児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

求刑・判決が3年以上の場合は罪数処理を疑え

 法令適用が定まらないうちに、最近、そういう悪質な事件も増えてきました。5年とか7年とか。
 そういうときは、罪数処理をチェックしてください。いろんな裁判例があるので、検察官・裁判所の反対説を採った裁判例が必ずあります。
 どうせ刑務所に入るにしても、法令適用くらいは平等にやってもらいましょう。
 

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第4条(児童買春)
児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
第7条(児童ポルノ提供等)
児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

<県立高指導者のわいせつ>被告「エッチをすれば音色よくなる」−−第2回公判

 なんか余罪多いですね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000009-maiall-soci
部活動で指導していた県立高校の女子生徒にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反(わいせつ行為)の罪に問われた被告(33)の第2回公判が26日、甲府家裁(渡辺康裁判官)であり、検察側は「エッチをすれば音色が良くなる」と被告が生徒をだまし、生徒計13人にみだらな行為をしたことを明らかにした。

 これ、児童ポルノ製造も起訴されている可能性がありますが、管轄違だと思います。
 児童淫行罪と並行して行われた児童ポルノ製造行為は地裁家裁のどちらに起訴しても、判例違反になります。裁判所がこんな状況で重い量刑をされる被告人は,違法な訴訟手続で審理されているおそれがあって、気の毒です。
 また、そういう状況であることを知って、裁判所の量刑判断が鈍ることがあっても法益保護に欠けることになっていけませんよね。

併合罪
東京高裁h19.11.6
なお,本件と同様に撮影を伴う児童買春の事案において,児童買春罪と3項製造罪が観念的競合の関係にあるとした裁判例は少なくないようであり,3項製造罪に.ついては,「児童に……姿態をとらせ(る)、」行為もその実行行為に含まれるのか否かという問題が存するのであるが,両罪を併合罪関係にあると解する余地もあるように思われる。
また,撮影者が淫行の相手方となる児童淫行罪(児童福祉法60条1項,34条1項6号)の事案についても,児童淫行罪と2項製造罪や3項製造罪が観念的競合の関係にあるとした裁判例も少なくないようであるが,これらについてもなお検討が必要のように思われる。少なくとも,これらの裁判例の結論を動かし難いものとして,本件の児童買春罪と2項製造罪の罪数関係を論ずべきではないであろう。

阪高裁h18.10.11
原判示の児童に淫行をさせる罪に係る行為である被告人らと児童との性交等とその場面を撮影した行為とは,時間的には重なっているものの,法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察の下では,社会通念上1個のものと評価することはできないから,両者は併合罪の関係にあるというべきである。論旨はその前提を欠き,理由がない。

観念的競合説
東京高裁h17.12.26
他方,本件児童ポルノ製造罪のなかには,それ自体児童淫行罪に該当すると思われるものがある。例えば,性交自体を撮影している場合である(別紙一覧表番号1の一部,同番号2及び3)。同罪と当該児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあり,また,その児童淫行発と別件淫行罪とは包括的一罪となると解されるから(同一児童に対する複数回の淫行行為は,併合罪ではなく,包括的一罪と解するのが,判例実務の一般である。),かすがいの現象を認めるのであれば,全体として一罪となり,当該児童ポルノ製造罪については,別件淫行罪と併せて,家庭裁判所に起訴すべきことになる。

 天下の東京高裁が迷うのは、児童ポルノ罪の立法者が他罪との関係を考えなかったためです。

<光母子殺害>弁護士は懲戒せず 東京弁護士会が議決

 早いなあ。
 控訴しただけで憤慨される被害者はいらっしゃいますというか、たいてい憤慨されますね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000047-mai-soci
山口県光市で99年に起きた母子殺害事件差し戻し控訴審弁護団(約20人)の弁護士に対して、全国で懲戒請求が相次いだ問題で、東京弁護士会が「正当な刑事弁護活動の範囲内で、懲戒しない」と議決していたことが分かった。 
 同弁護士会が所属弁護士1人について調査した結果をまとめた22日付の議決書によると、この弁護士は「広島高裁の公判で非常識な主張をし、被害者の尊厳を傷つけた」などとして懲戒請求されていた。これに対し弁護士会は「社会全体から指弾されている被告であっても、被告の弁明を受け止めて法的主張をするのは正当な弁護活動。仮に関係者の感情が傷つけられても正当性は変わらない」と退けた。
 懲戒請求を受けていた弁護士は「当然の結論だが、早く議決していただいた弁護士会には感謝したい」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000075-jij-soci
 山口県光市母子殺害事件の差し戻し控訴審弁護団に多数の懲戒請求が出されていた問題で、東京弁護士会は27日までに、同会に所属する弁護士について「正当な弁護活動で、懲戒処分には当たらない」と議決した。

強制わいせつ罪と3項製造罪を観念的競合にした判決は2件確認しました。

 パターンとしては多い事件なので、もっとあるかもしれませんね。
 ハメ撮り一罪説じゃなくて、触っただけの事案。
 両方控訴されているようですが、高裁は追認するんでしょうか?
 観念的競合説だと、3項製造罪のおかげで、常習的強制わいせつ犯人は何罪やっても処断刑期が1罪分になるという恩恵を受けることになります。議員立法してくれた議員の先生方にお礼を言わなくては。

「まずは法テラスに相談したら」

 法テラスは周知されているようですが、ストーカー相談は最終的には警察ですよね。

http://www.asahi.com/national/update/1126/TKY200711260305.html
26日に記者会見した杉浦清志副学長によると、智子さんは15日午後6時ごろ、ゼミの指導教官だった杉浦副学長を大学に訪ね、「中原さんが数日前、職場に来た。教育実習の単位が取れたと言われたが、もう来ないでほしいと言った。不安や身の危険を感じる」と相談した。杉浦副学長は他の教官らと相談して翌16日、「まずは法テラスに相談したら」と智子さんにメールしたという。

http://www.police.pref.hokkaido.jp/info/soumu/soudanka/hot-top.html
安全で安心に生活するための相談案内
・ストーカーや家庭内暴力、子どもの非行などで不安や危険を感じている方
・どこに相談してよいかわからずにお悩みの方
・警察業務に関するご意見、ご要望
公益通報者保護法に基づく「公益通報
など、専門の相談員がお答えします。

<児童ポルノ>広島県立高教諭がブログに掲載…逮捕

 製造罪が来ると、怖いですね。
 会員もガクブルというところでしょうか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000133-jij-soci
調べによると、容疑者は児童ポルノ画像などを東京や大阪にあるサーバーコンピューターに保存。その上で、10月7日ごろに自身のHPに掲載した疑い。また、児童ポルノなどわいせつ画像を持ち寄るマニア向けのサイトを運営、会員数も約300人に上るという。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000123-mai-soci
容疑者は10月7日午前9時40分ごろ、小学生くらいの裸の女児の画像1枚と、女性の下半身を露骨に写した画像7枚を、自身が管理するブログやホームページに掲載した疑い。ブログには、女児に性的虐待をする内容の文章などが掲載されていた。
 昨年から今年にかけて、県警に「児童虐待の恐れがあるブログがあり、広島の地名が出てくる」などの情報が複数寄せられていた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071127-00000986-san-soci
容疑者は約5年前から偽名や他人名義でホームページなどを開設し、わいせつ画像を掲載。画像には容疑者自身が撮影したものも含まれているといい、県警は余罪を調べている。

 公然陳列目的製造罪と陳列罪は牽連犯にして欲しいところです。
 陳列罪は、複数被害者でも包括一罪なので、そこでかすがいになる。

 さらに、被撮影者が13歳未満の場合は、裸の撮影行為だけで強制わいせつ罪も立ちますが、最近の地裁判決によれば、製造罪とは観念的競合だそうですから、
  被害児童A 強制わいせつ→陳列目的製造→公然陳列
  被害児童B 強制わいせつ→陳列目的製造→公然陳列
  被害児童C 強制わいせつ→陳列目的製造→公然陳列
は、公然陳列が包括一罪となることでかすがいされて、結局、科刑上一罪になって、犯情が最も重い被害児童×に対する強制わいせつの刑で処断されることになります。