児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

科刑上一罪である建造物侵入罪と盗撮(埼玉県迷惑行為防止条例違反,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)の比較対照においては,重点的対照主義の立場に従し,重い罪である建造物侵入罪に定められた「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が処断刑となるとした事例(東京高裁h30.5.24)

第一三〇条(住居侵入等)
 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

 弁護人は50万円くらいの罰金にしろと主張したんでしょうか。



速報番号3646号
建造物侵入,埼玉県迷惑行為防止条例違反
平成30年5月24日
東京高等裁判所第2刑事部控訴棄却
【第一審】さいたま簡易裁判所
科刑上一罪である建造物侵入罪と盗撮(埼玉県迷惑行為防止条例違反,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)の比較対照においては,重点的対照主義の立場に従し,重い罪である建造物侵入罪に定められた「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が処断刑となるとした事例
裁判要旨
数個の罪が科刑上一罪の関係にあるとき,数個の罪の比較対照において,それぞれに選択刑がある場合,法定刑における最も重い刑のみを比較対照すべきとする重点的対照主義の立場によるべきであることは判例実務上確立しているところ,判例上,重点的対照主義は適宜修正されているが,その修正は,重点的対照主義を形式的に適用するだけでは,他の法条の最下限の刑よりも軽く処罰することはできないという,刑法54条1項の趣旨に反する結果になる場合に行われているのであって,本件では,重い罪である建造物侵入罪の刑によって処断することに不都合はなく,判例により重点的対照主義の適用が修正されているものとは事案を異にする。
裁判理由
所論は,仮に,被告人に科すべき刑を罰金10万円とすることが被告人の罪責として軽いということであっても,罰金刑ではなく懲役刑を選択することは,不当に重い量刑であり,10万円を超え50万円以下の罰金刑で処断すべきである,最高裁判例は,形式的に重点的対照主義を適用するのではなく,刑法54条1項の規定の趣旨等に鑑み,適宜,重点的対照主義を修正しており(最高裁昭和28年4月14日第三小法廷判決・刑集7巻4号850頁,同平成19年12月3日第一小法廷決定・刑集61巻9号821頁参照),原判決が,重い罪に選択的に規定されている罰金刑より軽い罪に選択的に規定されている罰金刑が重い場合に,これらを総合判断して罰金刑については軽い罪の罰金刑にしたがうものとする判断は,重点的対照主義として確立された最高裁判例に根本的に違背するものであるとして,10万円を超える罰金刑で処断することはできないと判断しているのは最高裁判例の解釈を誤ったものである,という。そこで検討すると,数個の罪の比較対照において,それぞれに選択刑がある場合に,刑種選択をする前の法定刑における最も重い刑のみを比較対照すべきとする重点的対照主義の立場によるべきことは判例実務上確立しているところである。そして,判例上,重点的対照主義が,刑法54条1項の趣旨等に鑑み,適宜,修正されていることは所論が指摘するとおりであるが,その修正は,刑法54条1項が,数個の罪名中最も重い刑で処断することに加え,他の法条の最下限の刑よりも軽く処罰することはできないという趣旨を含むと解されるところから,例えば,重い罪には罰金刑が選択刑としてあるが,軽い刑には懲役刑しかない場合(前記昭和28年判例の事案)や,重い罪には懲役刑のみしかないが,軽い罪には罰金刑の任意的併科の定めがある場合(前記平成19年判例の事案)など,重点的対照主義を形式的に適用するだけでは,上記の趣旨に反する結果になる場合に行われているのである。本件では,刑法54条1項の趣旨に照らし,重い罪である建造物侵入罪の刑によって処断することに不都合はなく,判例により重点的対照主義の適用が修正されているものとは事案を異にする。そもそも,選択刑の定めがある数個の罪について,その選択刑のそれぞれを比較して,それぞれの重い刑をもって処断刑を形成するというのは,重点的対照主義を修正するものではなく,刑法施行法3条3項が規定する重点的対照主義に反するものであり,判例とは立場を異にする見解である。原判決が,重い罪に選択的に規定されている罰金刑よりも軽い罪に選択的に規定されている罰金刑が重い場合に,これらを総合判断して罰金刑については軽い罪の罰金刑にしたがうものとする判断は,重点的対照主義として確立された最高裁判例に根本的に違背するものであるとしたことに誤りはない。
参照条文
刑法130条前段,埼玉県迷惑行為防止条例12条2項1号,2条4項刑法54条1項,10条,刑法施行法3条3項
備考

教育実習生による生徒に対する淫行が、起訴されない理由~~生徒にわいせつ行為「起訴相当」 大阪検審が議決、教育実習生に

 大阪府警大阪地検としては、一応師弟関係だから、児童淫行罪を検討するのですが、こういう判例もあるし、実習生の前例もないので、教育実習生というのは権限もなく影響力が弱いので、児童淫行罪を諦めます。

平成26年(あ)第1546号 児童福祉法違反被告事件
平成28年6月21日 第一小法廷
決定
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人竹永光太郎の上告趣意のうち,憲法31条違反をいう点は,児童福祉法34条1項6号の構成要件が所論のように不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
所論に鑑み,職権で判断する。
児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは,同法の趣旨(同法1条1項)に照らし,児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり,児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は,同号にいう「淫行」に含まれる。
そして,同号にいう「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが(最高裁昭和39年(あ)第2816号同40年4月30日第二小法廷決定・裁判集刑事155号595頁参照),そのような行為に当たるか否かは,行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。
1これを本件についてみると,原判決が是認する第1審判決が認定した事実によれば,同判示第1及び第2の各性交は,被害児童(当時16歳)を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり,同児童が通う高等学校の常勤講師である被告人は,校内の場所を利用するなどして同児童との性的接触を開始し,ほどなく同児童と共にホテルに入室して性交に及んでいることが認められる。
このような事実関係の下では,被告人は,単に同児童の淫行の相手方となったにとどまらず,同児童に対して事実上の影響力を及ぼして同児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。
したがって,被告人の行為は,同号にいう「児童に淫行をさせる行為」に当たり,同号違反の罪の成立を認めた原判断は,結論において正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小池 裕 裁判官 櫻井龍子 裁判官 山浦善樹 裁判官池上政幸 裁判官 大谷直人)

 次に青少年条例違反を検討するのですが、他府県と比べると、大阪府条例は威迫・欺き・困惑が要件になっているので、成立しにくくなっています。
 福岡県青少年条例について大法廷昭和60年10月23日が「本条例10条1項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。」と定義した行為のうち、大阪府条例では「威迫し、欺罔し又は困惑させる」の場合(第1類型)だけを処罰します。

大阪府青少年健全育成条例
(淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止)
第三十九条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
二 専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。
・・
比較
兵庫県少年愛護条例
(みだらな性行為等の禁止)
第21条
1 何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。

大阪府青少年健全育成条例の解説h26
2 第2号
性的欲望を満足させるため、心身ともに未熟な青少年を、正常な判断を行わせないような状態において、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うことを禁止するものである。
ア 「専ら」とは、概ね7割ないし8割程度以上をいうが、「専ら」に該当するかは、当該者の行為の態様、動機などを総合的に勘案することになる。
イ 「満足させる目的で」とは、行為者自らだけでなく、第三者の性的欲望についても含めるものである。
ウ 「威迫し」とは、暴行、脅迫に至らない程度の言語、動作、態度等により心理的威圧を加え、相手方に不安の念を抱かせることをいう。例えば、暴力団の構成員であると言ってすごむことなどが挙げられる。
エ 「欺き」とは、嘘を言って相手方を錯誤に陥らしめ、又は真実を隠して錯誤に陥らしめる行為をいう。例えば、婚姻をするつもりはないのにもかかわらず婚姻をするつもりであると言うことなどをいう。
オ 「困惑させて」とは、立場を利用したり、言語や態度により相手方を惑い困らせることをいう。例えば、雇用や金銭融通の恩義その他義理人情の機微につけ込むことや、職場の上司、教師などの立場を利用することにより、青少年が拒否の意思表示をできなくすることなどをいう。

 児童淫行罪だけを念頭に捜査していると、「先生に求められて内申が悪くなるなど考えて逆らえませんでした」などと師弟関係で逆らえなかったかという点に重点が置かれて、「困惑しました」等という威迫・欺き・困惑の調書を取っていないので、今さら罪名変更しづらいと思います。

生徒にわいせつ行為「起訴相当」 大阪検審が議決、教育実習生に
2018.09.10 共同通信 社会 (全390字) 
 大阪第2検察審査会は10日までに、実習先の中学校の生徒にわいせつ行為をしたとされる教育実習生について大阪地検が不起訴とした処分を不当とし、「起訴相当」と議決した。8月23日付。

 議決書によると、実習生は大阪府内の中学校で授業をし、終了後に14歳だった生徒と大阪市内の駅で待ち合わせ、ホテルの部屋でわいせつな行為をした。大阪地検児童福祉法違反容疑で捜査したが、3月30日に不起訴とした。生徒が処分を不服とし、検審に審査を申し立てた。

 議決書は「自己の欲望を満足させるため、生徒の興味をあおって誘導した。生徒の未熟さに乗じ、行為を拒否するのが困難な状況を作出した」と指摘。「中学生の判断能力と責任を成人の場合と同様とした不起訴処分には到底納得できない」とした。

 その上で「仮に児童福祉法違反に問うことに法律上の問題があっても、府青少年健全育成条例には明らかに違反する」と判断した。

共同通信社


 被疑事実に「立場利用」が記載されていないので、この時点で児童淫行罪は成立しません。
 実習生に影響関係の基礎となる立場がないので、立場利用が証明できません。
 最決平成28年6月21日の要件を検討した形跡もないし、大阪府条例も深く検討してないので、検察庁は再捜査して、判例の要件を潰して、再度不起訴にするような気がします。

議決の趣旨
本件不起訴処分は不当である。起訴を相当とする
議決の理由
1 被疑事実の要旨
大阪府内の中学校に教育実習生として派遣され、教壇に立つなどしていたものであるが、同校の生徒である申立人(当時14歳)が18満たない児童であることを知りながら、大阪市内のホテルの客室内において、同児童をして自己を相手に性交させ、もって児童に淫行させる行為をしたものである。
2 検察審査会の判断
被害児童は、被疑者に対し友好的な感情を持ち、被疑者と被害児童との関係性については、常勤の教師と生徒に比べ相当緩やかな上下関係であったところ、授業及び勤務終了後に地下鉄○○駅で待ち合わせ、ホテルに同行した。
被害児童が、被疑者は成績評価には関与しないため、不利益等を被る可能性があるとした不安を感じることはなかったこと、物品等を受け取ることで交際がなされていた事実はないこと、被疑者から威圧的な言動を受けたと認められる証拠もないことから、被疑者が、被害児童に淫行を拒否することが困難と感じさせる状況を作出したと認めることができないか否かについて、当検察審査会は、次のとおり判断した。
(1) 中学生に対する教育現場における教育実習生は、「先生」の立場であって、感情や感覚が合えば、信頼して手本とできる人物であり、単なる上下関係というより、安心して従属できる存在である。
(2) 当該被害児童は、他の同級生からも人気のある被疑者と親しくすることで周りの生徒たちに対し優越感を得ており、興味のある話やその関係を継続したいと思っていた。精神的に弱い面があり、友人が少ない被害児童にとっては、被疑者と親しくできる関係は、居心地よく壊したくない思いが大きかったものと思われる。
(3) 被害児童が被疑者からの誘いを断ることは、 (1)の信頼関係の下、 (2)の関係を断ち切ることになると思うがゆえに勇気を要し、提案を拒否することが困難な状況に陥ったと考え、こ被害児童の行動の是非は別として、被疑者との約束は責務と感じて果たしたものと思われる。
(4) 被疑者は、教育実習に関する誓約書に署名押印しているがこれに反し、そもそも誓約内容に同意できないと思っていた項目が含まれていたなどと説明しており、自分本位であって、関係機関や生徒との信頼を反故にした。
(5) 中学生が成人のような感覚で振る舞うことは、背伸びしたい年頃ということもあって、これ自体は何ら法に触れることはないところ、触法行為について、未成年者にその意思、判断及び責任を成人の場合と同等に扱うことはできないと考える。
(6)本件現場であるホテルに入室後、行為実勢の確認が何度か行われただろうと思われる双方の供述はあるが、被疑者から「中止するという選択肢」の提示が一切なかったことは、被害児童の意思を積極的に確認したものとは言い難い。
(7) 性交等は興味本位で行うものではなく、生命を尊ぶ行為であることを説明した上で、的確な判断ができる年齢までは、安易に行うものではない旨の助言や指導がなされて然るべきところ、被疑者は、興味を煽り、自己の欲望を満足させるため、被害児童を誘導したというべきである。
(8) 大人の行動に興味を向けさせ、実行しやすい状況を提供することは、正にそそのかしであって、本件は、被疑者の目論みどおりに進んだ計画的なものであったといえる。
(9) 被疑者の行為は、被害児童からの信頼を利用して、未知な性行為について好奇心と興味をそそらせ性行為を実行することを提案し、本件被害児童を大人として扱うことで対等な関係だと位置付けて行われたものである。
以上のことを総合考察すると、当検察審査会としては、被疑者が被害児童の未熟さに乗じ、淫行を拒否することに困難な状況を作出したといえると判断するため、中学生の判断能力とその責任を成人の場含と同様視された不起訴処分には、到底納得できない。
なお、仮に児童福祉法違反を問うことに法律上の問題があったとしても、大阪府青少年健全育成条例には、被疑者は被害児童を欺き又は困惑させて淫行させたという点で、 明らかに違反しているものと考える


追記2019/03/05
 前記のとおり、改めて不起訴になりました。
 児童淫行罪の「立場利用」とか「影響関係」の証拠が取れないからだと思います。

https://mainichi.jp/articles/20190304/k00/00m/040/259000c
わいせつ「起訴相当」議決の男性、改めて不起訴 大阪
毎日新聞2019年3月4日 23時49分(最終更新 3月5日 09時47分)
 中学生にわいせつ行為をしたとして児童福祉法違反容疑で送検され、不起訴処分になっていた元教育実習生の男性について、大阪地検は4日、改めて不起訴処分にした。大阪第2検察審査会が昨年8月に「起訴相当」と議決し、再捜査していた。
 地検は処分の理由を明らかにしていない。男性は実習先の中学校の生徒にわいせつ行為をしたとして昨年1月に大阪府警に逮捕され、同3月に不起訴になっていた。【高嶋将之】

「マッサージ店や事務室など私的空間で成人を盗撮する行為を取り締まる全国一律の法令はない。」(2018.07.12)→「「私的な場所では迷惑防止条例違反に該当しないこともある」と説明。トイレや浴場など以外の衣服を脱がない場所では、「のぞき見」を禁じた軽犯罪法にも当たらないとした。」(2018.9.9)

http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/07/20/000000
で指摘されたからか「窃視罪」に気付いたようです。

 迷惑条例は、基本的には社会的法益の罪ですので、私的空間には適用しにくい罪です。一部地域では「公共の場所」を撤廃して、軽犯罪法との衝突が問題になっています。
 羞恥心・性的自由等個人的法益を保護するには、別罪を設けることが望ましい訳ですが、撮影行為はわいせつ行為とされることがあるので、強制わいせつ罪の「わいせつ」の定義とか「強制」を外すような議論になります。

軽犯罪法
第一条[軽犯罪]
 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

盗撮罪:「新設を」弁護士団体訴え 宮崎の事件契機に
2018.07.13 
 全国の弁護士有志でつくる「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」が12日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し「盗撮罪」の新設を訴えた。盗撮は駅や路上など公的な場であれば自治体の迷惑防止条例、相手が18歳未満なら児童ポルノ禁止法に違反するが、マッサージ店や事務室など私的空間で成人を盗撮する行為を取り締まる全国一律の法令はない。フォーラムは「刑法に盗撮罪を新設し盗撮は性犯罪と位置づけてほしい」と求めた。

 盗撮を巡っては、宮崎市の元マッサージ店経営者が女性客への強姦(ごうかん)罪などに問われた事件で、性的暴行を盗撮したビデオ原本と引き換えに弁護士が被害者に示談を求めたため、被害者はビデオ原本の没収を求めた。起訴されていない盗撮のビデオを没収できるかが争われたが、宮崎地裁は2015年12月にビデオ原本を没収。最高裁も先月、地裁判決を支持して没収を認めた。

 フォーラムの高橋正人事務局長は「性的な盗撮被害は多いが、取り締まる条例がある自治体とない自治体があるため罪に問えるかは地域格差がある。全国一律に取り締まる法整備をしてほしい」と主張した。

◎刑法に「盗撮罪」新設提案 犯罪被害者支援 弁護士らシンポ 東京 福井からも実態訴え
2018.09.09 
刑法に「盗撮罪」新設提案
犯罪被害者支援 弁護士らシンポ 東京
福井からも実態訴え
 全国の弁護士有志でつくる「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」は8日、東京都内でシンポジウムを開き、刑法に「盗撮罪」を新設するよう提案した。盗撮を処罰する迷惑防止条例自治体によって異なる上、私的な場所での盗撮は摘発できないケースがあると指摘。「盗撮や画像拡散などに対して、深刻な被害実態に見合う、より重い規制をすべきだ」と訴えた。

 「性犯罪のない社会を目指して」と題して開かれ、被害者支援関係者や弁護士ら約130人が聴講した。

 盗撮罪の必要性を訴えた弁護士は、▽社長が社長室で秘書のスカート内を盗撮▽マッサージ店で店主が施術中の客を盗撮-などのケースを挙げ、「私的な場所では迷惑防止条例違反に該当しないこともある」と説明。トイレや浴場など以外の衣服を脱がない場所では、「のぞき見」を禁じた軽犯罪法にも当たらないとした。

 福井から参加した同フォーラム副代表の川上賢正弁護士(65)は「福井でも被害に気付いていなかったり、被害に悩んでいたりする人は多いはず。深刻な被害実態に法律が追い付いていない。刑法でしっかり刑罰を科し犯罪抑制につなげるべきだ」と話していた。

 盗撮した男性の治療プログラムに携わる精神保健福祉士社会福祉士の齊藤章佳さん(39)は、上川陽子法相が聴講する中、406人のデータを紹介し▽盗撮方法の7割はスマートフォンスマホのうち9割はシャッター音を消す「無音アプリ」を使用▽20、30代が全体の7割―と説明した。(嶋本祥之)

わいせつ容疑の乳腺外科医の裁判、今日再開

 大法廷h29.11.29が性的意図不要としたので、こういうのは構成要件レベルでは準強制わいせつ罪を疑われるリスクも増えますよね。
 録画は難しいですが、女性看護師を立ち会わせるとか予防策を徹底しないとね。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201809/557745.html
準強制わいせつで起訴された乳腺外科医の弁護団に聞く
わいせつ容疑の乳腺外科医の裁判、今日再開
2018/9/10 増谷 彩=日経メディカル

 2016年8月25日、右乳腺腫瘍摘出手術後で麻酔が残る女性患者に対し、術後診察に訪れた医師がわいせつ行為をしたとして、柳原病院(東京都足立区)の非常勤外科医が準強制わいせつで起訴された事件の裁判が今日、再開された。

 この事件の初公判が開かれたのは、2016年11月30日。そこから2年弱の時間が空いたが、その間に証拠の整理が行われてきた。弁護団によれば、特に検察側の証拠開示に時間が掛かったという。

争点はDNA型の鑑定と定量

 本事件の初公判では、検察側が女性の胸部から、アミラーゼ反応を認め、そこから男性のDNA型が検出されたことを指摘。逮捕後に被告医師の口腔粘膜を採取して調べた結果、DNA型が一致していた、との見解を示していた(わいせつ容疑の外科医、初公判で無罪を主張)。

 しかし弁護団によると、手術当日、被告医師が患者や患者の知人と話しながら患者の胸部を撮影した際や、手術台で他の医師と話し合いながら患者の胸部にマジックでマークをした際、超音波検査をした際に被告医師がマスクを付けていなかったことが明かになっており、被告医師のDNAを含んだ唾液の飛沫が胸部に付着した可能性があるという。また、被告医師は、手術前に、手術してない方(左胸)も触診をしていたため、手指を介して被告医師のDNAが付着した可能性もある。こうしたことから弁護団は、以前から「女性の胸部から、唾液反応と被告医師のDNA型が出ることはおかしくない」と主張していた。

 このアミラーゼ反応やDNA型鑑定方法の適切さや科学性・再現性に加え、女性の胸部から採取されたDNAが被告医師のものだとしても、それによって「なめたことにより付着した」と断定できるのかどうかが争点となる。

 検察側は、採取されたDNAの量により、そのDNAが唾液の飛沫や手指を介したものではないと断定できると主張している。弁護団は、検察側に検体の保管状況、鑑定の方法や時間、使用した薬品の量など、鑑定の過程の開示を求めてきたが、開示に時間がかかった上、全ての過程は開示されなかったという。

 弁護団は、法医学者に依頼し、適切な方法での再現実験を実施。唾液の飛沫、触診、なめる行為において採取されるDNA型やDNAの量を計測し、結果の分析や鑑定書の作成などを行ったという。その結果は、今後の公判の中で明らかにされる。

 弁護団は「唾液からDNAが検出されるのは、口腔内の細胞が剥がれたり、口腔内の出血で細胞が唾液に混じるため。そうした条件によって唾液から検出されるDNAの量は大きく変わる」と話している。

「女性患者はせん妄状態だった」

 また、被害者とされる女性がせん妄状態であったとの主張も引き続き行っていく意向だ(準強制わいせつ容疑の医師「やっておりません」)。手術では、麻酔を13時35分に開始し、14時40分に終了した。手術開始は14時、終了は14時32分だった。

 麻酔薬は、笑気ガスを13時37分に開始し14時22分に終了(総量60L)、セボフルラン吸入麻酔液15mLを13時37分に開始し14時32分に終了、プロポフォール静注1%20mL(200mg)を13時37分に使用、ペンタゾシン5mgを14時に使用、ジクロフェナクナトリウム50mg坐剤を13時39分に使用した。

 こうした麻酔薬や鎮痛剤の使用量やそれぞれの副作用、病室での女性の言動、当時の状況などから、せん妄状態であった可能性を示す精神科医の鑑定意見書などを作成しているという。

 勾留状の被疑事実では、右乳腺腫瘍摘出手術の女性患者に対し、5月10日の午後2時45分ごろから同日午後2時50分ごろまでの間にわいせつ行為をし、同日午後3時7分ごろから同日午後3時12分ごろまでの間に自慰行為をするなどわいせつ行為をしたとされていた。一方で起訴状では、2016年5月10日午後2時55分ごろから同日午後3時12分ごろまでの間、病室のベッドに横たわる患者に対し、着衣をめくって左乳房を露出された上、その左乳首をなめるなどし、わいせつな行為をしたとしており、「自慰行為」の表記や時刻などが変わっていた(患者への準強制わいせつ罪で外科医を起訴)。

 弁護団は「検察側の主張する事実が時間が経つにつれて変化していること、DNAや唾液に関する鑑定が科学的とは到底言えないことなど、ずさんな点を指摘したい」と話している。

 被告医師は、2016年8月25日に女性患者へのわいせつ容疑で逮捕され、柳原病院は抗議声明を発表していた(わいせつ容疑で医師逮捕、病院が抗議声明)。その後、9月6日には勾留理由開示公判が行われたが勾留は続き、9月14日に起訴となった。被告医師は身体拘束が続いていたため、医療関係者有志で作った「外科医師を守る会」が早期釈放を求める嘆願署名を東京地方裁判所に提出(外科医の早期釈放求め2万筆弱の嘆願署名を提出)。初公判後に保釈されている

5/18逮捕→8/17初公判・論告(求刑5年)・弁論→9/7 判決(懲役3年6月)(仙台地裁H30.9.7)

 5年求刑なのに、1回で結審して、実刑になっています。情状立証が尽くされていない感じです。
 被害者は数人いると思われます。

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201805/20180519_13030.html
勤務先の保育所で女の子の裸撮影し逮捕の保育士、事件当時は仙台市の臨時職員
 仙台市は18日、岩沼署が児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで17日に逮捕した保育士容疑者=は事件当時、市立保育所の臨時職員だったと発表した。
 岩沼署によると、逮捕容疑は2016年7月27日、勤務先の保育所で、通っていた女の子の裸をスマートフォンで撮影し、児童ポルノを製造した疑い。
 市によると、容疑者は16年4月から17年3月まで市立保育所に勤務。14年1~3月にも別の市立保育所で働いていた。市はいずれの保育所も名前や所在地を明らかにしていない。
 市は二つの保育所の保護者に対し、19日にも文書で事件の概要を報告する。事件当時の保育所に在籍していた子ども約90人の保護者には今後、説明会も開く。
 市は市内37カ所の市立保育所の保育士に対し、勤務中のスマホの使用を禁止していた。事件を受けて使用禁止を徹底する。
 記者会見した郷内俊一幼稚園・保育部長は「保護者や市民に迷惑、心配をお掛けし、おわびする」と謝罪した。

https://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201808/20180818_13026.html
勤務先の仙台市の市立保育所に通う女児にわいせつな行為を行うなどしたとして、強制わいせつと児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた元保育士のアルバイト被告の初公判が17日仙台地裁で行われた。
検察側は懲役5年を求刑し、弁護側は執行猶予付き判決を求めて結審した。判決は9月7日。
被告は、被害者が幼く被害を訴えられないと見込んでいたと認めた。検察側は論告で「保育士の立場を利用し、子どもの信用に乗じた悪質な犯行だ」と指摘した。


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180907-00010007-oxv-l04
女子園児にわいせつな行為」強制わいせつなどの罪で元保育士に懲役3年6ヵ月
9/7(金) 19:26配信 仙台放送
2016年、当時勤務していた仙台市内の保育園で、女子園児にわいせつな行為をしたとして強制わいせつなどの罪に問われている男に対し、仙台地裁は7日、懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡しました。
判決を受けたのは、元保育士被告です。
起訴状によりますと、被告は、2016年、当時勤務していた仙台市内の保育園で、昼寝をしていた女子園児の下半身を触るなどのわいせつな行為をしてその様子を撮影、保存していたとされています。
7日の判決で、仙台地裁の加藤亮裁判官は「低年齢の幼児であれば、何をされているかわからないだろうと考えた犯行は相当に悪質」とした上で、「保育時間内の犯行は重い非難に値すると言わざるを得ない」などとして、懲役5年の求刑に対し、懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡しました。

青少年条例違反等について、真剣交際の弁解が排斥された事例(神戸地裁h30.5.11)

 学歴とか嘘つくとだめですね
 供用物件として没収されていますが、生成物件で没収するのが判例です。控訴して指摘すれば未決多めにもらえます

①東京高裁H23.10.18
原判決は法令適用の項において 3項製造罪によって生じたsdカード2枚を没収する際の根拠条文として刑法19条1項1号 2項本文を摘示しているところ このような場合には19条1項3号 2項本文を適用すべきである
2刑 小西部長
・・・
②東京高裁H23.11.30
原判決は犯罪組成物としてsd2 マイクロsdの没収しているが、本件各カードは児童ポルノの製造という本件各犯行によって初めて作られたものであるから 犯罪行為により生じたものとして 19条1項3号 2項本文を適用して没収すべきであり 原判決の没収の法令適用には誤りがある
9部 小倉部長
・・・
③仙台高裁秋田支部H27.6.30*1
第1 法令適用の誤りの主張(控訴理由第1)について
 論旨は,要するに,本件3項製造罪に係る外付けハードディスク(秋田地方検察庁本荘支部平成27年領第2号符号4。以下「本件ハードディスク」という。)は,本件3項製造罪の犯罪行為により生じた物(産出物件)であるから,刑法19条1項3号2項本文を適用して没収するべきであるのに,これを本件3項製造罪の犯罪行為を組成した物(組成物件)として同条1項1号,2項本文を適用して没収した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 そこで検討すると,弁護人指摘のとおり,記録によれば,本件ハードディスクは,原判示第1のとおり,本件3項製造罪の犯罪行為の不可欠な要素をなす物ではなく,その犯罪行為によって作り出された物と認められるから,刑法19条1項3号にいう「犯罪行為により生じた物」に当たるというべきである。したがって,これを本件3項製造罪の「犯罪行為を組成した物」として,同条1項1号,2項本文を適用して没収した原判決には法令適用の誤りがある。

D1-Law.com
■28262779
神戸地方裁判所
平成29年(わ)第277号/平成29年(わ)第491号/平成29年(わ)第601号/平成29年(わ)第711号/平成29年(わ)第797号/平成29年(わ)第892号
平成30年05月11日

主文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中210日をその刑に算入する。
押収してある偽造学生証1枚(平成29年押第11号符号1)、神戸地方検察庁で保管中の携帯電話機(アイフォン)1台(平成29年領第1377号符号1-1)、iPad1台(同領号符号2-1)及び携帯電話機(アイフォン、黒色)1台(平成29年領第529号符号1-1)を没収する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 (平成29年7月21日付け起訴状の公訴事実第1)
  C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、平成27年1月18日午後2時24分頃から同日午後2時26分頃までの間、E所在の同児童方において、同児童に、被告人に乳首及び陰部を手指で触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第2 (平成29年7月21日付け起訴状の公訴事実第2)
  C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、平成27年3月25日午後5時50分頃から同日午後5時51分頃までの間、E所在又はF所在の同児童方において、同児童に、被告人に乳首を手指で触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第3 (平成29年7月21日付け起訴状の公訴事実第3)
  C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、平成27年4月7日午後9時56分頃から同日午後9時57分頃までの間、F所在の同児童方において、同児童に、被告人の手指をその陰部に挿入される姿態、被告人に乳首及び肛門を手指で触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房、陰部及び肛門を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第4 (平成29年7月21日付け起訴状の公訴事実第4)
  C(当時15歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、平成27年7月26日午前11時11分頃から同日午前11時13分頃までの間、F所在の同児童方において、同児童に、同児童が被告人の陰茎を口淫する姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房が露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第5 (平成29年3月30日付け起訴状の公訴事実第1)
  A(当時14歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、平成27年12月29日午後4時50分頃から同日午後6時31分頃までの間、N市b区cd丁目e番f号ホテルG(省略)号室において、自己の性欲を満たす目的で、同人と性交し、もって青少年に対し、みだらな性行為をし、
第6 (平成29年3月30日付け起訴状の公訴事実第2)
  A(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第5記載の日時場所において、同児童に衣服の一部を着けず、乳房を露出した姿態及び被告人の手指をその陰部に挿入される姿態をとらせ、これをカメラ機能付きタブレット型情報端末(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号2-1)及びカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第1377号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同端末及び同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの及び他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第7 (平成29年7月6日付け起訴状の公訴事実)
  自己の身分をH大学医学部生と偽ってAと交際していたものであるが、同人を介して同人の母親であるBから学生証の呈示を求められたため、偽造の学生証を作成して行使しようと企て、平成28年4月12日頃、N市g区hi丁目j番地のk所在の被告人方において、行使の目的で、ほしいままに、パーソナルコンピュータ等を使用し、H大学の学生証様の書式の所属欄に「医学部」、氏名欄に「I」、生年月日欄に「平成J年K月L日」、証明者欄に「H大学長」などと入力し、これを用紙に印刷した上、自己の顔写真の写しとともに、ラミネートフィルムで挟み込んで、もって上記大学長作成名義の学生証1通(平成29年押第11号符号1)を偽造した上、
 1 同日午前3時59分頃、同所において、前記偽造学生証を撮影した画像データを、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「O」を利用し、Aが使用する携帯電話機に送信し、同日、同人に閲覧させて了知させ、
 2 同日午前4時29分頃、同所において、前記画像データを、自己が使用する携帯電話機から、Bの使用する携帯電話機にメールで送信し、同日、同人に閲覧させて了知させ、
 もって前記偽造学生証1通をあたかも真正に成立したもののように装って行使し、
第8 (平成29年5月25日付け起訴状の公訴事実第1)
  Aとの性行為中に撮影した動画データ等を所持していること等を利用して同人を脅迫し、同人に自己への面会や交際の継続をさせようと考え、平成28年7月17日頃から同月19日頃までの間、兵庫県内において、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「O」を利用し、A(当時15歳)の携帯電話機に、「別れる気はない。あえばすぐかわる。許すと思う?こっちはもう動画はネットにあげてる。もちろんまだ公開してないよ。そこに保存してるだけ。俺らの大切な思い出は全てPにある。a〈1〉、終わり。この世とな。それがこうなってそうなっても生きていられるか。まあa〈1〉はそういうの見られんの好きやしね、あ、もう今夜するね。」、「俺としては、a〈1〉の未来はつぶしたくない。だから、ちゃんと月2回逢おう。a〈1〉が裏切ることに関し、俺からはすべての金銭、精神的損害賠償を求めるし、学校にも通達する。進学は不能。」旨記載したメッセージを送信して、いずれもその頃、同人に閲読させ、同人が被告人との面会や交際の継続に応じなければ、前記動画データ等を流布させるなどして同人の名誉等にいかなる危害を加えかねない旨告知して脅迫し、もって同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人が警察に相談するなどして応じなかったため、その目的を遂げず、
第9 (平成29年5月25日付け起訴状の公訴事実第2)
  Aとの性行為中に撮影した動画データ等を所持していること等を利用して同人を脅迫し、同人に自己への面会をさせるとともに、同人が警察に相談するのを阻止しようと考え、平成28年7月25日頃、兵庫県内において、自己が使用する携帯電話機から、ソーシャルネットワーキングサービス「aa」を利用し、Aの携帯電話機に、「そんな逃げ方、許すと思う?警察に相談して。ま、退学したくないから無理やろけどな。俺は会いに来てもらうことが望み。警察に話せば、変態らしい姿をみせざるをえないうちに評価は決まる。俺の持つ資料は、すべて出さないといけない。写真、動画、文章、すべて世間に出る。やめようぜ。いま、a〈1〉が警察に相談したら、俺は折れる気ないし、負けない。必ず中学に通報入る。それは曲げない。中学生なのに人生潰したくないやん?やるなら、やるけど。中学生なのに流出ごめんな。」旨記載したメッセージを送信して、いずれもその頃、同人に閲読させ、同人が被告人との面会に応じず、警察に相談に行けば、前記動画データ等を流布させるなどして同人の名誉にいかなる危害を加えかねない旨告知して脅迫し、もって同人に義務のないことを行わせようとするとともに権利の行使を妨害しようとしたが、同人が警察に相談するなどして応じなかったため、その目的を遂げず、
第10 (平成29年6月15日付け起訴状の公訴事実)
  Aとの性行為中に撮影した動画データ等を所持していること等を利用して同人の実母のBを脅迫し、Aに自己への面会をさせるとともに、同人及びBが警察に相談するのを阻止しようと考え、平成28年7月19日頃から同月28日頃までの間、兵庫県内において、自己が使用する携帯電話機から、B(当時44歳)の携帯電話機に、「法的に問題のない範囲でaaを通じて画像と僕らの婚約について送信します。」「彼女が反省して元に戻るまで手を緩めるきはありません。明日なら謝罪と反省を受け付けます。」「学校への報告をするのではなく、現在のa〈1〉さんの志望校の方とaaで繋がり、愛に満ちた問題のない画像とともに、こういう人だと伝えるということです。」「最後になるとしても、ちゃんとあって、a〈2〉さんの気持ちを聞きたいです。」「僕としては物の返還だけでなく、謝罪、あるいは話し合いを正当に要求しています。」「お互い警察には行かないことを約束してください。」「それより問題なのは、警察沙汰になった場合、そうした画像がもしa〈1〉さんが嫌だとしても、みんなが話題にし、有名になり世界中に拡散されることです。他の証拠画像についても弁護士や警察にアップする必要が出てきます。裁判ではそれらが公開されます。」「交際の事実を示す程度の画像で、怖いと言われても困ります。汚名を晴らすために確実に交際の根拠となる写真を数点流しただけです。」「警察や法律機関に相談した場合、証拠として、彼女の身元も画像も全てニュースなどからさらされることになり、こんなもんじゃすまなくなると警告しています。身元は中学生なら出ないとお思いでしょうが、今のネットワーク社会は多様です。まず特定されます。」旨記載した電子メールを送信して、いずれもその頃、Bに閲読させ、同人がAと被告人との面会をさせず、Bらが警察に行けば、前記動画データ等を流布させるなどしてAの名誉にいかなる危害を加えかねない旨告知して脅迫し、もってBに義務のないことを行わせようとするとともに権利の行使を妨害しようとしたが、同人が警察に相談するなどして応じなかったため、その目的を遂げず、
第11 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第1)
  D(当時16歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、平成29年1月20日午後6時22分頃から同日午後8時2分頃までの間、N市ab区mn丁目o番p号ホテルM(省略)号室において、自己の性欲を満たす目的で、同人に自己の陰茎を口淫させ、同人の乳首及び陰部を手指で触り、もって青少年に対し、みだらな性行為及びわいせつな行為をし、
第12 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第2)
  D(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第11記載の日時場所において、同児童に、同児童が被告人の陰茎を口淫する姿態、被告人に乳首及び陰部を手指で触られる姿態及び同児童が衣服の全部又は一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第529号符号1-1)で5回にわたり動画撮影し、その各動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第13 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第3)
  D(当時16歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、平成29年3月13日午後8時33分頃、N市q区rs丁目t番u号ab5階af内において、自己の性欲を満たす目的で、同人の乳首及び陰部を手指で触り、もって青少年に対し、みだらなわいせつな行為をし、
第14 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第4)
  D(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第13記載の日時場所において、同児童に、被告人に乳首及び陰部を触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第529号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し、
第15 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第5)
  D(当時16歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、平成29年3月16日午後8時43分頃、N市v区wx丁目y番z号ホテルQ(省略)号室において、自己の性欲を満たす目的で、同人と性交し、もって青少年に対し、みだらな性行為をし、
第16 (平成29年8月10日付け起訴状の公訴事実第6)
  D(当時16歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、前記第15記載の日時場所において、同児童に、同児童が被告人と性交する姿態、被告人に乳首を触られる姿態及び同児童が衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態をとらせ、これをカメラ機能付き携帯電話機(神戸地方検察庁平成29年領第529号符号1-1)で動画撮影し、その動画データを同携帯電話機の内蔵記憶装置に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態、他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造し
たものである。
(証拠の標目)略
(事実認定の補足説明)
第1 弁護人の主張
  弁護人は、判示第9の事実について強要未遂罪が成立することは争わないが、(1)判示第5、第11、第13及び第15の各青少年愛護条例違反の事実について、被告人はA及びDといずれも真摯に交際している中で性行為を行ったのであるから青少年愛護条例21条1項にいう「みだらな性行為又はわいせつな行為」に該当しない、(2)判示第1ないし第4、第6、第12、第14及び第16の各児童ポルノ製造の事実について、真摯な交際による性行為の様子を撮影したものであるから社会的相当行為であり違法性が阻却される、(3)判示第8及び第10の各強要未遂の事実について、人を畏怖させる程度の行為ではなく、脅迫の意思も強要の目的もないから強要未遂罪は成立しない、(4)判示第7の有印公文書偽造等の事実について、被告人が作成した学生証(以下「本件偽造学生証」という。)は、作りが粗雑で一般人をして真正なものと誤信させるものではないため偽造有印公文書に当たらない旨主張し、被告人もこれに沿う供述をする。そこで、以下に検討する。
第2 青少年愛護条例違反の各事実(判示第5、第11、第13及び第15)について
 1 前提となる事実
  関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。
  (1) Aについて
  ア 被告人は、平成27年6月頃、ネットを通じて、A(当時14歳、中学2年生)と知り合ったが、当時、Aに対して「R」なる偽名を名乗り、年齢は19歳、身分はH大学医学部生、元acであるなどと詐称しており、Aはそれを信じていた。なお、被告人は、当時、32歳で職業はアルバイトであった。
  イ そして、被告人は、その後もネットでAとのやり取りを続け、同年10月頃、Aと直接会って交際を開始し、その後間もなく、カラオケ店でAの膣に指を入れて胸を触る、さらにホテルで性交をするなどし、それ以後、Aと会うと頻繁に性的行為をするようになった。他方で、被告人は、Aの勉強の相談に乗ったり、商業施設等に遊びに行ったりするなどの交際もしていた。
  ウ 被告人は、Aとの性的行為において、Aに対して、手錠様の物を用いて手を拘束する、性的道具をAの陰部に当てる、Aに首輪を付ける、ボールを口にくわえさせるなどしたほか、被告人の尿を飲ませる、Aの陰毛を剃るなどし、被告人は、これらのAの姿態を写真や動画で撮影していた。
  (2) Dについて
  ア 被告人は、平成28年10月頃、ネットを通じてD(当時16歳、高校1年生)と知り合い、当時、Dに対して、年齢は19歳、身分はS高校3年生、ad留学の経験がある、志望校はH大学医学部、aeに自宅があり、父親は病院のお偉いさんであるなどと詐称しており、Dはそれを信じていた。なお、被告人は、当時、33歳で無職であった。
  イ そして、被告人は、1、2週間後にDと会って交際を開始し、数週間後には、Dとホテルで性交をし、それ以後、被告人は、Dと会うと頻繁に性的行為をするようになった。他方で、被告人は、Dの勉強の相談に乗ったり、商業施設等に遊びに行ったりするなどの交際もしていた。
  ウ 被告人は、Dとの性的行為において、Dの手を縛る、ボールを口にくわえさせる、テニスコートでズボンを脱がせ、お尻を触るなどしたほか、Dに対して、被告人の尿を飲んでほしいなどと要求し、これらのDの姿態を動画撮影していた。

 2 当裁判所の判断
  青少年愛護条例(昭和38年兵庫県条例第17号)21条1項は、「何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない」と規定し、相手の意思に反するか否かを問わず「みだらな性行為又はわいせつな行為」を禁止しているところ、その趣旨は、青少年は、性的行為に強い興味を抱く傾向にあるが、未成熟で判断能力が劣り、性的行為が自己に及ぼす影響を適切に判断できないことから、青少年を保護するため、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある性的行為を禁止することとしたものと解される。したがって、「みだらな性行為又はわいせつな行為」に該当するか否かについては、被害者や行為者の年齢、性的行為が行われた経緯、性的行為の態様等に鑑みて青少年の健全な育成を阻害するおそれがあるかという観点から、青少年との交際が真摯なものとはいえず、性的行為が社会的に相当とは認められないか否かを判断するのが相当である。
  これを本件についてみると、被告人とA及びDとはネットを通じて知り合って一般に見られるような男女の交際を続けていたとみられる面もあるが、被告人は、当時14歳で中学2年生のA及び当時16歳で高校1年生のDに対して、真実の年齢や職業等を隠して、Aに対しては「19歳、H大学医学部生、元ac」、Dに対しては「19歳、S高校3年生、父親は病院のお偉いさん」などと、十代半ばの被害者らにとって誘惑的な嘘をつき、知り合ってから交際中まで始終年齢や身上を詐称し続けていたのであるから、Aらが心身ともに未成熟であることに乗じた不当な手段により、Aらと男女の交際を開始して性的行為に及んだと認められる。さらに、被告人は、Aらとの性的行為において、Aらの手を拘束し、ボールを口にくわえさせる、尿を飲むように要求するなどし、Aらのその姿態を撮影するなどしているところ、このような被告人の性的行為は通常青少年が受ける性教育とかけ離れており、青少年の健全な育成に著しい悪影響を与える行為にほかならず、本件の各性的行為は、その一環としてなされたものと認められる。そして、被告人は、当時14歳ないし16歳のA及びDに対して、同様の手段を用いて交際を開始して同様の性的行為に及んでいるのみならず、後記のとおり、当時15歳のCに対しても、ほぼ同様の手段で交際を開始し、Cにわいせつな姿態をさせてその動画を撮影するなどしており、被告人のこれらの行動状況からすると、被告人は、自己の性的な趣向を満たすための対象としてA及びDに接近して性的行為に及んだと認められる。
  この点に関し、弁護人は、被告人はAらと知り合って又は初めて会ってすぐに性的行為に及んでいないこと、交際中は専ら性的行為をしていたのではなくデートやAらの相談に乗るなどの交流があったこと、被告人はAらと真剣に結婚したいと考えてその意思を伝えていたことなどの事情から、被告人とAらとの交際は真摯なものであって、本件各性的行為には社会的相当性が認められる旨主張する。
  しかしながら、弁護人が指摘するような事情があるからといって、直ちに、被告人のAらとの交際が真摯であり、Aらとの性的行為が社会的に相当なものであるとはいえず、むしろ、一般に相手の年齢や身上などは交際や性的関係を持つにあたって考慮される重要な事情であるのに、被告人は年齢や身上などについて嘘をついてAらをだまして交際を開始し、その後もAらをだまし続けて性的行為を重ねており、Aらの性的自由にかかる意思決定を誤らせていることは明らかである。また、被告人は自分の年齢や身上を偽ったままでAらとの結婚を約束しているが、そのような結婚の約束などはおよそ現実性がなく真摯なものとはいえず、Aらとの性的な関係を続けるための方便というほかない。そうすると、弁護人の主張する事情は、被告人の行為が社会的に相当でないとの判断を左右するものとはいえない。
  さらに、弁護人は、被告人とAらとの交際及び性的行為については、Aの母親であるB及びDの母親の承諾があり、このような保護者らの了解は、交際の真摯さや社会的相当性を裏付ける旨主張するが、被告人は、Bらに対しても身上等を偽っていることに加え、仮に、Bらにおいて、Aらが被告人と何らかの性的行為を行っていることを察知してこれを容認していたとしても、Aらの人格を無視した態様の性的行為を認識、了解していたとは到底いえず、被告人の行為が社会的に相当であるとする事情に当たるとはいえない。
  そうすると、本件各性的行為は、いずれも社会的に相当な行為とは認められず、「みだらな性行為又はわいせつな行為」に該当するから、A及びDに対する各青少年愛護条例違反がそれぞれ成立すると認められる。
第3 児童ポルノ製造罪の各事実(判示第1ないし第4、第6、第12、第14及び第16)について
 1 前提となる事実
  関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。
  (1) Cについて
  ア 被告人は、平成26年夏頃、ネットを通じて、C(当時14歳、中学3年生)と連絡を取り合うようになったが、当時、Cに対して「T」なる偽名を名乗り、年齢は22歳、身分はH大学医学部生などと詐称しており、Cはこれを信じていた。なお、被告人は、当時、31歳で職業はアルバイトであった。
  イ 被告人とCは、同年9月か10月頃に直接会って交際を開始し、同年11月か12月頃、ホテルで性交をした。その後、Cは、被告人を母親に紹介し、同年12月頃から、被告人は、Cの自宅に同居するようになり、被告人とCは、Cの自宅で頻繁に性的行為をするようになった。
  ウ 被告人は、Cとの性的行為において、Cに対して、手を縛る、ボールを口にくわえさせる、性的道具を陰部に当てる、Cの陰毛を剃るなどしたほか、被告人の尿を飲んでほしいなどと要求したことがあった。
  エ そして、被告人は、Cが被告人の陰茎を口淫する姿態、被告人の手指をその陰部に挿入される姿態及び衣服の一部を着けず、乳房及び陰部を露出した姿態など、Cとの性的行為の様子を携帯電話やiPadで動画撮影した。
  (2) Aについて
  ア 交際経緯等については、前記第2・1の(1)に記載したとおりである。
  イ 被告人は、Aが衣服の一部を着けず、乳房を露出した姿態や被告人の手指をその陰部に挿入される姿態など、Aとの性的行為の様子を携帯電話やiPadで動画撮影した。
  (3) Dについて
  ア 交際経緯等については、前記第2・1の(2)に記載したとおりである。
  イ 被告人は、Dが被告人と性交する姿態、被告人の陰茎を口淫する姿態及び被告人に乳首及び陰部を手指で触られる姿態など、Dとの性的行為の様子を携帯電話で動画撮影した。
 2 当裁判所の判断
  児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律の趣旨は、児童に対する性的搾取等から児童を保護し、その権利を擁護することにあり(同法1条)、同法が、姿態をとらせた上での児童ポルノの製造行為を処罰の対象としているのは、かかる行為が、児童が同意していたか否かにかかわらず、それ自体、当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取行為であり、かつ児童ポルノが流通する危険を創出する行為と認められるためである。
  そして、本件についてみると、被告人のA、C及びDに対する本件児童ポルノ製造行為が、いずれも同人らの心身に有害な影響を与える性的搾取行為であり、かつ流通の危険を創出する行為であることは、被告人が製造した本件児童ポルノの内容自体により容易に認められる。また、本件児童ポルノに流出の危険があることは、真摯な交際を自称する被告人自身が、判示第8ないし第10のとおり、Aとの性的行為が撮影された画像を流出させかねない行為を行っていることによっても裏付けられている。
  弁護人は、被告人は、A、C及びDと真摯に交際していた上、同人らは被告人による動画撮影行為を認識し、当時これを許していたのであるから、被告人の行為は社会的相当行為として違法性が阻却される旨主張する。しかしながら、前記1に認定した事実によれば、被告人のA、C及びDとの交際はいずれも到底真摯なものとは認められない上、同人らが撮影を許していたのは、当時好意を抱いていた被告人の要求に対して、これを拒否するなどの適切な対応ができなかったという、まさに児童の未熟さゆえの結果であって、被告人はかかる未熟さに乗じて本件各撮影行為を行ったものと認められる。そうすると、弁護人が主張する事情は、何ら本件児童ポルノ製造行為が社会的に相当とはいえないとの判断を揺るがすものではない。
  よって、A、C及びDに対する各児童ポルノ製造罪が成立する。
第4 A及びBに対する強要未遂の事実(判示第8及び第10)について
  関係各証拠によれば、被告人は、Aとの性的行為を携帯電話等で撮影してその多数の動画データを保存していたこと、Aは、遅くとも平成28年7月17日までに、被告人に対して、Oで、別れたい旨のメッセージを送信したところ、被告人は、同日午前4時20分頃、Aに対して、Oで、「別れる気はない」とメッセージを送信したほか、Aに対して判示第8及び第9の、Bに対して判示第10の各メッセージを送信したことが認められる。
  判示第8のメッセージによれば、同メッセージが、Aが被告人との面会や交際の継続に応じなければ、Aとの間の性的行為を撮影した動画データを流布させる趣旨のものであること、判示第10の電子メールによれば、同メールが、警察等に相談すれば、Aとの間の性的行為を撮影した動画データを流布させる趣旨のものであることが認められる。
  そして、これらのメッセージ等を送信する被告人の行為が、Aの名誉を大きく毀損し、A及びBをして畏怖させるに足りるものであることは明らかであり、強要罪における脅迫にあたると認められ、被告人は、メッセージ等の内容を認識した上で、A及びBにそれぞれ送信しているのであるから、強要の故意が認められる。
  弁護人は、判示第8及び第10の各行為について、被告人には強要の目的がなかった旨主張するが、被告人が、Aから別れるという内容のメッセージを受信するや、判示第8のメッセージを送信し、さらに、判示第9のとおり、Aに対して面会等を強要するメッセージを送信し、その後、Aに連絡を取ることができなくなると、Bに対して判示第10のメールを送信しているという経緯からすると、被告人が、本件各メッセージ等を送信することによって、Aに対し交際の継続を強いるとともに、Bに対しAと面会させるよう求め、AやBが警察に通報することを阻止しようとしたことなどの意図があったと認められる。
  したがって、A、B両名に対する強要未遂罪が成立する。
第5 有印公文書偽造、同行使の事実(判示第7)について
 1 前提となる事実
  関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。
  (1) 被告人は、A及びBに対して、H大学医学部生を詐称していたところ、平成28年4月11日頃、Aから、Oで、Bが学生証を見たいと言っているとのメッセージを受信した。そして、被告人は、同月12日頃、被告人方において、パーソナルコンピュータなどを使用して、本件偽造学生証を作成した。
  (2) 本件偽造学生証は、本体となる紙片1枚、被告人の顔写真の紙片1面及びラミネートフィルム1枚により構成されており、所属欄に「医学部」、氏名欄に「I」、生年月日欄に「平成J年K月L日」、証明者欄に「H大学長」などと記載されている。そして、本件偽造学生証は、本体となる紙片及び顔写真の紙片がラミネートフィルムに挟み込まれているのみで、ラミネートフィルムが本体や顔写真の紙片には貼り付けられていない。
  (3) 被告人は、同日、携帯電話で本件偽造学生証を撮影し、Aに対してはOで、Bに対しては電子メールで、それぞれ本件偽造学生証を撮影した画像を送信した。
 2 当裁判所の判断
  本件偽造学生証は、ラミネートフィルムが本体に貼付されていないなど、実物を手に取ると一見して偽造文書であると分かる程度のものであることから、有印公文書偽造罪の客体に該当するかが問題となり、弁護人もこの点を指摘するため、当裁判所の判断につき補足して説明する。
  公文書偽造罪は、公文書に対する社会的信用を保護法益とし、本件で偽造された国立大学の学生証についても、大学長等の発行権者が発行し、学生である所持者の身分を公的に証明する文書として、社会的信用の対象となっている。そして、電子コピー、デジタル写真などの文書複製手段が発達し、他者と画像等を共有するための通信手段も多様に存在する現代社会においては、文書の行使方法や認識方法は、作成された物を交付して直接目視させる以外にも様々あり得るのであるから、文書に対する社会的信頼を保護するためには、偽造文書に該当するかどうかは、交付に限らず当該文書について通常想定される行使方法によった場合に、一般的に相手が真正な文書であると誤信するに足りる程度の形状を備えているか否かという観点から判断するのが相当である。そして、文書の行使方法が多様化する中で、文書を写真撮影し、その画像を各種通信機能を通じて相手に送信し、相手が携帯電話等の画面を通して当該文書を確認するということはしばしば行われているところであり、公的な身分証明書もこの例外とはいえない。
  確かに、本件偽造学生証は、その実物を手に取って見れば、ラミネートフィルムが本体に貼付されておらず、縦横の縁も曲がっていることなどから、本物のH大学学生証でないことが容易に見て取ることができる。しかし、携帯電話で撮影した画像では、ラミネートフィルムが貼付されていないとか、縁が曲がっているなどといった状態を確認することはできず、他方で、校章、学籍番号及び「H大学長」の名義など、あたかも本物の学生証に記載されていると考えられるような事項の表示が見て取れることからすれば、本件偽造学生証は、通常想定される行使方法において、真正に成立したH大学学生証であると誤信させるに足る形状を備えているものと認められる。そして、実際にも、A及びBは、本件偽造学生証が本物であると誤信していたものである。
  したがって、本件偽造学生証は、一般人をして真正な文書と誤信させるに足りる形状を備えていると認められるから、被告人に対しては有印公文書偽造・同行使罪が成立する。
(法令の適用)
  判示第1ないし第3、第6及び第14の各所為はいずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項2号、3号に、判示第4の所為は同法律7条4項、2項、2条3項1号、3号に、判示第5、第11、第13及び第15の各所為はいずれも青少年愛護条例(昭和38年兵庫県条例第17号)30条1項2号、21条1項に、判示第7の所為のうち、有印公文書偽造の点は刑法155条1項に、A及びBに対する各偽造有印公文書行使の点はいずれも同法158条1項、155条1項に、判示第8及び第9の各所為はいずれも同法223条3項、1項に、判示第10の所為は同法223条3項、2項に、判示第12及び第16の各所為はいずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号、2号、3号にそれぞれ該当するところ、判示第7の有印公文書偽造とA及びBに対する各偽造有印公文書行使との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、刑法54条1項後段、10条により結局以上を1罪として犯情の最も重いAに対する偽造有印公文書行使罪の刑で処断し、判示第1ないし第6及び第11ないし第16の各罪についていずれも懲役刑を選択し、以上は同法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により最も重い判示第7の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し、同法21条を適用して未決勾留日数中210日をその刑に算入し、押収してある偽造学生証1枚(平成29年押第11号符号1)は判示第7のAに対する偽造有印公文書行使の犯罪行為を組成した物で、被告人以外の者に属さないから、同法19条1項1号、2項本文を適用し、神戸地方検察庁で保管中の携帯電話機(アイフォン)1台(平成29年領第1377号符号1-1)は判示第1ないし第4及び第6の犯罪行為の用に、同庁で保管中のiPad1台(平成29年領第1377号符号2-1)は判示第6の犯罪行為の用に、同庁で保管中の携帯電話機(アイフォン、黒色)1台(平成29年領第529号符号1-1)は判示第12、第14及び第16の犯罪行為の用にそれぞれ供した物で、いずれも被告人以外の者に属さないから、いずれも同法19条1項2号、2項本文を適用して、これらをいずれも没収し、訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
  被告人は、14歳ないし16歳という年少者の被害者らに対して、年齢や身上等を偽る方法によって接近し、「19歳、H大学医学部生、S高校3年生」などと同人らにとって誘惑的な嘘をついて交際を開始し、交際中も詐称を続けた上、その過程で、被害者らが被告人に好意を抱いていることを利用して、A及びDに対してその身体を弄ぶような不健全な性的行為を繰り返すばかりか、A、C及びDに対してこれらの姿を動画撮影し児童ポルノを製造しており、被告人の行為は、被害者らの精神的な未熟さにつけ込んで、被害者らを自らの性的欲求の対象として扱っている行為というほかない。加えて、被告人は、各人との交際が終わるごとに次々と別の年少者に接近して性的関係を持ち、同様の行為を繰り返しており、この種の犯罪に対する規範意識は相当に鈍麻している。
  また、被告人は、AやBに本当の身分等を話せば、Aとの交際が続けられなくなることを当初から自覚しながら、自らが作り出した嘘を貫き通す手段として有印公文書偽造、同行使の犯行に及び、その後、Aから別れたい旨告げられると、Aとの交際を維持し、警察に通報されることなどを阻止するため、自ら製造した児童ポルノ等の性的動画データを悪用して、A及びBに対して、自己の意に沿う行動をとらなければこれらの動画データを流布させる旨述べて脅迫しており、被告人の行為はまことに卑劣であって、A及びBが抱いた恐怖感は大きかったと認められる。
  さらに、被害者らが受けた精神的被害は重大であり、被害者らの健全な成長に対する悪影響も懸念されるところ、被害者らやその保護者らが厳重な処罰を求めるのも十分に理解できる。
  そして、被告人は、被害者らをだまして申し訳ないなどと、一応は反省の言葉を述べているが、被害者らとは真摯な交際をしていたなどと不合理な弁解に終始しており、自己の行為について十分に内省がなされているとはいえない。
  したがって、本件の犯情は悪質であり、被告人の刑事責任は相当に重いものがある。
  そうすると、被告人に対しては、相当期間の実刑は免れないところ、他方で、有印公文書偽造等の偽造態様が稚拙であること、被告人が外形的事実自体は概ね認めていることや、前科がないことなど、被告人に有利な事情も考慮した上、主文のとおり量刑した。
(求刑 懲役5年、偽造学生証1枚、携帯電話機(アイフォン)1台、携帯電話機(アイフォン、黒色)1台、iPad1台の各没収)
第1刑事部
 (裁判長裁判官 芦髙源 裁判官 神原浩 裁判官 池見祥加)

監護者性交1罪求刑6年宣告5年(長崎地裁h30.5.16)

 内済の連れ子への児童淫行1罪だと3~4年の実刑だったので、監護者性交罪の下限程度まで引き上げられた感じです。
 当然の話ですが、改正前の児童淫行罪。強制わいせつ罪・強姦罪が、改正後の強制性交等・監護者性交等になる場合については、法定刑の下限の引き上げの影響をもろに受けます。
 内縁関係の場合の情状弁護としては、児童淫行罪では内縁解消して、生活支援するようなことが一般的です。

裁判年月日 平成30年 5月16日 裁判所名 長崎地裁 裁判区分 判決
事件番号 平30(わ)6号
事件名 監護者性交等被告事件
文献番号 2018WLJPCA05166004
主文
 被告人を懲役5年に処する。
 未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
理由
 (犯罪事実)
 被告人は,平成29年8月当時,内縁の妻Aの娘であるB(当時16歳)と同居してその寝食の世話をし,その指導・監督をするなどして,同人を現に監護していた者であるが,Bが18歳未満の者であることを知りながら,同人と性交をしようと考え,平成29年8月25日から同月26日までの間に,福岡市〈以下省略〉において,Bを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をした。
 (証拠の標目)(各証拠書類等に付記した番号は,検察官請求の証拠番号である。)
 (法令の適用)
 罰条
 被告人の判示行為は,刑法179条2項,177条前段に該当する。
 宣告刑の決定
 所定刑期の範囲内で,被告人を懲役5年に処する。
 未決勾留日数の算入
 刑法21条を適用して未決勾留日数中70日をその刑に算入する。
 訴訟費用の処理
 訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。
 (量刑の理由)
 犯行態様は,被告人がAやBらとホテルに宿泊した際,隣のベッドにAらが寝ているにもかかわらず,同じベッドに寝ていたBと性交するというものであり,大胆かつ悪質である。しかも,被告人は避妊措置をとっておらず,その点でも非難は免れない。Bは,すぐ近くに実母であるAらが寝ている中で性交をするという異常な状況に置かれており,本件犯行により受けた精神的苦痛は非常に大きく,また,肉体的苦痛も軽視できない。犯行の動機も,自身の性欲を解消するとともに,Bの実母であるAらが横で寝ている状態でBと性行為に及ぶスリルを感じるためという身勝手極まりないもので,特に酌むべき事情はない。
 以上によれば,被告人の刑事責任は重く,酌量減軽を行うべき事情は見当たらないが,他方で,想定される監護者性交等の犯行態様の中で,本件をことさらに重く処罰すべき事情も存在しない。
 そして,被告人が公判廷において事実を認め,反省の弁を述べていること,Bとその家族に二度とかかわらない旨誓約していること,被告人に前科がないこと等の被告人に有利な事情が認められるので,それらの事情も考慮し,主文のとおりの刑に処するのが相当と判断した。
 (検察官大西杏理,国選弁護人中田昌夫各出席)
 (求刑―懲役6年)
 平成30年5月17日
 長崎地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 小松本卓 裁判官 堀田佐紀 裁判官 佐野東吾

警察見解によれば、盗撮被害者が立ち去っても迷惑条例での立件は可能。

 盗撮とか痴漢の「後日逮捕」の相談でよく聞かれます。
 被害届が出なければいいということにはなりません。

地域警察官のための軽微犯罪の措置要領(2010年 立花書房)
Q4
甲は,電車内において,乗車中のは(2時のスカートの下から股聞をカメラ付き携帯電話で撮影していたところを,会社員に目撃されて取り押さえられた。しかし, A女はそのまま立ち去ってしまい,また甲を警察に突き出したところ,カメラ付き携帯電話の記録媒体には画像が記録されていなかった。
A
甲の行為が,「卑わいな行為」であることに疑いはない。また,被害者が立ち去る等して,被害者からの供述が録取できなかったとしても,逮捕者や目撃者からの供述により「実害発生の可能性がある卑わいな言動」が立証できれば,迷惑防止条例違反事件として送致することは可能である。
問題は,「盗撮」行為の処罰規定がある条例の適用であるが,行為自体は「卑わい(粗暴)行為」に該当しているのであるから,撮影した画像が記録媒体に残っていない場合であっても,通常の「卑わい(粗暴)行為」の罰則を適用すればよい。
このような事件を立件するに当たっては,目撃者から目撃情報等を詳細に録取した参考人供述調書を作成し調書化するとともに,その内容に整合した実況見分調書を作成することが必要である。

「「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し性的に羞恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう」宮城県青少年健全育成条例の解説h30

 この定義は、強制わいせつ罪については、大法廷h29.11.29で否定されたことになります。
 青少年条例についても、性的意図を要求する理由は無いので、定義を見直す必要があります。

みだらな性行為又はわいせつな行為の禁止(第31条)
(みだらな性行為又はわいせつな行為の禁止)
第31条何人も、青少年に対しみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
(昭60条例17・追加、平22条例22・一部改正)
【解説】
1 この条は、青少年に対して、みだらな性行為若しくはわいせつな行為をし、又はそれらの行為を故意に教えたり、見せたりする等、直接的に青少年の心身に傷痕を残すこととなる行為を禁止し、青少年の健全な育成を図ろうとするものである。
2 「みだらな性行為」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺問し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交またば性交類似行為、又は健全な常識を有する一般社会人から見て、結婚を前提としない性的欲望を満たすためにのみ行う性交又ば性交類似行為をいう。
「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し性的に羞恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
3 この条は、青少年の合意の有無にかかわらず、適用される。
《罰則》
〇みだらな性行為又はわいせつな行為…… ・・・2年以下の懲役又は100万円以下の罰金・
〇みだらな性行為又はわいせつな行為を教え、又は見せた者・… ・・50万円以下の罰金又は科料
※年齢に対する過失処罰規定適用
当該青少年の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることはできない。(過失のないときは除く。)

他人の著作物を無権限で複製して頒布・公衆提供した場合の、複製権侵害罪と頒布罪・公衆提供罪は包括一罪(某高裁某支部)

 特別法犯の法令適用は検察官も裁判所も弁護人も気に留めないでやってますので、控訴審では真っ先にチェックします。
 原判決の法令適用に理由不備はないといいながら、破棄自判して法令適用を修正しています。
 「包括一罪」という判断を引き出すのに併合罪だという主張をしていますが、不利益主張だという判断はありません。

原判決
第2 法定の除外事由がなく、かつ、著作権者の許諾を受けないで、
 1 平成28年月日頃、上記被告人方において、株式会社Iが著作権を有する映画の著作物である「■■■■■■■■■■■■■■■■」に登場するキャラクターである「■■■■■■■■■■■■■■■■」のイラストを色紙1枚に複写して複製した上、同月中旬頃、同色紙1枚を、都内又はその周辺から県(以下略)のJ方に宛てて発送し、その頃、同所にこれを到達させて同人に受領させ、代金1万2511円で販売して頒布し、
 2 平成28年月日頃、上記被告人方において、映画「■■■■■■■■■■■■■■■■」の宣伝用に作成されたK株式会社等7社が著作権を有する美術の著作物である「■■■■■■■■■■■■■■■■」のイラストを、色紙1枚に複写して複製した上、同年月日から同月日までの間、同色紙1枚を、「B」に出品し、Lら不特定多数の者に閲覧させて購入者を募り、その頃、同人にこれを落札させ、同月日頃、同色紙1枚を、同市内から県(以下略)所在のM(省略)号室の同人方に宛てて発送し、同月14日頃、同所にこれを到達させて同人に受領させ、代金1万7000円で販売して譲渡することにより公衆に提供し、
 もって上記各会社らの著作権を侵害した。
(法令の適用)
罰条
  第2の1 著作権法119条1項、21条、26条第1項
  第2の2 著作権法119条1項、21条、26条の2第1項
刑種の選択 第2についていずれも懲役刑及び罰金刑を選択
  第3、第4についていずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、懲役刑について47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第2の2の罪の刑に法定の加重)罰金刑について刑法48条2項
未決勾留日数の算入 刑法21条
労役場留置 刑法18条
訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書

某高裁某支部H30
第1 弁護人及び■■■■■■■■■の控訴理由
2 原判示第2の事実について
(1) 不法な公訴の受理又は訴訟手続の法令違反及び法令適用の誤り(弁護人奥村の控訴理由第5の2及び■■■■■■■■■の控訴理由第5の2)
原判示第2の1は複製権侵害罪と頒布権侵害罪が,原判示第2の2は複製権侵害罪と公衆提供権侵害罪が,それぞれ併合罪となるから,これらをそれぞれ科刑上一罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある。また,これらの訴因はいずれも単一性を欠き,訴因不特定として公訴棄却されるべきであったのに,実体判断をした原判決には,不法に公訴を受理した違法があるし,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反もある。
(2) 理由不備(弁護人奥村の控訴理由第5の1及び■■■■■■■■■の控訴理由第5の1)
原判示第2の1については複製権侵害罪と頒布権侵害罪,原判示第2の2については複製権侵害罪と公衆提供権侵害罪が起訴されているのに,原判決は,それぞれ科刑上一罪とした罪数処理の条項を全く示しておらず,理由を附していない。また,原判決は,原判示第2の2の罪について併合罪加重をしているところ,複製権侵害罪と公衆提供権侵害罪のいずれに加重したのかも明らかにしていないから,理由を附していない。
↓↓
第2 控訴理由に対する判断
2 原判示第2の事実について
(1) 不法な公訴の受理又は訴訟手続の法令違反の主張及び法令適用の誤りの主張(前記第1・2(1)) について
原判示第2の1の複製行為と頒布行為,同第2の2の複製行為と公衆に提供した行為は,いずれも,継続した同一の犯意に基づいて一つの著作権を侵害した一連の行為と認められるから,いずれも包括して一罪と評価すべきである(なお,原審において,検察官はその旨明示的な釈明等をしておらず,また原判決もその法令の適用の項において「包括して」との表示をしていないが,原審の審理及び判決を通覧すればその趣旨であるものと容易に理解できる。)。したがって,原判示第2の1及ぴ2の各行為をそれぞれ科刑上一罪とした原判決に法令適用の誤りはない。そして,同各事実に係る公訴事実はできる限りの特定がされており,罰条の記載を併せみると,前記各犯罪が起訴されていることが明らかであるから, これが訴因の特定に欠けるところがないのも明らかである。したがって,前記各事実に係る訴因が不特定であるとして不法な公訴の受理あるいは訴訟手続の法令違反をいう主張は前提を欠く。
(2) 理由不備の主張(前記第1・2(2)) について
前記(1)のとおりであって,原判決に理由不備はない。
↓↓
第3 結論
刑事訴訟法39 7条2項により原判決を破棄し,同法400条但書を適用して被告事件について更に判決する。
第4 破棄自判
(犯罪事実及び証拠)
原判決と同じ。
(法令の適用)
原判決と同一の法令を適用した刑期の範囲内(ただし, 前記第2の2(1)のとおり,原判示第2の1の所為は包括して著作権法11 9条1項,に, 同第2の2の所為は包括して同法11 9条1項, 2 1条,2 1条, 2 6条1項2 6条の2第1項にそれぞれ該当する。) で・・・・

前刑(平成27年9月 懲役2年6月執行猶予3年)の執行猶予期間内に罪を犯し、平成30年3月に実刑判決を受け、被告人が控訴した事件につき、当初指定された弁論を延期して、控訴審判決を執行猶予切れ1週間前に指定してもらい、さらに2項破棄となった事案(弁当切り)

 裁判を長引かせて、執行猶予を徒過させるというのは道徳的には感心できませんが、適法です。
 こんな時系列を気にしながら訴訟行為をすることになります。
http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2018/03/01/000000
 1審の方が簡単です。
 控訴趣意書は判決を遅らせるために、とりあえず全論点を指摘した長大なものになります。

 上告期間中に前刑の執行猶予が経過しますので、執行猶予が取り消されることは無くなりました。
 2項破棄で宣告刑期が2月短縮され、控訴審未決も約6月算入されました。

誤認逮捕された男性についても「男性と似ている」と供述し、真犯人とされる男性についても「犯人と似ている」と供述する被害者

 やってないのに「民間会社の顔立ちの鑑定で男性と一致する可能性が高いという結果が出た」そうです。
 2人の被疑者はどれくらい似てるのかな。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180827-00010009-saitama-l11
県警によると、深谷市内の30代女性方で昨年9月、何者かが侵入して現金を盗み、女性の体を触るなどした事件が発生。女性方にあった防犯カメラに帽子をかぶった人物が映っていたことから、この画像を精査したところ、「容疑者の可能性が高い」という鑑定結果が出たことや、女性の証言などから、昨年11月9日に男性を強盗致傷容疑などで逮捕した。
・・
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180827-00000056-mai-soci
県警によると昨年1~9月、深谷市内で30代女性のアパートに男が複数回侵入し、現金数十万円を盗んだり、女性の体を無理やり触って軽傷を負わせたりする事件が発生。女性が設置した自宅の防犯カメラに映っていた人物について、被害女性が「男性と似ている」と証言。民間会社の顔立ちの鑑定で男性と一致する可能性が高いという結果が出たことなどから逮捕した。

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20180827-00000062-ann-soci
今年5月になって別の強盗事件で逮捕された容疑者(22)が深谷市の事件への関与もほのめかしたほか、被害者の女性も容疑者が「犯人と似ている」と証言したことから再逮捕しました。埼玉県警は男性に対し、26日に謝罪したということです。

「児童であることを知りながら」が立証できない児童買春行為について、青少年条例の年齢知情条項を適用して、過失の青少年条例違反とした事例(某支部)

 量刑理由に、出会い系サイトで、対償供与約束したことが出ています。青少年条例は適用されませんので、年齢知情条項も使えません。
 弁護人も児童買春罪で逮捕されたのが青少年条例違反に落ちたとして喜んでいる場合じゃなくて、無罪にしないとだめですよ。対応としては簡単で、全部の調書に「対償供与の約束があったこと」を記載してもらうことです。

強制わいせつ罪で起訴されたときには、どんな行為についても弁論でいいから裁判所にわいせつの定義を聞いておこう

 乳房もむとか陰部弄ぶという典型的な行為についても、精液つける、用便中の姿態を凝視する、足嘗める、裸写真を撮影送信させるなどという非典型な行為についても、裁判所はわいせつの定義が決められないので、積極的にわいせつの定義を聞いて下さい。
 「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)」という有名な定義については、馬渡論文で否定されていますから、きょうびそんな判決は書けません。
 ■■■■■■のところに、わいせつの定義についての判示をコピーすれば、控訴理由が一個できるようにしてあります。
 「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」というのが山口厚最高裁判事の見解なので、山口判事に当たるまで、当面、山口説押しでいきます。

控訴理由 理由不備・法令適用の誤り 「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」というのが正解であるところ、原判決の「■■■■■■■■■■■■■■■■」では定義を誤っており、かつ説明不足であること
1 原判決
 原判決は、弁護人からわいせつの定義を求められて、「■■■■■■■■■■■■■■■■」と判示した。
 しかし、わいせつ行為の定義の中に「わいせつ」が入り込んでいるのは、一見して循環論法であって、定義の体をなしていない。
 わいせつの定義についての解釈ができないまま強制わいせつ罪(176条後段)について有罪にした点で、理由不備・法令適用の誤りがあるから、原判決は破棄を免れない
 さらには定義できないような罪名を適用した点で、罪刑法定主義違反の法令適用の誤りがあるから、原判決は破棄を免れない。

2 判例
(1) わいせつの定義についてわいせつとは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」という判例違反(最判s26.5.10 名古屋高裁金沢支部S36.5.2 東京高裁h22.3.1)
 わいせつの定義の点で、原判決は、「わいせつとは、公然わいせつ罪・わいせつ物頒布罪と同様に、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうとする判例最判昭26・5・10刑集5-6-1026)に反する。
 強制わいせつ罪の「わいせつ行為」についても「徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することをいうものと解すべき」とする判例(金沢支部S36.5.2 東京高裁h13.9.18 東京高裁h22.3.1)。にも反する。
 これは大法廷h29.11.29でも変更されていない。
名古屋高裁金沢支部S36.5.2*2
②東京高裁h13.9.18*3
③東京高裁h22.3.1*4

(2)性的自由侵害行為とする判例(大阪高裁H28.10.27 東京高裁h26.2.13 東京高裁h30.1.30)にも反する。
 これも大法廷h29.11.29でも変更されていない。

①大阪高裁H28.10.27
 大法廷h29.11.29の控訴審判決である。
「被害者の性的自由を侵害する行為」と定義づける
阪高裁H28.10.27
(2)ところで,強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由と解され,同罪は被害者の性的自由を侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,強制わいせつ罪が成立し,行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないと解すべきである。その理由は,原判決も指摘するとおり,犯人の性欲を刺激興奮させ,または満足させるという性的意図の有無によって,被害者の性的自由が侵害されたか否かが左右されるとは考えられないし,このような犯人の性的意図が強制わいせつ罪の成立要件であると定めた規定はなく,同罪の成立にこのような特別な主観的要件を要求する実質的な根拠は存在しないと考えられるからである。
 そうすると,本件において,被告人の目的がいかなるものであったにせよ,被告人の行為が被害女児の性的自由を侵害する行為であることは明らかであり,被告人も自己の行為がそういう行為であることは十分に認識していたと認められるから,強制わいせつ罪が成立することは明白である。
 以上によれば,強制わいせつ罪の成立について犯人が性的意図を有する必要はないから,被告人に性的意図が認められないにしても,被告人には強制わいせつ罪が成立するとした原判決の判断及び法令解釈は相当というべきである。当裁判所も,刑法176条について,原審と同様の解釈をとるものであり,最高裁判例(最高裁昭和45年1月29日第1小法廷判決・刑集24巻1号1頁)の判断基準を現時点において維持するのは相当ではないと考える。
・・・・・
②東京高裁h26.2.13
東京高裁h26.2.13
なお,本罪の基本犯である強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由であると解されるところ,同罪はこれを侵害する行為を処罰するものであり,客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれば,同罪の成立に欠けるところはないというべきである。本件において,被告人の行為が被害者の性的自由を侵害するものであることは明らかであり,被告人もその旨認識していたことも明らかであるから,強制わいせつ致傷罪が成立することは明白である。被告人の意図がいかなるものであれ,本件犯行によって,被害者の性的自由が侵害されたことに変わりはないのであり,犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図の有無は,上記のような法益侵害とは関係を有しないものというべきである。そのような観点からしても,所論は失当である。
・・・・・・
③東京高裁h30.1.30*5
東京高裁h30.1.30
 所論は,①低年齢児に対するわいせつ行為では一般人の性欲を興奮,刺激させない,②低年齢児には性的羞恥心がないので,法益侵害がないなどと主張する。
 しかし,①については,6歳未満の低年齢児でも殊更に全裸又は下半身を裸にさせて性器を露出させてこれを撮影するならば,一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。また,②については,強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由であると解されるが,所論のように性的羞恥心のみを重視するのは相当ではなく,一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。そして,ここで意思に反しないとは,その意味を理解して自由な選択によりその行為を拒否していない場合をいうものと解されるから,そのような意味を理解しない乳幼児については,そもそもそのような意思に反しない状況は想定できない。このことは,精神の障害により性的意味を理解できない者に対しても準強制わいせつ罪(刑法178条1項)が成立することによっても明らかである。本件では,生後4か月から5歳までの乳幼児に対し,性器を露出させるなどして,これを撮影したものであるから,同人らの性的自由を侵害したものと認められる。


3 わいせつの定義についての学説状況
 学説状況をみても、原判決のような見解はない。
 原判決が独創したものである。

4 わいせつの本質は性的羞恥心侵害であるから、「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」という定義が正解であること
 最近の学説では強制わいせつ罪の本質は羞恥心侵害と理解されている。

平野竜一「刑法各論の諸問題6」法学セミナー 第205号
強制猥褻罪を、性的自由に対する罪というだけでいいかも問題である。暴行・脅迫を用いたし場合は、たしかに自由に対する罪といいやすい。しかし、とっさに陰部にふれた場合、「陰部にふれられない自由」が侵害されたというだけでは、自由の内容があまりにも無内容である。性的な蓋恥感情・嫌悪感情が保護法益となっていると考えたとき、右の行為の犯罪性を理解できるように思われる
・・・
川端博 事例式演習刑法P40
本罪における保護法益は「被害者の差恥心」とするのが妥当だからである(平野一二八頁)。
・・
中森喜彦「刑法各論」63頁
端的に、人の性的羞恥心を害する行為をいうとすれば足りる(内田一五八頁、曽根六二頁)。

 さらに、刑法学者出身の山口厚判事の見解*6*7*8も同趣旨である。
 即ち、「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」。(山口厚刑法各論 第2版H28 p106)
 これが正解であり、原判決は誤りである。これが最高裁判例となるであろう。

 公開されている裁判例では、強制わいせつ罪(176条後段)の最年少は7歳であって、羞恥心侵害を理由としてわいせつ行為と評価している。

新潟地裁S63.8.26*9
 右認定事実によれば、右A子は、性的に未熟で乳房も未発達であって男児のそれと異なるところはないとはいえ、同児は、女性としての自己を意識しており、被告人から乳部や臀部を触られて羞恥心と嫌悪感を抱き、被告人から逃げ出したかったが、同人を恐れてこれができずにいたものであり、同児の周囲の者は、これまで同児を女の子として見守ってきており、同児の母E子は、自己の子供が本件被害に遭ったことを学校等に知られたことについて、同児の将来を考えて心配しており、同児の父親らも本件被害内容を聞いて被告人に対する厳罰を求めていること(E子の検察官に対する供述調書、B子の司法警察員に対する供述調書及びD作成の告訴状)、一方、被告人は、同児の乳部や臀部を触ることにより性的に興奮をしており、そもそも被告人は当初からその目的で右所為に出たものであって、この種犯行を繰り返す傾向も顕著であり、そうすると、被告人の右所為は、強制わいせつ罪のわいせつ行為に当たるといえる。
 従って、弁護人の主張は採用できない。

5 憲法違反~裁判所がわいせつの定義を示せないときは、刑法176条は罪刑法定主義違反となる。
 馬渡調査官の論稿によれば、わいせつは定義できないから最高裁は定義しないとされている。

馬渡香津子強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
最高裁平成29年ll月29日大法廷判決
ジュリスト 2018年4月号(No.1517)
(2)検討
 そもそも,「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。そして,「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。また,「わいせつな行為」を定義したからといって,それによって,「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ,これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
 そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには,これをどのように定義づけるかよりも,どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる。
 本判決が,「わいせつな行為」の定義そのものには言及していないのは,このようなことが考えられたためと思われる。もっとも,本判決は,その判示内容からすれば,上記名古屋高金沢支判の示した定義を採用していないし,原判決の示す「性的自由を侵害する行為」という定義も採用していないことは明らかと思われる(なお,実務上,「わいせつな行為」該当性を判断する具体的場面においては,従来の判例・裁判例で示されてきた事例判断の積み重ねを踏まえて,「わいせつな行為」の外延をさぐりつつ判断していかなければならないこと自体は,本判決も当然の前提としているものと思われる)。

 これでは、行為をもって行為を定義することになって、一般人の予見可能性がまったく失われることになる。罪刑法定主義違反(憲法31条)である。刑法176条は文面上無効である。
 実際、最高裁がはっきりしないので、下級審が定義できすに困っている。わいせつの定義がないと現場の裁判官はわいせつ性を判断できない。
 本件原判決の新定義もそういう混乱の一環であるし、東京高裁でも「一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するもの」としつつ性的自由侵害」ともする混乱した定義が示されている。

東京高裁h30.1.30
 所論は,①低年齢児に対するわいせつ行為では一般人の性欲を興奮,刺激させない,②低年齢児には性的羞恥心がないので,法益侵害がないなどと主張する。
 しかし,①については,6歳未満の低年齢児でも殊更に全裸又は下半身を裸にさせて性器を露出させてこれを撮影するならば,一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。また,②については,強制わいせつ罪の保護法益は,個人の性的自由であると解されるが,所論のように性的羞恥心のみを重視するのは相当ではなく,一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反してされたならば,性的自由が侵害されたものと解すべきである。そして,ここで意思に反しないとは,その意味を理解して自由な選択によりその行為を拒否していない場合をいうものと解されるから,そのような意味を理解しない乳幼児については,そもそもそのような意思に反しない状況は想定できない。このことは,精神の障害により性的意味を理解できない者に対しても準強制わいせつ罪(刑法178条1項)が成立することによっても明らかである。本件では,生後4か月から5歳までの乳幼児に対し,性器を露出させるなどして,これを撮影したものであるから,同人らの性的自由を侵害したものと認められる。

 混乱を収束させるためには、御庁がわいせつの定義を示さなければならない。

6 付言
 難しい問題だが、裁判所は定義を判示しなければならない。
 大法廷判決h29は性的意図を不要としたので、わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)という定義も変更する必要に迫られ、弁護人も検察官も定義を捜したのだが、適当な定義が見つからなかったので、沈黙したのである。

①大法廷事件の検察官の弁論
なお,弁護人の所論は,判例を変更して犯人に性的意図を不要とした場合,わいせつな行為の範囲が極めて不明確になる,特に医療行為,乳幼児への養育行為及び身障者への介護行為が処罰対象になる,性的自由を観念できない乳幼児に対する強制わいせつ罪が成立しなくなりその保護に欠けるなどと主張する。
しかし,このように主張する所論は,いずれも失当である。
強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の判断に当たっては,被害者の性別・年齢,行為者と被害者との関係,具体的な行為態様,周囲の客観的状況等を考慮し,通常人からみて,客観的に当該行為が「わいせつな行為」としで性的自由又は性的自己決定権を侵害する行為であるか否かを判断するべきものであり,かつ,これによって処罰範囲は十分に明確である。
すなわち,医療行為や養育行為,介護行為として,性器を露出させたり,性器に触れる行為があったとしても,被害者の性別・年齢,行為者と被害者との関係,具体的な行為態様,周囲の客観的状況等を考慮した上で,客観的に医療行為等として適切な行為であれば,わいせつな行為に該当しないことは明らかであるから,性的意図を不要としても,わいせつな行為の範囲が不明確になることはない。
た,所論は,乳幼児には性的自由を観念できないとするが,性的な事柄についての判断能力を有しない乳幼児であっても,他者から性的侵害を受けない自由という意味においで性的自由を観念することができ,この性的自由を保護しなければならないことは明らかである上,性的意図を不要とした場合であっても,行為者と被害者との関係,具体的な行為態様,周囲の客観的状況等を考慮した上で,客観的にわいせつな行為と認められるのであれば,乳幼児に対する強制わいせつ罪が成立するのであるから,その保護に欠けることはない。
・・・・・・
②大法廷事件弁護人弁論
第2 上告理由第1・第2(わいせつの定義)について
1 わいせつの定義は不可能であるから、立法により行為リストを列挙する方法で解決されるべきである。
 性的意図不要説に判例変更された場合、「わいせつ」の定義についても判例変更を試みるだろう。
 原判決は性的意図不要とした手前、わいせつの再定義を迫られ、また弁護人の控訴理由で権利侵害の定義では乳幼児の保護に欠けると指摘されたことから、短絡的に「わいせつ=客観的に性的自由を侵害する行為」と定義づけた。

 最近の学説をみても、学説は混沌としていて一致しない。「わいせつ=客観的に性的自由を侵害する行為」という原判決の定義は一般的ではない。
 しかも、いずれの見解でも、定義に加えて、現行の解釈でも「わいせつ」とされるいくつかの事例を紹介して、「このような行為が「わいせつ行為」である」との説明がされている。

前田雅英 刑法各論講義 第6版p95
本罪の実行行為は,わいせつな行為である.刑法上のわいせつ行為の意義は, 徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ,かつ普通人の性的差恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること とされているが、公然、わいせつ罪(174条),わいせつ物頒布罪(I75条)に閲するもので,本罪は個人の性的人格・身体を直接侵害する以上,別異に考ーえられ,キスする行為もわいせつ行為である.着衣の上からであっても,女性の臀部を手のひらでなで回す行為も「わいせつ行為」に当たる.いわゆる痴漢行為は,本条の要件に該当する場合がある(態様により,条例による処罰にとどまることもある)
必ずしも被答者の身体に触れる必要はない. 裸にして写真を撮る行為も含む
 このような定義+事例という説明は、定義ができていないということを示す。 

 原判決の「客観的に性的自由を害する行為」というのは、たまたま手元にあった注釈刑法の和田説を採用したと思われるが、和田説は続けて「客体が13歳未満の場合は別の検討を要する。性的蓋恥心を,年齢を無視した一般的判断に服せしめ,乳幼児の啓部を撫でる行為にまで本罪を認めるのは過剰であろう。逆に,性的差恥心を個別的に判断し, それを有しない幼年者を,たとえば性交類似行為からも保護しないのは妥当でない。」と説明されていて、「客観的に性的自由を害する行為」という定義では説明しきれていない。この見解でも、裁判例に現れたわいせつ行為を列挙して、定義+事例で説明しようとしている。
注釈刑法第2巻各論1(H28) p617 和田俊憲*10
強制わいせつ罪

 結局、「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)」という従前の定義にしても、原判決が採用する「客観的に性的自由を侵害する行為」にしても、他の学説にして、処罰すべき「わいせつ行為」を説明しきれていないし、処罰される行為の列挙が欠かせないのだから、定義としては無意味なものである。

 もはや解釈による定義付けでは犯罪・非犯罪を区別することができないのであるから、判例変更は諦めて、立法により、行為をリストアップする方法で解決すべきである。
 児童買春罪の定義や、外国の立法例を紹介しておく。
立法例
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条2項
当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

性犯罪の罰則に関する検討会第4回会議(平成26年12月24日)
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00097.html
配布資料12 性犯罪に関する諸外国の法制に関する資料
ミシガン州性犯罪関連条文和訳(仮訳)
第 750.520a 条(定義)
(q)“性的接触”には,被害者若しくは行為者の恥部の意図的な接触,又は被害者若しくは行為者の恥部を直接覆う衣服の意図的な接触を含む。
 ただし,意図的な接触が性的興奮や満足を得る目的と合理的に考えられ,又は性的目的で行われたと合理的にいえ,又は以下の各号のために性的な態様で行われたものに限る。
(i) 復讐
(ii) 加虐
(iii) 怒り

ニューヨーク州性犯罪関連条文和訳(仮訳)
第130.00条【性犯罪;定義】
本条においては,次の定義が適用される。
3.「性的接触」とは,いずれか一方の側の性的欲望を満足させる目的で,性器その他の人目につかない人体の部分に接触することをいう。これには,直接又は着衣の上からかを問わず,行為者が被害者に接触することのみならず,被害者が行為者に接触することも含まれ,また,被害者が服を着ているかいないかにかかわらず,行為者が被害者の体の一部に精液をかけることも含まれる。

 これは下級審に課せられた宿題であるから、本件にふさわしい定義を判示すべきである。

7 まとめ
 かつて、強制わいせつ罪の保護法益には風俗という社会的法益が含まれることから、わいせつとは、公然わいせつ罪・わいせつ物頒布罪と同様に、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいうのが判例最判昭26・5・10刑集5-6-1026)であった。
 また最近の判例はわいせつ=性的自由を侵害する行為という。
 正解は「わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。」である。
 しかし、原判決は解釈を誤って、「■■■■■■■■■■■■■■■■」とわけのわからない判示した。
 この点で、原判決には法令適用の誤りと理由不備があるから、原判決は破棄を免れない

6

山口厚刑法各論 第2版H28 p106
わいせつな行為
「わいせつな行為」とは,性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為をいう(23)。これが, 13歳以上の男女に対しては,暴行・脅迫によって強要される場合に,その者の性的な自由が害されるのである(「わいせつな行為」それ自体に,概念内在的に,法益侵害性が備わっているわけではない)
本罪の「わいせつな行為」と公然わいせつ罪(刑174条)における「わいせつな行為」とは,保護法益が異なっており,その内容は異なる。前者は,本人の(自ら行うか否かについての)性的な自由の対象となる行為であるのに対して,後者は,他人の(他人が行うことを見るか否かについての)性的な自由の対象となる行為だからである。したがって,無理やりキスをすることは,現在のわが国においては,強制わいせつ罪の成立をなお肯定しうるであろうが(東京高判昭和32・1・22高刑集10巻l号10頁参照),公然わいせつ罪の成立を肯定することはできないと解されることになる。具体的には,乳房や陰部などに触れる行為,裸にして写真撮影する行為,男性に性交を行わせる行為24)などがそれにあたる。

7

山口厚 基本判例に学ぶ刑法各論2011
p18
2問題は,強制わいせつ罪が成立するためには,性的自由という法益の侵害があるだけでは足りず,本判決のいうように,「性的意図」がある場合に限られるのかということである。犯人の意図がいかなるものであれ,脅迫により裸にされて撮影されたAの性的自由が侵害されたことには変わりがない。「性的意図」といった法益侵害とは関係しない, しかも明文にない要件を要求する根拠があるかが問われることになろう。本判決に付された反対意見は,そうした処罰の限定に根拠がないとしているのである。これに対し,本判決は「性的意図」が要求される根拠について何も語るところがない
学説では,本判決と同様に,強制わいせつ罪について「性的意図」を成立要件として要求する見解は少数であり,多数の見解は,「性的意図」といった,被害者の性的自由という法益の侵害と関係のない要件を要求する理由はないと解している
本判決の後,女性を従業員として働かせる目的で同女を全裸にして写真撮影をしたという事案について,「強制わいせつの意図」があったとして強制わいせつ致傷罪(181条1項)の成立を認めた下級審裁判例があるが、そこでは.そのような意図はわいせつ行為の認識から肯定されている。これは,実質的には本判決の立場を否定したものであるといえよう。こうした裁判例や学説の動向を考えると,本判決に現在どの程度の先例的価値があるか疑問があるように思われる。

8

山口厚 刑法p243
(2) 構成要件
(i) わいせつな行為
わいせつな行為とは,性的な意味を有し,本人の性的羞恥心の対象となるような行為をいう。

撮影型強制わいせつ事件(176条後段)につき、児童ポルノ製造罪との罪数 問題を避けた起訴(横浜地裁h30.4.24)

 児童ポルノ画像があるから強制わいせつ罪が起訴されているのに、児童ポル
ノ製造罪は起訴していないというのでは、被告人の行為を評価し尽くしていな
い感じです。
 横浜地検は、観念的競合で起訴したり、併合罪で起訴したりで、わかんない
まま起訴してる感じです。

 罪となるべき事実は
 第1 3/28 A 強制わいせつ罪(176条後段)
 第2 4/1 B 強制わいせつ罪(176条後段)
 第3 7/9 C 強制わいせつ罪(176条後段)
 第4 7月中旬頃~ C 強制わいせつ罪(176条後
段)
 第5 9/5 D 製造罪
 第6 10/25  C 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第7 12/28 E 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第8 12/29 E 強制わいせつ罪(176条後段) 
 第9 12/29 F 強制わいせつ罪(176条後段) 
となっていて、強制わいせつ罪(176条後段)はいずれも撮影行為を含みます
が、製造罪は起訴されていません。
 Dに対する製造行為は強制わいせつ罪(176条後段)を含みますが、強制わ
いせつ罪(176条後段)は起訴されていません。被害者が強制わいせつ罪(176
条後段)での起訴を望まなかったからか。にもかかわらず製造罪での起訴はい
いのか。弁護人が指摘した形跡がありません。
 わいせつの定義が決まっていないのに、争われた形跡がありません。

裁判年月日  平成30年 4月24日  裁判所名  横浜地裁
事件名  強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰
並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号  2018WLJPCA04246003
出典 ウエストロー・ジャパン
 上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制
及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所
は,検察官寺尾智子並びに私選弁護人藤代浩則(主任)及び同佐藤美由紀各出
席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1  平成27年3月28日(以下の月日は全て平成27年のものであ
る。)午前3時13分頃から午前3時14分頃までの間,沖縄県八重山郡〈以
下省略〉宿泊施設「○○」客室内において,A(当時11歳。アルファベット
による呼称と氏名との対応関係は別紙一覧表記載のとおり。以下同じ。)が1
3歳未満の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその
陰茎を口淫した上,これを自己が使用するデジタルカメラで動画撮影し,もっ
て13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年6月27日付け追
起訴】
 第2  4月1日午前3時54分頃から午前3時55分頃までの間,上記
「○○」客室内において,B(当時10歳)が13歳未満の男子であることを
知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手指で直接触った上,
これを自己が使用するカメラ機能付きスマートフォンで動画撮影し,もって1
3歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年5月31日付け追起
訴】
 第3  7月9日午後5時6分頃から午後5時13分頃までの間,横浜市
〈以下省略〉a協同組合1階男子トイレ内において,C(当時11歳)が13
歳未満の男子であることを知りながら,同人の着衣をずらしてその陰茎を手指
で直接触った上,これを自己が使用するカメラ機能付きスマートフォン(商品
iPhone6)で動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為
をし,【29年3月28日付け追起訴第1】
 第4  7月中旬頃から8月上旬頃までの間に,上記第3記載の男子トイレ
内において,C(当時11歳)が13歳未満の男子であることを知りながら,
同人の着衣をずらしてその陰茎を手指で直接触り,口淫した上,これを上記第
3記載のスマートフォンで動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わい
せつな行為をし,【29年3月28日付け追起訴第2】
 第5  9月5日午後10時1分頃から午後10時2分頃までの間,東京都
●●●校庭内に設置されたテント内において,D(当時12歳)が18歳に満
たない児童であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらして,同人の
陰茎を露出した姿態をとらせ,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮
影し,その動画データ1点を同スマートフォン内蔵の電磁的記録媒体である記
録装置に記録して保存し,もって衣服の一部を着けない児童の姿態であって,
殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性
欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により
電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,【29年7月24
日付け追起訴】
 第6  10月25日,神奈川県横須賀市〈以下省略〉bマンション301
の被告人方において,C(当時12歳)が13歳未満の男子であることを知り
ながら,同人の着衣をずらしてその陰茎を手指で直接触った上,これを自己が
使用するカメラ機能付き携帯型音楽プレイヤー(商品名iPod touch)で動画撮
影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【28年11月
28日付け起訴】
 第7  12月28日午前1時4分頃から午前1時24分頃までの間,群馬
県吾妻郡〈以下省略〉c研修センターC棟2階C601号室において,E(当
時9歳)が13歳未満の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着
ずらしてその陰茎を手指で直接触り,口淫するなどした上,これを上記第3記
載のスマートフォンで動画撮影し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつ
な行為をし,【29年1月31日付け追起訴第1】
 第8  12月29日午前1時14分頃から午前1時15分頃までの間,上
記第7記載のC棟2階C601号室において,E(当時9歳)が13歳未満の
男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手指
で直接触った上,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮影し,もって
13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし,【29年1月31日付け追起
訴第2】
 第9  12月29日午前3時24分頃から午前3時32分頃までの間,上
記第7記載のC棟2階C609号室において,F(当時10歳)が13歳未満
の男子であることを知りながら,就寝中の同人の下着をずらしてその陰茎を手
指で直接触り,口淫した上,これを上記第3記載のスマートフォンで動画撮影
し,もって13歳未満の男子に対し,わいせつな行為をし【29年3月3日付
け追起訴】
 たものである。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 罰条
 判示第1ないし第4及び第6ないし第9の各行為
 いずれも平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の
刑法176条後段
 判示第5の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並び
に児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号
 刑種の選択 判示第5の罪について所定刑中懲役刑を選択する。
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も
重い判示第4の罪の刑に法定の加重をする。)
 未決勾留日数の算入 同法21条
 訴訟費用の負担 刑訴法181条1項本文
 (量刑の事情)
 (求刑 懲役7年)
 横浜地方裁判所第4刑事部
 (裁判官 片山隆夫)