児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

 トイレ盗撮行為につき、ひそかに製造罪は被害児童1名1罪として、建造物侵入罪とひそかに製造罪とを牽連犯とした事例(奈良地裁h30.5.1)

 長時間カメラ作動されているうちに2名撮影されたのを観念的競合にしています。
「犯情の軽重については、各児童ポルノ製造が各建造物侵入より重いものの、各児童ポルノ製造間の犯情の軽重に差異はないので、児童ポルノ製造の罪の刑で処断」とされています。
 牽連関係がないと主張すれば、牽連犯の判例ができそうです。

■28262725
奈良地方裁判所平成30年05月01日
理由
(罪となるべき事実)
 当裁判所の認定した罪となるべき事実第1は平成30年2月23日付け起訴状に記載された公訴事実と、罪となるべき事実第2は同年3月6日付け起訴状に記載された公訴事実と、罪となるべき事実第3及び第4は同月28日付け起訴状に記載された公訴事実第1及び第2と、それぞれ同一であるから、これらを引用する。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
 判示第1及び第3の各所為のうち
  建造物侵入の点 いずれも刑法130条前段
  児童ポルノ製造の点 いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2項、2条3項3号
 判示第2の所為 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2項、2条3項3号
 判示第4の所為のうち
  各建造物侵入の点 いずれも刑法130条前段
  各児童ポルノ製造の点 いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2項、2条3項3号
科刑上一罪の処理
 判示第1及び第3の各罪 いずれも刑法54条1項後段、10条(1罪として犯情の重い各児童ポルノ製造の罪の刑で処断)
 判示第4の罪 いずれも刑法54条1項前段、後段、10条(平成29年9月4日の建造物侵入と同日撮影した動画の児童ポルノ製造との間、同月5日の建造物侵入と同日撮影した動画の児童ポルノ製造との間には、それぞれ手段結果の関係があり、各動画の児童ポルノ製造は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、結局以上を1罪とし、犯情の軽重については、各児童ポルノ製造が各建造物侵入より重いものの、各児童ポルノ製造間の犯情の軽重に差異はないので、児童ポルノ製造の罪の刑で処断)
刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の軽重を決することができないので、1罪として児童ポルノ製造の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予 刑法25条1項
(量刑の理由)
(求刑 懲役2年)
刑事部
 (裁判官 重田純子)
起訴状
平成30年2月23日
公訴事実
(判示第1) 被告人は、平成30年2月14日午前7時39分頃、G市立A小学校校長Bが看守するG市ab丁目c番d号同小学校e階南館女子トイレ内に、用便中の女児の姿態を盗撮する目的で、その出入口から侵入し、同トイレ内の掃除用具入れに録画状態にしたビデオカメラを設置し、同日午後1時27分頃、同所において、C(当時12歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、同児童の用便中の姿態を前記ビデオカメラで動画撮影し、その動画データを同カメラに挿入したマイクロSDカードに記録させて保存し、もってひそかに衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造したものである。
起訴状
起訴状
平成30年3月6日
公訴事実
(判示第2) 被告人は、平成29年9月7日午前8時10分頃から同日午前8時13分頃までの間、G市ab丁目c番d号G市立A小学校f階g年h組教室内において、着替え中のD(当時9歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、同児童の胸部が露出した姿態をあらかじめ録画状態にして設置していたビデオカメラで動画撮影し、同日午後8時43分頃、G市jk丁目l番m号被告人方において、その動画データをパーソナルコンピューターに記録させて保存し、もってひそかに衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造したものである。
起訴状
平成30年3月28日
公訴事実
 被告人は
(判示第3)第1 平成29年7月20日午前7時頃から同日午前7時40分頃までの間に、G市立A小学校校長Bが看守するG市ab丁目c番d号同小学校j階南館女子トイレ内に、用便中の女児の姿態を盗撮する目的で、その出入口から侵入し、同トイレ内に録画状態にしたビデオカメラを設置し、同日午前8時14分頃から同日午前8時24分頃までの間及び同日午前8時34分頃から同日午前8時44分頃までの間、同所において、氏名不詳の女児2名がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、同児童らの用便中の姿態を前記ビデオカメラで動画撮影し、同日午後10時59分頃、G市jk丁目l番m号被告人方において、その動画データをパーソナルコンピューターに記録させて保存し、もってひそかに衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造した
(判示第4)第2 同年9月4日午前7時頃から同日午前7時40分頃までの間に、前記Bが看守する前記女子トイレ内に、用便中の女児の姿態を盗撮する目的で、その出入口から侵入し、同トイレ内に録画状態にしたビデオカメラを設置し、同日午前11時9分頃から同日午前11時19分頃までの間、同所において、氏名不詳の女児が18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、同児童の用便中の姿態を前記ビデオカメラで動画撮影し、さらに、同月5日午前7時頃から同日午前7時40分頃までの間に、前記Bが看守する前記女子トイレ内に、用便中の女児の姿態を盗撮する目的で、その出入口から侵入し、同トイレ内に録画状態にしたビデオカメラを設置し、同日午前9時16分頃から同日午前9時26分頃までの間、同所において、氏名不詳の女児が18歳に満たない児童であることを知りながら、ひそかに、同児童の用便中の姿態を前記ビデオカメラで動画撮影し、同日頃、前記被告人方において、同動画データ2点をパーソナルコンピューターに記録させて保存し、もってひそかに衣服の一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造した
ものである。

 福島県青少年健全育成条例及び同施行規則の一部改正(案)について皆さんからの意見を募集します。

 福島県だと「求められて困った」段階の立法事実は少ないと思われます。
 パブコメも付かないと思います。

福島県青少年健全育成条例及び同施行規則の一部改正(案)について皆さんからの意見を募集します。
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21055a/zyourei.html
2 意見募集の内容
福島県青少年健全育成条例及び同施行規則の一部改正(案)」について
3 応募資格
・ 県内に住所がある個人
・ 県内に事業所を有する法人その他の団体
・ 県内の学校や事業所等に通学・通勤されている方
東日本大震災原子力災害により県外に避難されている方

http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/277599.pdf
福島県青少年健全育成条例及び同施行規則の一部改正(案)」について
(2) 児童ポルノ等の提供を求める行為の禁止
青少年自身に係る児童ポルノ(※3)やその電磁的記録その他の記録を提供するように当該青少年に対し、不当な手段(※4)で求める行為を禁止するとともに、罰則(30万円以下の罰金)を規定します。
(※3)児童ポルノ(「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」第2条に規定する児童ポルノの定義)
写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿
態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
(※4)不当な手段
・ 拒まれたにも関わらず要求する。
・ 威迫し、欺き、又は困惑させて要求する。
・ 対償を供与し、又はその供与の約束をして要求する。

京都府迷惑防止条例の盗撮行為は「公共の場所」に限定されるとか解説する弁護士

 よく条例の法文を読むと、「公共の場所」には限定されていません。
 h26改正で、条例3条2項が加わって「公衆の目に触れるような場所において」に拡張されています。
 京都府警の内部資料では「公衆の目に触れるような場所」とは①学校、塾の教室②事業所の事務室③貸切バス④ジャンボタクシーとされています。
 条例3条3項では「公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」が加わっています
私的空間の規制が外されたのは、京都地検の見解が理由とされています
「場所的制限を撤廃した盗撮行為の規制について。。。私的空間で様々な立法事実となるような事案が発生していることは理解でき、また、処罰すべき事案であることも理解できる。しかし、国の法律である軽犯罪法が、私的空間を含む、通常着衣をつけないでいるような場所における裸の盗撮を規制していることから、私的空間に及ぶ規制は、個人的法益の侵害を認めないという軽犯罪法の範疇であるといえ、私的空間に対する規制は、憲法で法律の範囲内で定めることができるとされている条例の限界を超えている。
現行粂例は、場所を公共の場所、公共の乗物に限定していることで、公衆が迷惑する、被害者がより一層差恥させられるという理由から、条例で規制できるという説明がつくのであり、同様の理由付けができるのは準公共空間の範囲までである。」

 この見解によれば、盗撮行為について軽犯罪法が適用される場合には、条例は適用されないことになります。
 警視庁と東京地検もそういう見解のようです
okumuraosaka.hatenadiary.jp


h26改正前
第1条及び第2条省略
(卑わいな行為の禁止)
第3条何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しくしゅう恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(1)みだりに、他人の身体の一部に触ること(着衣の上から触ることを含む。)。
(2)みだりに、物を用いて他人の身体に性的な感触を与えようとすること。
(3)みだりに、他人に、その意に反して人の性的,好奇心をそそる姿態をとらせること。
(4)みだりに、着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部(次号において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又はこれらの行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、若しくは着衣の中が見える位置に鏡、写真機等を差し出し、置く等をすること。
(5)みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を見、又は撮影すること。
(6)みだりに、他人に、異性の下着を着用した姿等の性的な感情を刺激する姿態又は性的な行為を見せること。
(7)みだりに、他人に、人の性的好奇心をそそる行為を要求する言葉その他の性的な感情を刺激する言葉を発すること

h26改正後
http://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/aa30013881.html
(卑わいな行為の禁止)
第3条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(1) みだりに、他人の身体の一部に触ること(着衣の上から触ることを含む。)。
(2) みだりに、物を用いて他人の身体に性的な感触を与えようとすること。
(3) みだりに、他人に、その意に反して人の性的好奇心をそそる姿態をとらせること。
(4) みだりに、着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部(以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
(5) みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に鏡等を差し出し、置く等をすること。
(6) みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を見ること。
(7) みだりに、他人に、異性の下着を着用した姿等の性的な感情を刺激する姿態又は性的な行為を見せること。
(8) みだりに、他人に、人の性的好奇心をそそる行為を要求する言葉その他の性的な感情を刺激する言葉を発すること。
2 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(1) みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
(2) みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
(3) みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
3 何人も、みだりに、公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある他人の姿態を撮影してはならない。
(平22条例12・平26条例27・一部改正)

https://www.bengo4.com/c_1009/c_1197/n_8140/
鳥貴族によると、盗撮のあったのは、京都市内の店舗だったということだ。今回のケースはどうだろうか。

「一方で、京都府迷惑防止条例は、改正前の都条例とほとんど同じ内容となっています。つまり、住居や更衣室などは『公共の場所』といえないことから、今回のケースについて、府条例は適用されません。

スマホの普及によって、盗撮も増えている事情もあり、都条例は、住居など範囲が拡大されました。もし仮に、京都府も、東京都と同じように改正されていたら、条例違反で逮捕されていたかもしれません」

靴下を脱がせて足の裏をなめる行為は強制わいせつ罪(176条後段)にあたるかの判断方法

 いま、わいせつ行為の定義がない(最高裁大法廷h29.11.29)のでこれが強制わいせつ罪(176条後段)に該当するかの判断方法が難儀です。

https://this.kiji.is/387079651536913505
逮捕容疑は3月4日午後3時半ごろ、静岡県西部の幼稚園に侵入し、敷地内で遊んでいた女児(8)の靴下を脱がせて足の裏をなめた疑い。

「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」という高裁判例がたくさんあって、最高裁判例はありません。
金沢支部S36.5.2 
東京高裁h13.9.18 
東京高裁h22.3.1
 従前であれば、

靴下を脱がせて足の裏をなめる行為は「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」だからわいせつ行為だ

とか

靴下を脱がせて足の裏をなめる行為は「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」とは言いがたいからだからわいせつ行為にはあたらない

という理由付けで、わいせつ性を判断していました。

ところで、大法廷h29.11.29は、性的意図不要だというので、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ」という性的意図を含む点で「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」定義は使えなくなりました。

 最近では、性的自由侵害行為とする判例(大阪高裁H28.10.27 東京高裁h26.2.13)があります。

靴下を脱がせて足の裏をなめる行為は「性的自由を害する」からわいせつ行為だ

とか

靴下を脱がせて足の裏をなめる行為は「性的自由を害する」とは言いがたいからだからわいせつ行為にはあたらない

という理由付けで、わいせつ性を判断することになります。
 大阪高裁H28.10.27は大法廷h29.11.29の原判決で、最高裁はこの定義も採用しませんでした。

 そこで、最近の裁判例は混乱していて。
「わいせつ=一般人が性的な意味があると評価するような行為を意思に反して行うこと」(東京高裁h30.1.30)と言ってみたり「その態様から見て性的性質を有するものであることは明確であり,可罰的なわいせつ行為(広島地裁h30.5.18)と言ってみたりです。、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ・・」という定義も消え、性的自由侵害という定義も消えています。
 とすると、「わいせつの定義は■■■■■■■■■■■■■■■■であって、靴下を脱がせて足の裏をなめる行為はは■■■■■■■■■■■■■■■■なので、わいせつだ」
「わいせつの定義は■■■■■■■■■■■■■■■■であって、靴下を脱がせて足の裏をなめる行為はは■■■■■■■■■■■■■■■■ではないので、わいせつではない」という論法では判断できませんよね。

 現在、すべての強制わいせつ罪。青少年条例(わいせつ行為)について、こういう状況になっています。

 馬渡判事の論文を読んで下さい。

馬渡香津子強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
最高裁平成29年ll月29日大法廷判決
ジュリスト 2018年4月号(No.1517)
2.定義
(1)判例,学説の状況
 強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の定義を明らかにした最高裁判例はない。
 他方,「わいせつ」という用語は,刑法174条(公然わいせつ),175条(わいせつ物頒布罪等)にも使用されており,最一小判昭和26・5・10刑集5巻6号1026頁は,刑法175条所定のわいせつ文書に該当するかという点に関し,「徒に性慾を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められる」との理由でわいせつ文書該当性を認めているところ(最大判昭和32・3・13刑集ll巻3号997頁〔チャタレー事件〕も,同条の解釈を示すに際して,その定義を採用している),名古屋高金沢支判昭和36・5・2下刑集3巻5=6号399頁が,強制わいせつ罪の「わいせつ」についても,これらの判例と同内容を判示したことから,多くの学説において,これが刑法176条のわいせつの定義を示したものとして引用されるようになった(大塚ほか編・前掲67頁等)。これに対し,学説の中には,刑法174条,175条にいう「わいせつ」と刑法176条の「わいせつ」とでは,保護法益を異にする以上,同一に解すべきではないとして,別の定義を試みているものも多くある(例えば,「姦淫以外の性的な行為」平野龍一・刑法概説〔第4版)180頁,「性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為」山口厚・刑法各論〔第2版]106頁,「被害者の性的自由を侵害するに足りる行為」高橋則夫・刑法各論〔第2版〕124頁,「性的性質を有する一定の重大な侵襲」佐藤・前掲62頁等)。
(2)検討
 そもそも,「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。そして,「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。また,「わいせつな行為」を定義したからといって,それによって,「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ,これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
 そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには,これをどのように定義づけるかよりも,どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる。
 本判決が,「わいせつな行為」の定義そのものには言及していないのは,このようなことが考えられたためと思われる。もっとも,本判決は,その判示内容からすれば,上記名古屋高金沢支判の示した定義を採用していないし,原判決の示す「性的自由を侵害する行為」という定義も採用していないことは明らかと思われる(なお,実務上,「わいせつな行為」該当性を判断する具体的場面においては,従来の判例・裁判例で示されてきた事例判断の積み重ねを踏まえて,「わいせつな行為」の外延をさぐりつつ判断していかなければならないこと自体は,本判決も当然の前提としているものと思われる)。

迷惑条例の盗撮行為と、窃視罪の関係~「警視庁では,条例制定の際,主管課と東京地検で協議し,説例の事案では,迷惑防止条例を適用しないと取り決めた。」という話

 罰則審査とか検察協議ということでしょうね。

地域警察官のための軽微犯罪の措置要領(2010年 立花書房)P190
Q2 甲は, A女が入っている公衆便所の上部の隙間から,カメラを差し出して同女の写真を撮影したが, A女が空間に差し出された手とカメラに驚き悲鳴をあげて騒ぎ出したため,甲は,駆けつけた一般人に取り押さえられた。
・・・
カメラによって密かに写真撮影をすることは,軽犯罪法1条23号(窃視の罪)にいう「のぞき見る」に当たるので軽犯罪法違反となる。
事例の行為が,迷惑防止条例(卑わいな行為《粗暴な行為》の禁止)に違反するか否かについて検討してみると,用便中の女性がいる便所内をのぞく行為は,「卑わいな行為」となる。ただし,条例を制定するに当たり,既に他の法令に規定されている事項について,重ねて規定を設けることができないという原則があることから,この条例の制定に当たっても,他の法令の間隙を縫って規制がなされており,既に他の法令で規制されている事項については,条例の規制が及ばないこととされているので,明らかに軽犯罪法に違反する本間の行為には,条例を適用することはできない(※警視庁では,条例制定の際,主管課と東京地検で協議し,説例の事案では,迷惑防止条例を適用しないと取り決めた。他府県でも同じような取り決めがあり,その内容も県によって違い,迷惑防止条例を適用する県もあるので注意を要する。)。
なお,その行為が軽犯罪法違反の構成要件を満たさない場合で,人を著しく蓋恥させ,又は不安を覚えさせるような卑わいな行為であれば,迷惑防止条例違反となる。

被告人が強姦及び強制わいせつの犯行の様子を隠し撮りした各デジタルビデオカセットが刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に当たるとされた事例(最決h30.6.26)

 児童ポルノ製造の関係では高裁レベルで1号説・3号説で分かれていますが、
 撮影行為はわいせつ行為として起訴されてない場合が2号になるとされました。
 

 1審では「これらの隠し撮りが被告人の当該性犯罪と並行して行われ,その意味で密接に関連しているといえるだけでなく,結局それらの映像が無罪の証明につながるものでなかったとはいえ,被告人としては,Eら4名に対する各犯行状況を撮影して録画するに当たり,自らに有利な証拠を作出し得るという認識を持ち,そのような利用価値を見出していたといえるのであり,そのような撮影行為によって客観的に記録した当該映像を確保できること自体が,被告人の上記各犯行を心理的に容易にし,その実行に積極的に作用するものであったと評価できる。したがって,本件各デジタルビデオカセットについては,被告人のEら4名に対する各犯行を促進したものといえ,刑法19条1項2号所定の「犯罪行為の用に供した物」に当たる。」とされていて、強引に2号にもって行かれた感じです。
 控訴審で「原審弁護人は,E側に対し,裁判になれば,証拠として提出しないといけないから,自分の裸や性行為がされているところが映っても,メリットがないのだから,告訴を取り下げなさいというような話をしていたようだという趣旨の供述をしていることに照らすと,被告人のいう利用客との間でトラブルになった場合に備えての防御とは,単に自己に有利な証拠として援用するために手元に置いておくことにとどまらず,被害者が被害を訴えた場合には,被害者に対して前記映像を所持していることを告げることにより,被害者の名誉やプライバシーが侵害される可能性があることを知らしめて,捜査機関への被害申告や告訴を断念させ,あるいは告訴を取り下げさせるための交渉材料として用いることも含む趣旨と認められる。」と認定されています。
 上告審では上記の事実認定を前提にして「被告人がこのような隠し撮りをしたのは,被害者にそれぞれその犯行の様子を撮影録画したことを知らせて,捜査機関に被告人の処罰を求めることを断念させ,刑事責任の追及を免れようとしたためであると認められる。以上の事実関係によれば,本件デジタルビデオカセットは,刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に該当し,これを没収することができると解するのが相当である。 」となっています

条解刑法
供用物件
犯罪行為の用に供した物とは犯罪行為の不可欠な要素となっている物ではないが,犯罪行為のために使用された物をいう。
殺人行為に用いられた銃と弾丸,賭博に用いられた用具(大判明44・2・16録17-83).文書偽造に用いられた偽造印章(大判昭7・7・20集ll-lll3)など,犯罪の実行行為に直接使用されたものが供用物件に当たることは明らかであるが,実行行為の着手前又は実行行為の終了直後に,実行行為や逃走を容易にするなど,犯罪の成果を確保する目的でなされた行為において使用された物も当該行為が実行行為と密接な関連性がある限り,犯罪行為の用に供した物ということができる。例えば,窃盗事犯において,住居に侵入するために使用された平角鉄棒も,窃盗の手段としてその用に供した物としてこれを没収することができる(最判昭25・9・14集4-9-1646)。また,鶏を窃取した後に,これを運搬しやすいようにするため切出し又はナイフでその首を切った場合には,窃盗の結果を確保するための用に供したものとして,これらを没収することができる(東京高判昭28・6・18高集6ー7-848)。なお.下級審の裁判例の中には,単に結果から見て犯行に役立つたというだけでは十分でなく,犯人が犯行の用に供する積極的意思を持って直接犯行の用に供したことが必要であると解していると恩われるものもあるが(名古屋高判昭30・7・14高集86 805),当該物件が客観的に犯罪の手段として用いられ,かつ,犯人がそのことを認識している限り,犯行供用物件に当たると解してよいであろう(大コンメ2版)。

裁判年月日 平成27年12月 1日 裁判所名 宮崎地裁 裁判区分 判決
事件名 強姦未遂、強姦、強制わいせつ被告事件
裁判結果 有罪(懲役11年(求刑 懲役13年)) 文献番号 2015WLJPCA12016002
上記の者に対する頭書被告事件について,当裁判所は,検察官若杉朗仁,私選弁護人谷口渉(主任),同金丸祥子,同渡邊紘光各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役11年に処する。
 未決勾留日数中370日をその刑に算入する。
 押収してあるデジタルビデオカセット原本4本(平成27年押第7号符号1ないし4)を没収する。
 訴訟費用は被告人の負担とする。
理由

 【罪となるべき事実】
 被告人は,平成21年2月頃,宮崎市〈以下省略〉の住居地の1階部分にアロマサロン「a店」(以下「本件店舗」という。)を開業した上,地元の情報誌に営業時間を午前10時から翌午前2時までなどとする内容の記事を掲載しながら,その利用客らに対し,自らも施術者としてアロマオイルを用いたマッサージ等のサービスを提供してきた者であるが,
第1(平成26年2月17日付け起訴状記載の公訴事実(第28号事件)関係)
 かねてから本件店舗で被告人からアロマに関する指導を受けるなどしていたA(以下「A」という。)の協力を得て,平成22年4月17日午後11時頃から,本件店舗において,その宣伝用としてAが被告人を相手にマッサージを行う様子をビデオカメラで撮影するなどの作業を行ったところ,翌18日午前0時頃,その作業を終えたA(当時27歳)が帰宅の準備を始めようとするや,劣情を催した被告人がAを強いて姦淫しようと考え,Aに対し,同所において,手に持ったガムテープ片をいきなりAの口に近づけて貼り付けようとした上,嫌がるAを強引にソファ上に押し倒してその身体に覆いかぶさり,手でその口を塞ぎ,その陰部に手指を差し入れるなどの暴行を加え,その抵抗を著しく困難にさせてAを強いて姦淫しようとしたが,Aが大声を上げて助けを求めるなどしたため,その目的を遂げず(以下「A事件」ともいう。),
第2(平成26年7月2日付け起訴状記載の公訴事実(第140号事件)関係)
 平成24年6月21日午後9時頃に客としてマッサージを受けに来店したB(当時37歳。以下「B」という。)を本件店舗のマッサージルーム(以下「本件施術室」という。)に招き入れるなどした上,被告人の指示により,全裸にさせたBをして,施術台上にバスタオルを掛けて横たわらせるとともにアイマスクを着用させ,更にBに無断で自らビデオカメラを設置,操作し,Bの様子を隠し撮りしてデジタルビデオカセット(平成27年押第7号符号4)に録画することにより事後の対応等に備えつつ,その頃から同日午後11時30分頃までの間に,Bに対するマッサージを行うなどしたところ,Bがこのような状態になっているのに乗じ,マッサージを装って強いてわいせつな行為をしようと考え,その際,本件施術室において,上記のような状態のBに対し,露わにしたBの乳房を直接もんだり,その乳首を触ったりして,もって強いてわいせつな行為をし(以下「B事件」ともいう。),
第3(平成26年6月2日付け起訴状記載の公訴事実第1(第115号事件)関係)
 平成25年11月24日正午頃に被告人の知人として無料でマッサージを受けに来店したC(当時44歳。以下「C」という。)を本件施術室に招き入れるなどした上,被告人の指示により,上半身を裸にさせたCをして,施術台上にバスタオルを掛けて横たわらせるとともに,当該施術の途中からアイマスクを着用させ,更にCに無断で自らビデオカメラを設置,操作し,Cの様子を隠し撮りしてデジタルビデオカセット(同号符号2)に録画することにより事後の対応等に備えつつ,その頃から同日午後2時30分頃までの間に,Cに対するマッサージを行うなどしたところ,Cがこのような状態になっているのに乗じ,マッサージを装って強いてわいせつな行為をしようと考え,その際,本件施術室において,上記のような状態のCに対し,Cの唇に接ぷんし,露わにしたその乳房を直接もんだり,その乳首を触ったりして,もって強いてわいせつな行為をし(以下「C事件」ともいう。),
第4(平成26年6月2日付け起訴状記載の公訴事実第2(第115号事件)関係)
 平成25年11月26日午後9時頃に客としてマッサージを受けに来店したD(当時25歳。以下「D」という。)を本件施術室に招き入れるなどした上,被告人の指示により,全裸にさせたDをして,施術台上にバスタオルを掛けて横たわらせるとともにアイマスクを着用させ,更にDに無断で自らビデオカメラを設置,操作し,Dの様子を隠し取りしてデジタルビデオカセット(同号符号3)に録画することにより事後の対応等に備えつつ,その頃から同日午後11時50分頃までの間に,Dに対するマッサージを行うなどしたところ,Dがこのような状態になっているのに乗じ,マッサージを装って強いてわいせつな行為をしようと考え,その際,本件施術室において,上記のような状態のDに対し,露わにしたDの乳房を直接もんだり,その乳首を触ったりして,もって強いてわいせつな行為をし(以下「D事件」ともいう。),
第5(平成26年6月2日付け起訴状記載の公訴事実(第114号事件)関係)
 平成25年12月15日午後10時頃に客としてマッサージを受けに来店したE(当時27歳。以下「E」という。)を本件施術室に招き入れるなどした上,被告人の指示により,全裸にさせたEをして,施術台上にバスタオルを掛けて横たわらせるとともにアイマスクを着用させ,更にEに無断で自らビデオカメラを設置,操作し,Eの様子を隠し撮りしてデジタルビデオカセット(同号符号1)に録画することにより事後の対応等に備えつつ,その頃からEに対するマッサージを行うなどしたところ,Eがこのような状態になっているのに乗じ,Eを強いて姦淫しようと考え,翌16日午前1時40分頃,本件施術室において,上記のような状態のEに対し,Eの陰部に手指を差し入れて弄ぶなどするとともに,その両膝に自己の体を押し当てるなどしてEの両足を押し広げ,その身体に覆いかぶさるなどの暴行を加えて,その抵抗を著しく困難にした上,強いてEを姦淫した(以下「E事件」ともいう。)。
 【証拠の標目】
 【事実認定の補足説明】
 【法令の適用】
 罰条
 判示第1の行為 刑法179条,177条前段
 判示第2ないし第4の各行為 いずれも刑法176条前段
 判示第5の行為 刑法177条前段
 併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 没収 刑法19条1項2号,2項本文
 訴訟費用の負担 刑訴法181条1項本文
 【争点に対する判断(没収の可否)】
 当裁判所は,デジタルビデオカセット原本4点(以下「本件各デジタルビデオカセット」という。)が犯行供用物件に当たり,没収するのが相当であると判断したが,弁護人はこれを争っているので,以下,このように判断した理由を説明する。
 1 関係各証拠によれば,当該判断の前提として,以下の事実が認められる。
  (1) 被告人は,本件施術室においてEら4名の女性に対する判示第2ないし第5の各犯行に及ぶに当たり,アイマスクの着用に応じさせたEらに無断で,自らビデオカメラを操作して各犯行状況等の隠し撮りを行い,本件各デジタルビデオカセットに録画した。なお,この隠し撮りの間に,被告人はビデオカメラの位置や向きを動かすなどして,Eらの胸部等を大きく映し出すようにしていた。
  (2) このようにして上記各犯行状況等が録画された本件各デジタルビデオカセットは,被告人の所有物として,被告人によってその貼付に係る紙面上にそれぞれ当該女性の氏名や撮影年月日等が記入され,特定できるようにして保管されていた。
  (3) もっとも,被告人は,E事件の翌日である平成25年12月17日午後2時21分にE事件の容疑で逮捕されるに当たり,詳細は明らかでないものの,本件各デジタルビデオカセットをいずれも本件店舗以外の場所に移し,捜査機関からの押収を免れていた。
  (4) そして,本件各デジタルビデオカセットのうち,Eに関するものについては,被告人が暴行脅迫を加えていないことが明らかになるなどと考え,主任弁護人を通じ,捜査機関に任意提出された。他方,その余については,Eの場合と異なり,捜査機関に明かされなかったが,起訴後のCら3名の証人尋問終了後に,主任弁護人から,検察官への証拠開示を経て証拠請求されるに至った。なお,これらの映像については,機器の制約等のため,捜査機関による複製物が公判廷で取り調べられた。
  (5) なお,被告人は,このような隠し撮りを行った理由につき,後に当該女性らとの間でトラブルになった場合に備えて防御のために撮影したものであり,以上の映像の内容は,自らの無罪を証明するとともに,女性らが虚偽の供述をしていることを示すものであるなどと供述している。
 2 そこで,以上の事実等を踏まえて判断すると,本件各デジタルビデオカセットは,被告人が当該性犯罪と並行して意図的にこれを録画したものであることが明らかである。このような録画を行った被告人の意図については,自己の性的興奮を高めることなど,検察官が主張するような事情も,可能性としてはあり得るけれども,少なくとも前記のような被告人の供述を含めて検討すると,被告人としては,本件各犯行に及ぶとともに,その撮影に及んだ当初から,被害者らとの間で後に紛争が生じた場合に,本件各デジタルビデオカセットをその内容が自らにとって有利になる限度で証拠として利用することを想定していたと認めることができ,このことは,前記1の事実関係によっても裏付けられているといえる。
 そして,このような被告人による隠し撮りは,Eら4名に対する実行行為そのものを構成するものでなく,もとより被告人がこうした隠し撮りを行ったことをもって訴追されたわけでもない。しかしながら,これらの隠し撮りが被告人の当該性犯罪と並行して行われ,その意味で密接に関連しているといえるだけでなく,結局それらの映像が無罪の証明につながるものでなかったとはいえ,被告人としては,Eら4名に対する各犯行状況を撮影して録画するに当たり,自らに有利な証拠を作出し得るという認識を持ち,そのような利用価値を見出していたといえるのであり,そのような撮影行為によって客観的に記録した当該映像を確保できること自体が,被告人の上記各犯行を心理的に容易にし,その実行に積極的に作用するものであったと評価できる。したがって,本件各デジタルビデオカセットについては,被告人のEら4名に対する各犯行を促進したものといえ,刑法19条1項2号所定の「犯罪行為の用に供した物」に当たる。
 (求刑 懲役13年,デジタルビデオカセット4本の没収)
 平成27年12月11日
 宮崎地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 瀧岡俊文 裁判官 島田尚人 裁判官 廣瀬智彦)

裁判年月日 平成29年 2月23日 裁判所名 福岡高裁宮崎支部 裁判区分 判決
事件名 強姦未遂、強姦、強制わいせつ被告事件
裁判結果 控訴棄却 文献番号 2017WLJPCA02236009

上記の者に対する強姦未遂,強姦,強制わいせつ被告事件について,平成27年12月1日宮崎地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官内田武志出席の上審理し,次のとおり判決する。
 

主文

 本件控訴を棄却する。
 当審における未決勾留日数中380日を原判決の刑に算入する。
 
 
理由

 本件控訴の趣意は,主任弁護人前田裕司,弁護人谷口渉及び同金丸祥子作成の控訴趣意書,控訴趣意書補充書,同(2)及び同(3)並びに被告人作成の控訴趣意書記載のとおりであり,これに対する答弁は,検察官内田武志作成の答弁書記載のとおりであるから,これらを引用する。
第3 法令適用の誤りの主張について
 2 本件各デジタルビデオカセットの没収について
 論旨は,本件各デジタルビデオカセットが被告人の原判示犯行を心理的に容易にし,その実行に積極的に作用するものであることを理由に原判示犯行を促進したものとして刑法19条1項2号所定の「犯罪行為の用に供した物」に該当するとして没収した原判決は,同条項の解釈適用を誤っている,というのである。
 そこで検討すると,本件各デジタルビデオカセットは,被告人が,原判示第2ないし第4の各わいせつ行為並びに原判示第5の強姦行為をそれぞれ隠し撮りしたものであるところ,犯人がこのような映像を撮影して所持していることは,性犯罪の被害者に対し強い精神的苦痛を与える行為といえるから,犯人が,性犯罪の被害者に対し,このような映像を所持していることを告げ,警察に通報したり告訴したりした場合にはこのような映像が公開されることになる旨告げることによって,映像の流出を恐れた被害者が,犯人の要求に従い,通報や告訴を断念する可能性があるといえる。関係証拠によれば,被告人は,ビデオ撮影の目的について,後に利用客との間でトラブルになった場合に備えて防御のために撮影したものである旨説明しているところ,本件ビデオ映像(E)について,Eは,被告人の原審弁護人から連絡があり,本件ビデオ映像(E)に係る本件デジタルビデオカセットの映像を法廷で流されたくなかったら示談金ゼロで告訴の取下げをしろと要求された旨供述しており,被告人も,仮に示談が成立したのであれば被告人の手元にビデオ映像が残るのはEにとってかわいそうだから処分するということで納得したが,示談交渉が決裂しているので今はそのつもりはない,原審弁護人は,E側に対し,裁判になれば,証拠として提出しないといけないから,自分の裸や性行為がされているところが映っても,メリットがないのだから,告訴を取り下げなさいというような話をしていたようだという趣旨の供述をしていることに照らすと,被告人のいう利用客との間でトラブルになった場合に備えての防御とは,単に自己に有利な証拠として援用するために手元に置いておくことにとどまらず,被害者が被害を訴えた場合には,被害者に対して前記映像を所持していることを告げることにより,被害者の名誉やプライバシーが侵害される可能性があることを知らしめて,捜査機関への被害申告や告訴を断念させ,あるいは告訴を取り下げさせるための交渉材料として用いることも含む趣旨と認められる。そうすると,原判示第2ないし第5の各犯行時に隠し撮りをして,各実行行為終了後に各被害者にそのことを知らせて捜査機関による身柄拘束を含む捜査や刑事訴追を免れようとする行為は,各犯行による性的満足という犯罪の成果を確保し享受するためになされた行為であるとともに,捜査や刑事訴追を免れる手段を確保することによって犯罪の実行行為を心理的に容易にするためのものといえるから,本件各実行行為と密接に関連する行為といえる。以上のとおり,本件各デジタルビデオカセットは,このような実行行為と密接に関連する行為の用に供し,あるいは供しようとした物と認められるから,刑法19条1項2号所定の犯行供用物件に該当する。原判決の認定判断は上記説示に沿う限度で相当である。
 所論は,本件各デジタルビデオカセットが犯行供用物件に該当するためには,撮影者に犯罪を実行しているという違法性の認識が必要である,という。しかし,犯行供用物件該当性を検討する上で,行為者の主観的要件としては,行為者において,当該犯罪行為に該当する事実を認識し,実行行為ないしこれと密接に関連する行為に利用する目的を有していれば足り,当該犯罪行為が違法であることまで認識している必要はないというべきである。被告人が,原判示第2ないし第5の各犯行時に隠し撮りをして,各実行行為終了後に各被害者に対してそのことを知らせて捜査機関による身柄拘束を含む捜査や刑事訴追を免れようとする目的を有していたと認められることは,前記のとおりであるから,本件各デジタルビデオカセットについて,被告人が実行行為と密接に関連する行為に利用する目的を有していたと認められることは明らかであり,所論は失当である。
 所論は,違法性の認識を有している人物であれば,犯行を促進し容易にするためにわざわざ犯行を立証する証拠を残しておくはずがないから,ビデオ撮影は,むしろ犯行を抑制する方向に働くのが一般的であり,決して犯行を容易にするものではない,という。しかし,本件各デジタルビデオカセットは,使い方によっては犯行を立証する証拠として被告人に不利に用いられる可能性があるとはいえるが,他方で,前記のとおり,各被害者に対して本件各デジタルビデオカセットの存在を告げて,被害者の名誉やプライバシーが侵害される可能性があることを知らしめることにより,被害申告の断念や告訴の取下げ等を要求するのに用いることもできるのだから,その存在を明らかにするか否かも含めて自由に決めることができる立場にある被告人にとって,犯行を促進し容易にする側面を有するものであることは明らかである。
 本件各デジタルビデオカセットにつき,刑法19条1項2号所定の犯行供用物件に該当することを理由に同条項を適用してこれらを没収した原判決の法令の適用に誤りはない。論旨は理由がない。
第4 結論
 よって,刑訴法396条,刑法21条により,主文のとおり判決する。
 平成29年3月2日
 福岡高等裁判所宮崎支部
 (裁判長裁判官 根本渉 裁判官 渡邉一昭 裁判官 諸井明仁

裁判年月日 平成30年 6月26日 裁判所名 最高裁第一小法廷 裁判区分 決定
事件名 強姦未遂、強姦、強制わいせつ被告事件
裁判結果 棄却 文献番号 2018WLJPCA06269002
本件上告を棄却する。
 当審における未決勾留日数中360日を本刑に算入する。 
 
理由

 弁護人前田裕司,同谷口渉及び同金丸祥子並びに被告人本人の各上告趣意は,いずれも事実誤認,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み,職権で判断する。
 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,被告人は,本件強姦1件及び強制わいせつ3件の犯行の様子を被害者に気付かれないように撮影しデジタルビデオカセット4本(以下「本件デジタルビデオカセット」という。)に録画したところ,被告人がこのような隠し撮りをしたのは,被害者にそれぞれその犯行の様子を撮影録画したことを知らせて,捜査機関に被告人の処罰を求めることを断念させ,刑事責任の追及を免れようとしたためであると認められる。以上の事実関係によれば,本件デジタルビデオカセットは,刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供した物」に該当し,これを没収することができると解するのが相当である。
 したがって,刑法19条1項2号,2項本文により,本件デジタルビデオカセットを没収する旨の言渡しをした第1審判決を是認した原判断は,正当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 小池裕 裁判官 池上政幸 裁判官 木澤克之 裁判官 山口厚 裁判官 深山卓也) 

13歳未満との青少年条例違反罪と 強制わいせつ罪・強制性交等罪との関係

 暴行脅迫がない性行為について、13歳未満のときは、刑法、13歳以上のときは青少年条例だという棲み分けがあります。
 補充性がないといっても、13未満との強制わいせつ罪・強制性交等罪について、併せて青少年条例違反が起訴されたことはありません。

福岡高裁h21.9.16は補充性の余地を認めています

福岡高裁h21.9.16
第3 法令適用の誤りの主張について
1原判示第1についての法令適用の誤りの主張(控訴理由第1及び第6)について
(1)弁護人は,①13歳未満の者に対するわいせつな行為を刑法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽く処罰する本件条例違反の罪は,憲法94条,地方自治法ト4条1項に違反し無効である,②本件条例違反の罪は,刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であると解され,被告人の原判示第1の行為は同罪に当たるから,本件条例違反の罪を適用した1審判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあると主張する。
(2)まず,①の主張については,刑法176条後段の強制わいせつ罪は,13歳未満の者の性的自由を保護するとともに,性的な情操を保護することによって,青少年の健全育成を図る趣旨であると解され,青少年の健全な育成を目的とする本件条例違反の罪とその趣旨を共通にする面を有しているが,他方で,たとえ13歳未満の者に対してわいせつな行為に及んだ場合であっても,行為者において,相手の年齢を13歳以上18歳未満であると誤信していたときは,刑法176条後段の強制わいせつ罪の故意を欠くため同罪は成立せず,本件条例違反の罪のみが成立することになる。そして,このような場合について,13歳未満の者の保護を図っている刑法が,行為者を同法176条後段の強制わいせつ罪よりも軽い法定刑を定めた本件条例違反の罪で処罰することを禁止しているとは解されないから,本件条例違反の罪が憲法94条,地方自治法14条1項に違反し無効であるはいえない。
(3)次に,②の主張については,本件条例違反の罪が刑法176条後段の強制わいせつ罪を補完する規定であるとしても,刑事訴訟法が採用する当事者主義的訴訟構造下では,審判の対象である訴因をどのように構成するかは,検察官の合理的裁量に委ねられているから,検察官は,13歳未満の者に対するわいせつな行為をした行為者について,事案の内容や立証の難易,その他諸般の事情を考慮して,刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく,本件条例違反の罪として訴因を構成して起訴することは当然許されると解される(なお,本件条例違反の罪は,強制わいせつ罪と異なり,親告罪ではないが,13歳未満の者に対するわいせつな行為の事案において,被害者やその法定代理人である親権者等が,被害者の名誉等への配慮から事件が公になることを望まず,告訴しなかったり,あるいは告訴を取り下げた場合に,検察官が行為者を本件条例違反の罪で起訴することは現実的には想定しがたいから,13歳未満の者に対するわいせつな行為を本件条例違反の罪として起訴することを許容しても,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨が没却されるとはいえない)。これを本件について見ると,被告人は,刑法176条後段の強制わいせつ罪等の罪で逮捕,勾留されたこと,しかし,捜査段階の当初は,被害児童の年齢に関する認識について,「JR駅で被害児童の制服姿を見て,実際の12歳相応以上の年齢だということは分かった。この時私は被害児童の年齢について,12歳以上15歳以下の中学生であると確信した」旨供述していたが(1審乙4),その後,「初めて会った時被害児童から直接『10歳です』と年齢を聞いていたが,容姿などから,実際の年齢に近い12歳という年齢は想像がついた。しかし,実際に話してみて,話している内容が妙に大人びていたので,これまで刑事さんには『12歳から15歳位の中学生と思っていた』と話した」旨その供述を微妙に変遷させている(1審乙6)。このような被告人の捜査段階での供述状況その他の証拠関係等に照らすと,検察官は,被害児童の年齢に関する被告人の認識の立証が必ずしも容易でないこと等を考慮し,刑法176条後段の強制わいせつ罪ではなく,本件条例違反の罪として訴因を構成し,被告人を起訴したと推察され,そのような検察官の公訴提起に関する裁量権の行使には合理性があったと認められる。また,被告人は,原審公判では「電話のやり取りから被害児童は高校1年生だと思った」旨さらに供述を変遷させていることをも併せ考えると,原判決が,被告人に対して,検察,官が起訴した本件条例違反の罪の成立を認めたことに,法令適用の誤りがあるとは到底いえない。
(4)以上のとおり,原判示第1について法令適用の誤りをいう弁護人の主張は理由がない。

阪高裁h23.12.21も補充性を否定して、訴追裁量だという説明です

阪高裁h23.12.21
(3)原判示第3の1についての主張論旨は,上記事実は,当時12歳であった被害男児に対するわいせつ行為を内容とするものであり,かつ,被告人において被害男児の年齢の知情性に問題はなかったものであるから,刑法176条後段の強制わいせつ罪のみが適用されるのに,本条例21条1項違反とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,弁護人が指摘する被告人の検察官調書(原審検乙23,24)によれば,被告人の捜査段階の言い分としては,①被告人は,平成20年9月ころ,被害男児から今度中学生になると聞いたことがあったが,好みに合致する男児であれば年齢は何歳でもよかったので,同人に対して年齢までは尋ねなかった,②本件行為の際,被害男児からは,性交類似行為等を嫌がる様子が感じられなかった,というものであり,本件は①の翌年である平成21年5月に惹起され,被害男児は当時中学1年生であったごとを踏まえると,被害男児が13歳未満であったことについての被告人の故意の存在には疑義があった上,性交類似行為等の際に被害男児が反抗を抑圧されたことについても証拠上明確ではなかったのであって,一義的に13歳未満の者に対する強制わいせつ罪(刑法176条後段のほか,同条の場合も含む。)に該当することが明らかな事案であったとはいえない。
また,強制わいせつ罪が個人の自由意思の制圧ないしこれに準ずるような場合を罰するのに対し,本条例21条1項のわいせつ罪は,青少年の健全育成に鑑みて同意があってもその相手方を処罰するものであるから,処罰の趣旨,目的を異にし,強制わいせつが成立すれば本条項のわいせつ罪が成立しないというものでもない。
そうすると,起訴検察官が上記諸点に鑑みて,その起訴裁量に基づき,被告人にとって有利である本条例違反の罪で起訴したことに裁量逸脱は全くないし,公訴事実の範囲で犯罪事実を認定し,本条例21条1項を適用した原判決にも何ら違法はない。

秋田支部h27.6.30は補充性を否定して、訴追裁量だという説明です

秋田支部h27.6.30
第3法令適用の誤り及び訴訟手続の法令違反の主張(控訴理由第7及び第8)について
1論旨は,性交相手が13歳未満である場合,強姦罪(刑法177条後段。以下,本項及び次項で「強姦罪」というのは,同条後段の強姦罪をいう。)のみが適用され,本件条例27条1項,14条1項の適用はないから,本件条例14条1項違反の罪を認めた原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで検討すると,記録によれば,本件においては,検察官は,被告人が被害児童が13歳未満であることの認識を欠いていたため,強姦罪は成立しないと考えて本件条例14条1項違反の訴因で起訴したこと,これに対し,原審も同訴因の事実を認めて,原判示第2のとおり判決したことが認められる。
そして,関係証拠によれば,被告人は,被害児童が18歳未満であること,すなわち本件条例上の青少年に当たることは認識していたものの,13歳未満であることについてはこれを認識していなかったものと認められ,被告人には強姦罪の成立に必要な故意が欠けているため強姦罪は成立せず,本件条例14条1項違反の罪のみが成立すると認められる。
よって,・強姦罪が成立する場合には本件条例14条1項違反の罪は成立しないとの弁護人の主張は,前提を欠いており,失当である。
論旨は理由がない。
2論旨は,本件条例が適用されるとしても,13歳未満の被害児童に対する淫行の罪(本件条例14条1項違反の罪)は強姦罪と同一の行為であるところ,本件起訴は告訴を欠く親告罪の一部起訴であり,強姦罪親告罪とされている趣旨を潜脱するものであるから違法であるまた,13歳未満の被害児童に対する本件条例14条1項違反の罪は親告罪であると解すべきであり,本件では告訴を欠いているから,同罪に係る公訴提起は不適法であって,公訴を棄却するべきであるのに,これをしなかった原判決には訴訟手続の法令違反がある,というのである。
そこで検討すると,検察官は立証の難易等諸般の事情を考慮して審判対象である訴因を構成することができ,裁判所の認定はその訴因に拘束され,訴因に掲げられた罪の成否を判断すれば足りるところ(最高裁昭和59年1月27日第一小法廷決定・刑集38巻1号136頁参照),前述のとおり,本件において,原審は,訴因に掲げられた本件条例14条1項違反の罪の成否について審理し,原判示第2のとおり認定したものであり,関係証拠上も,被害児童及びその法定代理人親権者母が被告人の処罰を求めていると認められることなどからすれば,本件条例14条1項違反の罪に係る公訴提起が強姦罪親告罪とされている趣旨を潜脱する違法なもの:であるとはいえない。
また,本件条例14条1項違反の罪を定める本件条例は青少年(6歳以上18歳未満の者をいう。6条1号)の健全育成に関する施策を推進するとともに,青少年を取り巻く社会環境を浄化し,もって青少年の健全な育成を図ることを目的とするものであるが(1条),13歳未満の女子を姦淫する行為を処罰する強姦罪は,被害女子個人の性的自由の保護を目的とするものであり,両罪は,保護法益において重なる部分があるものの目的や保護法益が必ずしも一致しておらず,さらに,本件条例14条1項違反の罪についてはこれを親告罪とする旨の規定がない。
このようにみると,本件条例14条1項違反の罪が親告罪であると解するべきであるとの弁護人の主張は,独自の見解といわざるを得ず,採用することはできない。
よって,公訴を棄却しなかった原判決には訴訟手続の法令違反はない。
論旨は理由がない。

「However, the government issued sentencing guidelines at the end of the reporting period directing prosecutors not to pursue fines in lieu of imprisonment in trafficking cases. 政府は、報告期間の終わりに検察官に対し、人身売買事件の懲役に代えて罰金を科さないよう指導する刑罰指針を発行した。」ってなんなの?

「However, the government issued sentencing guidelines at the end of the reporting period directing prosecutors not to pursue fines in lieu of imprisonment in trafficking cases. 政府は、報告期間の終わりに検察官に対し、人身売買事件の懲役に代えて罰金を科さないよう指導する刑罰指針を発行した。」ってなんなの?
 sentencing guidelines が出てて、アメリカには渡っているということか?
 
 こういう記事もあるが、児童買春罪は相変わらず罰金になっている。

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/428426/
【ワシントン共同】米国務省は28日、売春や強制労働などを目的とした世界各国の人身売買に関する2018年版報告書を発表した。昨年まで13年連続で4段階評価のうち上から2番目だった日本は、女子高生らによる親密な接客を売りにした「JKビジネス」などへの対策が評価され、最も高いランクに初めて格上げされた。
 国務省は日本に関し、少女売春の温床となっている「JKビジネス」撲滅に向け、関係機関を横断した取り組みが実施されていると指摘。一方で、児童買春などが軽微な処分で済まされるケースが多いとして、罰金刑ではなく実刑を科すなど厳罰化を勧告した。

https://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/countries/2018/282680.htm
PROSECUTION
The government increased some law enforcement efforts. Japan did not have a comprehensive anti-trafficking statute that included definitions in line with international standards. However, it criminalized sex and labor trafficking offenses through disparate laws pertaining to prostitution of adults and children, child welfare, immigration, and employment standards. Article 7 of the Prostitution Prevention Law criminalized inducing others into prostitution and prescribed penalties of up to three years imprisonment or a fine of up to 100,000 yen ($890) if fraudulent or coercive means were used, and up to three years imprisonment and a fine of up to 100,000 yen ($890) if force or threats were used. Article 8 of the same law increased penalties to up to five years imprisonment and a fine of up to 200,000 yen ($1,780) if the defendant received, entered into a contract to receive, or demanded compensation for crimes committed under Article 7. The “Act on Regulation and Punishment of Activities Relating to Child Prostitution and Pornography and the Protection of Children” criminalized engaging in, acting as an intermediary for, and soliciting the commercial sexual exploitation of a child and prescribed penalties of up to five years imprisonment, a fine, or both. The act also criminalized the purchase or sale of children for the purpose of exploiting them through prostitution or the production of child pornography, and prescribed a maximum penalty of 10 years imprisonment. The government reportedly also prosecuted trafficking-related offenses using the Child Welfare Act, which broadly criminalized transporting or harboring children for the purpose of causing them to commit an obscene or harmful act and prescribed penalties of up to 10 years imprisonment, or a fine of up to 1 million yen ($8,880), or both. The Employment Security Act and the Labor Standard Act both criminalized forced labor and prescribed penalties of up to 10 years imprisonment or a fine not exceeding 3 million yen ($26,650). When prescribed penalties allowed for fines in lieu of imprisonment for sex trafficking, they were not commensurate with penalties prescribed for other serious crimes, such as rape. However, the government issued sentencing guidelines at the end of the reporting period directing prosecutors not to pursue fines in lieu of imprisonment in trafficking cases. Penalties prescribed for trafficking crimes were sufficiently stringent. With respect to sex trafficking and in light of the aforementioned sentencing guidelines regarding fines, these penalties were also commensurate with those prescribed for other serious crimes, such as rape. Civil society organizations reported reliance on this series of overlapping statutes continued to hinder the government’s ability to identify and prosecute trafficking crimes, especially for cases involving forced labor with elements of psychological coercion.
・・・
Google 翻訳
予防措置
政府はいくつかの法執行活動を強化した。日本には、国際基準に沿った定義を含む包括的な人身売買禁止法がありませんでした。しかし、成人と子供の売春、児童福祉、移民、雇用基準に関する異種の法律により、セックスと労働者の人身売買犯罪を犯罪とした。売春防止法第7条は、他人を売春に誘拐し、詐欺的または強制的な手段を用いた場合に最高3年の懲役または最高10万円($ 890)の罰金を科し、最高3年の懲役および罰金を科した武力や脅威が使用された場合、最大10万円(890ドル)。同法第8条では、被告が第7条に基づく犯罪犯罪を受け取り、受領し、補償を求める契約を結んだ場合、最大5年間の懲役および最高20万円(1,780ドル)の罰金が科された。子どもの商業的性的搾取を仲介し、募集し、懲役5年以下の罰金を科すことを犯罪者に犯し、罰金を課し、罰金を科し、または両方。この行為はまた、売春や児童ポルノの作成を目的として子供を購入または売却することを犯罪とし、最大10年の懲役を処罰した。政府は、子どもの福祉法を用いて人身売買に関連した犯罪を起訴したと伝えられている。子ども福祉法は、子どもを猥褻または有害な行為をさせ、10年以下の懲役または最大罰金を処罰する目的で、 100万円(8,880米ドル)、またはその両方。雇用保障法と労働基準法は、強制労働と最長10年間の懲役または3百万円以下の罰金(26,650ドル)を犯した。性的人身売買の懲役に処せられる罰金が処罰されると、レイプなどの他の重大犯罪に処罰される罰則には釣り合わなかった。しかし、政府は、報告期間の終わりに検察官に対し、人身売買事件の懲役に代えて罰金を科さないよう指導する刑罰指針を発行した。人身売買犯罪に処罰される罰則は十分に厳格であった。性行為に関しては、前述の罰金に関する刑罰のガイドラインに照らして、これらの刑罰は、強姦などの他の重大犯罪に処罰された罰則にも相応していた。市民社会の組織は、この一連の重複する法令への依拠は、特に、心理的強制の要素を伴う強制労働を伴う場合の、人身売買犯罪を特定し起訴する政府の能力を引き続き妨げていると報告した。

未成年者誘拐,窃盗,嘱託殺人未遂,強制性交等被告事件で懲役6年6月(立川支部H30.4.24)

 口腔性交罪の事例です

「被害者に強制わいせつ行為をしようと考え,同日午後6時頃,同所において,被害者に対し,いきなりその乳房を手でもみ,同人が着用していたタイツとパンツをつかんで無理矢理脱がせるなどした上,その陰部を手指で触り,さらに,同人が怖がって反抗を抑圧されている状態を利用して同人と強制性交等をしようと考え,前記一連の暴行及びわいせつ行為により同人が反抗を抑圧されているのに乗じて同人と口腔性交をした。」というのは前半は強制わいせつ罪で後半が強制性交等罪ですが、特別関係で強制性交罪のみということでしょう。

条解刑法
強姦罪との関係
次条は本条の特別規定であり,姦淫の目的でわいせつ行為が行われた場合には,強姦罪の既遂又は未遂が成立し,本罪は成立しない。強制わいせつ行為の途中から強姦の犯意を生じて強姦に至った場合も,強姦のー罪が成立するものと解すべきであろう。

東京地方裁判所立川支部平成30年4月24日刑事第3部判決
       判   決
 上記の者に対する未成年者誘拐,窃盗,嘱託殺人未遂,強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官黒見知子,国選弁護人畑江博司各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
被告人を懲役6年6月に処する。
未決勾留日数中50日をその刑に算入する。


       理   由

【罪となるべき事実】
 被告人は,
第1 平成29年12月31日午前5時34分頃,東京都八王子市α×××番地×所在のb c店において、■がカウンター上に置き忘れた同店店長d管理の現金約2万1000円及びキャッシュカード2枚等23点在中の財布1個(時価約5000円相当)を窃取し,
第2 ソーシャルネットワーキングサービス「ツイッター」上に自殺願望がある旨表明していた■(当時17歳。以下「被害者」という。)が未成年者であることを知りながら,平成30年1月2日午前10時27分頃から同日午前10時42分頃までの間,東京都内において,自宅にいた同人に対し,自己の携帯電話のアプリケーションソフト「LINE」を使用して,「だからうちに来なよ」「一緒に死ねたら犯罪ではないし」「ホントに死にたいならうちに来てくれますか?」などとメッセージを送信し,当時の被告人方に来るように誘惑し,被害者にその旨決意させ,同人をその親権者に無断で東京都日野市β×丁目×番地の×所在のe株式会社f駅前まで誘い出し,同日午後3時32分頃,同所において被害者と合流後,バスを利用するなどして同人を東京都八王子市γ×丁目××番地××所在のg×××号室当時の被告人方まで連れて行き,同日午後5時頃から同月3日午前1時53分頃までの間,被害者を同所に留まらせて自己の支配下に置き,もって未成年者を誘拐し,
第3 同月2日午後5時頃から同日午後5時30分頃までの間に,同所において,被害者の財布内から同人所有の現金2万円を抜き取り窃取し,
第4 同日午後5時30分頃,同所において,被害者に対し,その嘱託を受け,殺意をもって,その頚部を手やビニールひもで絞め付けたが,同人が鼻部から出血したのを見て狼狽し,同人の頚部を絞め続けることができなかったため,同人に全治まで約4週間を要する眼球結膜下出血,顔面頚部皮下出血の傷害を負わせたにとどまり,その目的を遂げず,
第5 被害者に強制わいせつ行為をしようと考え,同日午後6時頃,同所において,被害者に対し,いきなりその乳房を手でもみ,同人が着用していたタイツとパンツをつかんで無理矢理脱がせるなどした上,その陰部を手指で触り,さらに,同人が怖がって反抗を抑圧されている状態を利用して同人と強制性交等をしようと考え,前記一連の暴行及びわいせつ行為により同人が反抗を抑圧されているのに乗じて同人と口腔性交をした。
【証拠の標目】《略》
【法令の適用】
罰条
判示第1及び第3の行為 刑法235条
判示第2の行為 刑法224条
判示第4の行為 刑法203条,202条後段
判示第5の行為 刑法177条前段
刑種の選択
判示第1,第3及び第4の罪 懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(最も重い判示第5の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の処理 刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)
【量刑の理由】
 量刑の中心となる強制性交等についてみると,路上等で見ず知らずの相手を突然襲ったり,性交等のために強度の暴行・脅迫を加えたりした事案ではなく,計画性も認められないが,被告人は,嘱託殺人未遂の犯行により抵抗力が落ちていた被害者に対し,乳房を揉んだり陰部を触ったりするなどした後,口腔性交に及んでおり,犯行時間も短いものではないし,被害者が被告人との性交等に応じると誤解させるような事情は全く認められず,経緯等に酌み得る部分もない。被害者が被った精神的苦痛等も大きく,被害弁償も未了である。そうすると,これのみに限ってみたときに,強制性交等既遂1件からなる事案の中で比較的軽い部類に属するとはいえ,最も軽い部類に位置付けられるような事案とはいえない。 
 その余の犯行についてみても,嘱託殺人未遂は,被害者から殺害を嘱託された被告人が,ビニール紐で被害者の頚部を力一杯絞め付けるなどして殺害しようとしたものである。被害者は意識がもうろうとして座っていられない状況に陥り,判示傷害結果も負っており,生命侵害の危険性が低い犯行とはいえない。被害者が早く殺害するよう被告人に繰り返し求めるなどした経過は認められるものの,被告人は,嘱託を断ることが容易であったにもかかわらず,翻意させる努力もしないまま安易に被害者の要請に応じて犯行に及んでおり,これに先立ち,被告人が,一緒に住む女性を探したいという身勝手な動機に基づき,自殺願望を持っている被害者に目を付け,自殺に協力するなどと誘惑して被告人宅へと誘い入れるなどする未成年者誘拐の犯行も敢行していたことも併せみると,これらの犯行に対する非難の度合いも相当強い。さらに,被告人は,被害額が低額とはいえない2件の窃盗にも及んでいる。
 これらの犯情等を併せみると,被告人の刑事責任は重く,被告人が一連の犯行を全て認めて反省の態度を示していることや,被告人の母親が被告人の監督を誓約していること,被告人には前科がないことなどを考慮しても,主文の刑は免れない。
(検察官求刑・懲役8年)
平成30年4月27日
東京地方裁判所立川支部刑事第3部
裁判長裁判官 矢野直邦 裁判官 佐藤康行 裁判官 武田夕子

教員による強制わいせつ罪(176条後段)につき、教育委員会に慰謝料200万円を認容(訴額は600万円)した事例(名古屋地裁H30.6.29)

 刑事事件は 名古屋地裁岡崎支部H28.12.20懲役1年08月執行猶予3年没収 300万円で示談です。強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪が観念的競合になっています。
 損害が起訴されたわいせつ行為による慰謝料だとすると、教育委員会監督責任(教員とは不真正連帯債務)を認めたとしても、それを200万円と評価すると、支払い済みということで請求は棄却されます。
 教員に対して訴訟上の請求をしたとしても認容額は200万円だったことになり、それを300万円支払ったことになります。

https://mainichi.jp/articles/20180630/k00/00m/040/095000c
名古屋地裁わいせつ「前歴」教諭 教委の監督責任を認定
毎日新聞2018年6月29日 20時57分(最終更新 6月29日 23時50分)
 愛知県豊田市立小学校で担任教諭の男性にわいせつ行為をされた女児側が市に600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁岡崎支部は29日、200万円の賠償責任を認めた。長谷川恭弘裁判長は、男性が前任校で女子生徒の体を触るなどしており、市教育委員会は被害を予見できたのに監督責任を怠ったと判断した。
 一方、女児側と男性が示談し300万円が支払われているとして請求自体は棄却した。
 判決によると、女児は9歳だった2014年10月、校内で特別支援学級担任の男性に服を脱がせられ写真撮影された。男性は強制わいせつ罪などで懲役1年8月、執行猶予3年の判決が確定し、懲戒免職処分とされた。
 男性は前任の同市立中学校で12年、校内で2人きりとなった女子生徒の体を触るなどして学校の調査を受けたが処分されず、休職をした後、女児の小学校に復職した。
 判決は、前任校での男性の行為は性的な意味を持ち、その後に適切な監督も継続されておらず、市教委は男性が再び性的な行為に及ぶ恐れを予見できたと認定した。その上で、小学校校長に事情を説明して配置の検討や十分な監督を指導すべきだったと指摘した。

 また、前任校での行為は事実確定ができず対応できなかったとの市側主張を「生徒や児童の安全、教員の監督に関する意識の低さを示すもの」と批判した。男性は小学校で女児への行為前、別の児童を膝に乗せるなどしていたが、判決は校長の過失について「性的な行為まで予想できなかった」と否定した。

 判決を受け、女児の父親(44)は「一定の理解を示してくれたが損害賠償と示談は別。納得できず、(控訴に関しては)弁護士と相談する」と話した。

 豊田市教委は「教員によるわいせつ行為は大変重く受け止めており、おわびする。主張が認められなかった点があったとすれば残念。判決理由をよく見た上で対応を協議していく」とコメントした。市の担当者は「判決にかなり厳しい表現がある。不十分だったところは今後の対応に生かしたい」と述べた。

 判決書が届きました。
 損害はわいせつ行為によるもので、200万円と評価されていて、不真正連帯債務者の公務員(犯人)が300万円を支払っているので、全部弁済済ということで請求棄却になっています。
 刑事弁護的には、公務員が300万円で示談したというのは相場的にはいい線だったことが判決でも追認された感じになっています。
 さらに学校相手に別途600万円請求するには、特別な理論構成や損害立証が必要だったと思います。

岡崎支部h30.6.29
第1 請求
被告は,原告に対し, 600万円及びこれに対する平成年月日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告の設置及び管理する豊田市、学校(以下「本件小学校」という。)において,担任教諭である■■■(以下■■」という。)が原告に対して強制わいせつ行為(以下「本件わいせつ行為」という。)に及んだことについて,本件小学校の校長には担任教諭に対する適切な指導監督を怠った過失又は本件小学校に在籍する児童である原告への安全配慮義務違反があり,被告の教育委員会の教育長(以下「本件教育長」という。)には本件小学校の校長に対する指導監督等を怠った過失又は原告への安全配慮義務違反があるなどと主張して,被告に対し,選択的に,国家賠償法1条1項又は債務不履行安全配慮義務違反)に基づき,原告が被った精神的苦痛について慰謝料600万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成年月日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

裁判所の判断
3 争点(2) (原告の損害及びその額)について
(1) 本件においては,前記2(2)のとおり,本件教育長に,■:本件小学校に赴任する際に,校長である■■■■に対し,前件問題について具体的な事情を説明した上で,■が女子児童と二人きりになったりしないように配置を検討し,十分に監督するよう指導を行うべきであったにもかかわらず, これを怠った過失及び安全配慮義務違反があるから, この過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係のある原告の損害及びその額について検討する。
(2) 原告の損害について
前記2(2)ウ鮒のとおり,本件教育長が,前記(1)の義務を果たしていれば,本件わいせつ行為を回避することができたから,本件わいせつ行為は,本件教育長の過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係を有するものであり,本件わいせつ行為によって生じた損害は,上記の過失及び安全配慮義務違反と相当因果関係を有する損害である。原告は,前記1(3)力のとおり,本件わいせつ行為後,■■■■■■■■■■■■■■■■症状が生じて, これが残存するなどしており,生活にも支障を来し,本件わいせつ行為によって,多大な精神的苦痛を受けたことが認められる。
なお,原告は,本件わいせつ行為による精神的苦痛だけではなく,学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない精神的苦痛の損害を受けた旨主張する。
しかし,原告が学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない状況になったのは,本件わいせつ行為が発生したからにほかならないし,生活に支障を来したことの一側面なのであって,前記(1)の過失及び安全配慮義務違反によって,本件わいせつ行為によるものとは別のものとして,原告が学校に対して不信感を抱きながら通学せざるを得ない精神的苦痛を受けたと認めることはできない。
(3) 損害額について
前記(2)のとおり,原告は,前記(1)の過失及び安全配慮義務違反によって,本件わいせつ行為による多大な精神的苦痛を受けたと認められるから,その損害の額について検討する。
原告は,前記1(3)力のとおり,本件わいせつ行為後,■■■■■■■■■■■■■■■■状が生じて, これが残存するなどし,生活にも支障を来しており,原告の受けた精神的苦痛は非常に大きい。
また,本件わいせつ行為については,原告に対して直接教育をし,安全を守るべき立場にあった■垳ったこと, 当時9歳と年少であり,かつ特別支援学級の児童で,十分な判断能力のない原告に対する行為であることからすれば,悪質なものである。
もっとも,本件わいせつ行為は,暴行及び脅迫がないことや直接的な身体接触を伴うわいせつ行為ではないことなどからすれば, これらを伴う場合と比較して悪質性の程度は大きいものではないといわざるを得ない。
そうすると,本件わいせつ行為の悪質性の程度からすれば,原告に生じた苦痛の程度を最大限考慮しても,本件わいせつ行為による精神的苦痛に対する慰謝料の額は200万円であると認めるのが相当である。
(4) したがって,原告には,前記(1)の本件教育長の過失及び安全配慮義務違反
によって, 200万円の損害が生じたと認められ,被告は,原告に対し, 200万円の損害賠償義務を負う。
4争点(3) (本件示談による弁済)について
(1) 前記1(3)ウ及びエのとおり,本件わいせつ行為を含む本件公訴事実については,本件示談が成立しており, 300万円が支払われている。
前記3のとおり,本件教育長の前記3(1)の過失及び安全配慮義務違反は,本件わいせつ行為による精神的苦痛と相当因果関係を有するものとして損害賠償債務を負うものであるから,被告の原告に対する上記過失についての国家賠償法1条1項に基づく損害賠償債務及び上記安全配慮義務違反についての債務不履行に基づく損害賠償債務(200万円)は,B原告に対する本件わいせつ行為による不法行為に基づく損害賠償債務と同一の損害に向けられた債務であり,不真正連帯債務の関係に立つものである(なお,■行為それ自体についても,公権力の行使に当る公務員が,その職務を行うについて,故意によって違法に他人に損害を加えたときに該当し,被告は,原告に対し, 同条同項に基づく損害賠償義務を負うものである。)。そうすると,■が本件示談によって■原告に対する上記債務を弁済した場合には,被告の原告に対する上記各債務は,弁済の絶対的効力によって消滅することになる。
(2) 原告は,本件示談が原告及び原告の家族全員(合計■名) との間で行われたものであり,原告の本件わいせつ行為による損害については本件示談金(300万円)の約■分のの■万円しか弁済されていない旨主張する。
しかし,本件示談は,B刑事事件に関連して行われたものであり,刑事事件の被害者は原告であることからすると,主として原告の本件わいせつ行為によって生じた損害について賠償する趣旨のものであると認められる。
そして,本件示談は,文言上,原告及び原告の家族と■との間での示談となっているが,そもそも家族として誰を指定しているかも不明である。そうすると,仮に近親者の慰謝料が認められる可能性があるとしても, その額が合計100万円を超えるものとは認められない。また,本件示談は,原告及びその家族が提示した300万円の慰謝料を,■:そのまま受け入れて成立したものであるから, その支払によって,原告及びその家族が被った精神的苦痛は,いずれも慰謝されたものと認められる。
(3) そうすると, ■の原告に対する前記(1)の債務は,前記(1)の本件示談に基づ<300万円の支払によって,すでに弁済がされ,消滅したと認められる。そのため,被告の原告に対する前記3(4)の各債務(200万円)も,不真正連帯債務における弁済の絶対的効力によって,消滅する。したがって,被告の原告に対する前記3(4)の各債務は,いずれも■前記(1)の弁済によって,消滅したと認められる。
第4結論
以上によれば,被告は,原告に対して200万円の損害賠償義務を負うが,■弁済によって消滅したから,原告の国家賠償法条項に基づく請求及び債務不履行安全配慮義務違反)に基づく請求((選択的併合)はいずれも理由がなく, これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。

1992~2018の監禁行為のうち、2013年4月28日~18年1月21日を起訴した事例(神戸地裁H30.6.27)

 公訴時効の起算点は、「犯罪行為が終つた時から」で、監禁罪のような継続犯の場合は、最終時点=監禁を止めたときからになります。
 なので、1992~2018年の監禁行為について公訴時効は完成していないことになります。検察官の訴追裁量で、直近の5年のみを起訴したということです。
 ちょうど5年前ころに、監禁行為を中断したことがあるのかもしれませんが

刑訴法第二五三条[時効期間の起算点]
① 時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
②共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。

刑法第二二〇条(逮捕及び監禁)
 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
刑訴法第二五〇条[公訴時効の期間]
②時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32300090X20C18A6AC8Z00/
 一方、被告が起訴内容を認め反省していることに加え「支援が必要な人々が尊厳ある生活を送るために地域社会が役割を果たすという自覚が全体に乏しく、支援体制の整備が十分でなかった」として執行猶予を付けた。

 判決によると、被告は妻と共謀して2013年4月28日~18年1月21日、ほぼ2日に1回、母屋で食事や入浴をさせる以外は、隣接するプレハブに置かれたおりに長男を入れ、南京錠で施錠して閉じ込めた。妻は1月末に病死。13年4月以前は監禁罪の公訴時効(5年)が成立している。
裁判は19日の初公判で即日結審。検察側は1992年ごろからおりの監禁が始まったと指摘したが、判決では全体の監禁期間の認定はなかった。弁護側は「適切な福祉サービスが受けられていなかった」と主張したが、市の対応の当否についても判示しなかった。

判例コンメンタール刑法第1巻P443
d 継続犯
定の法益侵害状態が継続する問、その犯罪が継続すると予定されている犯罪を継続犯と呼ぶ。例えば、監禁罪(220) 、住居侵入罪(130) 、不法所持などである。これを包括一罪に含める考えも有力であるが(平野・総論n419 など)、最初の法益侵害行為が継続していると認められる限り、構成要件が予定している犯罪の行為は不可分の1個であり、したがって、その結果もI罪であると考えられ、単純
一罪と解する方が妥当であろう。
・・・
判例コンメンタール刑法第3巻P14
2 保護法益
本条の罪の保護法益は、個人の行動 (場所的移動)の自由であり、逮捕罪も監禁罪も、継続犯であると解されている。
・・・
条解刑事訴訟法
包括一罪の場合,最終行為の終了時点を起算点とする(判例①)。状態犯の場合は構成要件的行為終了時点が起算点となる。継続犯の場合は,法益侵害の状態が継続する限り犯罪行為は終了しない。外国人登録法による登録不申請罪の公訴時効の起算点は同罪の性質との関連で問題となるが,判例は,同罪を継続犯と解し,申請のあった時点を起算点とする(判例②)。また,競売入札妨害罪について,判例は,競売開始決定に基づき現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向け,内容虚偽の契約書類を提出した行為は,刑法96の3第1項の「公の競売又は入札の公正を害すべき行為」に当たるが,その時点をもって本条1項にいう「犯罪行為が終った時」とはならず,虚偽の事実の陳述等に基づく競売手続が進行する限り, 「犯罪行為が終った時」には至らないとする(判例④)。

監護者性交等罪で1回結審求刑8年(松山地裁)、求刑7年(大津地裁)

 公訴事実以外の常習的な性的関係が求刑で考慮されています。軽い量刑目指すにはそこを争うことになるわけですが、起訴状には書いていないという不合理。おかしいと思わないのかなあ。
 情状立証1期日もらって、娘を性的対象とした歪んだところを治療しかけた点でも立証しないんしょうか。

http://mainichi.jp/articles/20180627/ddl/k38/040/478000c
監護者性的暴行
被告が起訴内容認める 地裁で初公判 来月24日に判決 /愛媛
毎日新聞2018年6月27日 地方版
 監督・保護者の立場を利用して18歳未満の子に性的暴行をしたとして、監護者性交等罪に問われた男の初公判が26日、松山地裁(末弘陽一裁判長)であった。被害者の特定を避けるため、被告の氏名や年齢などは伏せて審理が進められた。被告は「間違いありません」と起訴内容を認め、検察側は懲役8年を求刑。弁護側は寛大な判決を求めて即日結審した。判決は7月24日。

 検察側は論告で「自らの性欲を満たすためだけに、被害児童を欲望のはけ口にした」などと指摘。「抵抗が困難であることに乗じた常習的な犯行で、卑劣で極めて悪質」とした。

 また、検察側は冒頭陳述で、被告が国家公務員だと言及。被告の所属先は「判決が出てから厳正な処分をする」としている。【中川祐一】
・・・・・・・・・

長女暴行の男 懲役8年求刑 松山地裁初公判
2018.06.27 愛媛新聞社
 4月、実子の10代の長女に常習的に性的暴行をしたとして監護者性交等罪に問われた県内の被告の男の初公判が26日、
 松山地裁であり、被告は起訴内容を認めた。検察側は「長女の心の傷は深く、長期間苦痛にさいなまれる」と懲役8年を求刑、弁護側は寛大な判決を求め即日結審した。
 公判では事件関係者全員が匿名となった。検察側は被告が事件当時、国家公務員だったことを説明したが、年齢などは明かさなかった。末弘陽一裁判長は公判冒頭に「今回は被害者の名前などを法廷で明かさないと決定した」と説明した。

 検察側は冒頭陳述などで、被告は2014年ごろから同居の長女の体を触るようになり、18年4月24日深夜、自宅で性的暴行を加えたと指摘。長女が「やめたほうがいい」と涙を流して訴えたことがあったのに、被告が「本気で嫌がっているとは思っていなかった」と供述したことを明らかにした。

 論告で検察側は、性的虐待を受けた子どもは完全に意思を否定されたため、自分に価値がないと誤認するという専門家の分析を説明。抵抗が困難なことに乗じるなど卑劣で極めて悪質であり、自己中心的な解釈で犯行を繰り返し「動機に酌量の余地は微塵(みじん)もない」と述べた。

 弁護側は、被告は社会的制裁を受け、取り調べに応じて真摯(しんし)に反省しているなどとして「社会での更生が可能」とした。

 長女が教育関係者に相談し被害が判明した。

http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20180627000150
長女にわいせつ、男に懲役7年求刑 滋賀の監護者性交罪公判印刷用画面を開く
 長女にわいせつな行為をしたとして、監護者性交等罪に問われた男の初公判が27日、大津地裁(伊藤寛樹裁判長)であり、検察側が懲役7年を求刑して結審した。同罪の公判は京滋では初めて。判決は7月31日。

 同罪は、家庭内などで18歳未満が被害者となる性的虐待を取り締まるため、昨年7月に施行された。告訴なしでも罪に問える非親告罪になっている。公判では被害者保護のため、被告人の名前や年齢、居住地などが伏せられた。

 検察側は冒頭陳述で、男が数年前から長女にみだらな行為を繰り返したと指摘。長女が経済的、精神的に依存している状況を利用し、自身の欲求を満たしており、健全な発達に与えた影響は重大で悪質とした。

 弁護側は「被告は反省しており、家族の処罰感情も薄れている」として執行猶予付きの判決を求めた。

【 2018年06月27日 23時10分 】

わいせつ誘拐に児童淫行罪を加える訴因変更をしつつ、姿態をとらせて製造罪は追起訴した事例(宇都宮地検栃木支部)

 わいせつ誘拐の関係では、売春とか児童淫行罪とか強姦(強制性交等罪)とかも牽連犯になるので、製造罪も牽連犯になります。

山口地裁H21.2.4
(法令の適用)
罰条
 判示第1
  児童ポルノ製造の点 児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律7条 3項,1項 (2条3項3号)
  強制わいせつの点  刑法176条後段
 判示第2
  わいせつ目的誘拐の点 刑法225条
  児童ポルノ製造の点  児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及ひや児童の保護等に関する法律7条 3項, 1項 (2条3項3号)
  強制わいせつの点   刑法 176条後段
科刑上一罪の処理
 判示第1   刑法54条1項前段, 1 0条(重い強制わいせつ罪の刑で処断)
 判示第2   刑法54条1項前段,後段,1 0条(児童ポルノ製造と強制わいせつは, 1個の行為が 2個の罪名に触れる場合であり,わいせつ目的誘拐と児童ポルノ製造及びわいせつ目的誘拐と強制わいせつとの間にはそれぞれ手段結果の関係があるので,結局以上を1罪として最も重いわいせつ目的誘拐罪の刑で処断)
併合罪の処理  刑法45条前段,47条本文, 10条(重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
平成21年2月4日
・・・
第二二五条(営利目的等略取及び誘拐)
 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
・・・・・・・・
条解刑法
わいせつ目的
被拐取者に対して自らわいせつ行為をし,又は第三者をしてわいせつ行為をさせる目的,あるいは被拐取者にわいせつ行為をさせる目的をいう。
わいせつ行為の意義については, 174条注3. 176条注4参照。ただし, 176条と異なり,わいせつ行為には姦淫も含まれる(名古屋高金沢支判昭32・3・12高集102-157)。
したがって,被拐取者に売春をさせる目的もわいせつ目的に当たる。

児童買春・児童ポルノ禁止法違反で男を起訴 /栃木県
2018.06.26 朝日新聞
 児童ポルノを製造したとして宇都宮地検栃木支部は25日、容疑者を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春、児童ポルノ製造)の罪で起訴した。同日、2月に起訴したわいせつ誘拐罪の訴因について、児童福祉法違反の罪を加えるよう変更した。
・・・
少女に性的暴行、ビデオ撮影容疑 静岡の男を逮捕 /栃木県
2018.05.08 朝日新聞
 小山署は7日、容疑者を準強制性交等致傷と児童買春・児童ポルノ法違反の疑いで逮捕し、発表した。容疑者は「同意があった」と否認しているという。
 署によると、容疑者は1月21日、SNSを通じて知り合った県南在住で事件当時高校1年生の女子生徒に対し、自宅で入眠剤の成分を混ぜた飲み物を飲ませ、意識が混濁している状態にして性的暴行を加えてけがをさせた上、その様子をビデオ撮影した疑いがある。
 容疑者は1月21日、女子生徒を未成年者と知りながら連れ去ったとして未成年者誘拐の疑いで逮捕され、宇都宮地検栃木支部が2月9日、わいせつ誘拐罪で起訴した。

最近量刑理由が、量刑DBの事例との比較だよなあ。(水戸地裁H30.4.27)

 
 相場観ないのかなあ。

       主   文

被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中260日をその刑に算入する。

(量刑の理由)
1 まず,犯情について検討する。 
 被告人は,いずれの犯行(以下,判示第1の犯行を「X事件」,判示第2の犯行を「Y事件」,判示第3の犯行を「Z事件」という。)でも,殴る蹴るなどの強度の暴行はしていないが,被害者の体を手で押して路上に転倒させており,特にY事件,Z事件では,自転車で走行中の被害者にこの暴行を加えている。暴行の態様は,転倒の仕方によっては重大な傷害を負わせかねない,危険なものである。また,Y事件では,犯行日以外にも被害者を待ち伏せしていたものであり,犯意の強さが表れている。
 Y事件,Z事件の被害者2名が負傷している。また,突然被害に遭った被害者らの精神的苦痛も軽いものではない。
 犯行当時の被告人は,仕事上,家庭上のストレスを抱えていたが,被害者らを性的欲求のはけ口とすることを正当化する事情とは認められない。本件の経緯,動機に酌量の余地はない。
 もっとも,被告人がX事件,Y事件で行ったわいせつ行為の内容は,頬にキスをする,着衣の上から乳房を揉むなどというものであり,行為の内容や対象部位からすると,わいせつ行為の程度は後記同種事案の中では比較的軽いといえる。また,Z事件では,わいせつ行為をするに至っていない。
 以上の事情に照らせば,本件は,同種事案(前科のない被告人が単独で犯した路上における強制わいせつ致傷で,わいせつ行為は既遂に至り,凶器を使用せず,被害者が負ったけがの加療期間等が2週間以内であり,かつ,被害者は,13歳以上であり,被告人との面識がなく,落ち度がない事案のうち,処断罪を含め同一または同種の罪を2~4件伴うもの)の中で,やや軽い部類に属する。
2 次に,刑を調整する要素としての一般情状を検討する。
 Y事件,Z事件の被害者や保護者は厳罰を希望しており,X事件で被告人が被害者に30万円を支払い,示談が成立している事実を過度に重視することはできない。被告人は,断続的ではあるが3回も犯行を繰り返しており,相応の常習性が認められる。被告人は,被告人なりに反省の態度を示しているが,その供述内容からすると,自らが犯した罪と正面から向き合うことができているとは認められない。
3 以上の犯情,一般情状の評価を踏まえ,同種事案における量刑傾向も考慮すると,被告人を執行猶予とすることはできず,主文の実刑が相当である。
(量刑意見 検察官:懲役4年6月 弁護人:懲役3年執行猶予)
平成30年5月11日
水戸地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 小笠原義泰 裁判官 河野一郎 裁判官 安井亜季

少年条例違反で逮捕→迷惑条例で送検→不処分→熊本県/避難所の迷惑行為 「無罪」男性賠償請求 女児の母棄却求める

 見せたという動画も閲覧履歴も発見されませんでした。
 条例の、わいせつ行為として逮捕したものと思われますが、「わいせつ行為を見せる」でもないし、性器を見せつけてわいせつと言えるかどうかという感じですので、わいせつ画像を見せるというのはわいせつとしては弱いでしょう。
 避難所のわいせつ行為とかに神経質になっていた時期だからえdしょうね

熊本県少年保護育成条例の解説h27
(みだらな性行為及びわいせつ行為の禁止)
第13条
1何人も、少年に対し、みだらな性行為又はわいせつ行為をしてはならない。
2何人も、少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
解説
(3) 「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激、興奮させたり、その露骨な表現によって正常な普通一般社会人に、性的しゆうち嫌悪の情をおこさせ善良な性的道義感に反するものをいう。
しかし、現にしゆうち嫌悪の情をおこさせたことを必要としない。このような情をおこさせる性質の行為であればこれに当たる。
例えば、単に陰部に触れる行為、乳房を撫でる行為、接吻行為等がこれに当たる。

熊本県/避難所の迷惑行為 「無罪」男性賠償請求 女児の母棄却求める 
2018.06.23 西日本新聞
 熊本地震の避難所で当時小学6年の女児に「わいせつな動画を見せた」と女児の母親から県警に被害を訴えられ、熊本家裁で刑事裁判の無罪に当たる不処分の決定を受けた男性=当時(19)=が、女児の母親に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が22日、熊本地裁(永田雄一裁判官)であり、母親側は「請求は不当」として棄却を求めた。
 訴状などによると、男性は母親の申告をきっかけに2016年5月に県少年保護育成条例違反容疑で逮捕。職場で県警から任意同行を求められたり、勾留されたりして精神的苦痛を受けたとしている。 (壇知里

女児への迷惑行為「無罪」の元少年 被害訴えた母親を提訴 熊本地裁
2018.06.22 西日本新聞
 2016年5月、熊本地震の被災者たちが身を寄せた避難所で当時小学6年の女児にわいせつな動画を見せたとして熊本県迷惑行為防止条例違反容疑で熊本家裁に送致され、刑事裁判の無罪に当たる不処分の決定を受けた当時19歳の会社員の男性(21)が、県警に女児の被害を訴えた母親を相手に損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こしていたことが分かった。提訴は5月8日付。
 県警などによると、女児の母親は避難所で隣り合う場所にいた男性が「娘にスマートフォンでわいせつ動画を見せた」と県警に訴えた。県警に逮捕された男性は、地検から家裁に送致されたが、スマホからわいせつ動画を閲覧した履歴が確認できず、家裁は「客観的な証拠がない」として非行事実なしと結論付けたという。男性は逮捕当初から容疑を否認していた。
 訴状によると、男性は母親の申告をきっかけに職場で県警から任意同行を求められたり、勾留されたりして精神的苦痛を受けたとしている。男性の代理人弁護士は「母親の説明はあいまいで、県警は主に母親の目撃情報だけで逮捕した」と批判。母親の代理人弁護士は「母親は提訴を遺憾に感じている」としている。 (壇知里

不処分報道

県迷惑条例違反で送致 19歳少年の不処分決定 熊本家裁 熊本地震
2016.10.13 西日本新聞
 熊本地震の避難所で4月、女子児童にわいせつな動画を見せ、熊本県迷惑行為防止条例に違反したとして熊本地検が送致した熊本市の会社員少年(19)の審判で、熊本家裁(船戸容子裁判官)が刑事裁判の無罪に当たる不処分の決定をしていたことが12日分かった。決定は11日付。

 付添人弁護士によると、少年のスマートフォンからわいせつ動画を閲覧した履歴が確認できず、家裁は「客観的な証拠がない」として、非行事実なしと結論付けたという。少年は一貫して容疑を否認していた。5月に少年を逮捕した熊本南署は「決定文を見ていないためコメントを控える」としている。
・・・

逮捕少年に「無罪」 避難所で女児にわいせつ動画 熊本家裁 平成28年熊本地震
2016.10.12 熊本日日新聞
 熊本地震の避難所で女児にわいせつ動画を見せたとして、県迷惑行為防止条例違反の非行事実で送致された熊本市の少年(19)の審判で、熊本家裁は11日、非行事実はないとして、刑事事件の無罪に当たる不処分を決定した。
 付添人の松本卓也弁護士によると、少年は逮捕時から一貫して「動画を見せていない」と否認。船戸容子裁判官は、決定理由で「目撃証言の信用性に疑いがあり、非行事実を裏付ける客観的な証拠がない」と述べたという。
 少年は5月1日夜、自らも避難していた熊本市内の避難所で、避難中の女児にスマートフォンでわいせつ動画を見せたとして、熊本南署に県少年保護育成条例違反の疑いで同16日に逮捕された。
 その後の捜査で、動画を見せたとされる日時を4月29日夜に、非行事実を県迷惑行為防止条例違反にそれぞれ変え、熊本地検が家裁送致した。
 署は「決定文の詳細を把握しておらず、コメントできない」としている。

逮捕報道

事件・事故=避難所でわいせつ動画見せた疑いで少年逮捕 熊本南署 平成28年熊本地震
2016.05.17 熊本日日新聞
 ■避難所でわいせつ動画見せた疑いで少年逮捕 熊本南署は16日、県少年保護育成条例違反の疑いで、熊本市の会社員の少年(19)を逮捕した。逮捕容疑は1日午後10時ごろ、同市内の避難所で、熊本地震で避難中の女児(11)にスマートフォンのわいせつ動画を見せた疑い。署によると少年も避難中。避難所に仕切りはなく、女児の母親が離れた間に、就寝しようと横になっていた女児に近づいたらしい。「動画を見せた記憶は無い」と否認している。