児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童買春2罪の捜査中(略式命令前)の再犯を懲役1年執行猶予4年にした事例(高松地裁r010527)

 「平成30年9月及び同年10月にした児童買春等により逮捕され,警察官及び検察官の取調べを受け,本件当時,被告人が述べるようにその起訴状謄本や被告人を罰金70万円に処する旨の同年12月27日付け略式命令の送達を受ける前であったとしても,児童買春の違法性を十分に認識していたはずであるのに,児童の判断能力が未熟であることに付け込んで児童を性的に搾取する本件児童買春行為に及んだものであり,被告人の意思決定は強く非難されるべきである。」という評価になっていますが、量刑としては重くありません。
 略式命令後の事件とは違います。

 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官奥野陽子及び弁護人坪井智之(私選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役1年に処する。
 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,平成30年12月18日午後3時37分頃から同日午後4時05分頃までの間,香川県綾歌郡〈以下省略〉のaホテル209号室において,【被害者】(当時●歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金3万円の対償を供与して,同児童に自己の陰茎を口淫させるなどの性交類似行為をし,もって児童買春をした。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 1 罰条 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
 2 刑種の選択 懲役刑を選択
 3 刑の執行猶予 刑法25条1項
 (量刑の理由)
 本件は,被告人が,いわゆるラブホテルの客室内で,現金3万円を対償として18歳に満たない女児に自己の陰茎を口淫させる性交類似行為をして児童買春をした事案であり,被告人は,平成30年9月及び同年10月にした児童買春等により逮捕され,警察官及び検察官の取調べを受け,本件当時,被告人が述べるようにその起訴状謄本や被告人を罰金70万円に処する旨の同年12月27日付け略式命令の送達を受ける前であったとしても,児童買春の違法性を十分に認識していたはずであるのに,児童の判断能力が未熟であることに付け込んで児童を性的に搾取する本件児童買春行為に及んだものであり,被告人の意思決定は強く非難されるべきである。
 他方,被告人が,本件公訴事実を認め,二度と同様の行為はしない旨述べていること,被告人の父が情状証人として出廷して被告人の監督を約束したこと,弁護人を介して被害者側に示談の申し入れをしていること及び被告人が正式裁判を受けるのは今回が初めてであることなど,有利に酌むべき事情もある(なお,被告人がカウンセリングに通っていることは,その内容に照らして,有利に酌むべき事情とはいえない。)。
 したがって,被告人につき,今回は,社会内での更生を図るべく,その刑の執行を猶予することとして,主文のとおり判決する。
 (求刑 懲役1年)
 高松地方裁判所刑事部
 (裁判官 濵優子)

被告人は,女子高校生一般に対して日頃から怒りや恨み等の感情を抱いていたため,仕返しをする目的だったという弁解~法務総合研修所教官森田秀人「強制わいせつの主観的要素を立証するに当たり,本件の数日後に被告人が別の被害者に同種のわいせつ行為に及んだ事実を用いることができるとされた事例(東京高裁令元. 5. 15判決・上告中)」研修856号

 被告人は,女子高校生一般に対して日頃から怒りや恨み等の感情を抱いていたため,仕返しをする目的だったという弁解~法務総合研修所教官森田秀人「強制わいせつの主観的要素を立証するに当たり,本件の数日後に被告人が別の被害者に同種のわいせつ行為に及んだ事実を用いることができるとされた事例(東京高裁令元. 5. 15判決・上告中)」研修(第856号)判例紹介

1 事案の概要
本件は,被告人が自転車で通行中の女子高校生に強いてわいせつな行為をしようと考え‘①某日午後6時35分頃路上を自転車で通行中のAに対し, 道を尋ねる振りをして呼び止めた上,右手に持った包丁をその腹部に突き付けながら,左手でその右肘付近をつかんで引っ張るなどし, 自転車から降ろしたAを付近の駐車場に連れ込み, 同様に包丁をその腹部に突き付けながら, 「騒いだら殺すぞo」などと言い,抵抗するAの顔面を1回殴るなどの暴行, 脅迫を加え,強いてわいせつな行為をしようとしたが, Aに逃走されたため, その目的を遂げず(強制わいせつ未遂。以下「第1事件」ともいう。),②その5日後の午後7時46分頃路上を自転車で通行中のBに対し, その顔面を1回殴打し, 自転車もろともBを路上に転倒させ,逃げるBを付近の空き地まで追いかけ, Bを押し倒し, その頭部等を多数回殴るなどの暴行を加えた上,スカートをまくり上げ, シヨートパンツの上からその臂部を触り, その際, Bに全治約2週間の傷害を負わせた(強制わいせつ致傷。以下「第2事件」ともいう。) という事案である。
本件では,被告人がA, Bに公訴事実記載の暴行,脅迫をしたことに争いはなく,主たる争点は,被告人が暴行,脅迫の際わいせつな行為をする目的を有していたか否かである(なお, 第2事件では,被告人が意図してわいせつな行為をしたか否かも争点となった。)。
この点について,被告人は,女子高校生一般に対して日頃から怒りや恨み等の感情を抱いていたため,仕返しをする目的だった旨主張した。

恩赦「8割が交通違反や交通事故で罰金刑を受けて運転免許の再取得を制限されている人などだということです。」という報道(テレビ朝日)

「恩赦を受けられるのは罰金を納めてから3年以上が経過している人で、約55万人と見込まれています。法務省によりますと、8割が交通違反や交通事故で罰金刑を受けて運転免許の再取得を制限されている人などだということです。」という報道(テレビ朝日

 法文を捜してみましたが、技能検定員・教習指導員を除いて、運転免許の関係では前科による資格制限はありません。刑務所でも仮免許取得・免許更新が可能ですし。

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20191018-00000034-ann-soci
「即位礼正殿の儀」約55万人に恩赦実施を閣議決定
10/18(金) 12:03配信テレ朝 news
All Nippon NewsNetwork(ANN)
 天皇陛下が即位を宣言される来週の「即位礼正殿の儀」に合わせて、政府は恩赦を実施することを閣議決定しました。

 政府は、交通違反などで罰金刑を受けた人が制限されている資格を回復する「復権」の政令恩赦を実施することなどを閣議決定しました。恩赦を受けられるのは罰金を納めてから3年以上が経過している人で、約55万人と見込まれています。法務省によりますと、8割が交通違反や交通事故で罰金刑を受けて運転免許の再取得を制限されている人などだということです。恩赦が実施されるのは1993年の天皇皇后両陛下のご結婚以来、26年ぶりです。

道路交通法
第二節 免許の申請等
第八八条(免許の欠格事由)
 次の各号のいずれかに該当する者に対しては、第一種免許又は第二種免許を与えない。
一 大型免許にあつては二十一歳(政令で定める者にあつては、十九歳)に、中型免許にあつては二十歳(政令で定める者にあつては、十九歳)に、準中型免許、普通免許、大型特殊免許、大型二輪免許及び牽けん引免許にあつては十八歳に、普通二輪免許、小型特殊免許及び原付免許にあつては十六歳に、それぞれ満たない者
二 第九十条第一項ただし書の規定による免許の拒否(同項第三号又は第七号に該当することを理由とするものを除く。)をされた日から起算して同条第九項の規定により指定された期間を経過していない者若しくは免許を保留されている者若しくは同条第二項の規定による免許の拒否をされた日から起算して同条第十項の規定により指定された期間を経過していない者又は同条第五項の規定により免許を取り消された日から起算して同条第九項の規定により指定された期間を経過していない者若しくは免許の効力を停止されている者若しくは同条第六項の規定により免許を取り消された日から起算して同条第十項の規定により指定された期間を経過していない者
三 第百三条第一項若しくは第四項の規定による免許の取消し(同条第一項(第四号を除く。)に係るものに限る。)をされた日から起算して同条第七項の規定により指定された期間(第百三条の二第一項の規定により免許の効力を停止された者が当該事案について免許を取り消された場合にあつては、当該指定された期間から当該免許の効力が停止されていた期間を除いた期間。以下この号において同じ。)を経過していない者若しくは第百三条第二項若しくは第四項の規定による免許の取消し(同条第四項の規定による免許の取消しにあつては、同条第二項に係るものに限る。)をされた日から起算して同条第八項の規定により指定された期間を経過していない者又は同条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項若しくは同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により免許の効力が停止されている者
四 第百七条の五第一項若しくは第二項、同条第九項において準用する第百三条第四項又は第百七条の五第十項において準用する第百三条の二第一項の規定により自動車等の運転を禁止されている者
2大型仮免許にあつては二十一歳(政令で定める者にあつては、十九歳)に、中型仮免許にあつては二十歳(政令で定める者にあつては、十九歳)に、準中型仮免許及び普通仮免許にあつては十八歳に、それぞれ満たない者に対しては、仮免許を与えない。
3免許を現に受けている者は、当該免許と同一の種類の免許を重ねて受けることができない。


第九〇条(免許の拒否等)
 公安委員会は、前条第一項の運転免許試験に合格した者(当該運転免許試験に係る適性試験を受けた日から起算して、第一種免許又は第二種免許にあつては一年を、仮免許にあつては三月を経過していない者に限る。)に対し、免許を与えなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許(仮免許を除く。以下この項から第十二項までにおいて同じ。)を与えず、又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。
一 次に掲げる病気にかかつている者
イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの
ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの
ハ イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
一の二 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第五条の二第一項に規定する認知症(第百二条第一項及び第百三条第一項第一号の二において単に「認知症」という。)である者
二 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
三 第八項の規定による命令に違反した者
四 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反する行為(次項第一号から第四号までに規定する行為を除く。)をした者
五 自動車等の運転者を唆してこの法律の規定に違反する行為で重大なものとして政令で定めるもの(以下この号において「重大違反」という。)をさせ、又は自動車等の運転者が重大違反をした場合において当該重大違反を助ける行為(以下「重大違反唆し等」という。)をした者
六 道路以外の場所において自動車等をその本来の用い方に従つて用いることにより人を死傷させる行為(以下「道路外致死傷」という。)で次項第五号に規定する行為以外のものをした者
七 第百二条第一項から第三項までの規定による命令を受け、又は同条第六項の規定による通知を受けた者
2前項本文の規定にかかわらず、公安委員会は、次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許を与えないことができる。
一 自動車等の運転により人を死傷させ、又は建造物を損壊させる行為で故意によるものをした者
二 自動車等の運転に関し自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)第二条から第四条までの罪に当たる行為をした者
三 自動車等の運転に関し第百十七条の二第一号又は第三号の違反行為をした者(前二号のいずれかに該当する者を除く。)
四 自動車等の運転に関し第百十七条の違反行為をした者
五 道路外致死傷で故意によるもの又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条から第四条までの罪に当たるものをした者
3第一項ただし書の規定は、同項第四号に該当する者が第百二条の二(第百七条の四の二において準用する場合を含む。第百八条の二第一項及び第百八条の三の二において同じ。)の規定の適用を受ける者であるときは、その者が第百二条の二に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ、適用しない。
4公安委員会は、第一項ただし書の規定により免許を拒否し、若しくは保留しようとするとき又は第二項の規定により免許を拒否しようとするときは、当該運転免許試験に合格した者に対し、あらかじめ、弁明をなすべき日時、場所及び当該処分をしようとする理由を通知して、当該事案について弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
5公安委員会は、免許を与えた後において、当該免許を受けた者が当該免許を受ける前に第一項第四号から第六号までのいずれかに該当していたことが判明したときは、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
6公安委員会は、免許を与えた後において、当該免許を受けた者が当該免許を受ける前に第二項各号のいずれかに該当していたことが判明したときは、その者の免許を取り消すことができる。
7第三項の規定は第五項の規定による処分について、第四項の規定は前二項の規定による処分について、それぞれ準用する。この場合において、第三項中「第一項ただし書」とあるのは「第五項」と、「同項第四号」とあるのは「第一項第四号」と、第四項中「第一項ただし書」とあるのは「次項」と、「第二項」とあるのは「第六項」と読み替えるものとする。
8公安委員会は、第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することを理由として同項ただし書の規定により免許を保留する場合において、必要があると認めるときは、当該処分の際に、その者に対し、公安委員会が指定する期日及び場所において適性検査を受け、又は公安委員会が指定する期限までに内閣府令で定める要件を満たす医師の診断書を提出すべき旨を命ずることができる。
9公安委員会は、第一項ただし書の規定により免許の拒否(同項第三号又は第七号に該当することを理由とするものを除く。)をし、又は第五項の規定により免許を取り消したときは、政令で定める基準に従い、五年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとする。
10公安委員会は、第二項の規定により免許の拒否をし、又は第六項の規定により免許を取り消したときは、政令で定める基準に従い、十年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が免許を受けることができない期間を指定するものとする。
11第五項の規定により免許を取り消され、若しくは免許の効力の停止を受けた時又は第六項の規定により免許を取り消された時におけるその者の住所が当該処分をした公安委員会以外の公安委員会の管轄区域内にあるときは、当該処分をした公安委員会は、速やかに当該処分をした旨をその者の住所地を管轄する公安委員会に通知しなければならない。
12公安委員会は、第一項ただし書の規定により免許の保留(同項第四号から第六号までのいずれかに該当することを理由とするものに限る。)をされ、又は第五項の規定により免許の効力の停止を受けた者が第百八条の二第一項第三号に掲げる講習を終了したときは、政令で定める範囲内で、その者の免許の保留の期間又は効力の停止の期間を短縮することができる。
13公安委員会は、仮免許の運転免許試験に合格した者が第一項第一号から第二号までのいずれかに該当するときは、同項本文の規定にかかわらず、政令で定める基準に従い、仮免許を与えないことができる。
14第四項の規定は、前項の規定により仮免許を拒否しようとする場合について準用する。この場合において、第四項中「第一項ただし書」とあるのは、「第十三項」と読み替えるものとする。

第九九条の二(技能検定員)
4公安委員会は、次の各号のいずれにも該当する者に対し、技能検定員資格者証を交付する。
一 次のいずれかに該当する者
二 次のいずれにも該当しない者
ハ 第百十七条の二の二第十一号の罪を犯し罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者
ニ 自動車等の運転に関し自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第二条から第六条までの罪又はこの法律に規定する罪(第百十七条の二の二第十一号の罪を除く。)を犯し禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者
第九九条の三(教習指導員)
 指定自動車教習所を管理する者は、自動車の運転に関する技能及び知識の教習を行わせるため、教習指導員を選任しなければならない。
2第四項の教習指導員資格者証の交付を受けていない者は、教習指導員となることができない。
3指定自動車教習所を管理する者は、自動車の運転に関する技能又は知識の教習を、教習指導員以外の者に行わせてはならない。
4公安委員会は、次の各号のいずれにも該当する者に対し、教習指導員資格者証を交付する。
二 次のいずれにも該当しない者
ハ 前条第四項第二号ロからニまでのいずれかに該当する者

次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。(2015受験月報SA問題集)

次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。(2015受験月報SA問題集)
 だいたい奥村弁護士が関与した判例を昇任試験で警察官が暗記しているようです。ころころ変わるからな。

2015受験月報SA問題集警察研修社白表紙
次は、児童買春・児童ポルノ法に関する裁判例の記述であるが、誤りはどれか。
(1) 刑法におけるわいせつの定義とは異なり、「徒に」ではなくても、「性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」であれば、児童ポルノに当たる。
(2) 児童ポルノの対象となる児童が特定できなくても、証拠等により、裁判官に合理的な疑いを容れない程度の確実な心証を抱かせることで「児童が18歳に満たない者」であることを証明できる。
(3) バックアップ用の電磁的記録媒体も、そのデータから児童ポルノ・わいせつ物が製造・販売される場合には、「販売目的(提供目的、有償で頒布する目的)の所持」とされる。
(4) 児童に、児童買春・児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせて、携帯電話内蔵カメラで撮影し、そのデータを電磁的記録媒体に保存した場合、撮影と保存の行為それぞれが児童ポルノの「製造」に当たり、それらは併合罪とされる。
(5) インターネット・オークションに児童ポルノを出品して、落札者に当該児童ポルノを送付した場合には、「不特定の者に提供する目的」があるといえる。

◆解説
平成19年9月4日札幌高裁判決は、「…児童ポルノ製造においては、「撮影して写真を作成する』といった、社会通念的に一つの固まりとみられそうな行為であっても、その過程で児童ポルノに当たる物が順次作成されるごとに製造行為が観念でき、当初から意図されていた物が製造されるまでに複数の製造行為が連なっているとみられる場合が少なくない。そして、同一の者が犯意を継続してこれらの行為を行ったような場合には、その全体として包括一罪となると解するのが相当である」とした(高刑速報平19~522)。
正解は(4) 誤り。
(1) 正しい。平成12年7月17日京都地裁判決は、「…性欲を興奮又は刺激せしめる点は必要であるが、しかし『徒に」興奮又は刺激しなくても処罰の対象とし、…」と判示し、さらに、「児童ポルノの定義から最高裁判所判例の掲げる『普通人の正常な性的蓋恥心を害し』という要件が割愛されているとしても、法の一般原則からして、その名宛人としての「普通人』又は『一般人』を基準として判断するのが相当である」とした(判タ1064.249)。
(2) 正しい。平成12年10月24日大阪高裁判決は、「…刑事訴訟法における証明は、医学等の自然科学における証明と異なり、裁判官に合理的な疑いを容れない程度に確実であるとの心証を抱かせれば足りるものである」と判示し、さらに「…児童ポルノに描写されている児童が実在する者であることは必要であるというべきであるが、更に進んで、その児童が具体的に特定することができる者であることまで必要ない」とした(高判速報平12. 146)。
(3) 正しい。平成18年5月16日最高裁決定では、「被告人は、本件光磁気ディスク自体を販売する目的はなかったけれども、…必要が生じた場合には、本件光磁気ディスクに保存された画像データを使用し、…販売用のコンパクトディスクを作成し、これを販売する意思であったものである。…そうすると、本件光磁気ディスクの製造、所持は、法第7条第2項にいう『前項に掲げる行為の目的』のうちの児童ポルノを販売する目的で行われたものであり、その所持は、刑法第175条後段にいう「販売の目的』で行われたものということができる」とした(刑集60.5.413)。
(5) 正しい。平成20年3月4日最高裁決定では、「…被告人は、児童ポルノであるDVDをインターネットオークションに出品して不特定の者から入札を募り、入札期間の終了時点で最高値の入札者を自動的に落札者とし、その後当該落札者にあてて落札されたDVDを送付したものであって、…買受人の募集及び決定並びに買受人への送付という不特定の者に販売する一連の行為の一部であるから、被告人において不特定の者に提供する目的で児童ポルノを外国から輸出したものというを妨げない」とした(刑集623.85)。

罰金前科というのは任意的欠格事由なので国家試験受験・合格までは前科による制限はなく「罰金刑になると納付から五年間、医師や看護師、調理師といった国家資格などを得られないが、復権で制限が回復し国家試験を受けられるようになる(東京新聞)」ということはない

 罰金前科というのは任意的欠格事由なので、国家試験受験・合格までは前科による制限はありません。
 しかも、免許・登録の時点で罰金前科があっても、罪種によっては、そのまま免許・登録できることもあるし、せいぜい、数ヶ月遅れる程度です。
 国家試験の場面では、恩赦・復権の恩恵というのはあまりありません。

調理師法
(絶対的欠格事由)
第四条 第六条第二号に該当し、同条の規定により免許の取消処分を受けた後一年を経過しない者には、第三条の免許を与えない。
(相対的欠格事由)
第四条の二 次の各号のいずれかに該当する者には、第三条の免許を与えないことがある。
一 麻薬、あへん、大麻又は覚せい剤の中毒者
二 罰金以上の刑に処せられた者

保健師助産師看護師法
第七条 保健師になろうとする者は、保健師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
2 助産師になろうとする者は、助産師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
3 看護師になろうとする者は、看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
第八条 准看護師になろうとする者は、准看護師試験に合格し、都道府県知事の免許を受けなければならない。
第九条 次の各号のいずれかに該当する者には、前二条の規定による免許(以下「免許」という。)を与えないことがある。
一 罰金以上の刑に処せられた者
二 前号に該当する者を除くほか、保健師助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者
三 心身の障害により保健師助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
四 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

医師法についてみると、h13には受験資格の制限はなくなりました。

医師法
〔受験の絶対的欠格事由〕
十三条
禁治産者、目が見えない者、耳が聞こえない者及び口がきけない者は、医師国家試験及び医師国家試験予備試験を受けることができない
〔受験の相対的欠格事由〕
第十四条
左に掲げる者については、医師国家試験及び医師国家試験予備試験を受けさせないことがある。
準禁治産者
二第四条各号の一に該当する者

現行法
十三条及び第十四条 削除
(平一三法八七)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/CK2019101802000321.html
罰金刑になると納付から五年間、医師や看護師、調理師といった国家資格などを得られないが、復権で制限が回復し国家試験を受けられるようになる。約五十五万人の罪種別割合は道交法65・2%、過失運転致死傷等17・4%、暴行・傷害3・3%、窃盗2・6%など。

 平成への代替わりでは、公選法違反者が多く含まれ「政治恩赦」と批判を浴び、九三年は一律対象となる政令恩赦を実施せず、特別基準恩赦のみとした。一方、今回の政令恩赦では約四百三十人が含まれる見込みだ。

女子中高生の自画撮り被害~インターネットで知り合った男性からの被害に着目して(犯罪社会学会)

 裸画像を送付した児童の特徴として、危険性認識低い・孤独感高い・容姿満足度合い低い・児童側も性的目的あるなどが指摘されていました。配付資料無し
 教育・啓発の必要性が指摘されていましたが、提供目的製造罪と提供罪は児童にも向けられていますから、それを無視して、教育・啓発しても永遠に力不足でしょう。

http://hansha.daishodai.ac.jp/meeting/program_46th.pdf
D2女子中高生の自画撮被害~インターネットで知り合った男性からの被害に着目して
○藤原佑貴(科学警察研究所
宮寺 貴之(科学警察研究所
久原 恵理子(科学警察研究所
 児童が自分の下着姿や裸の写真を撮影させられ、メール等で送らされる被害について、全国の一般の女子中高生及び被害児童に対して質問紙調査を実施した。本報告では、自画撮り被害の実態を報告するとともに、インターネットで知り合った男性とやりとりをした児童のうち、自画撮り写真を依頼されなかった児童、依頼されたが送付しなかった児童、依頼されて送付した児童の回答を比較検討し、被害防止に関して考察を行う。

「復権令」及び「即位の礼に当たり行う特別恩赦基準」について

 案文が公開されているようです。
 必ず官報で確認してください。

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政令131号(令和元年10月22日)
f:id:okumuraosaka:20191022123131j:plain
令和元年10月22日(特別号外 第15号)

www.moj.go.jp
政令第131号
令和元年10月22日
復権
内閣は、恩赦法(昭和二十二年法律第二十号)第九条の規定に基づき、この政令を制定する。
一個又は二個以上の裁判により罰金に処せられた者で、その全部の執行を終わり、又は執行の免除を得た日から令和元年十月二十二日(以下「基準日」という。)の前日までに三年以上を経過したものは、基準日において、その罰金に処せられたため法令の定めるところにより喪失し、又は停止されている資格を回復する。ただし、他に禁錮以上の刑に処せられているときは、この限りでない。
附則
この政令は、公布の日から施行する
・・・


即位の礼に当たり行う特別恩赦基準
(趣旨)
即位の礼が行われるに当たり,内閣は,この基準により刑の執行の免除及び復権を行うこととする。
(対象)
2 この基準による刑の執行の免除又は復権は,令和元年10月22日(以下「基準日」という。)の前日までに有罪の裁判が確定している者に対して行う。
ただし,第5項第2号に規定する者については,その定めるところによる。
(出願又は上申)
3(1) この基準による刑の執行の免除又は復権は,本人の出願を待って行うものとし,本人は,基準日から令和2年1月21日までに検察官又は保護観察所の長(恩赦法施行規則(昭和22年司法省令第78号)の定めるところにより刑の執行の免除又は復権の上申の権限を有する検察官又は保護観察所の長をいう。
以下同じ。)に対して出願をするものとする。
(2) 検察官又は保護観察所の長は,前号の出願があった場合には,令和2年4月21日までに中央更生保護審査会に対して上申をするものとする。
(3) 第5項第2号の規定による復権の場合は,前2号の規定にかかわらず,それぞれ,第1号の出願は令和2年4月21日までに,前号の上申は令和2年7月21日までにすることができる。
(4) 第1号及び第2号の規定は,この基準による刑の執行の免除又は復権について,検察官又は保護観察所の長が必要あると認める場合に職権により上申をすることを妨げるものではない。
この場合においては,上申をする期限は,前2号に定めるところによる。
刑の執行の免除の基準)
刑の執行の免除は,基準日の前日までに刑に処せられた者のうち,懲役,禁錮又は罰金に処せられ,病気その他の事由により基準日までに長期にわたり刑の執行が停止され,かつ,なお長期にわたりその執行に耐えられないと認められるものであって,犯情,本人の性格及び行状,犯罪後の状況,社会の感情,刑の執行の免除を必要とする事情等を考慮して,特に刑の執行の免除をすることが相当であると認められるものについて行う。
復権の基準)
5(1) 復権は,1個又は2個以上の裁判により罰金の刑に処せられ,基準日の前日までにその全部の執行を終わり又は執行の免除を得た者(他に禁錮以上の刑に処せられている者を除く。)のうち,刑に処せられたことが現に社会生活を営むに当たり障害となっていると認められるものであって,犯情,本人の性格及び行状,犯罪後の状況,社会の感情等を考慮して,特に復権することが相当であると認められるものについて行う。
(2) 前号に規定する者のほか,基準日の前日までに1個又は2個以上の略式命令の送達,即決裁判の宣告又は判決の宣告を受け,令和2年1月21日までにその裁判に係る罪の全部について罰金に処せられ,基準日から令和2年1月21日までにその全部につき執行を終わり又は執行の免除を得た者のうち,刑に処せられたことが現に社会生活を営むに当たり障害となっていると認められるものであって,犯情,本人の性格及び行状,犯罪後の状況,社会の感情等を考慮して,特に復権することが相当であると認められるものについても復権を行うことができる。
(犯罪被害者等の心情の配慮)
6 前2項の規定の適用に当たっては,犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)に基づき犯罪被害者等の視点に立った施策が推進されていることに鑑み,本人がした犯罪行為により被害を受けた者及びその遺族の心情に配慮するものとする。
(その他)
7 この基準に当たらない者であっても,刑の執行の免除又は復権を行うことが相当であるものには,常時恩赦を行うことを考慮するものとする

刑事政策学における恩赦の解説を添えておきます

川出敏裕刑事政策p265
(2)仮釈放と保護観察を連動させることの妥当性
現行法では、仮釈放された場合には必ず保護観察が付くことになっているが、その必要がない場合も考えられる。また、保護観察に付した場合でも、途中でその必要性がなくなる場合もありえよう。特に、残刑期間が長い場合は、現行法上、恩赦以外にこれを打ち切る方法がなく、問題が一層顕著に現れている。
この点について、改正刑法草案は、仮釈放後、すでに刑の執行を受けた期間と同一の期間が経過したとき、無期刑については10年を経過したときは、刑の執行を終了したものとするとしているほか(85条1項、2項)、保護観察の付かない仮釈放(83条2]JI但し著)、保護観察の仮解除(89"及び解除(90条)という制度を定めている。これに対し、更生保護法では、仮釈放中の保護観察を必要的なものとする制度を維持したうえで、その解除や仮解除は認めなかったが、地方委員会が、特別遵守事項を設定しないことや(更生52条2項)、設定した場合でもこれを取り消すこと(53条2項)を認めている。
これにより、従来の制度に比べていくぶん柔軟な運用が可能となった。

森本ほか刑事政策講義 第3版p111
第六節資格制限と復権
(1)資格制限
資格制限とは犯罪者の社会生活上の地位や権利を剥奪ないし制限することをいう。わが国の場合、刑罰に付随する制裁として各種特別法に定められており、その数は、法律数で四百余、制限される資格の名称では約千に達する。
資格制限の沿草
資格制限は沿革的には名誉刑の一形態とされる。名誉刑制度は、古くは公衆の面前において犯罪者に恥辱を与える恥辱刑と犯罪者の社会生活上の権利や身分を剥奪する権利剥奪刑を含んでいた。
しかし、時代の進展につれて名誉心を害するだけの刑罰は衰退し、権利剥奪の形態が主刑もしくは附加刑として生き残り、さらにそれが刑罰そのものでなく、刑罰に付随する制裁措置として制度化されるようになった。わが国においても明治時代の旧刑法では、資格制限が附加刑として定められていたが、現行刑法の制定に際して特別法上の制裁措置に変更されて今日に至っている。

資格制限に対する批判
近年資格制限制度に対する批判の声もみられる。資格制限の種類が多すぎることや制限される種類の間で必ずしもバランスがとれていないことなどのほか、犯罪前歴者の社会復帰にとって有害であることが指摘されている点である。そして、現行の資格制限規定を全面的に洗い直し、職務遂行と犯罪が密接な関係にある場合もしくは一定の重大犯罪の場合に限定すべきであるとか、一律自動的な制限でなく再犯の危険が認められる場合の個別的な制限にとどめるべきであるといった提案が行われている。
(2)復権
資格制限がいつまでも続くのは、犯罪者の人権と社会復帰の両面から好ましいことではない。そこで、失われた資格の回復すなわち復権の制度が要請される。復権は、通常、①法律上の復権、②裁判上の復権、③恩赦による復権の三種類に分けられる。
・・・
裁判上の復権と恩赦による復権
これらは法律上の復権と異なり、犯罪前歴者の行状に応じて個別に資格の回復を認めるもので、司法機関の審査による場合と行政機関の判断による場合がある。裁判上の復権は戦前の改正刑法仮案において採用されたことがあるが、現行制度の上では存在しない。これについては、裁判手続を経ることによって前科が世間に知られる可能性を防ぐ工夫が必要とされる。
恩赦による復権恩赦法の規定に基づいて実施されているものである。これは審査を担当する中央更生保護審査会の審査能力による制約があるので、取り扱われる数はきわめて不十分とされる。また、法律上の復権と異なり、刑の言渡し自体を失効させるものでなく、ただ将来に向かって資格を回復させるだけである(第四章第三節参照)。
前科の抹消
前科という言葉は法令上のものではなく、一種の社会的用語である。その用例として、①犯罪により刑に処せられた場合のすべてを指すとき、②自由刑に処せられて刑務所に収容されたことをいうとき、
③市区町村役場の犯罪人名簿に登録される範囲のものをいうとき、などがある。③の場合は懲役・禁鋼と罰金(現在は道路交通法違反を除く)を含んでいる。
犯罪人名簿は選挙資格の確認などの必要上備えつけられているものであるが、犯罪前歴者のプライバシー保護の徹底に留意しておく必要がある。犯罪前歴者の不安を解消するには、刑の言渡しの失効や恩赦による復権がなされたときは、前科の登録を完全に抹消することがのぞましい。しかし、現在は前科抹消を義務づける法規定の欠如、刑の言渡しの失効通知事務の過重負担などにより、恩赦による資格の回復(大赦・特赦・復権など)を除いて必ずしもスムーズに抹消されていないようである。

p164
恩赦の機能については、思赦制度審議会の最終の意見書(一九四八年二月)によれば、次のものがあげられる。①法の画一的な運用から生じる実際的な弊害の除去、②事情の変更による裁判の事後変更、③誤判の救済、④犯行後の犯人の行状等に基づく刑事政策的な裁判の変更または資格の回復(「新訂更生保護」参照)。
しかし、思赦は、行政府の特権によって司法機関の判断を修正するものであり、政治的に濫用される危険性をもっていることも否定できない。それゆえ、思赦は慎重かつ適正に運用されるべきであり、他の処遇形態によることができないときに限つてのみ恩赦が用いられるべきである(恩赦の謙抑性・補充性)。また従来「思赦は保護観察の総仕上げである」といわれてきた。恩赦の運用にあたっては、保護観察との連携を常に念頭におかねばならない。

前野育三「刑事政策論〔改訂版〕」 p234
(二)憲法上の地位の変化恩赦は、洋の東西を問わず、「君主の仁慈」として行われてきた。
明治憲法下での恩赦はまさにそのようなものであった。
一九四七年施行の日本国憲法は、従来天皇の大権に属していた思赦を内閣の権限とし(七三条七号)、天皇は認証するのみとなった(七条六号)。
七三条においても七条においても「恩赦」という語は用いられず、「大赦、特赦、減刑刑の執行の免除及び復権」という語が用いられている。
もはや「君主の仁慈」でなくなったので、「恩赦」という語がふさわしくないと考えられたのであろう。
このように恩赦の憲法上の地位は大いに変化したといえる。
しかし恩赦法の規定は、旧憲法下の恩赦令とほとんど変わっていない。
ここに現在の恩赦制度の基本的な問題がある。
日本国憲法によって、思赦の憲法上の地位に変化が生じた機会に、新しい憲法にふさわしい恩赦のあり方を検討するために、内閣に思赦制度審議会が設けられ(一九四七年一〇月一日)、同審議会は翌年六月三O日に最終意見書およぴ勧告書を内閣に提出している。
この最終意見書に挙げられた恩赦の存在意義は、寸法の画一性に基く具体的不妥当の矯正」、「他の方法を以てしては救い得ない誤判の救済ヘ「事情の変更による裁判の事後変更へ「有罪の言渡を受けた者の事後の行状等に基くいわゆる刑事政策的な裁判の変更もしくは資格回復」の四点である。
この基準から見ると、公職選挙法違反や政治資金規制法違反の政治家救済のための恩赦の運用は、日本国憲法下の恩赦として予定されていないものと言わなければならない。
さらに、「事情の変更による裁判の事後変更」(たとえば、戦前・戦中の悪法によって処罰された人の救済)を考慮しなければならない激動の時代を遠く過ぎ去った今日では、政令思赦の存在自体に疑問が提起されるに至っている。
日ロ政令思赦と特別基準恩赦国家の慶祝時や皇室の慶弔時に行われる政令思赦(大赦令、減刑令、復権令)から漏れたケlスで、恩赦に適するものを、二疋の基準に従って個別的に拾い出して行われるのが特別基準恩赦である。
これは慶弔時恩赦である点において政令恩赦と共通しており、同じく個別恩赦とはいっても、常時恩赦とは異質のものである。
慶弔時恩赦の政治的性質を見る際にも、政令恩赦だけを見ていたのでは、その本質が十分に見えてこないことが多い。
現に即位の礼恩赦に際しては、大赦は行われず、昭和天皇崩御思赦の大赦には公職選挙法違反者は含まれていないが、どちらの場合にも、特別基準恩赦によって政治家の救済が行われているのである。
特別基準思赦の基準として挙げられる「社会のために貢献するところがあり、かつ、その刑に処せられたことが現に公共的社会生活上の障害となっている者」という表現によって、政治家救済に焦点を合わせた恩赦が行われているのである。
日本国憲法下の思赦でありながら、政治的利用が顕著になったのは、国際連合加盟思赦(一九五六年一二月一九日施行)以来であるということができるであろう。
一九四五年一O月一七日施行の第二次大戦終局恩赦から一九五二年四月二八日施行の平和条約発行思赦に至る各思赦は、主として、敗戦、新憲法の発布、占領状態の終結という急激な社会情勢の変化およぴそれに伴う法令の改廃に対応したものであり、合理性を認めることができよう(田中開「戦後における恩赦の運用とその問題点」ジュリスト九三四号五五頁)。
それに対し、国際連合加盟恩赦では、公職選挙法違反、政治資金規制法違反を主体とした大赦が行われ、公職選挙法違反だけで大赦対象者の九九・九%近く、実数で七万人近くを占めた。
これに対しては、世論の強い反発があったので、その後は、選挙違反を対象とした大赦は行われていない。
しかし、一九五九年四月一O日施行の皇太子殿下(明仁親王)御結婚恩赦以降の各恩赦事例では、大赦に代わって復権令による復権や、特別基準思赦としての特例や復権によって、相当多数の公職選挙法違反者が公民権を回復している。
昭和天皇崩御恩赦(一九八九年二月二四日施行)では、特赦を原としそれから漏れた者を特別減刑や特別復権で救済するという形式ではなく、思赦の種別ごとに要件を定めて行われた。
政令恩赦として、大赦には公職選挙法違反は含まれず、復権が大量に行われた。
即位の礼恩赦(一九九O年一一月一二日施行)では大赦が行われず、他の点では崩御恩赦と基本的に同じである。
国連加盟思赦に典型的に見られた政治性に対する世論の批判を避けたものであろう。
世論は思赦の形を変えたわけである。
しかし、具体的な形式は変化するが、復権によって実際に利益を受けるのは公職選挙法違反者など政治家である点は変わらず、政治的恩赦としての基本性格に変化はない。
世論の力を評価しながらも、この点を見落としてはならない。
なお、道路交通法違反で罰金を科される者が多いために、復権令による復権の対象に罰金が包摂される場合、適用人員が彪大な数に達する。
しかし道路交通法違反の罰金は事実上、犯罪人名簿に登載されていないので、復権の必要のない者である。
この場合、復権は何の利益も与えず、まったく形式にすぎない。
(帥常時思赦これら政令思赦や特別基準恩赦とひと味違った役割を演じているのが常時恩赦である。
個別恩赦の種類には特赦、減刑刑の執行の免除復権の四種類があるが、常時恩赦として行われるのは刑の執行の免除復権である。
刑の執行の免除は、仮釈放後の保護観察期間を短縮するために用いられており、復権は、前科のあることが社会的活動の障害や精神的負担になっている三号観察(仮釈放後の保護観察)終了者に対し、精神的負担を除去して社会復帰を促進しようとするために用いられている。
とくに無期刑については、仮釈放後の保護観察は終身続けられるので、思赦(通常は刑の執行の免除)による以外には、それを打ち切ることができない。
刑の執行の免除によって保護観察が短縮された例や、復権の行われた例を見ると、社会生活上の障害を除去するだけでなく、精神的にも大きな励みになっていることが報告されている(「更正保謎」誌上に多数の事例報告あり)。

「男女に対し、「お前ら、今日やらんかったら知らんぞ」などと脅迫の上、性行為を強要し、その証拠画像を撮影して送るよう指示していた。」場合の罪名

 強制性交罪が検討されますよね。
 13未満の男女に強制性交させた事例があります
http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/09/05/000000

https://bunshun.jp/articles/-/14745
時期は昨年末ごろ。加害教師4人組の1人で、30代男性のA教師が、後輩教師の男女に対し、「お前ら、今日やらんかったら知らんぞ」などと脅迫の上、性行為を強要し、その証拠画像を撮影して送るよう指示していた。さらに「(証拠画像は)汚いからオレの携帯には送ってくんなよ」と命じた上、動画が報道されている「激辛カレー強要事件」の被害者であるX先生の携帯に、その画像を送らせたことも分かった。

(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
・・・
今井將人「刑法の一部を改正する法律」の概要 研修(平29. 8,第830号)法の焦点
(2)要件
「性交」とは,改正前の刑法177条の「姦淫」と同義であり,膣内に陰茎を入れる行為をいう。
「肛門性交」とは肛門内に陰茎を入れる行為をいい, 「口腔性交」とは口腔内に陰茎を入れる行為をいう(注4)。
「性交」, 「肛門性交」及び「口腔性交」を合わせて「性交等」ということとされており, これらの行為には, 自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内等に入れる行為だけでなく, 自己又は第三者の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為(入れさせる行為)を含む。具体的には,女性が行為主体となって,男性の陰茎を自己の膣内に入れさせる行為や,男性が別の男性の陰茎を自己の肛門内に入れさせる行為も,強制性交等罪による処罰対象となる。

(注4)例えば,陰茎を口腔内に全く入れずに単に舌先でなめる行為や,女性の外陰部をなめる行為などは, 「口腔性交」には当たらない。

「2011.7の性交」という児童淫行罪の訴因で2018.7に起訴され、「2010.7~2012.4の多数回性交」に訴因変更して有罪とした事案(大阪地裁H31.10.15)

2018.2 捜査開始
2018.7 起訴

当初訴因 2011.7の性交

変更後訴因 2010.7~2012.4の多数回性交

 児童淫行罪は包括一罪というのは、家庭内で行われるから犯行日が特定しづらいというのを救済するためにも使われるんですよね。
「2011.7の性交」を起訴するときは、一連の淫行の最後の1回を起訴していることが多いので、それだと、公訴時効に掛かってしまいます。(「2011.7の性交」という訴因なのに、一連の淫行が審判対象になることになって、訴因制度の趣旨に反します。)
「2010.7~2012.4の多数回性交」ということになれば、全体として、最後の淫行から7年の公訴時効がカウントされることになります。免訴を逃れるための訴因変更には、問題があると思います。

https://digital.asahi.com/articles/ASMBD45SBMBDPTFC004.html
判決によると、男は2010年7月~12年4月ごろ、交際相手の娘で、当時中学生だった女性に自宅で多数回にわたり性交した。

 女性は18年2月に大阪府警に被害を相談し、大阪地検は同7月に起訴。裁判では公訴時効(7年)が争点となった。

 男は11年7月以降は両者間に性交はなかったと主張。起訴時点で時効が成立しているとして、裁判を打ち切る免訴の判決を求めていた。

 佐藤裁判長は、女性が12年夏に実父に「死にたい。助けて」と訴えて引っ越したことから「転居を決断するまで犯行は継続したと考えられる」と認定。時効は成立しないと判断した。

 大阪地検は今年2月に一定期間に多数回の行為があったとする起訴内容に変更した。時効成立の可能性を考慮したとみられる。被告側は「犯行の最終日が特定されておらず、被害者の供述の信用性に疑問がある」と主張していたが、判決では「日常的に行われていた犯行の日を、被害者が特定できないことは不自然ではない」と退けた。

性犯罪、時効の成否争点 母の交際相手から被害「救いない」 大阪地裁、15日判決【大阪】
2019.10.12 朝日新聞
 男は児童福祉法違反(淫行)の罪で起訴され、大阪地裁で公判中だ。起訴内容によると、2010年7月~12年4月ご
 ろ、大阪府内の自宅で、同居していた女性が18歳未満と知りながら多数回にわたって性交したとされる。

 女性が被害を明かしたのは公訴時効(7年)が迫った18年1月。母親に打ち明け、警察に相談した。大阪地検は同年7月、男が11年7月に性交したとして同法違反で起訴。今年2月に起訴内容を改め、日時を特定せず、一定期間に多数回の行為があったとする起訴内容に変更した。時効が成立する可能性を考慮したとみられる。
 裁判で検察側は、女性が12年夏に父親宅に転居するまで犯行は継続したと考えられると主張。犯行は長期間、恒常的に
 行われ、悪質だとして、懲役6年を求刑している。

 これに対し、弁護側は性交を認めたが、11年7月の被害を除き犯行日を特定できておらず、女性の記憶があいまいだと主張。その頃から女性はベランダで寝るなどして被告を遠ざけており、両者間に性交はなく、起訴時点で時効が成立しているとして裁判を打ち切る免訴の判決を求めている。

児童買春罪で執行猶予判決(福岡地裁H31.4.25)を受けて確定後に、H31.4.13の児童買春罪で逮捕された場合

 条文上は、刑法25条1項1号で執行猶予が検討されます。執行猶予が付くとは言ってない

前刑   福岡地裁H31.4.25
被疑事実 H31.4.13

第二五条(刑の全部の執行猶予)
1 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
・・・
条解刑法
10)余罪と執行猶予
執行を猶予された罪の余罪の場合
本条1項l号の要件を文字どおりに解釈すると,ある罪について執行猶予を言い渡す有罪判決が確定した後にその確定前に犯した罪について刑を言い渡すべき場合でも執行猶予を言い渡すことはできないように思われる。しかし判例は,もしこれらが同時に審判されていたら一括して本条I項により刑の執行を猶予することができたのであるから,それとの権衡上,本条1項l号の欠格事由がないものとして更にその刑の執行を猶予することができるとする(最大判昭28・6・10集76~1404)。判例はこの考え方を更に進め,同時審判を受ける可能性がなかった余罪,すなわち,前の裁判の言渡し後確定前に犯した罪も同様に解している(最大判昭32・2・6集112 503)。したがって,ここでいう余罪とは,前の裁判確定時を基準としてそれ以前に犯した罪をいい,この場合の執行猶予は本条2項ではなく1項によって言い渡すべきことになる(最大判昭31・5・30集105 760)。この場合に前の刑と余罪の刑とが合算して3年以下であることを要するかという問題があるが,消極に解すべきであろう(大阪高判昭42・10・6高集20-56230 なお,本条注15参照)。

 児童買春関係の実例としては、余罪を罰金にした事案がある。ただし執行猶予の事件よりも前の事件

懲役1年執行猶予3年 某地裁R01.12.24判決
第1 r01/6/18 A子 現金の対償供与の約束し性交
第2 r01/7/3 B子 現金の対償供与の約束し性交

某簡裁R02.2.26 罰金50万円
R01/5/25 C子 3万の対償供与の約束し性交

https://www.yomiuri.co.jp/national/20191017-OYT1T50105/
発表によると、容疑者は4月13日、同市内のホテルで、中学3年の女子生徒が18歳未満と知りながら現金4万円を渡し、わいせつな行為をした疑い。容疑を認めているという。

 同署などによると、容疑者は県内の小学校に勤務していた1月、別の女子中学生に対する児童買春容疑で逮捕、起訴され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。今回の事件を起こしたときは公判中で、釈放されていた。

脅迫して児童に裸画像を送らせる強制わいせつ罪(176条後段)(奈良県警)

 同様の行為について「強要罪であって強制わいせつ罪ではない」という高裁判例がいくつかあるので、これがわいせつ行為かについては、控訴して判断させて欲しいところです。
 警察から適用法条を聞かれることがあるので、既にブログで紹介した下記の裁判例を教えたら「それは捜査済み」とか言ってました。
  東京地裁H18.3.24
  松山地裁西条H29.1.16
  高松地裁丸亀H29.5.2
  高松地裁H28.6.2
  札幌地裁H29.8.15
  大分地裁H23.5.11
  東京地裁H27.12.15
  岡山地裁H29.7.25
  横浜地裁H28.11.10

裸の画像送らせスマホに保存容疑 橿原署、男2人逮捕=奈良
2019.10.11 読売新聞
 女子児童にスマートフォンで裸の画像を送らせるなどしたとして、橿原署などは10日、A(26)、B(32)の両容疑者を児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの疑いで逮捕したと発表した。2人とも容疑を認めているという。
 発表では、両容疑者は8月、大阪府内に住む小学5年の女児(11)に、それぞれ、裸の画像を撮影させて、スマホのアプリ「インスタグラム」で送らせて保存するなどした疑い。
同署によると、別の捜査でA容疑者のスマホを押収して発覚したという。B容疑者は、同世代の少女を装って女児とやり取りし、「自分の裸の画像を送るから、あなたも送って」などと要求。A容疑者は、女児に、女児自身のわいせつ画像を送って脅し、わいせつ画像を新たに撮影させていたという。同署は、2人が情報や入手したわいせつな画像データを交換するなどしていたとみている。

横浜DeNAの投手を書類送検 女子高生にみだらな行為


 淫行より製造の方が重くて、
 青少年条例違反は逮捕されないことがある程度の罪名、、姿態をとらせて製造罪は逮捕される方が多い罪名です。
 併せて罰金50~80万になることが多いと思います。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

神奈川県青少年保護育成条例
(みだらな性行為、わいせつな行為の禁止)
第31条 
1何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。
第53条 第31条第1項の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191011-00000019-kana-base
横浜DeNAの投手を書類送検 女子高生にみだらな行為
10/11(金) 13:10配信カナロコ by 神奈川新聞
横浜DeNAの投手を書類送検 女子高生にみだらな行為
翔投手
 県警は11日、県青少年保護育成条例違反と児童買春・ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)の疑いで、プロ野球横浜DeNAベイスターズの投手(22)を書類送検した。
【写真で見る】ブルペンで力投を見せていた
 書類送検容疑は、昨年1月上旬、横浜市内のホテルで高校1年の女子生徒(16)にみだらな行為をし、スマートフォンでその様子を動画撮影した、としている。
 県警によると、女子生徒とは会員制交流サイト(SNS)で知り合ったといい、調べに対し「女子生徒が18歳未満であることを知りながらやった」と容疑を認めている。
 同投手は、茨城・霞ケ浦高から2015年のドラフト5位でDeNAに入団。17年にプロ初勝利を挙げた。今年7月に、今回の事案が発覚し、球団から無期限謹慎処分を受け、今季の1軍登板はなかった。DeNAはすでに同投手と来季の契約を結ばないことを通告している。
神奈川新聞社

執行猶予中に、「懲役2年6月の判決に保護観察付きの執行猶予」(長野地裁R01.7.11 木曜日)

弁護人は懲役1年・再度の執行猶予を求めたと思われますが、どう対応すればいいですかね。

http://www.courts.go.jp/nagano/saiban/tanto/tisai_tanto/index.html

第二五条(刑の全部の執行猶予)
2前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

原田 量刑判断の実際3版 p44
前刑の執行猶予中の犯行について,再度の執行猶予を付する場合には,①宣告刑を懲役又は禁鋼1年以下にすべきこと,②前刑の執行猶予に保護観察が付されていないこと,③今回の執行猶予につき,保護観察を必ず付することの3要件のチェックが必要で、ある(刑法25条2項, 25条の2第1項後段)。
このうち,①の要件を看過して1年を超える刑を科するミスは,多くはないが,かなり恒常的に発生している。これは,再度の執行猶予の場合は,実刑も考えられる微妙なケースでもあるために,刑は求刑どおりが妥当だとつい考えがちだからである。いわば,心理的なエアポケットに陥るおそれがある。

刑法規定に反し2度目猶予判決 控訴審で検察指摘
2019.10.10 読売新聞
 執行猶予中に大麻取締法違反(所持、栽培)に問われた被告の男(31)に対し、長野地裁が7月、刑法上認められないにもかかわらず、再度、執行猶予付きの判決を言い渡していたことがわかった。検察側が控訴し、9日に東京高裁で行われた控訴審第1回公判で「1審判決は破棄されるべきだ」と指摘した。
 問題となっているのは、7月11日付の同地裁判決。
 男は2月に別の罪で懲役3月、執行猶予2年の判決を受けたが、執行猶予中の4月に大麻約195グラムを所持したなどとして起訴された。刑法は、執行猶予中に再び罪を犯した被告に対し、1年以下の懲役または禁錮を言い渡す場合に限り、特に酌むべき事情があれば執行猶予を付けることができると規定。しかし、同地裁は「更生の意欲を示している」などとして、懲役2年6月の判決に保護観察付きの執行猶予を付けていた。
 9日の公判では、検察側が「1審判決には法令違反がある」とした上で、「被告には実刑が相当だ」と主張するなどして即日結審した。判決は30日の予定。

児童を使った美人局恐喝の対応

 援助交際は疲れる・援助交際より楽に高額稼げるという動機だと思います。相手方には恐喝とか児童淫行罪とか児童買春周旋罪とか重い罪が並びます。

 児童との性行為がないとか、児童ではない場合には、遊客は逮捕されないので、刑事課に相談すれば、恐喝は止みます。相手方も検挙されます。報道の場合は深夜同伴罪程度なので逮捕されることはありません。

  児童と買春・淫行の既遂になっている場合(児童と知らない場合も含む)、遊客が恐喝被害に音を上げて警察に相談して、刑事課に行っちゃうと、児童買春罪の自首にならないので、後日逮捕されることがあります。

「少女が勤め先に来てトラブルに」と教諭、警察に相談…児童買春が発覚 大阪・池田市2010.10.15 産経


 そういう場合は、まず、経験がある弁護士に迅速に対応してもらって、少年係に児童買春罪を自首して(児童買春の年齢を知らないときは適用される罰条がないとかの意見も書いて)、その際に、恐喝被害を申し添えて下さい。刑事課とか機動捜査が来て、金銭授受の日時場所を設定して、現行犯してもらえることがあります。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191009-00050171-yom-soci
高1女子ら「まだ17歳、通報したら終わりだよ」…ホテルで男性脅す
10/9(水) 12:27配信読売新聞オンライン
 警視庁は8日、東京都港区の私立高1年の女子生徒(16)ら16~17歳の少年少女5人を恐喝未遂容疑で逮捕したと発表した。逮捕は9月22日~10月1日。

 警視庁幹部によると、5人は8月1日未明、渋谷区道玄坂のホテルで、同区の30歳代の会社員男性から現金を脅し取ろうとした疑い。この直前、路上で男性が5人のうち1人の少女に声をかけてホテルに誘い込んだところ、ほかの少年4人が現れ、「まだ17歳だよ。警察に連絡したら終わりだよ」と脅した。男性が110番し、現金は奪われなかった。調べに対し、5人は容疑を認めている

同一児童に対する、強制わいせつ罪(176条後段)と児童ポルノ製造を起訴するときには、二重起訴にならないように注意する

3/6逮捕  1/下旬のわいせつ行為
3/26再逮捕 9/30のわいせつ行為
5/24 公判1回目 9/30のわいせつ行為
6/25 公判2回目 11/下旬のわいせつ行為
7/30 公判3回目 わいせつ行為+その際の児童ポルノ製造
9/13 公判4回目 求刑3年6月
10/8 判決 2年6月


 被害者(8)が共通なので、製造罪は包括一罪になりますよね(判例)。
 強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪は観念的競合だというので(東京高裁 H30.1.30等)、かすがい効果で全部科刑上一罪になりますよね。
 処断刑期の上限は10年になるし、追起訴は二重起訴の違法がありますよね。

https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/690831.html
勤務校女児にわいせつ、元小学校臨時講師に実刑 静岡地裁判決
(2019/10/8 17:42)
 勤務していた小学校の女児にわいせつな行為をしたなどとして、強制わいせつと児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた静岡県中部の元小学校臨時講師の男(24)=懲戒免職=に対し、静岡地裁は8日、懲役2年6月(求刑懲役3年6月)の実刑判決を言い渡した。
 林田海裁判官は判決理由で「被害児童に好意を抱き、独占したいとの思いで犯行に及んだ動機は身勝手で自己中心的。厳しい非難に値する」と指摘。「信頼を寄せられる立場の被告が、立場を悪用した常習的な犯行で大変悪質。被告の反省などを考慮しても刑の執行を猶予すべきとは言えない」と説明した。
 判決によると、男は2018年9月下旬から11月下旬にかけ、勤務校の女児に対し複数回にわたりわいせつな行為をし、その際に自身のスマートフォンで動画を撮影して児童ポルノを製造した。
 同地裁は男の氏名などを被害者の特定につながる事項と判断し、裁判は匿名で行った。