がその行うインターネット異性紹介事業に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令又は他の法令の規定に違反したと認める場合において、当該違反行為が児童の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該違反行為が行われた時における当該インターネット異性紹介事業者の事務所の所在地を管轄する公安委員会は、当該インターネット異性紹介事業者に対し、児童の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要な指示をすることができる。

[性犯罪][不正アクセス] [ハイテク犯罪・サイバー犯罪]

 児童ポルノの被害者数は例によって人物特定できた人数ですから、統計はあてになりません。
 重いのは不正アクセスを手段とするオークションサイトの乗っ取りによる詐欺でしょうね。借名口座に入金させても、お金を引き出すところから足がつくと思います。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080229-00000017-jij-soci
罪種別では、詐欺が1512件で、不正アクセス禁止法違反が1442件、児童買春551件、青少年保護育成条例違反230件、児童ポルノ192件など。
 不正アクセス事件では、本物に似せたサイトにID番号などを入力させて盗み取る「フィッシング」の手口が5.3倍の1157件と急増した。
 事件の容疑者126人のうち、10、20代が各39人と最も多く、最年少は14歳。動機は「不正に金を得るため」(1186件)が目立ち、1178件はネットオークションを利用していた。 

山本和昭 「いわゆる「第3行為によるかすがい作用」をめぐる若干の問題点」専修ロージャナール 3[2008.1.21発行]

 ドイツの理論まで引き合いに出して検討していただいています。
 東京高裁H17.12.26の評釈ですが、児童淫行罪と製造罪は観念的競合でいいそうです。

判旨に賛成である。
第1 はじめに
1 本判例とかすがい作用
かすがい作用とは.A罪とB罪とが併合罪の関係にありながら・第3のⅩ罪がA罪およびB罪と観念的競合または牽- の関係にある場合,3罪を全体として一罪の取扱いをすることをいう。いわば「解釈上作り出された科刑上一罪」ということになる。
・・・
本件では,かすがいⅩが起訴されなかったため,AとBとの併合罪の処理で量刑が行われたわけであるが,実体としてかすがい作用が働いていたのであれば.運用としてその場合の処断刑を超えない範囲での量刑をすべきである。したがって,設例では.3個の傷害のみが起訴されても,住居侵入・傷害の一罪処理の処断刑の範囲内に納めるべきであり,本件では,Aの刑,Bの刑の合計が,かすがい一罪において適用される児童淫行罪の法定刑の範囲に納まるよう刑法50条等を活用しつつ具体的運用により決定しかなればならない。

 量刑に影響するのなら、弁護人もかすがいになりそうな訴因外の事実に注意しないとだめですね。

児童ポルノ遠い根絶 禁止法施行から8年 5年で摘発3.4倍 個人所持規制が課題

 製造・流通については被害児童が知らない限り、権利侵害はないって、検事さんが書いてますね。冷酷に聞こえます。奥村は個人的法益説なんですけど。

http://news.goo.ne.jp/article/nishinippon/nation/20080229_evn_003-nnp.html
児童ポルノ遠い根絶 禁止法施行から8年 5年で摘発3.4倍 個人所持規制が課題
 ■ネットに流出
 「そのことを告げると、少女の顔から、みるみる血の気が引いた」
 1月下旬、福岡県警と大阪府警が摘発した児童ポルノ製造事件。大分県内の少女は福岡県警の捜査員から、自分の画像がネット上で売買されていることを知らされると、絶句した。
 少女は17歳だった2006年6月、出会い系サイトで知り合った大分市内の男とホテルに行き、「個人の趣味だから」との言葉を信じて、3万円を受け取り性行為の撮影に応じた。しかし、男はこの映像をインターネットオークションで販売。児童買春・ポルノ禁止法違反の罪で起訴されたが、いったんネット上に流れ出た映像の消去は困難で「今も少女の人格を踏みにじっている」(捜査員)。

子供の携帯電話、「本当は持たせたくないが防犯のために」

 持たせるところで絞って、フィルタリングで絞って・・・といろいろやれば、効果あるんじゃないかと期待しています。

http://japan.internet.com/wmnews/20080229/3.html
自由記述として中学生以下の子供が携帯電話を持つことについての意見を聞いたところ、「本当は持たせたくないが、犯罪から守るために必要だと思う」「親がマナーをちゃんと教えて管理すべきだと思う」「イジメや有害サイト、携帯依存症、人とのコミュニケーションが苦手になる等の不安がある」といった意見が多く挙がった。

マナーや有害サイト、コミュニケーションの問題で、中学生以下の子供が携帯電話を持つことについて「賛成」と考えるユーザーの割合が減少したと思われる。

ネット上の名誉棄損に新判断 東京地裁で無罪判決

 ネットの名誉毀損については、伝搬性が強いので厳しくする方向もあるんですが、違法性阻却事由を拡大する方向にも広がるんですかね。判決書を見ないとわかりません。

http://www.asahi.com/digital/internet/TKY200802290352.html?ref=goo
ネット上の名誉棄損に新判断 東京地裁で無罪判決
2008年02月29日
 インターネット上の書き込みが刑法の名誉棄損罪に当たるかどうかをめぐり、東京地裁は29日にあった判決で「ネットならではの基準で見極めるべきだ」とする判断を示した。波床(はとこ)昌則裁判長は会社員の男性(36)の公判で「男性はネット利用者として要求される水準を満たす調査をし、書き込んだ事実を真実だと信じていたので、犯罪は成立しない」などと述べ、無罪判決(求刑罰金30万円)を言い渡した。
 弁護人によると、ネット上の書き込みをめぐる名誉棄損で無罪とされたケースは初めてという。判決は、一般市民が発信でき、情報の信用性の判断も利用者に求められるという実情を踏まえ、ネットを舞台とした「表現の自由」をめぐる新たな判断を示した形だ。
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 29日の判決は、書き込みの内容について「同社が宗教団体と緊密な関係にあるとは認められない」とし、真実ではないと認定。真実だと信じた確実な資料や証拠もなく「従来の名誉棄損罪の基準では無罪となることはない」と述べた。
 その一方でネット上の表現行為については、中傷を受けた被害者は容易に加害者に反論できる▽ネット上で発信した情報の信頼性は一般的に低いと受け止められている――と指摘。発信者に公共の利益を図る目的などがある場合、「真実でないことを知っていて書き込んだり、ネットの個人利用者なりの調査をせずに発信したりしたときに罪に問われる」とした。
 その上で「男性はネットの個人利用者としての情報収集もした上で、内容が真実だと信じていた」と述べ、刑事責任は問えないと結論づけた。