児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「教諭、わいせつ行為」女児が賠償提訴へ 「PTSDで不登校に」 /千葉県 訴額1000万円

 刑事事件になる前に民事訴訟をするようです。

「教諭、わいせつ行為」女児が賠償提訴へ 「PTSDで不登校に」 /千葉県
2019.01.23 朝日新聞
 自身が通う小学校の30代の男性教諭から胸などを触るわいせつ行為を受け続け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患って通学できなくなったとして、県内の公立小6年の女児と両親が、男性教諭と同校のある自治体と県を相手取り、計約1千万円の慰謝料や損害賠償を求めて今月中にも提訴することがわかった。

 女児と両親の代理人弁護士によると、女児は2017年9月ごろから、校内で男性教諭に脇やあごをくすぐられるようになった。昨年2月には1人で女子トイレを掃除中、男性教諭に複数回にわたって服の中に手を入れられ、胸をさわられたと訴えている。このころ、女児は両親を通じて学校や地元の警察署に被害を申告し、署は被害届を受理した。

 女児は昨年4月にPTSDと診断され、同6月には自治体の教育委員会が同校の校長と男性教諭を口頭で厳重注意した。
 女児と両親は同校や自治体教委が十分な対応をせず、通学できない期間が長期化したのは、教委や学校側の監督義務違反や調査義務違反などがあったためと訴えている。

 男性教諭は被害発覚後も同校に勤務していたが、昨年7月に教委へ異動した。教委の聞き取りに対し、女児のあごや肩を触ったり、脇をくすぐったりしたことは認めたが、胸を触ったことは否定しているという。

 女児の父親(56)と母親(47)は取材に「(娘は)活発な子だったのに、明るさがなくなった。学校も大好きだったのに通えていない。守ってくれるはずの学校がろくに対応してくれず、強い怒りを覚える」と話した。

 (松本江里加)

23歳による強制わいせつ行為について、行為者に198万円の損害賠償責任を認め、同居する父親の責任を否定した事例(東京地裁h29.6.1)

 行為者が刑務所にいると、判決取っても回収できないので、親も被告に加えたんでしょうが、親には責任がないということに。
 刑事事件は、被害弁償しなくても、執行猶予になっているようです。
 被害者は、強制わいせつの被害に加えて、弁護士費用・訴訟費用が持ち出しになってしまいますよね。

裁判年月日 平成29年 6月 1日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平28(ワ)16885号
事件名 損害賠償請求事件
文献番号 2017WLJPCA06018003

判例アラート
ブックマーク

 
東京都江東区〈以下省略〉 
原告 
X 
法定代理人親権者 
A 
B 
同訴訟代理人弁護士 
三苫大介 
埼玉県川越市〈以下省略〉川越少年刑務所収容中 
被告 
Y1 
東京都江戸川区〈以下省略〉 
被告 
Y2 
上記両名訴訟代理人弁護士 
棚田章弘 
主文
 1 被告Y1は,原告に対し,198万円及びこれに対する平成25年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
 3 訴訟費用のうち,原告と被告Y1との間に生じたものは,これを2分し,その1を原告の,その余を被告Y1の負担とし,原告と被告Y2との間に生じたものは,原告の負担とする。
 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
 
 
事実及び理由

第1 請求
 被告らは,原告に対し,連帯して,385万円及びこれに対する平成25年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,被告Y1(以下「被告Y1」という。)が原告にわいせつ行為をしたことについて,原告が,被告Y1及びその父である被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し,それぞれ,不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
 1 争いのない事実
  (1) 被告Y1(当時23歳)は,平成25年6月3日午後6時20分頃,東京都江東区〈以下省略〉所在のアパート(以下「本件アパート」という。)の1階の原告(当時9歳)が居住する居室に侵入し,その頃から同日午後6時25分頃までの間,同所において,原告の口を塞ぎ,「静かにしてな。」などと言い,原告に接吻をし,さらに,原告の着衣の中に左手を差し入れ,原告の陰部を弄ぶなどした(以下,このわいせつ行為を「本件わいせつ行為」という。)。
  (2) 被告Y2は,被告Y1の父であり,本件わいせつ行為の当時,本件アパートの3階の居室において,被告Y1と同居していた。
  (3) 被告Y1は,本件わいせつ行為の前に,わいせつ行為を行い(以下,このわいせつ行為を「別件わいせつ行為」という。),強制わいせつ等の罪で起訴され,平成25年3月8日,執行猶予付きの懲役刑の判決を受けた。
 被告Y1の母は,上記事件の証人尋問(以下「別件証人尋問」という。)において,証人として,被告Y2と共に被告Y1と同居して被告Y1を監督する旨証言した。
  (4) 被告Y1は,本件わいせつ行為の当時も,別件わいせつ行為の当時も,無職であった。
 2 争点
  (1) 被告Y2の不法行為責任
 (原告の主張)
 被告Y2が被告Y1を監督する意思がないのであれば,被告Y1の母が別件証人尋問において被告Y2と共に被告Y1と同居して被告Y1を監督する旨証言するはずはないから,被告Y2は,上記証言時に,被告Y1を監督する旨誓約したものである。また,被告Y1が別件わいせつ行為を行ったことから,被告Y2は,被告Y1が安易にわいせつ行為に及ぶ傾向があることを知っていた。そして,被告Y2は,実際に被告Y1と同居していたのであるから,被告Y1がわいせつ行為に及ばないよう監督すべき義務があった。
 被告Y2は,上記義務に違反し,本件わいせつ行為による損害を生じさせたから,民法709条に基づく損害賠償責任を負う。
 (被告Y2の主張)
 被告Y2は,被告Y1を監督する旨誓約していないし,被告Y1の監督義務を負わないから,民法709条に基づく損害賠償責任を負うことはない。
  (2) 原告の損害
 (原告の主張)
   ア 慰謝料 350万円
 原告は,安全な場所であるはずの自宅において本件わいせつ行為の被害に遭い,相当の恐怖,ショックを覚えた。原告は,その後も男性を見るだけで極度に恐れ,学校も休みがちであるなど,本件わいせつ行為によるショックを拭いきれていない。このような原告の精神的損害を慰謝するには,350万円は下らない。
   イ 弁護士費用 35万円
 (被告らの主張)
 慰謝料の額は争う。その余は知らない。
第3 争点に対する判断
 1 争点(1)(被告Y2の不法行為責任)について
 前記第2の1の事実関係に加え,証拠(乙2)及び弁論の全趣旨によれば,被告Y1が,本件わいせつ行為の前に別件わいせつ行為を行ったこと,被告Y1の母が,別件証人尋問において,被告Y2と共に被告Y1と同居して被告Y1を監督する旨証言したこと,被告Y2も,その頃,別件わいせつ行為を踏まえ,被告Y1と同居して被告Y1を監督しなければならないと考え,その後,被告Y1と同居していたこと,被告Y1が本件わいせつ行為の当時も別件わいせつ行為の当時も無職であったことが認められる。
 しかし,以上のような事情をもって,本件わいせつ行為の当時,被告Y2に被告Y1を監督すべき不法行為法上の義務があったということはできず,他にこれを左右する事情もうかがわれない。したがって,本件わいせつ行為によって生じた損害について,被告Y2に民法709条に基づく損害賠償責任を認めることはできない。
 2 争点(2)(原告の損害)について
  (1) 本件わいせつ行為の態様等に照らせば,原告が相当の精神的苦痛を受けたことは明らかである。このほか,本件に現れた一切の事情を勘案すれば,原告の慰謝料としては180万円の支払を命ずるのが相当である。
  (2) 本件事案の内容等に照らすと,弁護士費用について,本件わいせつ行為と相当因果関係のあるものとしては,18万円の損害を認めるのが相当である。
 3 結論
 よって,原告の請求は,被告Y1に対して198万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその範囲で認容し,その余はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第16部
 (裁判官 安江一平)

兵庫県青少年愛護条例違反の無罪判決(神戸地裁尼崎支部h29.8.23)

 地検尼崎支部は「東京じゃないか」、東京地検は「尼崎だ」というのですが、金井検事と地裁尼崎支部に特定事項を聞いて、判決書を閲覧しました。
 真剣交際の弁解が通ったのは、愛知県青少年保護育成条例の無罪判決(名古屋簡裁H19.5.23)に続いて2件目かな。

捜査研究No.816 (2018.11.5)
【実例捜査セミナー】. □青少年保護育成条例違反事件について,みだらな性行為(淫行)の該当性が問題となった事例. 東京地方検察庁検事 金井 翔.
https://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/sousakenkyu/201811/

 検察官は、日時場所をピンポイントに特定して、そこでsexしたのだから、専ら性的欲望だったと主張していた模様で、被告人・弁護人はそれに至る交際状況を主張・立証した模様です。

 検察官は「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような」事情として
   避妊具を付けることも無く性行為に及んだ点
  被告人と相手方との交際関係は結婚を前提としていなかったこと
  カラオケ店で性行為に及んだこと
などを指摘したようですが、判決で退けられています。
 捜査段階の被疑者調書では完全に自白していたようで、捜査段階で弁護人からこういう点について要領良く主張できれば、起訴されていなかったと思います。

金井翔 青少年保護育成条例違反事件について,みだらな性行為(淫行)の該当性が問題となった事例 捜査研究816号 p31
第2 事案の概要等
1 A及びVの身上関係等
Aは,本件当時38歳の男性であった。
Aに婚姻歴はなく,本件当時, V以外に交際している女性はいなかった。
Vは,本件当時17歳の女性であり,高校3年生であったが,約2か月後が18歳の誕生日であった。
Vは,本件以前にも男性と交際した経験はあったが,本件当時, A以外に交際している男性はいなかった。
2 A及びVが交際に至る経緯及び交際開始後の状況等A及びVは,本件性行為に及んだ当時,交際関係にあったところ,両名が交際に至った経緯及び交際開始後の状況等は以下のとおりである。
(1) Aは,平成27年5月頃から,警備員として働き始め,その勤務先でアルバイトをしていたVと知り合った。
Aは, Vと知り合って以降休憩時間等にVと話をするようになり, Vからは家庭内の事情や進学先等について相談を受けるなどしていた。
(2) Aは,平成28年5月末日に前記勤務先を退職することとなり,その旨をVに伝えていた。
Aは, 同日,仕事を終えると, Aの仕事が終わるのを待っていたVと合流し, 2人で飲食するなどしたが,その際Vから手紙とクッキーを渡され, さらに, Vと連絡先を交換した。
VがAに渡した手紙には, これまで相談に乗ってもらったことへの謝辞のほか, 「(Aのことが)大好きです。」などと書かれていた。
(3) Aは,連絡先を交換して以降, Vとの間で連絡を取り合っていたが, 同年6月上旬,再びVと2人で会うことになった。
Aは, 同日, Vと合流すると, インターネットカフェに入店し,その個室内でVに抱き付くなどした。
Aは, Vと同インターネットカフェを出たが, Vから「セフレ(セックスフレンド)の関係になりたくない。」などと言われたため,それだったら付き合おうなどと述べて交際を申し込み, vがこれを承諾したため,両名は交際することとなった。
④Aは, Vとの交際開始後,週2, 3回の頻度でVと会い, 同年6月下旬ないし同年7月上旬頃, ラブホテルにおいて初めて性行為に及び,以降,何度かVと性行為に及んだ。
Aは, Vとの交際開始後, Vを介して, Vの交際相手としてVの姉やVの友人に紹介されたことがあった。
他方で, Aは, Vといる際にVの実母と何度か会う機会があったが, 同人に挨拶をすることはなかった。
3 本件性行為時の状況等A及びVは,前記の経緯で交際を開始し,その後,本件性行為に及んだものであるが,その状況等は以下のとおりである。
(1) Aは,平成28年9月中旬, Vと会うと,一緒にカラオケ店に入店した。
A及びVは,前記カラオケ店の個室内でカラオケをしていたが, Aは,しばらくして, Vの胸を触るなどした上, Vと性交し,本件性行為に及んだ。
(2) 前記カラオケ店の店員は店内の巡回を行っていたところ, A及びVの個室内の歌詞等を表示するモニター画面の電源が切れていたことから不審に思い,個室内に立ち入った。
すると,前記店員は, Vが上半身裸の状態で座っている状況を認めたため,警察に通報した。
(3) Aは,本件発覚後もVとの交際を継続しており, Vの18歳の誕生日も2人で過ごすなどしたが,交際開始から約6か月後の同年12月頃, Vから交際解消を申し込まれたため, Vとの交際を解消した。

自画撮り要求行為の熊本県少年保護育成条例について、検事正から、「少年の年齢を知らないことを理由として」, 「処罰を免れることができない。」旨の規定を適用することは問題だという意見がでています。

 
 結局 国法の製造罪が故意犯なのに、その未遂・予備が過失でも処罰されるという条例になっています。

平成30年10月1 1日
熊本地方検察庁検事正様
熊本県知事
熊本県少年保護育成条例の一部改正に伴う意見について~ (協議)
日頃から、県政の推進について格別の御理解と御支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、本県では、熊本県少年保護育成条例において、少年に自画撮り画像を要求する行為の禁止規定を罰則付きで新設する予定でおり、今般この規定内容を明確にするため、条文を改める作業を進めております。
つきましては、当該条例の改正案に対する貴職の御意見を賜りたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

熊本地検企第88号
平成30年11月5日
熊本県知事殿
熊本地方検察庁検事正
罰則のある条例の一部改正に伴う事前協議について(回答)
平成30年10月11日付けく安第268号をもって協議依頼のあった熊本県
年保護育成条例の一部改正案について,その内容の検討結果を下記のとおり回答します。

1 結論
本条例改正案は,以下の点を除き問題ない。
2 問題点
条例案第21条第6項は,少年に自分の裸体をスマートフオン等で撮影させ,その画像をメール等で送るよう要求する行為(以下, 「自画撮り要求行為」という。)について, 「少年の年齢を知らないことを理由として」, 「処罰を免れることができない。」旨の規定であるが
(1) 自画撮り要求行為については,相手が少年であることを認識できない場合も多いと考えられ,そのような場合にまで処罰をすることは過剰である
(2) 自画撮り要求行為がなされ,相手側が自己の裸体等の画像を送信した場合には,児童ポルノの製造又は単純所持として処罰されることとなるが,児童ポルノの製造については,児童の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることができない旨の規定が適用されるものの,児童ポルノの単純所持については,同規定は適用されておらず,児童ポルノの単純所持の前段階である自画撮り要求行為について,本規定を適用することは相当ではない
と思料される。

「包丁で脅され監禁された実際の被害に性犯罪の被害者というストーリーを加え、警察を動かした疑いがないと断定できない」として強制わいせつ罪を無罪にした事例(久留米支部h31.1.17)

 虚偽申告というのもあるようです。

強制わいせつ:被告に無罪 監禁罪などは実刑 地裁久留米判決 /福岡
2019.01.19 地方版/福岡 23頁 (全333字) 
 交際中の女性に対する監禁や強制わいせつなどの罪に問われた被告に対し、地裁久留米支部(西崎健児裁判官)は17日、監禁と覚せい剤取締法違反の罪は懲役3年(求刑・懲役5年)とし、強制わいせつ罪については「被害者の供述以外に証拠がなく、供述の信用性が高いとも言えない」として無罪とした。
 判決によると、被告は2017年7月5日夜、女性を乗用車に乗せ、包丁を突きつけて「男がおるやろ、名前を言え」などと脅し、女性が筑後市内で逃げ出すまでの約4時間、車内やホテルなどに監禁した。西崎裁判官は「包丁で脅され監禁された実際の被害に性犯罪の被害者というストーリーを加え、警察を動かした疑いがないと断定できない」とした。
筑後版〕
毎日新聞社

大法廷H29.11.29の評釈20個

 奥村のは議論の焚き付けみたいなもんですから、踏みつけて乗り越えていって下さい。

裁判年月日 平成29年11月29日 裁判所名 最高裁大法廷 裁判区分 判決

事件番号 平28(あ)1731号

事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ、犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件

裁判結果 上告棄却 文献番号 2017WLJPCA11299001
要旨
〔判示事項〕
◆強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
〔裁判要旨〕
◆刑法(平成29年法律第72号による改正前のもの)176条にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合はあり得るが、行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではないとされた事例

判例タイムズ社(要旨)】
◆強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否

裁判経過
控訴審 平成28年10月27日 大阪高裁 判決 平28(う)493号 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ、犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件

第一審 平成28年 3月18日 神戸地裁 判決 平27(わ)1051号・平27(わ)1177号・平27(わ)1264号 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制わいせつ、犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件

出典
裁時 1688号1頁
裁判所ウェブサイト
判タ 1452号57頁 
判時 2383号115頁

評釈
馬渡香津子・ジュリ 1517号78頁 
木村光江・ジュリ臨増 1518号156頁(平29重判解) 
高橋則夫・論究ジュリ 25号113頁 
佐藤拓磨・判時 2366号143頁
小林憲太郎・判時 2366号138頁
奥村徹・判時 2366号131頁
前田雅英・WLJ判例コラム 122号(2017WLJCC030)  
日和田哲史・上智法学論集 62巻1・2号177頁
園田寿・法セ増(新判例解説Watch) 23号167頁
石飛勝幸・警察公論 73巻8号88頁
塩見淳・刑事法ジャーナル 56号33頁
松宮孝明・季刊刑事弁護 94号74頁
曲田統・法教 450号51頁 
松木俊明=奥村徹園田寿・法セ 758号48頁
豊田兼彦・法セ 757号123頁
前田雅英・捜査研究 804号2頁
成瀬幸典・法教 449号129頁 
小棚木公貴・北大法学論集 69巻3号184頁
谷脇真渡・桐蔭法学 25巻1号75頁
江藤隆之・桃山法学 29号139頁

参照条文
刑法176条(平29法72改正前) ⇒ この法令を参照する判例

裁判官
寺田逸郎、 岡部喜代子、 小貫芳信、 鬼丸かおる、 木内道祥、 山本庸幸、 山崎敏充、 池上政幸、 大谷直人、 小池裕、 木澤克之、 菅野博之山口厚、 戸倉三郎、 林景一

引用判例
昭和45年 1月29日 最高裁第一小法廷 判決 昭43(あ)95号 強制わいせつ被告事件

関連判例
昭和45年 1月29日 最高裁第一小法廷 判決 昭43(あ)95号 強制わいせつ被告事件

昭和36年 5月 2日 名古屋高裁金沢支部 判決 昭35(う)304号 強制猥褻致傷事件

児童にライブで裸画像を送信させた行為について、録画した者を児童ポルノ製造罪の単独正犯、録画しなかった者を公然わいせつの教唆として検挙した事例(埼玉県警)

 オッサンに頼まれた児童が自由意思で裸画像を送信した場合には、児童が公然わいせつの正犯となって、頼んだ方が教唆犯になります。録画も承諾していた場合には、児童は、4項製造罪の共同正犯になります。児童を正犯にするという構成は被害児童を処罰することになるのであまりはやりません。
 製造被疑者の弁護人としては児童の正犯性を強調することになります。本件の場合は、警察も公然わいせつ罪では正犯になるという見解なので、説得的です。
 公然わいせつ構成よりも、青少年条例のわいせつ行為を取った方が、被害者性を強調できて、法定刑が重くなります。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/shutoken/20190117/1000024069.html
女子中学生に裸動画配信させたか
01月17日 11時43分
インターネットでリアルタイムで動画を配信できるサービスを利用していた女子中学生に服を脱ぐよう要求し裸の動画を配信させたなどとして、埼玉県警察本部は43歳の男を児童ポルノ禁止法違反などの疑いで逮捕しました。
逮捕されたのは、容疑者(43)です。
捜査関係者によりますと、容疑者は去年5月、インターネットでリアルタイムで動画を配信できるサービスを利用していた女子中学生に服を脱ぐよう要求し裸の動画を配信させたうえ、自分のパソコンに保存したとして、児童ポルノ禁止法違反などの疑いが持たれています。
調べに対し、容疑を認めているということです。このサービスはスマートフォンなどで撮影した動画をリアルタイムで配信し、視聴していた人からメッセージをもらうことができる仕組みで、若者を中心に人気が高まっているということです。
警察がサイバーパトロールで女子中学生の動画を見つけ、通信記録の解析などから容疑者が服を脱ぐよう要求するメッセージを送った疑いがあることがわかったということです。
また、警察は、容疑者と同じように女子中学生に服を脱ぐよう要求したとして、49歳と55歳の男2人も公然わいせつ教唆の疑いで書類送検しました。

平成29年法律第72号により強制わいせつ罪等を非親告罪化するに際し,同法施行前にした行為についても,同法施行後は原則として非親告罪として取り扱うことを規定した同法附則2条2項は,遡及処罰の禁止を定めた憲法39条前段あるいはその趣旨に反するものではないとした事例速報番号平成30年3号

平成29年法律第72号により強制わいせつ罪等を非親告罪化するに際し,同法施行前にした行為についても,同法施行後は原則として非親告罪として取り扱うことを規定した同法附則2条2項は,遡及処罰の禁止を定めた憲法39条前段あるいはその趣旨に反するものではないとした事例速報番号平成30年3号
 刑の変更(刑法6条)に当たるという主張もしてます。

速報番号平成30年3号
〇判示事項
平成29年法律第72号により強制わいせつ罪等を非親告罪化するに際し,同法施行前にした行為についても,同法施行後は原則として非親告罪として取り扱うことを規定した同法附則2条2項は,遡及処罰の禁止を定めた憲法39条前段あるいはその趣旨に反するものではないとした事例
〇判決要旨

被害者が参加したか否かで量刑に差が出ているかどうかは、裁判ごとの比較が難しく、はっきりしない。~性犯罪被害者、増える裁判参加 制度開始から10年、全体の4分の1に 朝日新聞

被害者が参加したか否かで量刑に差が出ているかどうかは、裁判ごとの比較が難しく、はっきりしない。~性犯罪被害者、増える裁判参加 制度開始から10年、全体の4分の1に 朝日新聞

 性犯罪については、起訴率が大幅に下がって、量刑がちょっと上がっています。
http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/20160918/1473998966
 起訴されて被害者参加した被害者からすれば、納得なんでしょうが、起訴されず参加できない被害者が増えていることになります。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190113-00000014-asahik-soci
性犯罪被害者、増える裁判参加 制度開始から10年、全体の4分の1に
2019.01.13 東京朝刊 26頁 2社会 写図有 (全1,614字) 
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 刑事裁判に被害者が参加できる制度が始まって、10年。かつて「蚊帳の外」に置かれていた被害者が当事者として裁判に加わり、意見を述べることが定着している。制度を利用する人数はこの数年横ばいだが、性犯罪の被害者の割合が次第に高まっている。

 ■弁護士つけやすく/出廷不要

 被害者参加制度によって法廷の光景は変わった。昨年12月、東京地裁で開かれた裁判員裁判では、検察官の後ろの席に5人の被害者側弁護士が並び、被告が公判の最後に語る内容を一斉にメモしていた。

 この事件は、芸能事務所社長の男(34)がタレント志願者ら5人の女性に性的暴行を加えたとして、強姦(ごうかん)致傷罪などに問われた。女性5人は全員、弁護士をつけて被害者参加した。被告人質問では弁護士が被害者本人に代わって「被害者に対して、どういう気持ちですか」などと質問。検察官の求刑の後には弁護士がそれぞれ、「可能な限り長期の実刑を望みます」などと量刑への意見を述べた。判決は、「性行為は同意があった」という社長側の主張を退け、懲役23年を言い渡した。

 被害者のプライバシーにも配慮がされていた。法廷では「Aさん」などと呼ばれ、裁判長は「名前を言わないように」と、被告や証人に注意。こうした制度は、被害者参加と同じく、2007年の刑事訴訟法改正で実現した。

 最高裁によると、強制わいせつや強姦(現・強制性交)罪など性犯罪の被害者参加人数は制度が始まった09年はのべ60人で、全体の11%だった。しかし、14年に2割を超え、17年と18年(10月まで)は23%と、ほぼ4分の1を占めた。人数も17年は321人と、09年の5倍以上。性犯罪の裁判の2割ほどで、被害者が参加していると推計される。

 なぜ、これほど増えているのか。レイプクライシスセンターTSUBOMI(つぼみ)代表理事の望月晶子弁護士は、制度の理解が次第に進んだとみる。「性犯罪の被害者は裁判所に行くだけでストレスだが、弁護士をつければ、自分は法廷にいなくてもよい。被害者参加することで、検察官とのコミュニケーションが密になり、公判前に争点や進行もわかりやすくなる」という。

 弁護士をつけることが容易になった点も影響しているとみられる。性犯罪被害者の多くは若く、資産も少ないが、13年には国選弁護士が認められるための資金力の条件が緩和された。最高裁によると、17年は性犯罪の被害者参加人の9割が弁護士をつけ、そのうち8割が国選弁護士だった。

 ただ、裁判に参加しても、被告が被害者の期待通りにふるまうとは限らない。「公判で、被害者に生まれるのは、怒り。それでも、自分は悪くないのだと思えたりする。これが現実なのだと知り、敗北感から立ち上がっていく感じがする」と望月さんは話す。

 ■「知りたい」思い満たされる

 被害者参加制度は、2008年12月以降に起訴された事件に適用され、実際に被害者が参加した公判が始まったのは、09年1月だった。

 最高裁の統計によると、09年から18年10月までに終わった一審(地裁・簡裁)で、参加を認められた被害者は全体でのべ1万1162人。この数年は年間約1400人となっている。どの年も、交通事件の被害者参加人が最も多く、全体の4~5割を占める。

 被害者が参加したか否かで量刑に差が出ているかどうかは、裁判ごとの比較が難しく、はっきりしない。ただ、公判に参加した被害者遺族は、参加しなかった人より、「知りたい」思いが満たされていた、という研究結果はある。

 白岩祐子東大講師(社会心理学)らが、殺人など被害者が死亡した事件の遺族173人の回答を分析した研究によると、公判に参加した遺族の方が「被害者の最期の様子」や「被害者にどんなことが起きたのか」を裁判で知ることができたと感じていた。そして、こうした遺族ほど「司法は信頼できる」と回答していた。(河原理子)

 【図】

 刑事裁判に参加を許可された被害者の人数と性犯罪被害者の割合

朝日新聞社

 「児童買春事案で、対償の約束が年齢を知る前であれば児童買春(児童ポルノ法2条2項)ではなく、各地の青少年健全育成条例違反の行為にとどまります」(先を見通す捜査弁護術p7)ということはない。

 説例の事案が、買春行為だとすると、児童ポルノ・児童買春法附則2条1項で買春行為については青少年条例の規定(淫行処罰規定)は効力を失うので、年齢を知っていても知らなくても、青少年条例は適用されません。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
附 則 抄
(条例との関係)
第二条 1
地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。

 確認のための判例を作ってある。

東京高裁平成24年7月17日
理由
本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の控訴趣意書(添付資料を除く。)及び控訴趣意補充書各記載のとおりであるから,これらを引用する。
第1法令適用の誤りの論旨(控訴理由第1ないし第7)について
1 論旨は,要するに,
(1)児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ等処罰法」という。)の施行により,県青少年健全育成条例(以下,単に「条例」という。)の淫行処罰規定は当然に失効したにもかかわらず,原判示第1,第5,第7及び第11の各所為に対して条例を適用した点
(2)原判示第5の児童と被告人との間には対償供与の約束があったのであるから,条例を適用する余地がないにもかかわらず,同第5の所為に対して条例を適用した点
(3)原判示第5の所為は「みだらな性行為」に当たらないにもかかわらず,それに当たるとした点,
・・・で,原判決には法令適用の誤りがある,というのである。
そこで検討すると/原判決に所論のような法令適用の誤りは認められない。
以下,順次説明する。
(1)原判示第1,第5,第7及び第11の各所為に対して条例を適用した点について
所論は,18歳未満の者との性行為については,国法である児童買春・児童ポルノ等処罰法のみで全国一律に有償の場合のみを規制する趣旨であるとして,同法の施行により条例の淫行処罰規定は当然に失効しかと主張する。
そこで検討すると,児童買春・児童ポルノ等処罰法が,対償を伴う児童との性交等のみを児童買春として処罰することとし,対償を伴わない児童との性交等を規律する明文の規定を置いていないのは,後者につき,いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとは解されず,それぞれの普通地方公共団体において,その地方の実情に応じて,別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解される。
そうすると,青少年に対するみだらな性行為等を禁止し,これに違反した者を処罰することとした条例35条1項,53条のいわゆる淫行処罰規定は,児童買春・児童ポルノ等処罰法の施行によって,児童買春に該当する行為に係る部分についてのみ効力を失ったが,それ以外の部分については,なお効力を有するものと解される(平成11年法律第52号附則2条1項参照)

 なお、児童買春行為で、児童と知らなかったという弁解が出たので、児童買春罪を諦めて青少年条例違反(過失の淫行)に罪名を落として起訴されることが時々ある(那覇地裁h27.1.7等)。この場合には、被疑事実から「対償供与の約束」が落ちて、法定刑が軽くなるので、被告人・弁護人が歓迎して乗ってしまうことがあるが、児童買春罪の児童と知らずのケースであることを譲らなければ起訴されないので、要注意。買春行為については、青少年条例はないのだから、青少年条例違反での処罰はあり得ない。
 児童買春罪の年齢不知事案で高裁の無罪判決(福岡高裁那覇支部h30.11.14)が出ているが、控訴趣意書で児童買春罪と条例の関係を説明しておいたので、青少年条例違反(過失)への訴因変更はなかった。

https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/103132.html
先を見通す捜査弁護術
服部啓一郎 深澤諭史 淺井健人 編著 髙木小太郎 後藤晃輔 菱沼秀樹 著
単行本 法曹
ISBN 978-4-474-06009-8
発刊年月日 2018-02-27
判型 A5判/C3032
(事例1-1
都内に下宿している大学4年生であるXは、SNSで17歳の女子高校生Yと知り合った。
ネット上で意気投合した2人は、お互いに都内在住ということで会ってみようという話になり、都内某所で食事をし、同日、近隣のホテルで性交渉をした。
なお、このとき、XはYに対して現金は渡していないが、2人で合計1万円余りの食事をし、かつ、会計はXが支払っている。‐
その後、Xは怖くなってしまい、Yの連絡先や会話記録を削除して連絡を絶っている状態であるが、警察から接触は一切ない。
Xは不安になり、弁護士に相談に来た。
・・・
(2) 犯罪不成立の場合にも注意
自首の相談内容が、そもそも犯罪不成立」というケースも少なくありません。
特に「故意犯処訓の原則」や、この世の悪いことがすべて「犯罪」になるわけではないことは、一般的にはよく知られていないところです.
相談者が犯罪であると思っているからといって、安易に先入観を持たずにフラットな気持ちで聞いて、犯罪の成否をよく検討すべきです。
特に、本事例では、Yが児童であることを知らなければ犯罪は成立しないため、年齢を知ったのがいつであるか確認が必要です。性交渉後であれば犯罪不成立であり、買春事案の場合、対償の約束が年齢を知る前であれば児童買春(児童ポルノ法2条2項)ではなく、各地の青少年健全育成条例違反の行為にとどまります

逆強姦神話

逆強姦神話
 被害者供述が信用される傾向が指摘されています
 1対1の事件では客観的証拠がないと、被告人の弁解が通りません。

http://news.livedoor.com/article/detail/15831431/
訴状などによると、男性は2004年と08年に当時10代の女性に自宅で性的暴行を加えたとして強姦と強制わいせつの罪で起訴された。一貫して無罪を訴えたが、大阪地裁は09年5月、「女性が被害をでっちあげることは考えがたい」として、女性本人や被害を目撃したとする親族の証言などから懲役12年の判決を言い渡した。最高裁が11年4月に上告を退け、確定した。

 しかし男性が服役中の14年、女性が「被害はうそ」と告白。親族も証言が虚偽と認めた。その後の大阪地検の調べで、女性が被害届を出した後に受診した医療機関に「性的被害の痕跡はない」とするカルテがあったことが判明。男性は14年11月に釈放され、15年10月に地裁の再審で無罪判決を受けた

裁判年月日 平成27年10月16日 裁判所名 大阪地裁 裁判区分 決定
事件番号 平26(た)22号
事件名 強制わいせつ、強姦(再審)被告事件
裁判結果 無罪 上訴等 確定 文献番号 2015WLJPCA10169001
主文
 被告人は無罪。 
理由
第3 当裁判所の判断
 1 証拠構造
 前記のとおり,確定判決が,被告人のAに対する強姦及び強制わいせつ行為(以下,併せて「強姦等」という。)を認定した中心的な証拠は,被告人から強姦等された旨のAの旧供述及びそれらを目撃した旨のBの旧供述である。そこで,A及びBの各旧供述が,新たな証拠が取り調べられた現時点においてもなお信用性を有するかについて,以下検討する。
 2 A及びBの各旧供述の信用性
  (1) 客観的事実との矛盾
 本件再審請求後,検察官において補充捜査が実施された結果,検察官から証拠請求された本件カルテ(当審甲2)には,Aが,平成20年8月29日,F病院を受診し,「処女膜は破れていない」との診断がなされたとの記載があることが認められるところ,その診断結果に信用性を疑わせる事情は何らうかがわれない(なお,確定審の公判では,Dは,最初,Aが胸を触られたと言っていたので,これは強姦の被害を受けているのではないかと疑い,Aを産婦人科医院に連れて行って診察を受けさせたことがあったほか,その後,警察から依頼があり,Aを別の産婦人科医院に連れて行ったことがあった旨供述していたが,確定審では,産婦人科医師の診断結果についての証拠調べはなされなかった。)。
 他方,Aの旧供述によると,Aは,平成16年11月及び平成20年4月の2回のほか,何回も被告人に強姦されたというのであり,Aの旧供述を前提にすれば,前記受診当時,Aの処女膜が破れていないとは考えがたい。
 以上からすると,A及びBの各旧供述のうち,被告人がAを強姦したという核心部分は,本件カルテの診断結果と明らかに矛盾しており,その信用性は大きく減殺されるものといえる。このような矛盾は,A及びBに記憶違いがあったなどとはおよそ考えられないから,両名が意図的に虚偽供述を行ったとみるほかない。そうすると,両名の供述の前記核心部分と密接に関連する,被告人がAに強制わいせつ行為をしたという供述部分についても,A及びBが意図的に虚偽の供述をしたとみるのが相当であり,両名の各旧供述全体の信用性に疑義を生じさせるものである。
  (2) 信用できる各新供述との矛盾
   ア 前記のとおり,A及びBは,再審請求審において,被告人がAに対して強姦等をした事実はなく,それぞれの旧供述は虚偽である旨述べるに至っているところ,かかる両名の各新供述が信用できることは,以下のとおりである。
 (ア) 客観的事実等との整合
 前記のとおり,平成20年8月29日時点において,Aの処女膜は破れておらず,この事実自体,被告人によるAへの強姦がなかったことを如実に示すものであり,A及びBの各新供述のうち,強姦の事実はなかったとの核心部分を積極的に裏付けるものである。
 (イ) 虚偽供述をする動機がうかがわれないこと
 A及びBの各新供述は,自身の確定審での各公判供述が虚偽であること,ひいては自身に偽証罪が成立することを認めるものであるところ,真に被告人によるAへの強姦等があったというのであれば,A及びBがあえて自身が偽証罪に問われる危険を冒してまで,被告人は無実である旨の虚偽の供述をする事情は何ら見当たらない。したがって,無実の被告人を放ってはおけない,偽証罪に問われるのは自身の責任であるなどという気持ちから,真実を打ち明けるに至ったとするA及びBの各新供述の信用性は高いといえる。
 (ウ) 虚偽供述をした理由及び真実を述べるに至った理由について合理的な説明をしていること
  a 確定審で虚偽の供述をした経緯等
   (a) Aは,被告人から強姦等された旨の虚偽供述をした経緯等について,①D及びEから尻以外も触られていないかと聞かれ,当初は否定していたものの,問い詰められた結果,これを否定できず,最終的には胸を触られたと答えてしまい,その後,強姦についても執拗に「やられたやろう。」などと問い詰められ,これも認めてしまった,②強姦等の被害状況についてはDから見せられた動画等をもとに,Dに言われるがままに供述したなどと供述する。
 前記①のうち,強制わいせつの被害を告白するに至った経緯については,Aの供述内容と,B,D及びEの再審請求審における各供述内容とで一部齟齬するところがあるものの,強姦を認めるに至った経緯の部分については,Eは,再審請求審において,尻と胸を触られたのであれば強姦もされているのではないかとの疑念から,DとともにAを問い質したところ,Aは当初これを否定していたが最終的には認めた旨供述しており,Eの供述と一致している。なお,DはAを問い詰めたことはない旨供述するが,Eの前記供述とは相反する上,Aから強姦被害の告白を受けた経緯に関する質問に対して曖昧な供述に終始していたことなどからすれば,Dの前記供述の信用性は相当に疑わしい。また,Dは,平成20年8月29日にAをF病院に連れて行って受診させ,処女膜が破れていないとの診断がなされたが,その後も,Aの処女膜裂傷の有無を確認するために,同年9月8日と同月24日の2回にわたりG病院という別の病院で受診させていたところ,当時のDのこのような行動状況からすれば,Eと同じく,Aが強姦されたのではないかという強い疑念を抱き,これを否定するAの言葉を容れることなく,執拗に問い質したことがあったと考えるのが自然である。
 前記②の点については,DはAに対して動画を見せたり実演してみせたことはない旨供述している。しかしながら,性体験のない弱冠14歳の少女が,大人から助言等を得ることなく,実際には体験していない強姦等の被害状況について事細かな供述ができたとは考えられず,Dが動画を見せたかはともかく,Dらによる誘導等に基づく部分が少なからずあったと疑われる。
 したがって,Aの新供述は,前記のとおり一部その他の証拠と齟齬する部分はあるものの,虚偽供述をするに至った理由等について合理的な説明内容といえる。
   (b) Bは,Aが泣きながら,被告人から胸を触られたと突如言い出したため,嘘とも思えず,また,D及びEから長時間問い詰められた上,Aからも「おにいも見たやろ。」などと言われたため,話を合わせてしまった,Aを信じていたし,Aが強姦されたというのであれば自分がそれを否定しても信じてもらえないだろうという気持ちから目撃した旨嘘をついたと供述するところ,その供述内容は自然かつ合理的である。加えて,Bが曖昧な答えをしたことから強い口調で問い詰めた旨のEの供述とも一致していることからすると,Bの前記供述は信用することができる。
  b 真実を述べるに至った経緯
 Aは,確定審の一審判決が言い渡された後に,確定審での供述は虚偽であった旨をDやEらに述べたが,話し合いの結果,偽証罪に問われるおそれがあることや,確定審で証言等をした人に迷惑がかかるなどの理由から真実は伏せておくことになり,その後,DやEと疎遠になり,かつ,Cから促されたため真実を述べることにした旨供述する。また,Bも,前記話し合いの結果,真実は伏せておくことになったが,その後,Aが弁護人に真実を話した旨の連絡を受け,自分も真実を話そうと思った旨供述する。
 A及びBの前記各供述は,各人が真実を述べるに至った経緯について合理的に説明するものである。また,Aは,平成22年8月2日,H病院精神科神経科を受診しているが,同病院の診療録(当審甲6)には,Aの陳述として,確定審の一審判決があった頃から,Aが性的虐待はされていないと言い出していた旨が記載されており,前記各供述を裏付けている。さらに,Eも,再審請求審において,確定審の一審判決後,AやBが実はうそだったと話したが,Aらが何らかの罰を受けるのをおそれて公にはしなかった旨供述しており,A及びBの前記各供述は,Eの供述とも合致しており,信用性が認められる。
  c 以上のとおり,A及びBの各新供述は,両名が確定審の公判で虚偽供述をした理由や,再審請求審において真実を述べるに至った経緯等について合理的な説明がなされており,格別不自然な点はなく,被告人がAに対して強姦等をした事実はないとのA及びBの各新供述の信用性には何らの問題はない。
   イ 以上のとおり,被告人がAに対して強姦等をした事実はないとのA及びBの各新供述は信用できるから,これに反し,かつ,両名が虚偽であったと認めている各旧供述は信用できない。
  (3) 各旧供述の供述内容の疑問点
   ア また,A及びBの各旧供述の内容について改めて検討してみると,各旧供述には,いくつかの不自然な点や疑念を抱かせる点を指摘することができる。まず,A及びBの各旧供述によれば,被告人は,被告人の母やBがいる部屋の隣の部屋や廊下で各犯行に及んだことになるが,そのような家族への犯行の発覚の可能性が非常に高い状況で,被告人が嫌がるAに対して強姦等を試みるとは,何らかの特別な事情がない限り通常は考えられず,その内容自体不自然であるとの感を抱かせるに足りるものである。また,A及びBは,平成16年11月にAが被告人に強姦されていた際に泣き叫んでいた旨供述するところ,Bの旧供述によると,当時,隣の部屋で被告人の母と一緒にテレビを見ていたが,心配になってAの部屋をのぞき見て,本件犯行を目撃したというのである。被告人の母は,当時,高齢であったとはいえ,Aの旧供述によっても,少し耳が遠かったが,大声で話さなくとも聞こえる程度であったというのに,BがAの叫び声を聞いて異変を感じたが,一緒にテレビを見ていた被告人の母が全くこれに気づかなかったというのも不自然であり,他方で,聞こえていたにもかかわらず被告人の母が知らないふりをしたとも考えられないのであって,この点でもA及びBの各旧供述の内容に疑念を生じさせるものといえる。
   イ さらに,Aの旧供述には,最初の強姦被害の時期等に関して不合理な供述の変遷が認められる。すなわち,Aは,捜査段階当初は,平成17年11月に初めて強姦され,その後にトイレに行ったところ下着に血が付いており,同年10月頃に初潮を迎えていたため,その血を見て生理が始まったのかと思った旨述べていたにもかかわらず,捜査段階の途中で,最初に強姦された時期は平成16年11月の誤りである旨供述を変遷させている。Aは,その理由について,確定審の公判において,最初の強姦被害の時期は,Cが経営する美容室の従業員の娘の結婚式に出席した次の日であったとはっきり記憶していたが,その結婚式の日にちを1年記憶違いしていた旨述べている。しかしながら,変遷後のAの供述によれば,最初に強姦された時期は平成16年11月となり,被害当時Aはまだ初潮を迎えていなかったことになるところ,そうであるとすればAが「初潮を迎えていたため下着に付いていた血を見て生理かと思った」という供述内容と大きく矛盾することになり,単に結婚式の日にちを1年間違えていたというだけでは,納得のいく説明がなされているとはいえず,不合理な変遷と指摘せざるを得ない。
 そして,BもAと同様に最初の強姦を目撃した時期について平成17年11月から平成16年11月へと供述を変遷させているところ,Bは,確定審の公判において,変遷の理由について,結婚式に中学校の制服を着て行った記憶があり,一学年間違えてしまった,Aと被害時期等について話し合ったことはない旨述べている。しかしながら,A及びBの両名が被害時期について偶々同じような記憶違いをするとは考え難く,Bの旧供述は,捜査官の事情聴取に先立って,何らかの方法でAの供述内容を知らされ,これに迎合して供述していたことが強く疑われるのであって,そうすると,被害時期にとどまらず,被害内容それ自体についても,その信用性は大きく減殺されるものである。
  (4) 小括
 以上のとおり,A及びBの各旧供述は,その核心部分が重要な客観的事実と大きく矛盾している上,A及びB自身が各旧供述は虚偽であり,被告人による強姦等の事実はなかった旨の各新供述をするに至っており,各新供述には信用性が十分に認められる。加えて,各旧供述の内容自体にも不自然不合理な点を指摘できることからすると,両名の各旧供述が信用できないことは明らかである。
第4 結論
 以上のとおり,本件各公訴事実については,犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
 (裁判長裁判官 芦髙源 裁判官 藏本匡成 裁判官 髙津戸朱子) 

http://www.moj.go.jp/content/001131747.pdf
性犯罪の罰則に関する検討会の第4回会合
○宮田委員 私は刑事弁護をする立場から先日のヒアリングを聞いていて,違和感があるというか,この視点が落ちているのではないかと思った部分があります。それは,言ってみれば「被害者神話」あるいは「逆強姦神話」とでも言えるものです。つまり,私どもが捜査段階,公判段階で弁護活動をしているときに,被疑者,被告人の言い分を警察官や検察官に伝える,裁判所で裁判官の前でそれを申し述べる際,警察官や検察官,あるいは裁判官が,「このような恥ずかしくて強烈な経験をした被害者が嘘を付いているわけがない」という御覧のなり方をしていないのだろうかと感じるのでございます。
自分自身の例ではなく,判例集に出てきている例や先輩方からお聞きしたことを幾つか申し上げます。加害者とされた人は便宜上アルファベットで示します。
富山県で氷見事件という強姦罪の再審無罪事件がございましたが,真犯人が現れて,受刑しているAさんが実は無罪であったとが分かりました。この事件では,2人の被害者の方が写真で「この人が犯人だ」とAさんを特定しました。その後,生でAさんを見たときに,1人の被害者はもしかするとちょっと違うのではないかとおっしゃっていたのだけれども,最初の被害者2人の写真識別がある意味決め手になってAさんが逮捕され,Aさんが虚偽の自白をしたという特異な流れがあり,有罪判決が言い渡されました。ただし,その自白の内容は非常に不合理なものだったのでございます。
また,先日,水戸地裁土浦支部で強姦事件の無罪判決が出ました。若い被害者とBさんとの非常に特異な人間関係の中で起きた事件なので,この被害者の言うことは非常に信用できるというふうに検察官はお考えになったのだろうと思います。弁護人が検察官に対して,Bさんにはアリバイがあると,スケジュールや事件の日に他の場所で撮られたBさんの写った写真等を示して,この人は無実だと主張しましたが,起訴されました。そして,この事件は非常に特殊な人間関係が背景にあるということで,被害者の証言だけではなく,心理学者の鑑定証言等の長い検察官証拠の取調べがあり,被告人はその間保釈されることもありませんでした。最後に,アリバイとして写真を撮った機械のハードディスクの解析までして無罪が言い渡されました。
ほかにも,強姦事件で,非常に申し上げにくいことですが,被害者が,男性との合意に基づく性的な関係があったことが恋人あるいは夫に露見したということから,強姦をされたと虚偽を述べたのではないかと思われるような事件もございます。特殊な人間関係が背景にあり,被害者と加害者と目された男性の交際に関する事情等を立証することが成功して,無罪あるいは不起訴になったものの,それまでに非常に時間がかかった案件もございます。
このように,被害者と加害者の1対1の関係で起きることも多い性犯罪の刑事手続において,「被害者の言うことの方が信用できる。被告人の言うことは信用できない」という形で切って捨てられる無実の案件もあるのではないかと思われるのです。被害者の言うことが信用できないと判断した判決だとして,女性団体等が非常に批判している最高裁の判決は,客観証拠がない事件で供述証拠に頼ることに非常に問題があることを指摘した案件であると,私たち刑事弁護をやる弁護士は理解しております。供述に頼らず客観的な証拠を収集することは捜査の基本であり,判断に際しては,客観的な事実あるいは客観的な証拠に照らして供述が信用できるのかどうかが考えられる必要があります。
刑事裁判には「無罪の推定」,そして,「検察官の立証責任」という大原則があり,その原則に基づいて判断がされなければならないものであるのに,「被害者の言うことが信用できる」というバイアスによって動いている部分がないかという疑問を常に持ちながら私たちは活動しているわけでございます。
このような被害者や目撃供述に対しての過度の信頼のようなものは,性犯罪に限った話ではないのかもしれませんけれども,ヒアリングに際して,「被害者の言うことをなぜこんなに信用してくれないのだ」という被害者の方たちの声がありましたが,一方で,被害者の言うことを一方的に信じることによって誤った裁判がなされた例もあることについて,私はやはりここで声を大にして言わせていただかなければならないと思った次第です。お時間を頂きまして,ありがとうございました。
○山口座長 ただ今の御発言は,本検討会で検討する性犯罪の罰則に関する全般的なことについての御発言ということで理解をさせていただきました。この段階で特に何か御質問等がございましたらお願いしたいと思いますが,なければ,この段階では宮田委員のお考えをお伺いしたということで,先に進ませていただきたいと思います。それぞれの各論点で随時委員の皆様に御意見をお伺いし,御発言いただくことになりますので,ただ今の御発言についてはそういう形にさせていただければと思いますが,よろしゅうございましょうか。
(一同 異議なし)

琉球政府の児童淫行罪も「10年以下の懲役又は6ドル以上85ドル以下の罰金」だったこと

 日本と歩調合わせてたようです。

児童福祉法
1953年10月19日
立法第61号
施行1953年10月19日
(児童保護のための禁止行為)
第36条何人も、左の各号に掲げる行為をしてはならない。
一不具奇形の児童を公衆の観覧に供する行為
二児童を利用して、こじきをする行為
三公衆の娯楽を目的として満15才に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
四満15才に満たない児童に戸戸について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
五児童に午後10時から午前5時まで(満15才に満たない児童については、午後8時から午前5時まで)の問、戸戸について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務とし
てさせる行為
六戸戸について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満15才に満たない児童を、当該業務を行うために、風俗営業等取締法(1952年立法第四号)第1条に掲げる営業を営む場所に立ち入らせる行為
七満15才に満たない児童に酒席に待する行為を業務としてさせる行為
八児童に淫行させる行為
九前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知って児童を引渡す行為及び当該引き渡し行為のなされるおそれがあるの情を知って他人に児童を引き渡す行為
十成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が営利を目的として児童の養育をあっ旋する行為
十一児童が4親等内の児童である場合及び児童に対する支配が正当な雇用関係に基くものであるか又は行政主席の承認を得たものである場合を除き、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為
2 養護施設、精神薄弱児施設、精神薄弱児通園施設、盲ろうあ児施設、虚弱児施設、肢体不自由児施設又は教護院においては、それぞれ第44条から第48条まで及び第49条に規定する目的に反して、入所した児童を酷使してはならない。


(禁止行為違反の罰則)
第62条第36条第1項第8号の規定に違反した者は、10年以下の懲役又は6ドル以上85ドル以下の罰金に処する。
2 第36条第1項第1号から第7号まで、若しくは第9号から第11号までの規定又は同条第2項の規定に違反した者は、l年以下の懲役又は30ドル以下の罰金に処する。
3 児童を使用する者は、児童の年令を知らないことを理由として前2項の規定による処罰を免れることができない。但し、過失のないときは、この限りではない。
4 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人文は人の業務に関して第1項又は第2項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各同項の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため当該業務に関し相当の注意及び監督が尽きれたときは、その法人又は人については、この限りでない。

自画撮禁止条例の「困惑」は限定になってない by 神戸地検

 兵庫県に開示請求しても出てこないんですが、他府県の公文書から神戸地検の見解が分かりましたので、文書を特定したら出てきました。
 「困惑」というのは無限定だというのは、青少年条例全般に使えそうです。

兵庫県少年愛護条例の解説 平成30年3月
第30条
5 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
(12)第21条の3の規定に違反して、次に掲げる方法により、青少年に対し、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めた者
ア青少年を欺き、威迫し又は困惑させる方法
イ青少年に対し、財産上の利益を供与し、又はその供与の申込み若しくは約束をする方法

兵庫県知事井戸敏殿
神戸地方検察庁検事正
罰則の定めのある条例案に関する協議について(回答)
本年11月13日付け文第2280号をもって依頼のありました「青少年愛護条例の一部を改正する条例」について検討した結果,罰則の適用に関し,下記のとおり回答します。

第1 検討結果
1 児童ポルノ等の提供を求める行為
(1) 罰則を設けること
本条例の一部改正(以下, 「一部改正」という。)は, その必要性に基づいて,青少年に対して児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止するものであり, これを担保すべく罰則を設けることにも合理的必要性が認められる。
ただし,
①警察が事件を認知するのは,青少年の相談を受けることによるのが通常と思われるが,青少年が行為者の求めに応じて児童ポルノ等を送信して児童ポルノの製造等に至るより前の段階で,警察が認知することは見込まれ難く, また,製造等に至っている場合に製造等のほかに法定刑の低い児童ポルノ等の提供を求める行為を併せて処罰する必要性に乏しいこと,
②現時点で他の地方公共団体には同様の罰則を設ける条例がないため,青少年が提供を求める行為を了知した時に兵庫県内にいたが(結果地),行為者が行為時に同様の条例が存在しない場所にいた事案では,行為者には,故意として,禁止場所における禁止行為であ
るとの認識,つまり,提供を求める行為が禁止されている兵庫県内で青少年が了知するとの認識が求められる可能性があることなどから,一部改正による罰則が適用される場面は,実際にはかなり限定されるものと思料される。
(2) 方法としての「困惑」
本条例の一部改正では,児童ポルノ等の提供を求める行為に関し,罰則で,その方法を,欺き,威迫,困惑,財産上の利益の供与及びその供与の申込み若しくは約束に限定して処罰している。
このうち, 困惑については,通常の青少年であれば,他人から単純に児童ポルノ等の提供を求められただけでも,提供するかしないかどうしてよいか分からずに困る,すなわち,困惑するのが通常と思われるため,提供を求める方法の限定となっているのか疑問があるので,削除すべきである。
(3) 利益供与等の相手方
財産上の利益の供与等については,第三者に利益を供与する方法で青少年に児童ポルノ等の提供を求めることも想定されるが, この場合は,条文上,利益供与等の相手方が青少年に限定されているために処罰の対象とならないので,利益供与等の相手方に「第三者」を入れることも検討すべきである。

数回の児童ポルノ提供行為について最高裁調査官が「併合罪だ」と言うてるのに、「包括一罪」にしてしまって、破棄される地裁判決

数回の児童ポルノ提供行為について最高裁調査官が「併合罪だ」と言うてるのに、「包括一罪」にしてしまって、破棄される地裁判決
 1審H28、控訴審H29で、最高裁が検討中です。平成のうちに出るのかな。
 
 「下級審でも判断が分かれていた(包括一罪とするのは福岡高那覇支判平一七・三・一公刊物不登載、併合罪とするのは東京高判平一五・六・四高検速報平一五・八三、刑集六○・五・四四六、大阪高判平二○・四・一七刑集六二・一○・二八四五)」の弁護人はいずれも奥村で、CGの事件の控訴審では併合罪説になったので、福岡高那覇支判平一七・三・一公刊物不登載の判例違反が主張されています。

判年月日  平成28年 3月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件名  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判結果  有罪(懲役1年及び罰金300万円、執行猶予3年(求刑 懲役2年及び罰金100万円))  上訴等  控訴<破棄自判>  文献番号  2016WLJPCA03156003
 第2  ○○2という名称のコンピュータグラフィックス集をインターネット通信販売サイトを運営する株式会社aに販売を委託して提供しようと企て,平成21年12月14日頃,前記被告人方において,インターネットに接続された被告人のパーソナルコンピュータから,前記株式会社aのデータ保管先であるb株式会社が管理する東京都新宿区〈以下省略〉に設置されたサーバコンピュータに前記「○○2_prt.pdf」と同一のファイルを送信して記憶,蔵置させるとともに,前記株式会社aにその販売を委託し,次表のとおり,平成24年4月20日から平成25年3月27日までの間,3回にわたり,同サイトを閲覧した不特定の者であるA1ほか2名に対し,前記コンピュータグラフィックス集を代金合計4410円で販売し,同人らに,インターネットに接続された同人らが使用するパーソナルコンピュータのハードディスク内に「○○2 第二版」というフォルダに含まれる前記「○○2_prt.pdf」と同一のファイル中の画像データ3点(同ファイル中の番号2,15,27として表示される画像。)をダウンロードさせ,もって不特定又は多数の者に児童ポルノを提供したものである。
(法令の適用)
 罰条
 判示第2の所為 包括して同法7条4項後段,2条3項3号
 刑種の選択
 判示第1及び第2の各罪 いずれも懲役刑及び罰金刑を選択
 併合罪の加重
 懲役刑につき 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重)

D1-Law.com判例体系
■28250582
東京高等裁判所
平成28年(う)第872号
平成29年01月24日
上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について、平成28年3月15日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官和久本圭介並びに弁護人山口貴士(主任)、同壇俊光、同奥村徹、同野田隼人、同北周士、同北村岳士、同歌門彩及び同吉峯耕平(いずれも私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。
被告人を罰金30万円に処する。
その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
原審における訴訟費用のうち、2分の1を被告人の負担とする。
本件公訴事実第2(平成25年9月3日付け訴因変更請求書による訴因変更後のもの)のうち、児童ポルノである画像データを含むコンピュータグラフィックス集「聖少女伝説」を提供したとする点について、被告人は無罪。

(3)本件3画像の提供罪を一罪とした点
  (ア) 所論は、〈1〉被告人が「聖少女伝説」をアップロードした時期と、「聖少女伝説2」をアップロードした時期とでは、1年2か月が経過しており、含まれる画像も素材画像の写真の被写体も全く異なっている上、〈2〉3名の購入者のダウンロードの時期も1年ほど離れているのであるから、児童ポルノ提供罪については、「聖少女伝説」及び「聖少女伝説2」の各CG集ごと、及び、各購入者ごとに、それぞれ児童ポルノ提供罪が成立し、それらは全て併合罪の関係になるはずである、しかるに、原判決はこれを一罪と評価した上、〈1〉原判決が全てのCGについて児童ポルノに該当すると認めなかった「聖少女伝説」の提供については、無罪を言い渡すべきであるのに、これを言い渡さなかった点で、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある、〈2〉購入者を追加する内容の訴因変更は、併合罪の関係にある以上、許可すべきでないのに、これを許可した原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるという。
  (イ) まず、1名に対する児童ポルノの提供を3名に対する提供へと変更する訴因変更を許可した点について検討すると、そもそも、本件における児童ポルノ提供罪は、その構成要件上、不特定又は多数の者に提供することが予定されているから、購入者の追加は、公訴事実の同一性の範囲内であることが明らかであって、この点について訴因変更を許可した原審の訴訟手続に何ら法令違反はない。
  (ウ) 次に、提供罪の罪数について検討すると、記録によれば、被告人は、平成20年8月頃、CG集である「聖少女伝説」を完成させたこと、被告人は、Eに、同CG集の販売を委託し、そのデータを同社に送信して、同月28日以降、同CG集がインターネット上で販売されたこと、被告人は、「聖少女伝説」をアップロードした後、これを見たインターネットサイトの利用者から、他のモデルの画像のリクエストが多数寄せられたことなどから、その要望に応じて、平成21年11月頃、「聖少女伝説」と同様のCG集である「聖少女伝説2」を完成させたこと、被告人は、同CG集についても、「聖少女伝説」と同様に、Eに販売を委託したこと、同月27日以降、「聖少女伝説2」がインターネット上で販売されたことが認められる。
  これによれば、被告人は、「聖少女伝説」をアップロードした後、新たに犯意を生じて、上記アップロードの約1年3か月後に、「聖少女伝説2」をアップロードしたといえるから、前者の提供行為と後者の提供行為とは、別個の犯意に基づく、社会通念上別個の行為とみるべきであって、併合罪の関係に立つとみるのが相当である。そうすると、両者の関係が一罪に当たるとの前提に立ち、前者の提供行為について、児童ポルノに該当するものがなく、その提供に当たらないとしながら、主文で無罪を言い渡さなかった原判決には、法令の適用に誤りがあり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
  論旨は理由がある。
  よって、量刑不当の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
 4 結論
  そこで、刑訴法397条1項、380条により原判決を破棄し、同法400条ただし書に従い、被告事件について更に判決する。
  原判決が認定した事実に法令を適用すると、被告人の判示第1の行為は、平成26年法律第79号附則2条により同法による改正前の児童ポルノ法7条5項、同条4項、2条3項3号に、判示第2の行為は、同法7条4項後段、2条3項3号に該当する。そこで、量刑について検討すると、起訴された34点の本件CGのうち、「聖少女伝説」に含まれる18点全てと「聖少女伝説2」に含まれる13点については児童ポルノに該当せず、本件3画像のみがこれに該当すると認められるにとどまること、本件3画像の素材画像となる写真が撮影されたのは、前記のとおり、昭和57年ないし昭和59年頃であり、本件3画像は、その当時児童であった女性の裸体を、その約25年ないし27年後にCGにより児童ポルノとして製造されたものであって、本件各行為による児童の具体的な権利侵害は想定されず、本件は、専ら児童を性欲の対象とする風潮を助長し、将来にわたり児童の性的搾取及び性的虐待につながるという点において、違法と評価されるにとどまることなどを考慮すると、違法性の高い悪質な行為とみることはできず、体刑を選択すべき事案には当たらないというべきである。そこで、各所定刑中、いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法45条前段の併合罪であるから、同法48条2項により、判示第1及び第2の各罪の罰金の多額を合計した金額の範囲内で、被告人を罰金30万円に処し、刑法18条により、その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置することとし、原審における訴訟費用のうち2分の1については、刑訴法181条1項本文を適用して被告人に負担させることとする。本件各公訴事実中、公訴事実第2のうち、「聖少女伝説」を提供したとの点については、前記のとおり、犯罪の証明がないから、同法336条により、無罪を言い渡すこととする。
  よって、主文のとおり判決する。
第10刑事部
 (裁判長裁判官 朝山芳史 裁判官 杉山愼治 裁判官 市原志都)

任介辰哉「最高裁刑事破棄判決等の実情(中)ー平成二一年度ー」判例時報第2092号P23 2010
次に、児童ポルノの提供行為とその提供目的所持行為とが併合罪であるのか、包括一罪であるのかについては、この点に関する最高裁判例はなく、下級審でも判断が分かれていた(包括一罪とするのは福岡高那覇支判平一七・三・一公刊物不登載、併合罪とするのは東京高判平一五・六・四高検速報平一五・八三、刑集六○・五・四四六、大阪高判平二○・四・一七刑集六二・一○・二八四五)。
包括一罪とする説は、児童買春・児童ポルノ等処罰法七条の罪をわいせつ図画罪と同様のものと考えているものと思われる。
すなわち、平成一六年に改正される前の同条の体裁は、わいせつ図画罪の条文とほぼ同様のものであり、各構成要件に該当する行為は、その性質上、いずれも反復・継続する行為を予想させるものともいえるからである。
児童買春・児童ポルノ等処罰法制定当時からの解説書においても、そのような包括一罪との解釈が示されていた。
他方、併合罪とする説は、児童買春・児童ポルノ等処罰法の被害法益の違いから、わいせつ図画罪とは同様に考えられないとするものである。
すなわち、児童買春・児童ポルノ等処罰法は、同法一条に明記されているとおり、当該児童の権利保護をも目的としているところ(平成一六年の児童貿春・児童ポルノ等処罰法一条の改正により、児童の権利保護の面がより強調されている。
島戸純「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」ジュリ一二七四・六一参照)、児童ポルノは、その提供によって初めて当該児童の権利が侵害されるのではなく、提供に至らない製造、所持等も、それ自体において当該児童の性的権利を侵害する行為であり、製造、所持等された児童ポルノが現実に提供された場合、製造、所持段階の児童への侵害が吸収される関係にもないから、これらを提供に包括して評価するのは相当でないとするのである。
本決定は、児童の権利を擁護しようとする児童買春・児童ポルノ等処罰法の立法趣旨を根拠に、併合罪説をとることを明示した。
下級審においては、必ずしも訴訟上の争点にならなかった場合も含めて、包括一罪として処理されていた例が少なくなかったようであるが、今後は併合罪として処理されることになろう。

教員 児童ポルノ単純所持 DVD84枚 罰金30万 停職4月 依願退職

 アリスクラブのDVDは1枚1500円もして、たくさん買うと高額ですよね。
 児童ポルノの認識・違法性の意識・犯意が固いことの材料になります。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181228-00000027-san-l10
児童ポルノ所持で中学教諭停職処分 群馬県教委
12/28(金) 7:55配信 産経新聞
 県教育委員会は27日、児童ポルノの動画データを記録したDVDを所持したとして、中毛地域の公立中学の男性教諭(39)を停職4カ月の懲戒処分とした。教諭は同日付で依願退職した。

 県教委によると、教諭は平成28年7月から昨年4月にかけて、インターネットを通じて、女児の児童ポルノの動画データが記録されたDVDを販売業者から4回にわたり12万円で計84枚購入し、自宅で所持した。

 その後、販売業者が警視庁などに摘発され、県警が今年8月上旬に教諭の自宅を家宅捜索。教諭は10月下旬、勤務先の中学の校長に申告し、発覚したという。県内の簡裁が今月5日、児童ポルノ禁止法違反(単純所持)の罪で罰金30万円の略式命令を出していた。

 教諭は「自分の軽率かつ身勝手な行動で、多くの児童生徒を裏切ることになった。このような事態を招いて、悔やみに悔やみきれない」と反省の言葉を述べているという。