児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

[児童ポルノ・児童買春]横浜地検は不開示→準抗告へ

 映画監督の製造事件、元野球選手の販売事件の判決書が全部不開示となりましたので、準抗告します。
 不開示の理由は告げられていません。
 ここではわいせつ図画罪が含まれると不開示になります。
 保管検察官は表向き「郵送では受けない」とか言っていますが、法定の不許可事由ではないし、書留で郵送された閲覧申請書を受理しています。

追記
 準抗告してから、横浜地検から電話。

 閲覧申請書は郵送では受け付けないのが横浜地検の鉄則。人違い防止のため。
 奥村弁護士だけに郵送での申請を認める訳にはいかない。
 奥村弁護士からの申請書は書留で郵送されて、「対応 不可」と回答したが、閲覧申請書はまだ受け付けていない。送り返すのを忘れていただけだ。

とのこと。
 刑事確定訴訟記録法上、保管検察官の対応は

  1. 全部許可
  2. 一部許可=一部不許可
  3. 全部不許可(法定の不許可理由)

しかない。 

刑事確定訴訟記録法施行規則
(保管記録の閲覧の請求等)
第八条  法第四条第一項 又は第三項 の保管記録の閲覧の請求をしようとする者は、保管記録閲覧請求書(様式第三号)を保管検察官に提出しなければならない。
2  前項の場合において、保管検察官は、必要があると認めるときは、訴訟関係人であること又は閲覧につき正当な理由があることを明らかにすべき資料の提出を求めることができる。
3  保管検察官は、保管記録について閲覧の請求があつた場合において、請求に係る保管記録を閲覧させないときは、その旨及びその理由を書面により請求をした者に通知するものとする。

 なお、横浜地検は先に「事件特定表」だけを送らせてそれに対して閲覧の可否を通知してくる。これについては、理由も必要性も添付していないので

横浜地裁横須賀支部決定平成17年12月6日は
2 そこで検討するに,刑事確定訴訟記録法4条1項に基づいて,刑事確定記録の閲覧の請求をするためには,所定の様式の保管記録閲覧請求書を保管検察官に提出しなければならない(刑事確定訴訟記録法施行規則8条1項)ところ,一件記録によれば,申立人は,同支部保管検察官に対し,事件特定表と題する書面を提出したのみで,所定の様式の保管記録閲覧請求書を提出しておらず,刑事確定訴訟記録法4条1項に基づく正式な閲覧請求をしていないこと,そのため,平成17年11月21日付け「閲覧可能記録の特定について」と題する書面は,申立人の閲覧請求を不許可とする同支部保管検察官の処分を告知するものではないことが認められる。
そうすると,申立人は,刑事確定訴訟記録法4条1項の規定により閲覧を請求した者には当たらず,また,準抗告の対象となるべき同法8条1項所定の保管検察官の閲覧に関する処分がないから,申立人がした本件準抗告の申立ては,不適法なものというべきである。

ということになる。
 今回の場合は、検察庁所定の用紙を用いて、閲覧理由を記して書留郵便で閲覧申請をしているのであるから、「正式な閲覧請求」が存在すること、それに対して保管検察官が理由も通知せずに不許可にしたことは明らかです。

取材目的で児童買春周旋を依頼した者の責任

 事案の概要

 フリージャーナリストが取材目的で、児童買春の周旋業者に、40ドルを払って、児童2名を紹介させ、児童と会った。
 児童とは児童買春行為はなく、食事して取材。
 国際子ども権利センターのスタッフも同行して、費用負担。

こんなことすると、周旋者は周旋罪既遂です。重い法定刑。

第5条(児童買春周旋)
1児童買春の周旋をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、七年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

 周旋を頼んだ方は、児童買春の対価として40ドルを払っているから、「対償供与」はあって、児童買春罪の着手はある。但し性交等していないから未遂。
 周旋を頼んだ行為も周旋罪の共犯になりうる。

 このNGOでは「救うべき児童を救わなかったこと」が問題とされているようですが、これはほとんど犯罪です。

http://blog.goo.ne.jp/jicrc/e/5f9b85e8a3cd15c8b2a8be05dd948cfd
 この度、2月10日づけで投稿されていたカンボジアだよりは以下の理由により削除しました。
 ここに投稿されていた記事は、国際子ども権利センターのスタッフが客を装って、買春宿の子ども買春の実態を調べた内容に関するものでした。
 カンボジアでは、NGOスタッフが客を装って子どもが買春や人身売買の被害にあっていないかを調査することはあります。しかし、国際子ども権利センターは、子ども買春など子どもの権利侵害をなくすために、カンボジアの司法執行力の強化を求めています。それゆえ、たとえ、子ども買春の実態を知るためであろうと、カンボジアの司法執行機能が弱いことを利用するようなかたちで、買春宿から少女を外に連れ出すことは国際子ども権利センターの使命と矛盾するため、このような調査は慎みむべきでした。
カンボジア事務所 共同代表 甲斐田万智子

追記 
 未遂の教唆という論点ではありません。
 周旋罪は既遂です。

警察庁執務資料
3 児童買春周旋の罪(第5条)
(1)行為
児童買春の周旋をすること。
「児童買春の周旋」とは、児童買春をしようとする者とその相手方となろうとする児童との間に立って児童買春が行われるように仲介することをいう。
第3中2(2)も参照すること。なお、売春防止法第6条の「周旋」と基本的に同義である。
(2)既遂時期
本罪は、児童買春をしようとする者とその相手方となろうとする児童の依頼又は承諾に基づき、両者を引き合わせるなど、両者の間で児童買春が行われるように仲介する行為をすることによって成立し、かつ既遂に達する。引き合わせ行為等が行われた以上、両者の間で児童買春の条件がすべて確定していなくても、また、両者間で最終的に児童買春が行われなかったとしても、本罪が成立する。
(3)児童買春の周旋をすることを業とした(第2項)「業とした」とは、反復継続して行う意思をもってすることをいい、この意思がある以上、現実に周旋が1回限りでも成立するし、周旋が本業であることも必要ではない。
(4)他罪との関係
売春防止法第6条第1項との関係
児童買春の周旋をした場合には、事案によっては一個の行為で本罪と売春防止法第6(条第1項の売春周旋罪の両罪が成立する(両罪の関係は観念的競合となる)ことがあり得る。
児童福祉法第34条第1項第6号との関係児童福祉法第34条第1項第6号の「児童に淫行をさせる行為」をした場合には、事案によっては一個の行為で本罪と児童福祉法第34条第1項第6号違反の両罪が成立する(両罪の関係は観念的競合となる)ことがあり得る。

情報流出:ウィニーネットワークの闇/中 漏えい元の処罰に限界

 「IT(情報技術)問題に詳しい奥村徹弁護士」というのは返上したいですが、個々の被害者の救済については、現行制度では悲観的だというコメントを述べています。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/archive/news/2006/03/22/20060322ddm002040045000c.html
流出元の捜査員の処分について、警察幹部は厳しい方針で臨むことを示唆しており、懲戒処分は必至とみられる。しかし、刑事責任を問うことは難しいという。法務省の幹部はこう説明する。
 「故意に情報を流出させたのならば国家公務員法地方公務員法守秘義務違反になる。だがこれまで判明したのはいずれも過失。過失犯として処罰する法律はない」

被害児童と示談して減軽された事例(広島高裁岡山支部h18.3.22)

 偽札捕まれた児童に、改めて真正な紙幣を以て示談したんですよ。
 これを決して「児童買春代金の後払い」と言う勿かれ。ちゃんと減軽されるんだよ。
 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060322-00000042-mai-soci
安原浩裁判長は「立場をわきまえずハレンチ極まりない犯行で実刑は免れないが、被害女性との示談が成立している」などとして、1審の懲役3年(求刑懲役4年6月)を減軽し、懲役2年4月を言い渡した。

 判決主文の刑期では8ヶ月しか短縮されていないように見えますが、原判決後の未決勾留日数も法定通算されるので、刑期は1年以上短縮されます。

通貨偽造罪の情状としても、法益は社会的法益だとしても、実害(偽札をつかまされた人)があれば補填しておくことは有効です。

 謝るのは早いほうがいいに決まっていて、どうして一審段階で気づかなかったのかと思います。


 こういう場合、被害児童からすれば、
    金も払ってもらわずに性交等した
    許せない 騙された
ということで被害感情が強いのが通常です。
 準強姦のように。

 そこで控訴理由では
   対償は真券で払うという点で錯誤がある。
   偽札で払う=真実は払うつもりが無かったのだから
   対償供与の約束がなかった
   児童買春罪は成立しない
と主張すべきだと思います。


追記

1万円札偽造元教諭 懲役2年4月に減刑 高裁支部判決=岡山
2006.03.23  読売新聞社 
裁判長は「偽造した通貨は稚拙で流通もしておらず、少女らも軽率だった」として、懲役3年とした1審・地裁判決を破棄し、同2年4月の判決を言い渡した。
 買春に応じた女子生徒らからは寛大な処分を求める嘆願書が提出されていた。

 岡山では未だに「被害児童の帰責性」が通用するようです。間違っていると思いますが、いまだにこういう判決が出る以上、弁護人としては「被害児童の帰責性」を指摘せざるを得ない。
 判例に翻弄されています。