児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

3号ポルノ製造罪の罪となるべき事実に、「全裸」「半裸」などを摘示していないもの(高松地裁r2.9.17 実刑)

 法令適用によれば3号でも起訴されていますが、「A(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,令和2年2月8日午前11時頃から同日午後4時34分頃までの間に,前記cホテルにおいて,同児童に被告人と性交する等の姿態をとらせ,これらをデジタルカメラで動画又は静止画として撮影し,その動画データ1点及び静止画データ2点を同カメラに装着した電磁的記録媒体であるSDカードに記録させて保存した上」では、1号(児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態)は充たしますが、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり」にはなりません。着衣の性交もありうるからです。「等」ではどういう姿態かわかりません。
 控訴すれば理由不備で破棄されます。名古屋高裁と仙台高裁に判決があります。
 重い罪ばっかりに気をとられて、こういうことになることがあります。成立しない罪で服役することになるので弁護人は判決書を点検してください。

裁判年月日 令和 2年 9月17日 裁判所名 高松地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(わ)118号 ・ 令2(わ)133号 ・ 令2(わ)208号
事件名 児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2020WLJPCA09176006

 上記の者に対する児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官久能裕斗及び弁護人岡朋樹(国選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
 
主文

 
 
理由

 (罪となるべき事実)
 被告人は
第1(令和2年4月14日付け起訴状記載の公訴事実(訴因変更後のもの))
 a中学校の教諭として,同校のb部の顧問をしていたものであるが,同校の生徒であり,同部の部員であったA(当時14歳ないし15歳。以下「A」という。)が満18歳に満たない児童であることを知りながら,その立場を利用し
 1 平成31年2月2日,●●●同校●●●室において,A(当時14歳)に自己の陰茎を口淫させる性交類似行為をさせ
 2 令和2年2月8日午前11時頃から同日午後4時34分頃までの間に,高松市〈以下省略〉cホテルにおいて,A(当時15歳)に自己を相手に性交させ
 もって児童に淫行させる行為をし
第2(令和2年4月24日付け起訴状記載の公訴事実)
 A(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,平成31年2月2日,前記中学校において,同児童に被告人の陰茎を口淫する等の姿態をとらせ,これらをデジタルカメラで動画又は静止画として撮影し,その動画データ1点及び静止画データ3点を同カメラに装着した電磁的記録媒体であるSDカードに記録させて保存した上,同日頃から同月3日頃までの間に,高松市〈以下省略〉の被告人方において,同動画データ1点及び同静止画データ3点を電磁的記録媒体であるハードディスク内に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
第3(令和2年6月26日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 A(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,令和2年2月8日午前11時頃から同日午後4時34分頃までの間に,前記cホテルにおいて,同児童に被告人と性交する等の姿態をとらせ,これらをデジタルカメラで動画又は静止画として撮影し,その動画データ1点及び静止画データ2点を同カメラに装着した電磁的記録媒体であるSDカードに記録させて保存した上,同日頃から同月9日頃までの間に,前記被告人方において,同動画データ1点及び同静止画データ2点を電磁的記録媒体であるハードディスク内に記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
第4(令和2年6月26日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 自己の性的好奇心を満たす目的で,令和2年3月24日,高松市〈以下省略〉の駐車場に駐車中の自動車内において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ4点及び静止画データ69点を記録した児童ポルノであるハードディスク1台を所持し
 たものである。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1の所為 包括して児童福祉法60条1項,34条1項6号
 判示第2及び第3の各所為 いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2条3項1号,3号
 判示第4の所為 同法律7条1項前段,2条3項1号,2号,3号
 刑種の選択 いずれも懲役刑選択
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
 訴訟費用 刑事訴訟法181条1項ただし書
 (量刑の理由)
 本件は,①中学校の教諭であった被告人が,顧問として指導していた部活動の部員であった当時14歳ないし15歳の児童Aに対し,その立場を利用して,平成31年2月に同中学校内で自己の陰茎を口淫させ,令和2年2月にホテルで自己を相手に性交させ,もって児童に淫行させ(判示第1),②そのいずれの際にもその性交等の場面を動画及び静止画として撮影して児童ポルノを製造し(判示第2及び第3),③撮影当時17歳のBの性交等の動画及び静止画データを所持した(判示第4)という事案である。

 (求刑 懲役3年)
 高松地方裁判所刑事部
 (裁判官)

刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。

名古屋高裁H23.7.5
 論旨は,要するに,上記各児童ポルノ製造の事実に関し,(1)各起訴状の公訴事実には,被告人が各児童にとらせた姿態につき「被告人と性交を行う姿態等」(平成22年5月26日付け起訴状公訴事実)又は「性交に係る姿態等」(同年6月1日付け起訴状公訴事実第2,第4,同月29日付け起訴状公訴事実第2)とのみ記載されており,「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態」(児童ポルノ処罰法2条3項1号)のほかにいかなる姿態をとらせて撮影したとして起訴しているのか不明瞭であり,各起訴状の罪名及び罰条においても,「児童ポルノ処罰法7条3項,2条3項」とのみ記載されて2条3項各号の記載がないことからすると,訴因が不特定であるというほかなく,これを看過して実体判決をした原審の訴訟手続には法令違反がある,(2)原判決の各犯罪事実には,各児童に「被告人と性交を行う姿態等」をとらせ,これを撮影して児童ポルノを作成したことは示されているが,法令の適用の項で摘示している児童ポルノ処罰法2条3項3号に該当する具体的事実が示されていないから,原判決には理由不備の違法がある,というのである。
 まず,(1)の点について検討すると,各起訴状の公訴事実における犯罪の相手方,日時・場所等の記載は,他の犯罪と識別するに十分なものであり,これによって被告人側の防御の範囲も画されているといえるし,また,各公訴事実の「被告人と性交を行う姿態」あるいは「性交に係る姿態」の記載の直後にいずれも「等」と記載され,罪名及び罰条において,児童ポルノ処罰法7条3項,2条3項と記載され同項の何号であるかが明示されていない,という各起訴状の記載内容をみれば,各児童に同法2条3項1号のみならず2号あるいは3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した事実をも本件各訴因に含まれ得る趣旨を読み取ることができることを併せ考えれば,同項の何号かの明示を欠くことによって,被告人側に対する不意打ちの危険が生じその防御に支障を来すなどともいえない。そうすると,本件各訴因が特定されていないともいえないから,公訴棄却せずに実体判決をした原審の訴訟手続に法令違反はない。
 次に,(2)の点について検討すると,原判決は,犯罪事実第1の2,第2の2,第3の2につき,法令の適用の項において,いずれも児童ポルノ処罰法7条3項,l項,2条3項1号,3号に該当すると判示しているのであるから,各犯罪事実において,同法2条3項1号のみならず3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した旨の具体的事実をも摘示する必要があるというべきである。しかるに,原判決は,上記各犯罪事実において,各児童に「被告人と性交を行う姿態等」をとらせた上,これを写真撮影し,その静止画を記録媒体に記録させて描写し,もって「児童を相手方とする性交に係る児童の姿態等」を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した旨を摘示するにとどまり,児童ポルノ処罰法2条3項3号に該当する姿態をとらせて児童ポルノを製造した旨の具体的事実を摘示していないのであるから,原判決には,上記各事実に関し,罪となるべき事実の記載に理由の不備があるといわざるを得ない。
 論旨はこの点において理由がある。そして,原判決は,原判示第1の2,第2の2,第3の2の各児童ポルノ製造罪とその余の各罪とが刑法45条前段の併合罪の関係にあるものとして1個の刑を科しているから,結局,その余の控訴趣意について判断するまでもなく,原判決は全部につき破棄を免れない。
2 破棄自判
 よって,刑訴法397条1項,378条4号により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)

仙台高裁R2.6.25
第3 理由不備の論旨について
1論旨は,「原判決は,罪となるべき事実の第2において,児童ポルノ法2条3項3号に該当する事実を記載していないから,原判決は判決に理由を附さない違法がある」と主張する。
2上記の公訴事実について有罪の言渡しをする場合,罪となるべき事実としては具体的な事実を示さなければならない。原判決は,「被害者に,被告人と性交する姿態等をとらせ,これを被告人のスマートフォンの撮影機能を用いて撮影し,その撮影データ16点を,同スマートフォン本体に内蔵された記録装置に記録させて保存し」と示すにとどまり,児童ポルノ法2条3項3号に該当する事実を示していない。上記記載の「被告人と性交する姿態等」の「等」の中に,同法2条3項3号に該当する事実が含まれていると解するのは困難である。原判決は,有罪の言渡しに必要な罪となるべき事実の記載を欠き,判決に理由を附さない違法があるといわざるを得ない。 ~
論旨は理由がある。原判決は,原判示第2の児童ポルノ製造罪と第1の青少年健全育成条例違反罪とが刑法45条前段の併合罪の関係にあるものとして1個の刑を科しているから,結局,その余の控訴趣意について判断するまでもなく,原判決は全部につき破棄を免れない。
第4破棄自判
よって,刑訴法397条1項,378条4号により原判決を破棄し,同法400条ただし書により,当裁判所において更に判決する。
(罪となるべき事実)

追記
 控訴審は量刑不当で破棄して、こっそりと罪となるべき事実を修正して理由不備を隠しましたが、理由不備だけで破棄されるべき事案です
 理由不備で破棄されるので、量刑不当に対する判断は不要です。

刑事控訴審の手続及び判決書の実際(小林充・法曹会・平成12年)
P78
数個の控訴理由に対する判断順序
控訴理由(職権による破棄事由を含む。)には論理的な先後関係があり、論理的に後順位のものは先順位のものに対して予備的な判断事項であり、先順位の控訴理由が認められるときは後順位のそれに対して判断を示す必要はない(あるいは判断すべきでない。〕と解するのが一般である(最決昭三〇・八・二裁判集一O八・一一、最決昭三三・一一・七七刑集士了一五・三五一三)。もっとも、控訴棄却の判決をする場合には、主張された控訴理由がすべて存在しないことを明らかにするため(法三九六)、それらのすべてについて調査判断を加えることが必要であるから、判断の順序ということも正面からは問題にならない。しかし、この場合でも、原則的には控訴理由の論理的順序に従うのが適切であろう。
ところで、控訴理由の論理的な先後関係としては、
一般的には、①広義の訴訟手続の法令違反〈法三七七ないし三七九)、②事実誤認(法三八二。法三八三①の再審請求事由もこれと同視してよい。)、③法令適用の誤り(法380)、④量刑不当(法三八一)の順序にあるといってよい。事実誤認は訴訟手続が適法に行われたことを論理的に前提とし、その適法な訴訟手続の下における事実認定の当否を問題にするものであり、また法令適用の誤りは訴訟手続が適法に行われ、かっそのような適法な訴訟手続のドにおける事実認定に誤りのないことを論理的に前提とし、さらに量刑不当はこれに加えて適用された法令においても誤りのないことを論理的に前提としていると一般には解されるからである
P82
カ先順位の控訴理由が認められるときは後順位の控訴理由に対しては調査判断を要しない。しかし、破棄理由となった控訴趣意以外の控訴趣意に対しても必要に応じて調査判断をするのが適切なこともあろう。
例えば、自白の任意性の欠如を理由に有罪の原判決を破棄して無罪の白判をしたが、その理由中で、自白の任意性が認められるとしても被告人の有罪を認定できないとする事実誤認の控訴趣意に対しでも判断を示すなどである。

高松高等裁判所
令和2年(う)第137号
令和03年01月21日

 上記の者に対する児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、令和2年9月17日高松地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官岡本安弘及び弁護人岡朋樹(国選)出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役3年に処する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。

理由
 本件控訴の趣意は、量刑不当の主張であり、刑の執行を猶予すべきであるというのである。
 本件は、中学校の教諭であった被告人が、(1)同校の生徒で、自己が顧問をする部活動の部員であった被害児童(以下「A」という。)が満18歳に満たない児童であることを知りながら、その立場を利用し、〈1〉平成31年2月に同校内で当時14歳のAに自己の陰茎を口淫させ(原判示第1の1)、〈2〉令和2年2月にホテルで当時15歳のAに自己を相手に性交させ(原判示第1の2)、もって児童に淫行させる行為をし、(2)(1)の各行為の際に、Aの口淫又は性交等する等の姿態をデジタルカメラで撮影し、その動画データ等をハードディスク等に記録して保存させて、それぞれ児童ポルノを製造し(原判示第2及び第3)、(3)令和2年3月、駐車中の自動車内において、児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態等を描写した動画データ等を記録した児童ポルノであるハードディスク1台を所持した(原判示第4)という事案である。
 原判決は、被告人が中学校の教諭として、その生徒であるAを指導し、健全な成長を支えるべき立場にありながら、部活動の指導を通じてAが被告人を尊敬していたことや、その判断力の未熟さに乗じ、Aに対する影響力を行使して、性交等の淫行をさせたもので、教師としてあるまじき卑劣な犯行であること、被告人は、平成30年11月頃からAの裸の写真を撮影するようになって、原判示第1の1の犯行に至り、その後は、毎月のように性交等を重ねる中で原判示第1の2の犯行に至ったもので、Aの健全育成に対する阻害の程度が大きいこと、被告人は、自己の性的欲望を満たすためにAに対する各犯行に及んだもので、その意思決定は強い非難に値すること、上記のAに関する児童ポルノを製造したほか、別の女児の児童ポルノの所持にも及んでいて、非難の程度は一層強いことを指摘し、他方で、Aに300万円を支払って示談していること、被告人が罪を認めて反省悔悟の態度を示していること、本件により懲戒免職処分を受けたこと、前科前歴がないことを考慮しても、刑の執行を猶予するのは相当ではないとして、被告人を懲役1年8月に処した。
 原判決の量刑事情の認定及び評価は概ね相当であるが、本件各犯行の行為責任の重さの程度やAとの間で示談が成立したこと等を踏まえると、原判決の量刑は、同種事案の中で重い傾向にあるとはいえる。もっとも、本件が上記のとおり相応の悪質性を有することなどからすれば、その量刑が重過ぎて不当であるとまではいえない。
 所論は、〈1〉被告人が複数回にわたって実名報道された上、懲戒免職処分のみならず退職金の全部不支給処分を受けるなどの社会的制裁を受けたこと、〈2〉被告人が実刑となった場合には、高齢の父親の生活が危機に瀕するおそれがあることなどを十分に考慮すべきであると主張する。しかし、これらはいずれも一般情状であり、考慮するにも限度があることからすれば、原判決の量刑を左右するものとはいえない。
 もっとも、被告人が、原判決後、教職とは全く異なる職場においてまじめに勤務し、勤務先の会社が被告人の雇用を継続したい旨の希望を述べるに至るなど、更生の意欲を強く示していること、原判示第4の被害児童に30万円を支払って示談したことが認められる。これらの事情に加えて、同種事案の量刑傾向や上記の量刑事情を併せ考慮すると、被告人に対しては、直ちに実刑に処するのではなく、社会内で更生する機会を与えることが相当になったといえる。
 そこで、刑訴法397条2項により原判決を破棄し、同法400条ただし書を適用して、被告事件について更に次のとおり判決する。
 原判決の認定した罪となるべき事実(ただし、原判示第2の「同児童に被告人の陰茎を口淫する等の姿態」とあるのを「同児童に被告人の陰茎を口淫する姿態及び乳房を露出した姿態」と、原判示第3の「同児童に被告人と性交する等の姿態」とあるのを「同児童に被告人の陰茎を口淫し、被告人と性交する姿態及び陰部や乳房を露出した姿態」と訂正する。)に原判決挙示の法令を適用し(刑種の選択及び併合罪の処理を含む。ただし、罰条のうち「判示第2及び第3の所為 いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2条3項1号、3号」とあるのを「判示第2及び第3の所為 いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号、3号」と訂正する。)、その処断刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し、情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予し、原審及び当審の訴訟費用については、刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
第1部
 (裁判長裁判官 杉山愼治 裁判官 安達拓 裁判官 井草健太)

淫行してしまった教員の選択肢

 先に校長に申告すると懲戒免職になって、教員免状が失効して、退職金ももらえないことになります。
 懲戒に消滅時効はないので、20年後に発覚しても懲戒免職になります。転職しておけば懲戒されることはありません。

 ソフトランディンを狙うのであれば、
① 福祉犯罪の経験豊富な弁護士に相談する
② 適当な理由で依願退職して退職金ももらって、懲戒処分を回避して、教員免許を温存して
③ 退職後に児童淫行罪・青少年条例違反で自首して、逮捕を回避して罰金刑を目指す
④ ③と併行して被害児童に慰謝の措置を試みる
ということになります。
 師弟関係の数回の児童淫行罪は実刑率が高いのですが、こういう対応であれば軽い量刑になることもあり、児童淫行罪では稀な罰金刑になった例もあります。
 私学の教員や塾講師に転職した例はたくさんあります。

教育職員免許法
(失効)
第十条 免許状を有する者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、その免許状はその効力を失う。
一 第五条第一項第三号又は第六号に該当するに至つたとき。
二 公立学校の教員であつて懲戒免職の処分を受けたとき。
三 公立学校の教員(地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十九条の二第一項各号に掲げる者に該当する者を除く。)であつて同法第二十八条第一項第一号又は第三号に該当するとして分限免職の処分を受けたとき。
2 前項の規定により免許状が失効した者は、速やかに、その免許状を免許管理者に返納しなければならない。

第五条 
1普通免許状は、別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める基礎資格を有し、かつ、大学若しくは文部科学大臣の指定する養護教諭養成機関において別表第一、別表第二若しくは別表第二の二に定める単位を修得した者又はその免許状を授与するため行う教育職員検定に合格した者に授与する。ただし、次の各号のいずれかに該当する者には、授与しない。
三 禁錮以上の刑に処せられた者
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

https://www.saga-s.co.jp/articles/-/621299
佐賀県教育委員会は12日、女子高校生にわいせつな行為をしたとして、県内の市町立中学の30代男性教諭を同日付で懲戒免職にしたと発表した。県教委は被害者の特定につながるとして、男性教諭の名前や女子高校生との関係性などは公表していない。
 県教委によると、男性教諭は2019年5月ごろ、電話などで誘い出し、同じ女子高校生に対してホテルで3回、体を触るなどのわいせつな行為をした。男性教諭が昨年12月上旬に校長に相談し発覚した。相談した理由について「罪悪感があった」と話しているという。校長への相談以降は欠勤している。
 男性教諭は、警察にも届け出ており、県警人身安全・少年課は任意で捜査中としている。

https://news.livedoor.com/article/detail/19525423/
県教委は免職にもかかわらず、匿名で発表したことについて「被害者が個人の特定を恐れている」と主張したが、その被害者となる女子高校生に聞き取りはしていないという。
 県教委によると、教諭は2019年5月ごろに3回、女子高校生を誘ってホテルに行き、体を触った。20年12月になり、教諭が校長に相談して発覚。県教委は「罪悪感があり、自ら申し出た」としている。
 会見した青木勝彦副教育長に対し、報道陣は教諭の実名や、どうやって出会ったのか、教え子だったかどうかなどを尋ねたが、答えなかった。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210108-OYT1T50248/
市教委では、わいせつ行為などにより教員として不適切と認定された教員は原則、免職を含めた懲戒処分にする指針を定めている。男性教員は現在も市立中学校に勤務している。石田さんが中学に通っていたのは25年以上前となるが、市幹部は「高裁で事実が認定されたことは非常に重いと考えている」としている。

 男性教員の代理人を務めた弁護士は読売新聞の取材に対し、性的被害を認定する高裁判決の確定について「ノーコメント」と話した。

女性による男性に対する青少年条例違反事件

 量刑的にはちょい軽くなっています。
 青少年が主体という場合は、青少年条例違反は立たないんでしょうかね。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4005271.htm
男子中学生を自宅に招き入れ、みだらな行為をしたとして40歳の女が逮捕されました。女の自宅は、以前から近所の少年たちのたまり場になっていたということです。

 逮捕されたのは、横浜市の会社員容疑者で、14日朝、自宅で、中学3年の男子生徒にみだらな行為をした疑いが持たれています。
 警察によりますと、容疑者の自宅は数人の少年が出入りするたまり場となっていて、近所の人から相談を受けた警察が、以前、容疑者を注意していました。

神奈川県青少年保護育成条例の解説 平成25年3月
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な上記を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
[趣旨〕
本条は、青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をすることを禁止したものである。また、ごれらの行為を教えたり、見せたりすることを禁止したものである。
※罰則
第1項違反2年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第53条第1項)
第2項違反1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第53条第2項第2号)
[解説]
本条は、青少年を対象としだ性行為等のうち、健全な育成を阻害するおそれがあるものとして社会通念上非難を受けるべきものを対象としているが、その行為の認定にあたっては動機、手段及び態様のほか、当該行為が青少年に与えた影響等、諸般の事情を十分に考慮して、客観的、総合的に判断されるべきものである。
I 第1項関係
1 「みだらな性行為」の意義については、第3項で規定されている。その解釈は、象徴的には「人格的交流のない性交」を言うものであり、具体的には、次のものが例として挙げられる。
① 青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行うもの
② 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないようなもの
③ 行きずりの青少年を相手方とするもの、あるいは多数人を相手方とし、又はこれらを互いに相手方とするもの等
2 「わいせつな行為」についても第3項で規定されているが、その解釈は前記①、②、③と同様な態様による性交類似行為等であり、具体的には、いわゆる素股や尺八等はもちろん、陰部を手などで触れる(又は触れさせる)行為、また、単なる性欲の目的を達するためにのみ行う接吻、乳房を撫でること等が該当する。
なお、本条は青少年に対する行為そのものを禁止する規定であり、刑法第174条に規定する公然わいせつ罪とは異なり、行為の公然性は不要である。
3本項の例としては、成人が、結婚の意思もないのに、青少年を言葉巧みに誘って、単に自己の情欲を満たすために性交した場合や青少年の性器等を手でもてあそぶなどした場合などがこれに当たるが、結婚を前提とした真に双方の合意ある男女聞の性行為は、該当しないものである。

児童淫行罪の機会の盗撮行為や「隠しカメラを設置したチームの事務所で児童らにスポーツブラの試着をさせるという手口で盗撮した」のを、ひそかに製造罪(7条5項)とした事例(東京地裁r2.3.2 確定)

 ハメ撮り盗撮は製造罪(7条4項 姿態とらせて製造罪)だっていうてるやん。
 量刑理由に出てくる「隠しカメラを設置したチームの事務所で児童らにスポーツブラの試着をさせるという手口で盗撮した」というのも姿態をとらせて製造罪であって、ひそかに製造罪ではない。
 盗撮して姿態をとらせて製造した場合は、ひそかに製造罪は成立せず、姿態をとらせて製造罪のみが成立するという大阪高判例があります。
 控訴せず確定したそうですが、成立しない罪で服役することになりますので、弁護人はこういう点をチェックして下さい。

判例はここに紹介してあります
okumuraosaka.hatenadiary.jp

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

判例ID】 28281043
【裁判年月日等】 令和2年3月2日/東京地方裁判所
【事件名】 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、児童福祉法違反被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 楡井英夫 小野裕信 竹田美波
【出典】 D1-Law.com判例体系

■28281043
東京地方裁判所
令和02年03月02日
 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、児童福祉法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山口隼人及び私選弁護人柿原研人各出席の上審理し、次のとおり判決する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、●●●が運営する女子サッカーチーム●●●のコーチとして同チームに在籍する児童らに対してサッカーの指導等をしていたものであるが、
第1(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第1関係)
 ●●●(当時14歳ないし15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同児童が同チームに在籍していた当時はサッカーの指導等をし、同児童が同チームを退団した後も引き続き同児童の進路、学習等について助言をするなどしていた立場を利用して、
1 平成30年4月7日午前10時頃から同日午後0時頃までの間に、東京都●●●事務所(以下「本件事務所」という。)内において、同児童に被告人を相手に性交させ、
2 同年5月5日午後1時頃から同日午後4時頃までの間に、本件事務所内において、同児童に被告人を相手に性交させ、もって児童に淫行をさせる行為をし、
第2(令和元年10月4日付け追起訴状記載の公訴事実第2関係)
 前記第1の1及び2の日時場所において、2回にわたり、ひそかに、前記児童が被告人と性交する姿態、被告人が同児童の性器等を触る行為に係る同児童の姿態及び同児童が陰部等を露出した姿態を同所に設置した小型カメラで動画撮影し、撮影した動画データを自己が使用するパーソナルコンピュータに接続したUSBメモリ1個(令和元年東地領第4006号符号1)に記録して編集した上で保存し、もってひそかに児童を相手方とする性交に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより児童ポルノを製造し、
(法令の適用)
罰条
 判示第1の行為
  児童福祉法60条1項、34条1項6号(包括一罪)
 判示第2の行為
  児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項(2条3項1号、2号、3号)、2項(包括一罪)

(量刑の理由)
 本件は、スポーツチームのコーチである被告人が、在籍中の指導や脱退後の進路の助言をしていた立場を利用して児童1名(当時14歳ないし15歳)と2回性交した児童福祉法違反(第1)、その様子を盗撮した児童ポルノ製造(第2)と、合宿先やチームの事務所内で多数の在籍児童(当時11歳から15歳)の陰部等を盗撮した児童ポルノ製造(第3ないし第9)からなる事案である。
 量刑の核心である淫行とその関連事案についてみると、被害児童は、当時、被告人に対して一定の好意を抱くなどしていたとは認められるものの、チーム在籍中はもとより、脱退後も助言を継続してきたという関係性や、被害児童の年齢などにも鑑みれば、大人として指導、育成を行うべき立場にある被告人が、その立場を悪用し、児童の思慮分別の未熟さに乗じて、2回も性交に及んだとみるべきであって、相当に卑劣で悪質との評価を免れない。淫行の際に盗撮していた点も含め、自己の性欲を満たすために被害者を弄んでおり、強い非難に値する。被害児童の親が子を案じ、被告人の厳罰を求めるのは当然である。
 また、その余の盗撮事案についてみても、約1年の間に7回にわたり、被告人は、コーチの立場を悪用し、持参した隠しカメラを合宿先の浴室等に設置するという手口や、隠しカメラを設置したチームの事務所で児童らにスポーツブラの試着をさせるという手口で盗撮したものである。常習性が顕著である上、いずれの犯行も被告人の立場や児童らの信頼を悪用して性欲を満たそうとしたという点において、淫行関連事案と共通している。30名を超える被害者及びその親の多くが被告人の厳罰を求めるのは十分に理解できる。
 他方で、・・・
刑事第15部
 (裁判長裁判官 楡井英夫 裁判官 小野裕信 裁判官 竹田美波)

教諭淫行で生徒が自殺未遂、大分

因果関係と損害が立証されると高額になりえます。

https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2020/02/14/JD0058964051
元県立高教諭のみだらな行為、生徒の自殺未遂で発覚 寝たきり、重度障害に
2020/02/14 03:01
 女子生徒(18)にみだらな行為をしたとして昨年7月に懲戒免職処分となった元県立高教諭の男性(33)について、問題の行為は生徒の自殺未遂で発覚したことが13日、生徒の保護者らへの取材で分かった。生徒は一命を取り留めたものの、寝たきりで意思疎

https://www.nishinippon.co.jp/item/o/584162/
教諭淫行で生徒が自殺未遂、大分
2020/2/14 18:08 (2020/2/14 18:11 更新)
共同通信
 大分県立高に勤務していた男性教諭(33)が、女子生徒(18)にみだらな行為をしたとして懲戒免職処分になった問題があり、女子生徒が関係に悩んだ末に自殺を図り、重度障害が残ったとして、保護者が県に約1億3千万円の賠償を求め、大分地裁に提訴したことが14日分かった。1月14日付。

 訴状や代理人弁護士などによると、生徒は19年1月に自殺を図って昏睡状態となり、回復の見込みがないという。

 元教諭は18年10月ごろから、生徒にみだらな行為をし、生徒は妻子がいる教諭との関係に悩んでいた。元教諭が立場を利用し精神的に追い詰め、県は安全配慮義務を怠ったと訴えている。

男児が被害者の強制性交事件(高松地裁R01.9.4)

 D1LAWに掲載されました。
 児童淫行罪の罪となるべき事実としては、影響関係(立場利用)が記載されていないので、理由不備の疑いがあります。
okumuraosaka.hatenadiary.jp


 そもそも男児は強姦されているのに、「(男児が被告人に)淫行した」と評価されるのかも疑問です。

高松地方裁判所
令和01年09月04日
上記の者に対する強制性交等、児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官新甚康平及び弁護人坪井智之(国選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 ●●●(●●●当時12歳。以下「被害児童」という。)が18歳未満の児童であることを知りながら、平成30年12月27日午後3時3分頃から同日午後3時41分頃までの間、(住所略)の当時の被告人方において、同児童に対し、同児童が被告人の乳首を吸うなどの姿態をとらせ、これを撮影機能付きスマートフォンで撮影し、その動画データ7点及び静止画データ15点を同スマートフォン内の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した
第2 被害児童が13歳に満たない児童であることを知りながら、平成31年1月22日午前9時頃から同日午前9時30分頃までの間に、前記被告人方において、同児童と性交し、もって13歳未満の者に対し、性交するとともに児童に淫行をさせる行為をしたものである。

中略
(量刑の理由)
 本件は、成人である被告人が、オンラインゲームを通じて知り合った被害児童に係る児童ポルノを作成し、同児童に対して強制性交等をしたという事案である。
 まず、本件の量刑を決める上で中心となる判示第2の罪について検討する。
 被告人は、被害児童が犯行当時小学生であり、精神的に未熟で、判断能力や性的知識に乏しいことにつけ込んで、被害児童に性的知識を積極的に教示し、自らの性的要求に応じる状況を作出した上で犯行に及んだというその態様は、悪質である。
 また、被告人は、被害児童から、小学生と性行為をしても問題ないかどうかを問われたにも関わらず、被告人との性行為の事実を他言しないよう被害児童に伝えると、被害児童に与える悪影響すら考えずに犯行に及んでおり、自己の欲求を優先させた被告人の軽率で身勝手な意思決定には厳しい非難が値する。
 さらに、年齢不相応の性交等をしたことによって、被害児童の情操に悪影響を及ぼしたおそれは高く、被害結果も大きい。
 次に、判示第1の罪についてみても、被告人は、被害児童が写った複数の児童ポルノを作成し、当該児童ポルノを社会に拡散する危険性を生じさせている。
 他方で、メッセージアプリ内での被告人と被害児童との間のやり取りを見ると、性的な内容のメッセージが数多く存在する一方で、互いに好意を伝え合うやり取りが頻繁になされているほか、将来的には結婚したい旨のやり取りなども行われている。そうすると、本件犯行当時、被告人及び被害者の双方が相手に対する恋愛感情を有しており、被告人は、同感情がゆえに判示第2の犯行に及んだと認められ、専ら性欲処理のために行われたとみられる事案が多い同種事案の中では、本件動機の悪質性は低い。また、その態様も、暴行脅迫といった手段は用いられていない。
 さらに、被告人と被害児童との間で、被告人が被害弁償金150万円を支払うとともに、今後一切被害児童に連絡、接触等しない旨などを内容とする示談が成立したことで、被害児童及びその母も被告人を宥恕し、厳罰を求めていない。
 以上を踏まえると、本件の強制性交等(判示第2)においては、単独犯が凶器等を用いることなく性交等を完遂し、被害者との間で示談が成立しているか又は被害者が宥恕している場合の同種事案の中で、執行猶予に付されるべき事案に位置付けられるというべきである。
 もっとも、本件全体としてみると、被告人の親族が今後の監督を誓約しているものの、これまでの生活状況等も併せ鑑みると、被告人に対し、酌量減軽の上、主文掲記の懲役刑に処し、その刑の執行を猶予した上、その猶予の期間中、保護観察に付するのが相当である。
 よって、当裁判所は主文掲記の刑が相当であると判断した。
(検察官の求刑-懲役5年、弁護人の科刑意見-執行猶予付き判決)
刑事部
 (裁判長裁判官 三上孝浩 裁判官 濵優子 裁判官 三好瑛理華)

児童(当時16歳) をわいせつ目的で誘拐した上同人に対し,その衣服を脱がせて陰部等を露出させ,同人と性交(淫行)し,同人の陰部に手指を挿入するなどし,これらを動画撮影し,同動画を記録して保存した事案において,わいせつ誘拐罪と児童ポルノ製造罪とは牽連犯にはならず,併合罪になる。(東京高裁R01.8.20)

 強制わいせつ行為目的とか、売春させる目的とか、強姦する目的も「わいせつ目的」に含まれますし、撮影行為はわいせつ行為ですけどね。

速報番号369 3 号
わいせつ誘拐, 児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反

東京高等裁判所第10刑事部 令和元年8月20日
裁判要旨
児童(当時16歳) をわいせつ目的で誘拐した上同人に対し,その衣服を脱がせて陰部等を露出させ,同人と性交(淫行)し,同人の陰部に手指を挿入するなどし,これらを動画撮影し,同動画を記録して保存した事案において,わいせつ誘拐罪と児童ポルノ製造罪とは牽連犯にはならず,併合罪になる。
裁判理由
所論は,わいせつ誘拐罪と児童ポルノの製造罪が牽連犯になると主張するが,児童ポルノは,その製造過程が児童に対する性的虐待であり,また,虐待された児童の半永久的な記録となり, 児童に対する権利の侵害が著しいことから,児童の権利を保護するため,善良な性風俗の維持を保護法益とするわいせつ物領布等の罪より重い刑罰をもってその提供等が規制されるに至ったのであって,このような保護法益に鑑みると,児童ポルノの製造罪は,わいせつ誘拐罪のわいせつ目的を実現する犯罪とはいえず,両者の間に手段目的の関係があるとはいえない。
備考
原審において, わいせつ誘拐罪と児童淫行罪とは牽連犯になり,わいせつ誘拐罪と製造罪とは併合罪になると判示し,控訴審は,これを是認した上,弁護人の主張に対し、わいせつ誘拐罪と製造罪とは牽連犯にはならないとした

h30.12.11の淫行とH31.3.11と3.26の淫行を児童淫行罪の包括一罪とした事例(静岡地方裁判所r01.08.28 懲役2年6月実刑)

「被害者から「好きです。」などと告白され、」「被害者の宥恕は得られなかったものの、賠償金として200万円を支払って示談し」でも実刑になっています。

 被告人に対する児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官山根誠之、弁護人内田隼二各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役2年6月に処する。

理由
(犯罪事実)
第1 被告人は、●●●高等学校の教諭として、同校●●●部の顧問をしていたものであるが、同校の生徒であり、同部の部員である●●●(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、その立場を利用し、同児童が自己に好意を寄せていることに乗じ、
 1 平成30年12月11日午後4時55分頃から同日午後6時52分頃までの間に、静岡県●●●所在のホテル●●●において、同児童に自己を相手に性交させ、
 2 平成31年3月11日午後7時頃から同日午後7時43分頃までの間に、同県●●●所在の同校●●●において、同児童に自己を相手に性交させ、
 3 同月26日午後5時頃から同日午後5時15分頃までの間、同県●●●から北北東方向図測約177メートル先空き地に駐車中の自動車内において、同児童に自己を相手に性交させ、もって児童に淫行をさせる行為をした。
第2 被告人は、前記●●●(当時17歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第1の1の日時、場所において、同児童に、その乳房、陰部を露出した姿態、被告人の陰茎を口淫する姿態及び被告人と性交する姿態をとらせ、これを撮影機能付き携帯電話機で撮影し、その動画データ1点をその携帯電話機本体の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
(法令の適用)
  (1) 罰条
  (ア) 第1の行為 包括して、児童福祉法60条1項、34条1項6号
  (イ) 第2の行為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項(2条3項1号、3号)、2項
  (2) 刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
  (3) 併合罪加重 刑法45条前段、47条本文、ただし書、10条(重い判示第1の罪の刑に加重)
(量刑の事情)
 本件は、高校の教諭であった被告人が、顧問として指導していた部活動の部員で、当時17歳の被害者に対し、〈1〉自己を相手方として3回にわたり性交させて淫行した児童福祉法違反1件と、〈2〉その性行為等の場面を動画撮影して児童ポルノを作成した児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反1件の事案である。
 被告人は、悩みを抱えていた被害者をドライブに連れ出した際、被害者から「好きです。」などと告白され、被害者との交際を断れば、被害者の精神状態が悪化するなどと考え、交際を続け、本件各犯行に及んだというのであるが、仮にそのような事情があったとしても、妻子がいて被害者の好意に応じ難い立場である上、教諭として、また、部活動の顧問として、未成年者の健全な成長を促すべき立場にあるにもかかわらず本件犯行に及んだものであるから、本件は、被害児童を保護すべき立場の者が、逆に、被害児童の思慮分別の未熟さに付け込んだ身勝手で卑劣な犯行というべきであって、強い非難に値する。しかも、被告人が、判示のとおり児童ポルノの撮影に及んだほか、●●●あるいは、妻に被害者との関係が発覚した後もひそかに関係を続けるなどしていたことも考慮すると、被告人は、もっぱら自らの性欲を満たすため、被害者をもてあそんでいたといわざるを得ず、被害者の今後の成長に与える影響も憂慮される。被害者の家族が被告人の厳重処罰を求めるのも無理からぬものがある。
 そうすると、本件は、被害者を保護すべき立場の被告人が、被害者の情操を甚だしく害したという悪質な犯行というべきであって、以下のような被告人のために酌むべき事情を考慮しても、その刑の執行を猶予するのが相当であるとはいえない。
 すなわち、被告人が事実を認めて反省の態度を示していること、被害者の宥恕は得られなかったものの、賠償金として200万円を支払って示談したこと、当然のこととはいえ、●●●妻が情状証人として出廷し、被告人の更生を支援する旨証言していること、フォークリフトの免許を取るなど社会復帰を目指した取り組みを始めたことなど、被告人のために酌むべき事情も認められ、これらの事情を考慮すると、前記のとおり刑の執行を猶予するのは相当ではないものの、被告人を主文の刑に処するのが相当である。
(求刑-懲役3年6月)

刑事第1部

 (裁判官 伊東顕)


 審理経過としては
 5月 逮捕
 6/3起訴 
 7/18即日結審 求刑4年
 8/28 実刑判決 宣告2年6月
となっていて、実刑事案としては雑な感じです。

児童福祉法違反で元県立高教諭起訴-静岡地検
2019.07.05 静岡新聞
 静岡地検は4日までに、児童福祉法違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪で、元県立高教諭で30代の無職の男を静岡地裁に起訴した。
 起訴は6月3日付。起訴状などによると、男は高校教諭だった2018年12月ごろから19年3月ごろまでの間、10代の少女が18歳未満と知りながら複数回にわたり淫行させた上、携帯電話で動画を撮影し児童ポルノを製造したとされる。
 男は4月に県教委から懲戒免職処分を受け、5月に県警に逮捕された。地裁は匿名で公判を行うことを決めている。
・・・
児童福祉法違反の元教諭に4年求刑 静岡地裁初公判
2019.07.18 静岡新聞
 勤務していた高校の生徒に淫行をさせるなどしたとして、児童福祉法違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた元県立高教諭の30代の男=懲戒免職=の初公判が18日、静岡地裁(伊東顕裁判官)で開かれた。被告は起訴内容を認め、検察側が懲役4年を求刑、弁護側が執行猶予付き判決を求めて即日結審した。判決は8月28日。
 検察側は論告で「自ら生徒を誘い出し、自分の性欲を満たすために教員の立場を乱用した特に悪質な犯行」と指摘した。弁護側は「悪意はなかった」と酌量を求めた。
 起訴状などによると男は2018年12月ごろから19年3月ごろまでの間、勤務校の女子生徒が18歳未満と知りながら複数回淫行をさせた上、携帯電話で動画を撮影し児童ポルノを製造したとされる。
 公判は被害者が特定される可能性がある「被害者特定事項」として匿名で行われた。

「2018年春、前夫は、勤務する会社のイベントに娘を連れて行き、その帰りに車の中で体を触るなどの行為を行った。かずみさんが離婚したのは今から9年前。娘と実父が会ったのは、このときが7年ぶりだった。」場合の罰条

 
 警察は重い罰条から検討していくもので、
 国法から見ていくと、わいせつ行為があったとしても、暴行脅迫がないということなので、強制わいせつ罪は不成立。
 「現に監護する者」ではないので、監護者わいせつ罪は不成立
 児童福祉法違反(淫行させる行為・児童淫行罪)は、性交・性交類似行為がないと不成立。
 国法の罪がないので、青少年条例違反(わいせつ行為)が検討されることになります。青少年条例には国法の性犯罪規定の補充的性格があるので、国法に漏れたのをここにひっかけるという構造です。

今井検事「刑法の一部を改正する法律の概要」警察公論72巻12号
3 捜査上の留意点
ア「現に監讓する者」の要件について
監護者わいせつ罪岐び監護者性交等罪の主体は. 18歳未満の者を「現に監護する者」に限定されており.教師やスポーツのコーチ等の指導者などについては.個別の具体的事例ごとに判断されるべき事柄ではあるが,一般的に, その者の生活全般にわたって.依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められるとはいえないことから、通常は.監護者には該当しないと考えられる。
もっとも、こうした教員等による性的行為が監護昔性交等罪等の適用対象とならないとしても,強制性交等罪等や準強制'性交等罪等が成立し得るのであり.教師等の立場や影響力の有無無・程度は.強制性交等罪等の暴行・脅迫要件や準強制性交等罪等の抗拒不能の要件を判断する際の重要な要素となり得ると考えられる。
したがって. こうした事案においても,犯罪の成否について.行為者と被害者との関係具体的な影響力の内容や程度.被害者の意思決定の過程などについて十分な捜査を尽くし,適切な判断をすることに留意する必要がある。
イ「影響力があることに乗じて」の要件について
被疑者からは, 18歳未満の者が積極的に(あるいは喜んで)性的行為に応じたから.影響力があることに乗じて行ったものではなく,影響力と無関係に行われたものであるとの主張がなされることが考えられる。
しかし, 18歳未満の者がそのような行動をとる例として.例えば、幼年のころから継続的に.監護音による性的行為を受け続け, そのような行為が当然のことであると思い込んでいる場合や.監護者を喜ばせ, あるいは監護者の機嫌を損なわないようにするために、積極的に応じるような場合が考えられるところ, いずれも. 「現に監護者であることによる影響力」によって18歳未満の者がそのような行動に至っていると一般的に考えられることから, このような行動が認められたとしても。「影響力があることに乗じて」行ったものではないとはいえないことに留意する必要がある。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20191027-00147991/
離婚で離れた実父からの性被害
「実父が娘に性的な行為をすること自体がおかしい。議員さんたち、自分の家族がもし同じ目に遭ったら、絶対に法律を変えていると思います」

 かずみさん(仮名)は、取材に対して落ち着いた声でそう話した。彼女の娘は昨年、離れて暮らしていた実父からわいせつな被害に遭った。事件当時13歳だった。

 2018年春、前夫は、勤務する会社のイベントに娘を連れて行き、その帰りに車の中で体を触るなどの行為を行った。かずみさんが離婚したのは今から9年前。娘と実父が会ったのは、このときが7年ぶりだった。

 かずみさんが被害を知ったのは秋。その後、年が明けてから警察に相談した。最初は生活安全課が対応したが、しばらくして刑事課の担当に。強制わいせつや、監護者わいせつでの立件を視野に入れてのことだったと思われる。

 しかし捜査中の今年3月から4月にかけて、性犯罪の無罪判決が相次いで報じられると、「刑事課の刑事さんたちがトーンダウンした」。無罪判決が出た裁判所の一つは、かずみさんたちが暮らす街の近くだった。

■娘の一言を「同意」と誤解?
 現在の性犯罪刑法における「性交同意年齢」は13歳。事件当時13歳だった娘に行われた行為について、強制わいせつに問うためには「暴行もしくは脅迫」があったことが必要となる。

 父親から殴る蹴るの暴行や「殺すぞ」といった脅しはなかったが、実父の行動に動揺した娘は、目に見える形で抵抗したり、逃げたりすることができなかった。

 一方、2017年の刑法改正で新設された監護者わいせつ罪では、被害者が18歳未満で、加害者が「監護者(実親や養親など子どもを監護する立場の人)」である場合、「暴行・脅迫」の有無は問われない。

 しかし、離婚した実父は「監護者」に当たらないと判断された。

4月11日に行われたフラワーデモで「暴行・脅迫要件」の撤廃を求めるプラカードを持つ参加者もいた(筆者撮影)
「前夫は息子とは会っていたのですが、娘は会いたがらなかったので会っていませんでした。養育費の支払いもなかった。だから『監護者』ではないと刑事課の刑事さんに説明されました」

 その後、担当が生活安全課に戻り、父親は条例違反(淫行)で在宅起訴。罰金刑のみとなる可能性が高いと説明を受けた。

 取り調べに対して父親は、娘が「パパ、ちゃんと話をしようよ」と言ったことを「行為の同意」と思ったと話したという。娘からすれば、父親の行動を異常だと感じ、やめさせようとして言った言葉だった。

 起訴後、お互いの弁護士を通じて示談に。示談を選んだ理由は、「今後、娘に会わない」という取り決めを結ぶために、ほかに手段がなかったからだ。元夫は示談金を分割で支払うことを提案。初回以降、弁護士を通じて催促する状況となっている

 かずみさんは言う。

「生活安全課の方は親切に話を聞いてくれて、何とか条例違反にはしてくれました。こちら側の代理人となってくれた弁護士さんも、強制わいせつにならないのかと意見書を書いてくれました。それでもやはりダメだった

「2011.7の性交」という児童淫行罪の訴因で2018.7に起訴され、「2010.7~2012.4の多数回性交」に訴因変更して有罪とした事案(大阪地裁H31.10.15)

2018.2 捜査開始
2018.7 起訴

当初訴因 2011.7の性交

変更後訴因 2010.7~2012.4の多数回性交

 児童淫行罪は包括一罪というのは、家庭内で行われるから犯行日が特定しづらいというのを救済するためにも使われるんですよね。
「2011.7の性交」を起訴するときは、一連の淫行の最後の1回を起訴していることが多いので、それだと、公訴時効に掛かってしまいます。(「2011.7の性交」という訴因なのに、一連の淫行が審判対象になることになって、訴因制度の趣旨に反します。)
「2010.7~2012.4の多数回性交」ということになれば、全体として、最後の淫行から7年の公訴時効がカウントされることになります。免訴を逃れるための訴因変更には、問題があると思います。

https://digital.asahi.com/articles/ASMBD45SBMBDPTFC004.html
判決によると、男は2010年7月~12年4月ごろ、交際相手の娘で、当時中学生だった女性に自宅で多数回にわたり性交した。

 女性は18年2月に大阪府警に被害を相談し、大阪地検は同7月に起訴。裁判では公訴時効(7年)が争点となった。

 男は11年7月以降は両者間に性交はなかったと主張。起訴時点で時効が成立しているとして、裁判を打ち切る免訴の判決を求めていた。

 佐藤裁判長は、女性が12年夏に実父に「死にたい。助けて」と訴えて引っ越したことから「転居を決断するまで犯行は継続したと考えられる」と認定。時効は成立しないと判断した。

 大阪地検は今年2月に一定期間に多数回の行為があったとする起訴内容に変更した。時効成立の可能性を考慮したとみられる。被告側は「犯行の最終日が特定されておらず、被害者の供述の信用性に疑問がある」と主張していたが、判決では「日常的に行われていた犯行の日を、被害者が特定できないことは不自然ではない」と退けた。

性犯罪、時効の成否争点 母の交際相手から被害「救いない」 大阪地裁、15日判決【大阪】
2019.10.12 朝日新聞
 男は児童福祉法違反(淫行)の罪で起訴され、大阪地裁で公判中だ。起訴内容によると、2010年7月~12年4月ご
 ろ、大阪府内の自宅で、同居していた女性が18歳未満と知りながら多数回にわたって性交したとされる。

 女性が被害を明かしたのは公訴時効(7年)が迫った18年1月。母親に打ち明け、警察に相談した。大阪地検は同年7月、男が11年7月に性交したとして同法違反で起訴。今年2月に起訴内容を改め、日時を特定せず、一定期間に多数回の行為があったとする起訴内容に変更した。時効が成立する可能性を考慮したとみられる。
 裁判で検察側は、女性が12年夏に父親宅に転居するまで犯行は継続したと考えられると主張。犯行は長期間、恒常的に
 行われ、悪質だとして、懲役6年を求刑している。

 これに対し、弁護側は性交を認めたが、11年7月の被害を除き犯行日を特定できておらず、女性の記憶があいまいだと主張。その頃から女性はベランダで寝るなどして被告を遠ざけており、両者間に性交はなく、起訴時点で時効が成立しているとして裁判を打ち切る免訴の判決を求めている。

強制性交被告事件(177条後段)の罪となるべき事実で「養女と性交しようとした」とする一審判決について、「強制性交等未遂罪の事実を判断する際は、実行の着手があったことを認める具体的事実を記載しなければいけない」として原判決を破棄した事例(宮崎支部R01.9.26 1審宮崎地裁R01.6.20)

強制性交被告事件(177条後段)の罪となるべき事実で「養女と性交しようとした」とする一審判決について、「強制性交等未遂罪の事実を判断する際は、実行の着手があったことを認める具体的事実を記載しなければいけない」として原判決を破棄した事例(宮崎支部R01.9.26 1審宮崎地裁R01.6.20)

 被告人控訴で理由不備の破棄だと思われます。上訴申立後の未決勾留の日数(約3ヶ月)が全部本刑に通算されます。1審は実刑判決の割には雑な審理だった印象になります。

刑訴法第三七八条[同前━絶対的]
 左の事由があることを理由として控訴の申立をした場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつてその事由があることを信ずるに足りるものを援用しなければならない。
四 判決に理由を附せず、又は理由にくいちがいがあること。
・・・
刑訴法 第四九五条[未決勾留日数の法定通算]
①上訴の提起期間中の未決勾留の日数は、上訴申立後の未決勾留の日数を除き、全部これを本刑に通算する。
②上訴申立後の未決勾留の日数は、左の場合には、全部これを本刑に通算する。
一 検察官が上訴を申し立てたとき。
二 検察官以外の者が上訴を申し立てた場合においてその上訴審において原判決が破棄されたとき。
③前二項の規定による通算については、未決勾留の一日を刑期の一日又は金額の四千円に折算する。
④上訴裁判所が原判決を破棄した後の未決勾留は、上訴中の未決勾留日数に準じて、これを通算する。

 刑法はこう言う条文配列で、13未満については特則があるので、監護者性交ではなく強制性交(177後段)が適用されるんですが、179条2項が特則だという主張も考えられます。

第一七七条(強制性交等)
 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

第一七九条(監護者わいせつ及び監護者性交等)
2十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。

高裁宮崎支部も懲役4年の判決 養女に性的暴行未遂 /宮崎県
2019.09.27 朝日新聞
 養女にした妻の連れ子の12歳の少女に性的暴行をしようとしたとして、強制性交等未遂罪に問われた県内の男の控訴審判決が26日、福岡高裁宮崎支部であった。芦高源裁判長は一審・宮崎地裁判決を事実の記載が不十分として破棄した上で、改めて強制性交等未遂罪の成立を認め、一審と同じ懲役4年を言い渡した。
 高裁判決によると、男は昨年11月上旬ごろ、自宅で少女に暴行しようとした。
 一審判決で性的暴行を裏付ける具体的な行為が明示されていなかったことから、高裁では検察側の訴因変更請求を認め、判決でその内容は認定された。弁護側は性交の意志を否定して無罪を主張したが、認められなかった。
・・・

養女乱暴未遂男に懲役4年/高裁宮崎判決
2019.09.27 宮崎日日新聞 当時12歳の養女を乱暴しようとしたとして強制性交等未遂の罪に問われた男の控訴審判決で、福岡高裁宮崎支部は26日、懲役4年とした一審宮崎地裁判決を破棄し、「罪となるべき事実」を一部修正した上で改めて懲役4年を言い渡した。
 芦〓源裁判長は、罪となるべき事実で「養女と性交しようとした」とする一審判決について、「強制性交等未遂罪の事実を判断する際は、実行の着手があったことを認める具体的事実を記載しなければいけない」と指摘。控訴審判決では具体的な文言を加えた。

1審判決

強制性交未遂 懲役4年判決 地裁=宮崎
2019.06.21 読売新聞
 養女にわいせつな行為をしようとしたとして強制性交未遂罪に問われた県内の男に対し、宮崎地裁(福島恵子裁判長)は20日、懲役4年(求刑・懲役7年)の判決を言い渡した。
 判決によると、男は昨年11月上旬頃、自宅で養女(当時12歳)にわいせつな行為をしようとした。福島裁判長は「性交に応じなければ坊主頭にする旨を述べ、性交に及ぼうとしたもので、監護者としての立場を利用した卑劣な犯行」と指摘した。

監護者性交の判決報道

 報道をまとめただけです。未遂でも実刑ですね。
 弁護人に加えて頂ければ、もっと詳細に調査します。

 

 

裁判所 支部 判決日 宣告刑(年) 宣告刑(月) 猶予 求刑 罪名
札幌   2017/12/13 7年     10年  
熊本   2017/12/25       5年  
熊本   2017/12/25       5年  
熊本   2018/2/2 5年     5年  
熊本   2018/2/2 5年     5年  
新潟 高田 2018/2/7 5年     6年 監護者性交等罪と監護者わいせつ
新潟 高田 2018/2/7       6年  
旭川   2018/3/2 3年   5年 3年 監護者わいせつ
前橋   2018/3/19 7年     8年  
大分   2018/5/15 5年     5年  
長崎   2018/5/16 5年     6年  
長崎   2018/5/16 5年     6年  
長崎   2018/5/16 5年     5年  
長崎   2018/5/16       6年  
福岡   2018/6/28 5年     7年  
松山   2018/7/24 6年     8年  
松山   2018/7/24 6年     8年  
松山   2018/7/24       8年  
松山   2018/7/24       8年  
鹿児島   2018/8/7       6年  
千葉   2018/10/18 6年     7年  
千葉   2018/10/18 6年     7年  
熊本   2018/12/14 8年     9年  
熊本   2018/12/14 8年     8年  
熊本   2018/12/14 8年     8年  
熊本   2019/2/1 6年     8年  
宮崎   2019/3/26 5年     7年  
宮崎   2019/3/26 5年     7年  
熊本   2019/3/27 5年     6年  
宮崎   2019/3/27 5年     7年  
前橋   2019/3/28 9年     10年  
前橋   2019/3/28       10年  
福岡 小倉 2019/3/28 4年     5年 未遂
福島 郡山 2019/3/28 6年     6年  
岐阜   2019/5/24       8年  
岐阜   2019/6/13 6年     8年  
岐阜   2019/6/13 6年     8年  
山口   2019/6/19 6年     9年  
大分   2019/8/5       7年  
大分   2019/8/5 6年     7年  
鳥取   2019/9/4 5年 6月   7年  
岐阜   2019/9/24 5年     5年 未遂

 

 

 

「一身上の都合を理由に退職を申し出た際、一連の行為を校長に説明し」懲戒免職

 黙って依願退職すれば懲戒免職は回避できますよね。

わいせつ:女子中生に6度、教諭がわいせつ 県教委、懲戒免職 /兵庫
2019.09.25 地方版/兵庫 22頁 (全230字) 
 県教委は24日、特定の女子生徒にキスするなどのわいせつ行為を計6回したとして、県内の公立中の20代男性教諭を懲戒免職処分にした。
 県教委によると、昨年11月から今年4月、無人の教室で生徒を抱き締めたり、自分の車に乗せてキスしたりした。相談に乗るうちにわいせつ行為に発展した。

 教諭が今年8月、一身上の都合を理由に退職を申し出た際、一連の行為を校長に説明した。県教委の調査に「生徒に一生償うことのできない大変なことをしてしまった」と話しているという。
〔神戸版〕
毎日新聞社

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201909/0012729652.shtml
県教委によると、男性教諭は2018年11月から19年4月までの間に3回、教室で女子生徒を抱きしめたり、尻を触ったりした。また19年4月、自家用車内で胸を直接触ったり、キスをしたりした。8月に教諭が校長に退職を申し出たことから発覚。女子生徒の悩み相談に応じるうちに「好意を抱くようになってしまった」と話しているという。県教委は指導監督責任を問い、校長も訓告とした。<<

26年前に中学教師から受けた「性被害」、訴えた教え子が敗訴 「時間の壁」越えられず(札幌地裁R01.08.23)

 判決書は札幌市への情報公開請求で入手可能です。
 

札幌地裁R01.08.23
その他,本件において,原告が除斥期間の経過前に本訴請求に係る損害賠償請求権を行使することが現実的に困難であるなどの特段の事情があるとは認められないから,加害行為の時が除斥期間の起算点となると解することが原告にとって著しく酷であるとも言えない
(3) したがって,原告らの主張に,係る被告教諭から原告の受けた性被害は「加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合」に該当し,原告らの主位的請求及び予備的請求に係る損害賠償請求権は,~ これが仮に成立するとしても,その除斥期間の起算点は被告教諭による最終の加害行為があったという平成9年7月頃となり、本訴が提起される前に20年の除斥期間(民法724条後段)が経過したことにより消滅したこととなる(仮に被告らの主張を前提としても,被告教諭による最終の加害行為があったのは平成10年秋頃となるにすぎず,原告らの主位的請求及び予備的請求に係る損害賠償請求権が本訴提起前の20年の除斥期間の経過により消滅したことに変わりはない。)
3以上と異なる原告らの主張は,上記1で認定し,上記2で判示したところに照らして採用することができない。
第4結論
よって 原告らの主位的請求及び予備的請求は, その余の点(争点(1)被告教諭の不法行為責任、被告市の国家賠償責任、争点(2)原告の被った損害及びその額,争点(3)消滅時効)について判断するまでもなく、いずれも理由がないから, これを棄却することとして,主文のとおり判決する。

民法 第七二四条
不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七二四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190823-00010045-bengocom-soci
訴状などによると、さんは1993年3月、中学卒業式の前日に教師から呼び出され、キスされるなどわいせつな行為をされたという。わいせつな行為は19歳になるまで繰り返され、さんは2016年2月にPTSDを発症したと訴えていた。

争点となったのは、20年間を経過すると賠償請求の権利が消滅してしまう「除斥期間」を過ぎているかどうかだった。さん側はPTSDと診断された2016年を起算点としたが、裁判所はこれを認めず、除斥期間は過ぎていると判断した。さんは控訴する意向を示している。

女性による男児に対する強制性交(後段)は執行猶予(高松地裁h31.9.4)

 レアケースです。
 おっさんが小学生児童と「恋愛」だとしても、暴行脅迫がなかかったという評価になるだけで、それも177後段が予定するところだということで、重視されません。
 妊娠危険は女性、身体侵襲は女性とかいいだしたら、このケースにこの法定刑はそぐわないということになりますね。

https://www.ksb.co.jp/newsweb/index/14689
「お互いに恋愛感情…」 小6男児とわいせつ行為の23歳女に執行猶予付き判決 高松地方裁判所
当時小学6年生の男子児童とわいせつな行為などをした女に、高松地方裁判所は執行猶予付きの判決を言い渡しました。

 強制性交や児童買春・ポルノ禁止法違反などの罪で判決を受けたのは、23歳の女です。
 判決によると、女は今年1月高松市の自宅で13歳未満と知りながら、当時小学6年の男子児童とわいせつな行為をしました。また、去年12月には男子児童との性的な写真をスマートフォンで撮影しました。
 2人は、去年9月にスマートフォンのオンラインゲームを通じて知り合ったということです。

 4日の判決公判で高松地裁の三上孝浩裁判長は、「判断能力や性的知識が乏しいことにつけ込んで犯行に及んだことは悪質」と指摘しました。
 一方、「女と男子児童が『将来は結婚したい』旨のやりとりをするなど、お互いに恋愛感情を有していた。今後一切連絡しないなどの示談が成立している」として懲役5年の求刑に対して、懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しました。

男児と強制性交した女に有罪判決 /香川県
2019.09.05 朝日新聞
 小学生の男児と性行為をしたとして、強制性交などの罪に問われた被告に対し、高松地裁は4日、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。三上孝浩裁判長は「小学生の判断能力の乏しさにつけ込んだ犯行は悪質」と指摘した一方、「暴行や脅迫はなかった」などと述べた。
 判決によると、被告は今年1月、自宅で当時小学6年生だった福岡県内の男児(13)と性行為をした。
 強制性交罪は2017年の改正刑法で強姦(ごうかん)罪から名を変え、被害者が男性でも適用されるようになった。