児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

未成年誘拐の被害者が成人した場合。

 誘拐事件の弁護人なので、チェックしておく。
 逮捕監禁がないとすると、状態犯説だと、誘拐のときに犯罪は終わっていて、継続犯説だと、成人する時まで犯罪が継続していることになるんだな。
 保護法益が分からないときは、「両方だ」と言っておくわけだな。

http://www.sankei.com/west/news/180504/wst1805040014-n1.html
逮捕容疑は、昨年7月中旬ごろ、浜田市内で女性が未成年者であることを知りながら誘拐し、自宅で寝泊まりさせていたとしている。
 女性は昨年7月22日午後11時半ごろから行方不明になり、県警が公開捜査していた。今月3日午後6時15分ごろ、「近くで女性の泣き声が聞こえる」と住民から通報があり、警察官が駆け付けると、容疑者の自宅の居間で女性が泣いていたという。

第224条(未成年者略取及び誘拐)
未成年者を略取し,又は誘拐した者は,3月以上7年以下の懲役に処する。
第229条(親告罪
 第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
〔昭三九法一二四・平一七法六六・平二九法七二本条改正〕

条解刑法
l )本条の趣旨
本章の罪の保護法益に関しては,被拐取者の自由とする見解,被拐取者に対する保護者の監護権とする見解,基本的には被拐取者の自由であるが,監護権も保護法益であるとする見解等に分かれている。最後の見解が判例通説であり,保護者のいない未成年者についても,行動の自由を意識できない嬰児についても,本章の罪が成立するとの結論を合理的に説明するものである。もっとも,監護権について,保護者の利益と捉えずに,保護されている状態(人的保護関係)と理解する見解や,被拐取者の本来的な生活場所における安全と行動の自由が保護法益であるとする見解もあり,保護法益を被拐取者の利益に還元しながら,同じ結論を導こうとする。
保護法益に関する見解の相違は,略取・誘拐罪が継続犯か状態犯かという問題にも影響し,保護法益を被拐取者の自由とする見解は継続犯と捉え,保護者の監護権とする見解は状態犯と捉えることにつながる。下級審の裁判例には継続犯であると明言するもの(東京高判昭31・8・20判タ62-72,大阪高判昭53・7・28高集31-2-118)や状態犯であると明言するもの(東京高判平14・3・13東時53-1=12-31)もあるが,最高裁大審院判例は必ずしも明らかではない(継続犯と解するようにみえるものとして大判大13・12・12集3 871,大判昭4・12・24集8688,拐取罪の既遂時期に関する判示から状態犯と解しているとみる余地のあるものとして大判昭13・11・10集17799,誘拐罪と逮捕・監禁罪の罪数に関する判示から状態犯と解しているとみる余地のあるものとして最決昭58・9・27集37ー7-1078)。
本条は,未成年者は一般に思慮が浅薄であることから.成人よりも厚く保護しようとするものであり,成人と異なり,営利等の目的(225・225の2・226参照)がない場合であっても犯罪が成立することになる。
本条の罪は親告罪である(229
客体
未成年者である。20歳未満の者をいう(民3)。婚姻した未成年者は,民法上は成年に達したものとみなされるが(民753),本条の罪の客体からは除外されない。生後2日目の嬰児も客体となり得る(東京高判昭37・7・20判時31921

強制わいせつ罪について「わいせつ」=わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5・10刑集5-6-1026)なんて解説する弁護士。

 そもそも最判s26は猥褻文書販売被告事件の判例であって、強制わいせつ罪のものではありません。
 強制わいせつ罪の成立に性的意図がいらないので(最判H29.11.29)、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ」が要件になっているので、最判H29で否定されています。最判H29の弁護人からは「性欲要件を外すのであれば、わいせつ行為を再定義しなければならない」と言われたのに最高裁は沈黙しました。
 馬渡判事に言わせれば、「いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには,これをどのように定義づけるかよりも,どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる」ということで、わいせつな行為は定義しないのが正解だそうです。
 ということで、裁判例で、わいせつとされているのがわいせつなんだそうです。

最判H29.11.29
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87256
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/256/087256_hanrei.pdf
刑法(平成29年法律第72号による改正前のもの)176条にいう「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うための個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合はあり得るが,行為者の性的意図は強制わいせつ罪の成立要件ではない

ジュリスト1517 
最高裁大法廷 時の判例
刑事
強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否
最高裁平成29年ll月29日大法廷判決
平成28年(あ)第1731号,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件/裁判所Web(刑集71巻9号登載予定)/第1審・神戸地判平成28年3月18日/第2審・大阪高平成28年10月27日
最高裁判所調査官 馬渡香津子
2定義
(1)判例,学説の状況
強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の定義を明らかにした最高裁判例はない。
他方,「わいせつ」という用語は,刑法174条(公然わいせつ),175条(わいせつ物頒布罪等)にも使用されており,最一小判昭和26.5.10刑集5巻6号1026頁は,刑法175条所定のわいせつ文書に該当するかという点に関し,「徒に性慾を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められる」との理由でわいせつ文書該当性を認めているところ(最大判昭和32.3・13刑集ll巻3号997頁〔チャタレー事件〕も,同条の解釈を示すに際して,その定義を採用している),名古屋高金沢支判昭和36.5.2下刑集3巻5=6号399頁が,強制わいせつ罪の「わいせつ」についても,これらの判例と同内容を判示したことから,多くの学説において,これが刑法176条のわいせつの定義を示したものとして引用されるようになった(大塚ほか編・前掲67頁等)。
これに対し,学説の中には,刑法174条,175条にいう「わい 最高裁大法廷時の判例せつ」と刑法176条の「わいせつ」とでは,保護法益を異にする以上,同一に解すべきではないとして,別の定義を試みているものも多くある(例えば,「姦淫以外の性的な行為」平野龍一.刑法概説〔第4版)180頁,「性的な意味を有する行為,すなわち,本人の性的差恥心の対象となるような行為」山口厚・刑法各論〔第2版]106頁,「被害者の性的自由を侵害するに足りる行為」高橋則夫・刑法各論〔第2版〕124頁,「性的性質を有する一定の重大な侵襲」佐藤・前掲62頁等)。

(2)検討
そもそも,「わいせつな行為」という言葉は,一般常識的な言葉として通用していて,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持てる言葉といえる。
そして,「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには困難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。
また,「わいせつな行為」を定義したからといって,それによって,「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえ,これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられ,それらの集積から,ある程度の外延がうかがわれるところでもある(具体的事例については,大塚ほか編・前掲67頁以下等参照)。
そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには,これをどのように定義づけるかよりも,どのような判断要素をどのような判断基準で考慮していくべきなのかという判断方法こそが重要であると考えられる。
本判決が,「わいせつな行為」の定義そのものには言及していないのは,このようなことが考えられたためと思われる。
もっとも,本判決は,その判示内容からすれば,上記名古屋高金沢支判の示した定義を採用していないし,原判決の示す「性的自由を侵害する行為」という定義も採用していないことは明らかと思われる(なお,実務上,「わいせつな行為」該当性を判断する具体的場面においては,従来の判例.裁判例で示されてきた事例判断の積み重ねを踏まえて,「わいせつな行為」の外延をさぐりつつ判断していかなければならないこと自体は,本判決も当然の前提としているものと思われる)。
3.「わいせつな行為」の判断方法
(1)性的な意味の有無
強制わいせつ罪が性的自由ないし性的自己決定権を中核とする性にかかわる個人的法益に対する罪であることに照らせば,「わいせつな行為」であるかどうかを判断するための核心部分は,当該行為に性的な意味があるか否かであると考えられる。
ところが,どのような行為に性的な意味があるといえるのかについて考えてみると,性交類似行為等のように,その行為の外形自体から直ちに性的意味があることが明らかな行為(以下,便宜上「第1類型」という)がある一方,幼児の裸の写真を撮影する行為(家族が記念撮影の一環として行っている場合もあれば,家族が児童ポルノを製造している場合もある)やキスする行為(欧米風の挨拶の場合もあれば,性的意味のある場合もある)のように,その行為の外形自体だけでは,性的意味があるかどうかを直ちに判断できない行為(以下,便宜上「第Ⅱ類型」という)とが考えられる。
そして,第Ⅱ類型の行為については,その行為が行われた際の具体的状況等(例えば,③行為者と被害者の関係性,⑥行為者及び被害者の各属性等,@行為に及ぶ経緯,周囲の状況等)をも考慮した上で,その行為に性的意味があるか否かを判断せざるを得ない。
本判決が,「刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為がある一方,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある」と判示しているのは,上記のようなことを明らかにしたものと思われる。

13歳女性に2回接吻の強制わいせつ罪で懲役1年6月執行猶予3年(松江地裁h30.2.26)

 250万で示談。
 量刑相場からいえば、示談しなくても同じ刑です。
 民事訴訟になった場合の認容額は2桁だと思われます。

■28261276
松江地方裁判所
平成30年02月26日

主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 別紙のとおり
(量刑の理由)
 子供たちを集めてレクリエーション活動を行う地域活動の主催者という立場を悪用し、自己の性的欲求を満たすために本件犯行に及んだ犯行の経緯及び動機に酌量の余地はなく、被害児童の必死の抵抗を排して無理やり2回唇に接吻した態様は卑劣で悪質である。被害児童は大きな精神的ショックを受け、人におびえながらの生活を余儀なくされており、結果も重大である。被告人は、事実を認めて反省の態度を示しているものの、当公判廷において、被害児童に対する愛おしさが込み上げて衝動的に及んだ犯行としか説明できないと述べるなど、その責任の重さに真摯に向き合い反省を深めているとは言い難い。そこで、被告人に前科前歴がなく、250万円を支払って被害者との間で示談が成立し、被害者が宥恕の意思を示していることを考慮し、被告人を主文の刑に処した上、今回に限ってその刑の執行を猶予し、社会内での更生の機会を与えることとした。
刑事部
 (裁判官 吉田真紀
(別紙)
 被告人は、平成29年11月23日午後4時過ぎ頃、(住所略)株式会社A・B店駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において、●●●(当時13歳)に対し、その肩に手を回して同人の顔に被告人の顔を近づけ、前記●●●が被告人の顔を手で押さえて抵抗したにもかかわらず、前記●●●の唇に無理矢理2回接吻し、もって強いてわいせつな行為をしたものである。

AV強要事件・・わいせつ電磁的記録記録媒体頒布、職業安定法違反、強要、わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持被告事件について、保護観察執行猶予とした原判決を破棄して、実刑にした事案(大阪高裁h30/3/28)

■28261626
大阪高等裁判所
平成30年03月28日
上記の者に対するわいせつ電磁的記録記録媒体頒布、職業安定法違反、強要、わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持被告事件について、平成29年10月20日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、検察官から控訴の申立てがあったので、当裁判所は、検察官大口康郎出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役2年6月及び罰金30万円に処する。
その罰金を完納することができないときは、金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由
 本件控訴の趣意は、検察官A作成の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は、弁護人菅谷幸彦作成の答弁書に記載のとおりであるから、これらを引用する。控訴趣意の論旨は、被告人を懲役3年及び罰金30万円に処した上で、懲役刑につき5年間保護観察付きで執行を猶予するとした原判決は、軽きに失して不当であり、被告人を実刑に処するべきである、というのである。
 そこで、記録を調査して検討する。
 本件は、若い女性の映像を記録した成人男性向けDVDの制作、販売を行っていた被告人が、わいせつDVDを販売し(原判示第1の1)、これを販売目的で所持し(同第1の2)、また、性交等をする映像の撮影のため、当時18歳の女性3名を出演者としてそれぞれ勧誘して労働者を募集し(同第2、第4、第5)、そのうち1名の女性を脅迫して、自らの意志でわいせつ行為の撮影に応じた旨の文言を書面に記載することを強要した(同第3)、という事案である。
 原判決は、被告人が合計約700枚ものわいせつDVDを販売目的で所持しており、これが販売された場合には我が国の健全な性的秩序を害する程度は大きかったこと、DVDの撮影に際し性交等をする意思などなかった女性を勧誘した態様が巧妙で悪質であること、それら女性に当たらせた業務の有害性が高いことなどを説示する一方で、本件で量刑の中心となるのは職業安定法違反の犯行であり、しかもそこで、女性の本意に反してわいせつな行為を行わせて撮影した点やそれにより生じた精神的苦痛等を過度に重視することはできないとして、本件は職業安定法違反の罪の中では悪質な部類に属するものの執行猶予を付す余地もある事案であるとし、その上で、被告人に青少年保護育成条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の罪による執行猶予付きの前科があり、本件はほとんどがその執行猶予期間中の犯行であること、他方で被告人が1名の女性に慰謝料名目で20万円を支払うと共に、反省の態度を示していること等の事情も勘案して、被告人を懲役3年及び罰金30万円に処しつつも、懲役刑について5年間の保護観察付き執行猶予を付した。
 これに対し、所論は、本件事案の中核をなすのはわいせつDVDの有償頒布及び同目的所持の事実であって、これを量刑判断の中心と位置付けるべきである等と主張して、懲役刑の執行を猶予した原判決の量刑は軽すぎて不当であるという。
 この点、わいせつDVDの有償頒布等の罪の法定刑と職業安定法違反の罪のそれとを比較した場合、後者のほうがかなり重い上、本件における職業安定法違反の各犯行がこの罪名の犯行としては軽微な部類に属するなどといえないことも明らかであるから、本件について量刑を判断するにあたり原判示第1の1、2の各犯行を中心に評価すべきであるとする所論を直ちに採用することはできない。
 しかし、被告人は国内に複数箇所の撮影拠点を設けて職業的にわいせつDVDの制作販売を行う中で、原判示第1の1、2の各犯行に及んだのであり、これらも軽微な犯行といえないことは明らかである。また、原判示第3の犯行は、女性の本意に反してその姿態等を撮影した点を糊塗するために行った犯行であって、悪質なものである。したがって、本件被告事件の犯情を評価するに当たって最も重視すべきなのが原判示第2、第4及び第5の職業安定法違反の各犯行であるにしても、原判示第1の1、2や原判示第3の各犯行を軽視することはできない。しかるに、原判決は、職業安定法違反の各犯行について執行猶予を付する余地があるとするのみで、原判示第1の1、2及び第3の各犯行も併せて考慮した場合にも執行猶予を付する余地があるかどうかを十分に検討した形跡がない。
 また、被告人は、平成24年3月に、青少年保護育成条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の罪により懲役3年(5年間執行猶予)に処せられたところ、本件各犯行は、原判示第1の2を除き、いずれも上記執行猶予期間中の犯行である。上記前科と本件とは、罪名は異なるものの、全く異質の犯罪であるということはできないから(特に、原審乙第1、第2号証によれば、上記前科に係る各犯行の中には、ビデオ出演のモデルを募って応募してきた女子児童を対象とする児童ポルノ製造やわいせつ行為もあったことが認められ、本件各犯行との間に背景の共通性があるといえる。)、原判示第2、第4及び第5の各職業安定法違反の犯行の犯情を評価するに当たっても、類似する前科の存在や、自重を求められる執行猶予期間中に反復された犯行であることを適切に考慮しなければならない。この点、弁護人は、児童の保護を目的とする法規に違反した前科の各犯行と対象が児童ではなかった本件各犯行とは異なる旨を主張するが、対象者をみだらで有害な行為から保護するという意味では、前科の各犯行と本件のうち職業安定法違反の各犯行との間に類似性があることが明らかである。しかし原判決は、犯情に関する事実の評価の段階で、上記前科の存在等を十分に踏まえて検討した形跡がない。
 そうすると、所論は、原判示第1の1、2の各犯行が軽視されたことを批判し、また、上記前科の存在やその執行猶予期間中の犯行であることを軽視すべきでない旨を主張する限りでは、正当というべきである。
 その上で更に検討すると、被告人は、原判示第2、第4及び第5のとおり、営業的に、成人男性向けDVDに出演する女性を募っていたところ、その手口をみると、被告人は、いわゆるコスプレモデルを募集するかのようなウェブサイトを開設した上で、応募しできた女性をまずは美容院に連れて行って被告人が代金を支払ってヘアセットをさせ、それから女性を撮影スタジオに連れて行って個室で二人きりになり、女性に身分証を持たせて写真を撮影するなどして、女性が容易に断れない状況を作り出していたのである。しかも、原判示第4の女性については、撮影承諾の確認書に書いたのが、原判示のように被告人による説得を受けてであったにしても、被告人は、ためらう同女に対し、「断るなら、今すぐ美容院代を返してもらう。」「途中で撮影に来なくなったら、写真とかも公開されることになる。」などと迫って、同女を困惑させながら、確認書への記入を要求していたことが認められる(原審甲第30号証参照)。また、原判示第2の女性については、被告人は、撮影開始に先立って、性的な行為の撮影があるとは分からない内容の確認書に署名させており(原審甲第35号証参照)、実際にどのような撮影であるかを秘匿したまま、確認書への署名という既成事実を作ったといえる。そうすると、特に原判示第2、第4における勧誘、募集の手口は、巧妙で、非常に悪質といわなければならない。以上に加えて、罪質に類似性が認められる上記前科の執行猶予期間中の犯行であることも踏まえれば、職業安定法違反の各犯行だけをみても犯情は相当に悪いというべきである。その上で、多数のわいせつDVDを販売目的で所持し、また、わいせつDVDを実際に販売した原判示第1の1、2の各犯行や、女性の本意に反してわいせつDVDの撮影を行った事実を糊塗しようとした原判示第3の犯行も併せ考えれば、被告人の刑事責任は誠に重いのであり、被告人が1名の女性に20万円を支払ったことや今後の更生を誓約していること等の原判決指摘の諸事情を十分勘案しても、本件は懲役刑の執行を猶予するのが相当な事案ではないというべきであって、原判決の量刑は軽きに失するといわざるをえない。
 論旨は理由がある。
 そこで、刑訴法397条1項、381条により、原判決を破棄し、同法400条ただし書により直ちに当裁判所において判断すべきものと認め、更に次のとおり判決する。
 原判決が認定した[罪となるべき事実]記載の各事実に、刑の全部執行猶予及び保護観察の部分を除いて原判決の[法令の適用]のとおり法令を適用した上で、前記諸事情を考慮して、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役2年6月及び罰金30万円に処し、その罰金を完納することができないときは金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置することとして、主文のとおり判決する。
第4刑事部
 (裁判長裁判官 樋口裕晃 裁判官 佐藤洋幸 裁判官 大寄淳)

【文献番号】25549648
大阪地方裁判所
平成29年10月20日第6刑事部判決
       判   決
 上記の者に対するわいせつ電磁的記録記録媒体頒布,職業安定法違反,強要,わいせつ電磁的記録記録媒体有償頒布目的所持被告事件について,当裁判所は,検察官鈴木美香及び同藤原真心並びに私選弁護人谷岡俊英(主任)及び同菅谷幸彦各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文

被告人を懲役3年及び罰金30万円に処する。
その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の全部の執行を猶予する。
被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。


       理   由

[罪となるべき事実]
 被告人は,インターネット通信販売サイト「△△△△△△」を運営して成人男性向けDVDを制作・販売し,同サイトで販売するための性交場面等を含むDVDにモデルとして出演させる女性を,コスプレモデル募集サイトを利用して募集し,対価を支払って自ら制作・販売する成人男性向けDVDに出演させていたものであるが,
第1
1【平成29年5月26日付け起訴状記載の公訴事実】
 平成28年10月29日午前0時32分頃,「△△△△△△」を介して購入を申し込んだ不特定の者であるbに対し,同月31日,女性器を撮影記録したわいせつな電磁的記録に係る記録媒体である「◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇」と題するDVD1枚を東京都渋谷区α□丁目□□番□号cビル□◆にある「△△△△△△」事務所兼撮影スタジオ(以下「東京撮影スタジオ」という。)から宅配便で発送し,同年11月1日,兵庫県伊丹市β□丁目□□番地d□□□号室にあるb方に到着させ,その頃,同所において,これをbに受領させて,代金合計20万7750円(ただし,前記DVD1枚及びこれと同時に販売されたDVD20枚並びに送料750円の合計額)で販売して頒布した。
2【平成29年7月12日付け起訴状記載の公訴事実第3】
 「△△△△△△」で有償頒布する目的で,平成29年5月15日,別紙1の一覧表記載のとおり,大阪市γ区δ□番□□号e□□□□号室ほか4か所において,女性器を撮影記録したわいせつな電磁的記録に係る記録媒体である「◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇」と題するDVD合計698枚を所持した。
第2【平成29年7月12日付け起訴状記載の公訴事実第1】
 平成26年7月19日午前8時18分頃,東京撮影スタジオにおいて,成人男性向けDVDの出演者として性交等をさせる目的で,コスプレモデル募集サイトを介して応募してきた別紙2記載のC(当時18歳)と面接し,撮影承諾の確認書に氏名,生年月日等を書かせるなどして成人男性向けDVDのモデルとして出演するよう勧誘し,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行った。
第3【平成29年7月12日付け起訴状記載の公訴事実第2】
 平成26年7月19日午後7時23分頃,東京撮影スタジオにおいて,Cに対し,前記第2記載の確認書に「実技エッチも私の意志でしました。」との文言を書き入れさせようとして,顔を近づけてCに対し,「書かないと帰せないよ。」などと強い口調で言って脅迫し,これに応じなければCの自由に害を加える旨告知してCを畏怖させ,よって,その頃,同所において,Cに,前記確認書に前記文言を書き入れさせ,もって人に義務のないことを行わせた。
第4【平成29年6月19日付け起訴状記載の公訴事実第1】
 平成26年11月2日,大阪市γ区δ□番□□号e□□□□号室にある被告人の撮影スタジオ(以下「大阪撮影スタジオ」という。)において,前記第2記載の目的で,コスプレモデル募集サイトを介して応募してきた別紙2記載のA(当時18歳)と面接し,Aを説得して撮影承諾の確認書に「実技エッチもあることを確認しました。」と書かせるなどして成人男性向けDVDのモデルとして出演するよう勧誘し,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行った。
第5【平成29年6月19日付け起訴状記載の公訴事実第2】
 平成28年1月9日,大阪撮影スタジオにおいて,前記第2記載の目的で,コスプレモデル募集サイトを介して応募してきた別紙2記載のB(当時18歳)と面接し,Bに対し,「ほんの少しだけ露出はあるよ。特定の人にしか見られることはないから大丈夫だよ。」などと言って成人男性向けDVDのモデルとして出演するよう勧誘し,もって公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行った。
[証拠の標目]《略》
[法令の適用]
罰条
判示第1の1,2の各所為
包括して刑法175条1項前段,2項
判示第2,第4,第5の各所為
いずれも職業安定法63条2号
判示第3の所為 刑法223条1項
刑種の選択
判示第1の罪 懲役刑及び罰金刑を選択
判示第2,第4,第5の各罪
いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段
懲役刑につき 刑法47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
罰金刑につき 刑法48条1項
労役場留置 刑法18条(金5000円を1日に換算)
刑の全部執行猶予
懲役刑につき 刑法25条1項(5年間)
保護観察 刑法25条の2第1項前段
[量刑の理由]
1 本件は,若い女性の映像が記録された成人男性向けDVDの制作・販売を行っていた被告人が,わいせつDVDを販売目的で所持して(判示第1の2),現に販売するとともに(判示第1の1),性交等をする映像の撮影のため,当時18歳の女性3名を出演者として勧誘したというものであり(判示第2,第4,第5),いずれも,常習的かつ職業的な犯行である。また,被告人は,前記女性のうち1名に対し,撮影中止後に自らの意思でわいせつ行為の撮影に応じた旨の文言を撮影承諾の確認書に記載することを強要しており(判示第3),これも各犯行の一環として行われたものといえる。
2(1)まず,わいせつDVDの販売・所持の点について,被告人は,常習的かつ職業的に行っていたわいせつDVDの販売により経済的利益を得る目的で,日本国内の5か所において,合計約700枚ものわいせつDVDを所持していたのであって,これが販売された場合には我が国の健全な性的秩序を害する程度は大きかったものといえるし,現に,同時に販売された複数のDVDの中の1枚とはいえ,女性器の映像を含むわいせつ映像が記録されたDVDを注文に応じて販売してもいる。
 次に,DVDの出演者を勧誘したという職業安定法違反の点についてみると,被告人は,成人男性向けDVDを制作・販売して利益を得るために女性の出演者を確保することが不可欠であったことから,コスプレモデルの仕事であるかのように装ったウェブサイト等を用いて募集し,女性が応募してくると,撮影のため美容院でヘアセットをさせてその代金を被告人が支払ったり,撮影用のスタジオに連れて行って,個室で二人きりになり,女性に身分証を持たせて写真を撮影したりするなどして,容易に断れない状況を作り出した上,撮影内容を明確に説明しないまま,撮影承諾の確認書に署名させるなどし,DVDの撮影に際し性交等をする意思などなかった女性を勧誘したものであって,その態様は巧妙で悪質である。また,被告人は勧誘した女性を相手に映像を撮影するに際し,上半身裸の姿態を取らせたり,男性器をなめさせたり,1名には性交までさせているのであって,その業務の有害性も高いといわざるを得ない。
 さらに,強要の点については,被告人は,わいせつ行為を撮影中にCが泣き出したことから撮影を中止し,後から無理やりわいせつな行為をさせられたなどと言われることを恐れて犯行に及んだもので,誠に身勝手な犯行である。また,被告人は,Cに顔を近づけて強い口調で帰宅させないなどと脅迫したものであり,Cが当時置かれていた状況に鑑みても,Cの精神的苦痛は相応に大きいものといえる。
(2)ところで,本件で量刑の中心となるのは職業安定法違反の犯行であるところ,同犯行に際して,被告人の行った行為は,年若い女性の思慮の浅さに乗じ,わいせつな行為をするDVDに出演せざるを得ないような状況に追い込んだ上,現にわいせつな行為をさせて撮影するというものであって,卑劣で悪質なものといわざるを得ない。もっとも,職業安定法63条2号違反の犯行は,3名の女性に対する有害業務への勧誘を犯罪事実とするものであるところ,もとより同号の構成要件それ自体は,その意思に反して無理やり労働者を募集することを処罰しようとするものではなく,本件各公訴事実において明示されている犯罪行為も,女性と面接して撮影承諾の確認書に署名させるとか,口頭で説得するといった行為にとどまる。また,強要の犯行についても,前記のとおり,撮影後に書面に文言を記載することを強要したものであり,わいせつDVDに出演することを強要したものではない。そうすると,女性の本意に反してわいせつな行為を行わせて撮影したという点や,そのことにより生じた精神的苦痛等を量刑上過度に重視するとなれば,起訴されていない事実を処罰することにもなりかねないことに留意しなければならない。
(3)以上の犯情に関する事実によれば,本件は,職業安定法違反の罪の中では悪質な部類に属するものではあるが,執行猶予を付す余地もある事案である。
3 そして,その他の情状に関する事実をみると,被告人は,平成24年3月に,18歳未満の児童に対し,性交等をしたり,児童ポルノを製造したりしたとして,懲役3年,5年間執行猶予の有罪判決の宣告を受けているところ,同年10月頃から,18歳未満の児童は勧誘しないようには注意を払いながら,わいせつDVD等の制作・販売及びそのための出演者を勧誘することを再開して,執行猶予期間の満了前に各犯行(判示第1の2を除く。)を行っており,被告人にはこの種事犯に対する親和性が認められ,DVDの制作・販売に助力していた知人から援助を受けるなどして再び同種犯行に及ぶおそれも否定できない。
 しかしながら、他方で,被告人は,Cに対して強要行為の慰謝料名目で20万円を支払っていること,各犯行を一貫して素直に認めており,当公判廷においても,今後は,出演女性の年齢にかかわらずアダルト映像の撮影は二度と行わない旨誓約して,反省の態度を示していることなど,被告人にとって有利に考慮できる事情も認められる。
4 以上によれば,被告人を直ちに実刑に処すには躊躇を覚えるものであり,その懲役刑の全部の執行を猶予して,社会内で更生する最後の機会を与えるのが相当であると判断した。もっとも,前記の犯情の悪質さや再犯のおそれも否定できないことなどから,主刑及び猶予期間は最長とし,その猶予の期間中,保護観察に付することとした。 
(検察官の求刑:懲役3年及び罰金30万円,弁護人の科刑意見:執行猶予付き判決)
平成29年10月25日
大阪地方裁判所第6刑事部
裁判長裁判官 松田道別 裁判官 海瀬弘章 裁判官 馬場梨代

別紙1
番号 場所                    枚数
1  大阪市γ区δ□番□□号e□□□□号室    26
2  東京都渋谷区α□丁目□□番□号cビル□◆  28
3  同区ε×番××号f荘×××号室       619
4  名古屋市ζ区η×丁目×番××号g×××号室 12
5  福岡市θ区κ×丁目×番××号h××××号室 13
合計枚数                     698
別紙2
A i
B j
C k
以上

親族間の強制わいせつ事件につき「被害者が家族とともに身を寄せた際の犯行で、弁護人でさえ弁護の言葉を失う事案だ」という弁護人の弁論(福岡地裁H30.4.23)

 弁護人が弁論でこんなこと主張したらだめですよ。弁護人だから。
 乳房もむという1回性の強制わいせつ罪では実刑になることはないので、反省とか二度と接しないとか謝罪とか社会的制裁とか勾留中に反省深めたとか、常習性ないとか、量刑相場とか一般情状を連ねて適当に弁論しておいてください。
 犯情が最悪の監護者わいせつ罪が分離しましたので、監護者でない場合の量刑相場はちょっと下がります。
 「強制わいせつ罪の最悪の態様は陰茎を陰部に押しつけるとかですが、それほどではない」とかも使えます。

司法研修所編 平成29年版 刑事弁護実務
2 弁論において陳述すべき内容
弁論の内容は,大きく言えば,検察官の主張及び被告人に不利益な証拠を弾劾する部分と,被告人の言い分を積極的に主張する部分とに分けられる。
論告,弁論は,公判の最終局面において,争点に関し検察官と弁護人とが立証活動の攻防を尽くした結果を踏まえてなされるものであるから,検察官は,論告で,争点に関し,証拠の評価に基づく事実認定上の主張及び法律上の主張をし,情状及び求刑に関する意見を述べる。
これに対し,弁論は,検察官の論告に対応した形で,争点につき,事実に関する主張,法律上の主張,情状及び量刑に関する主張をすることになる。
弁論は,無罪を主張するなど公訴事実を争う事件,公訴事実は争わず情状のみが争点となる事件のいずれであっても,弁護人として検察官とは異なる視点から,取調べ済みの証拠を十分に精査検討し,検察官の論告を論破する内容を目指すべきである。
説得力のある弁論にするためには,いたずらに微細な事実問題や採用の可能性のほとんどない法律問題まで挙げて,間口広く問題点を羅列して論ずるよりも,審理の結果明らかになった事件の特質と争点を中心テーマに据え,これを重点的に深く掘り下げて論じた方がよい。
なお,弁論要旨を作成するに当たっては,被告人とも十分に打合せをし,その意見も取り入れたものとすべきである。
・・・・-
情状弁論
情状弁論は,公訴事実を争わず専ら情状のみを争点とする事件の場合のほか,例えば殺人の公訴事実に対し殺意を否定し傷害致死又は過失致死を主張したり,強盗の公訴事実に対し強盗の犯意を否定し恐喝又は窃盗を主張したりする場合(いわゆる「認定落ち事案」)に,被告人・弁護人が主張する罪名事実を前提としたうえで行うことになる。
ァ情状の意義
情状とは,広く量刑の基礎となる事実をいい,犯罪事実に属するもの(犯罪情状事実あるいは犯情ともいわれる。
なお,犯罪事実のことを「罪体」と呼ぶこともある。)と犯罪事実に属さないもの( 一般情状事実あるいは狭義の情状ともいわれる。) に分けることができる。
犯情事実がより重視されるべきであるが,一般情状事実も軽視することは許されない。
情状の弁論において重要なことは,被告人・弁護人の立場から,検察官が軽視しがちな事件の背景・原因の深層に立ち入り,その点に光を当て,真の動機,原因を明らかにして,裁判所に対し,事件についての視点の転換をさせ,適正妥当な処罰がなされるよう求めることにある。
そのためには,当該事件を分析したうえ,客観的事実に基づき,論理的かつ説得力ある主張をなすべきである。
なお,情状に関する立証活動については,203ページ参照。
イ犯情事実
 刑の量定に当たって考慮されるべき犯罪事実とは,犯罪構成要件に該当する具体的事実にとどまらず,①犯行に至る経緯,犯行の動機,目的あるいは誘因,事件の社会的背景事情,②計画性犯行か偶発的犯行か,③犯行の手段,方法,態様,④結果発生の有無,程度,⑤被害回復の有無,⑥共犯事件の場合の主従関係,役割分担,犯罪利益享受の有無・程度,⑦被害者側の落度又は事情の有無(帰責性),⑧犯罪直後の被告人の言動,その他犯行後の状況,⑨事件の社会に対する影響,などの事情を含んだ広い意味での犯罪事実であり,これが犯情事実である。
刑の量定においては,犯情事実が第一次的な重要性をもつ。
ウ一般情状
事実一般情状事実には,①被告人の年齢,②学歴,経歴その他生活歴,③性格,健康状態,④職業の有無及び地位・収入・資産,⑤日頃の勤務状況,⑥日頃の生活状況,⑦家庭その他の環境,⑧保護監督者の有無,⑨前科前歴,非行歴の有無,特に同種前科前歴の有無,⑩粗暴癖,盗癖,酒癖,薬物依存傾向,性犯罪傾向等の性癖の有無・程度,⑪遵法精神の有無,⑫反省の有無,⑬被害者への謝罪の意思と被害弁償の努力,⑭示談の成立と被害者の宥恕,⑮蹟罪の寄付,⑯家族,雇主の監督誓約の有無,⑰長期間の勾留による事実上の制裁の有無,⑱職場の解雇,会社の倒産,社会的信用の失墜等による社会的制裁の有無,⑲生活環境の整備,改善,⑳社会事情の推移,⑳関連法規の変動,⑳再犯の可能性ないし更生の可能性の有無,⑳その他被告人に有利なあらゆる事情が挙げられる。
(3)量刑についての意見
有罪を前提とした弁論をする場合には, 最後に量刑についての意見を述べる。
刑の執行猶予が法律上可能で被告人・弁護人が執行猶予を求めている場合に「執行猶予付きの判決が相当である。」と述べ,刑の執行猶予が法律上不可能な場合又は事件の特質から実刑を免れない場合には,弁護人が適当と判断する求刑意見を述べることとなる。
裁判員裁判対象事件においては,裁判所の量刑検索システムを利用して, 量刑分布グラフの入手が可能であるので, これを利用する。
また, 裁判員裁判対象以外の事件においては, 弁護士会等が作成する各種量刑資料等を参考にしながら, 自ら適当と判断する求刑意見を述べることとなる。
また,検察官の求刑が重すぎて不相当である場合や求刑が法に違反している場合には,積極的にこれに対する反論を述べることも必要である。

記者有情:最終弁論 /福岡
2018.04.28 毎日新聞
 「被害者が家族とともに身を寄せた際の犯行で、弁護人でさえ弁護の言葉を失う事案だ」。熊本地震で自宅に避難してきた親戚の少女にわいせつ行為をしたとして、強制わいせつ罪に問われた男の最終弁論。通常は情状酌量を求める場面だが、弁護人は男を厳しく非難した。
 動機を聞かれた男は「妻との会話が減り、ストレスがたまっていた」。裁判官に「つらい状況に追い打ちをかけると思わなかったか」と問われ、「(自分は)最低です」とうなだれた。
 少女は「言い出せば自分だけでなく家族も追い出されると思った」と語ったという。災害のたびに避難者の性的被害が問
 題となってきた。避難者を守る意識を社会で高めることが求められている。【平川昌範】
〔福岡都市圏版〕

地震避難の少女にわいせつ行為 親戚の男に有罪判決 福岡地裁 平成28年熊本地震
2018.04.24 熊本日日新聞
 熊本地震で自宅に避難してきた、当時13歳の親戚の少女にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ罪に問われた男に、福岡地裁は23日、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑懲役2年6月)の判決を言い渡した。
 岩田淳之裁判官は判決理由で、寝ようとしていた少女が体の向きを変えるなどして抵抗したのに男がわいせつ行為を続けたと指摘。「犯行態様は屈辱的で悪質。少女は精神科への通院も強いられた」と非難した。一方、男が罪を認め、二度と会わないと約束した点を考慮し、執行猶予とした。


 判決によると、男は「本震」が発生した2016年4月16日の深夜から翌17日未明にかけて、福岡県内の自宅に避難してきた少女の胸をもむなどした。


 福岡地裁は、少女の特定につながる恐れがあるとして、男の氏名や年齢を伏せて審理を進めた。

熊本地震:避難少女にわいせつ 受け入れ宅の男 福岡地裁公判
2018.04.17 毎日新聞社
 熊本地震で避難してきた親戚の少女(当時10代前半)にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつの罪で起訴された福岡県内の男の初公判が16日、福岡地裁(岩田淳之裁判官)であり、男は起訴内容を認めた。検察側は「震災で避難せざるを得ない状況を奇貨とした犯行は悪質で卑劣」と批判し、懲役2年6月を求刑。23日に判決が言い渡される。

 起訴状などによると、男は2016年4月の熊本地震直後、男の家に家族で身を寄せていた少女が就寝中にわいせつな行為をしたとされる。福岡地裁は被害者の特定を避けるため、男の氏名や年齢を明らかにしない決定をしている。

 少女が被害を申し出たのは約1年後の17年3月で「言い出せば家族も追い出されると思って我慢した。でも、このままでは他の子にも手を出すと思った」と話しているという。

 検察側によると、少女は被害後、病院で重度のストレス反応があると診断された。「信頼できる親戚から被害を受け、つらかった」と話している。【平川昌範】

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 ◇災害時高まる 性被害リスク

 熊本県警によると、熊本地震では避難所やその周辺で女児がつきまとわれる事案が、地震があった2016年度だけで約10件あった。だが県外の避難先なども含めた被害の実態は分かっていない。そもそも被害を届け出ないケースも多いとみられる。

 熊本地震当時、避難所での性被害の相談先などをまとめたチラシを作った藤井宥貴子さん(現くまもと県民交流館パレア館長)は「避難者の立場は弱く、『自分さえ我慢すればいい』と思う人もいる」と話す。熊本地震で女性からの被害相談を受け付けてきた郷田真樹弁護士(福岡県弁護士会)も「避難先での被害申告は言い出しづらく、表に出ない被害が多い。相談しやすい環境作りが重要だ」と語った。【平川昌範】

変質者、若しくは異常性癖者といった目では接しないようにします。~取調べ・職質に使えるヒント集 -

 昨日も、突きつけられて自白しました。

取調べ・職質に使えるヒント集 - (著)江崎澄孝
Q性関連犯罪被疑者との接し方
わいせつ事犯は、I C T (インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジ一)の進化とともに増加し、その手口も巧妙になっているように思えます。例えば、小型化されたビデオ器材やスマートフォンを用いた盗撮、インターネットを活用した画像や動画アップ、そして、違法わいせつDVD類の販売です。
また、これらの被疑者には収集癖があり、多数の画像や動画がパソコン等に収集され、捜索によってはそれらを発見できます。こうした証拠を取調べに活用するには、どんな方法が考えられますか。

A
証拠を活用するとき、取調官は被疑者の扱いに注意した方がよいでしょう。少なくとも、変質者、若しくは異常性癖者といった目では接しないようにします。これはつまり、被疑者の差恥心を、過度に刺激しないことを意味します。
性的欲望を満たすために行った行為とはいえ、被疑者の多くは、それが「道徳的に許されない行為」だという認識を持っています。そこを強く追及すれば、罪を認めようとはしなくなります。
たとえ、証拠があるとしても、なかなか罪を認めようとはしないでしょう。
そこで、証拠を提示するのであれば、押収品の中から、あまり刺激が強くない写真や映像を選んで用います。被疑者が感じる恥や、反道徳性という部分を軽減させるためです。
取調官は、ことばを慎重に選んで、被疑者に接するようにします。被疑者の中には、成人女性だけを狙うとは限らず、小児性愛や同性愛を好む被疑者もいるからです。
 被疑者を、「異常な行為」をする相手だとして取調官が接すれば、被疑者は敏感に察知し、取調べがうまく進まなくなります。
なかでも、証拠を突きつけて被疑者を責め、被害者の気持ちを代弁する方法は、効果的とはいえません。「こんな写真揖りやがって。被害者の気持ちを考えてみろ」と諭したところで、あまり効果はありません。
「すみません」と、被疑者はうわべでは謝るでしょう。しかし、性的欲望や興奮は、そう簡単に断ち切れるものではありません。
証拠を見せるのであれば、被疑者の行為を非難せず理解を示します。
例えば、「ooさん、自分の興味はおかしい、変だと、もし考えているようなら、それはどうかな。その上で聞きたいんだが・…」と説得する方が現実的です。
若しくは、被疑者が好む対象について、「君にはちょっと刺激が強すぎた。それで、つい興奮してしまったんじゃないのかい?」という言い方もできます。
取調官の価値観や感情に流されることなく、受容や共感を示した上で、証拠をうまく活用するのがよいでしょう。

青少年条例違反(わいせつ行為)の無罪事例(静岡地裁h30.3.19)

静岡地方裁判所平成30年03月19日
上記の者に対する静岡県青少年のための良好な環境整備に関する条例違反被告事件について、当裁判所は、検察官香西祐子、同河上晴香及び私選弁護人(主任)諏訪部史人、同佐野雅則、同若狹秀和、同梅田英樹出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人は無罪。
理由
第1 公訴事実及び争点
  本件公訴事実は、「被告人は、D美術館で開催された粘土教室のインストラクターをしていたものであるが、職場体験として前記粘土教室に参加していたAが18歳未満であることを知りながら 
第1 平成28年8月23日午後1時頃から同日午後3時頃までの間に、(住所略)所在のD美術館実技室において、前記Aの臀部を着衣の上から手で触り、さらに床上に仰向けに横になった同人の身体の上に粘土で制作した水着様のものを飾り付けるのに乗じて、着衣の上から同人の陰部を手指で弄ぶなどし 
第2 同月24日午後1時頃から同日午後3時頃までの間に、同所において、前記Aの臀部を着衣の上から手で触り、さらに床上に仰向けに横になった同人の身体の上に粘土で制作した水着様のものを飾り付けるのに乗じて、着衣の上から同人の陰部を手指で弄ぶなどし、もって青少年に対し、わいせつな行為をしたものである。」というものである。
  これに対し、被告人は、いずれの事実についてもそのようなことをした覚えはない旨述べ、弁護人も、これに沿い、各公訴事実記載の被告人の各行為の存否を争うとともに、仮に被告人のAに対する接触行為があったとしても、わいせつ目的はないとして、被告人の無罪を主張している。

第2 当裁判所の判断
 1 当裁判所は、各公訴事実記載の日時、場所において、被告人がいずれも着衣の上からAの臀部付近及び陰部付近を手で触れたことなどは認められるものの、被告人がこれらの行為のわいせつ性を認識していたとまでは認められないと判断した。以下その理由を説明する。
 2 関係証拠によれば、前提として以下の事実が認められ、これらの事実については、概ね当事者間に争いがない。
  (1) 粘土教室は、前記美術館の実技室で不定期に開催されている、子供たちにストーリー展開に沿って粘土を使った作品を制作させ、粘土の重さ等を手や身体で体感させることを内容とする企画であり、平成28年8月23日及び翌24日は、両日とも、夏休みの旅行というテーマで、乗り物のプログラム、粘土服のプログラム、街作りのプログラムという3つのプログラムが行なわれた。
  (2) 被告人は、インストラクターとして、両日の午後1時から午後2時50分までの粘土教室(以下、23日午後の教室を「1日目」と、24日午後の教室を「2日目」という。)を担当し、Aは、通学先の中学校の職場体験学習の一環として、同級生のB及びCとともに、これらの粘土教室に参加した。
  (3) 粘土教室には、通常、前記美術館側のスタッフとして、インストラクター1名のほか助手数名が参加し、参加者側として、子供とその引率者が参加しており、被告人とA、B、Cのほかに、1日目は、助手3名、ボランティア1名、小学1年生から5年生までの52名及び引率者5名が、2日目は、助手3名、ボランティア1名、小学1年生から6年生までの46名及び引率者3名が参加していた。
  (4) 粘土教室では、通常、インストラクターが、実技室の前方中央にある椅子の付近で、参加者に対して作業内容の説明や実演を繰り返しながら進行管理を行うほか、説明や実演の合間に参加者の間を巡回して参加者の作品制作の補助を行い、助手は、参加者の合間に散らばり、参加者の作品制作の補助や粘土の補充などを行い、参加者である子供たちは、実技室内に散らばって、各所で各自作品の制作作業などを行い、引率者は、助手と同様に子供たちの合間に散らばり、子供たちの作品制作の補助を行っていた。
  (5) 実技室は、前記美術館の1階にあり、部屋の大きさは、東西に約11.4メートル、南北に約9メートルであり、西側は通路に、東側は中庭に面しており、実技室の前方となる南側には、粘土準備室(東側)と備品倉庫(西側)が併設されている。
  (6) A及びB、Cは、1日目、2日目の粘土教室の際には、いずれも実技室の前方通路側で、参加者である子どもたちと同じように粘土での作品の制作作業などを行った。
 3(1) そして、Aは、公判及び期日外証人尋問調書において、1日目及び2日目に被害に遭った状況について、要旨以下のとおり供述する。
  1日目は、粘土教室の準備として粘土準備室から実技室へ粘土を運び入れるのを手伝った。列に並んで、一番前にいた被告人から粘土を受け取ったが、左斜め前にいた被告人から自分が両手で粘土を受け取る際、被告人が粘土から手を放したときにその手の甲が自分の胸に当たった。粘土を渡す拍子に手が当たってしまっただけなのか、故意にやったのか、そのときには判断できなかった。この日の教室のときは、自分は、上が体操服で、下がハーフパンツの服装だった。乗り物のプログラムでは、一人一人粘土で乗り物を作り、作った乗り物に乗り、それを順次半分にして乗ることを繰り返し、乗り物が4分の1の大きさになったとき、乗り物が小さく片足しか乗らず、乗り物に左足を乗せ、右足を床につけて立っていたところ、右斜め後ろから被告人が来て、「ちゃんと乗らなきゃだめだよ。」と言いながら、右側のお尻を片手で下から支えるようにぐっと持ち上げる感じで10秒弱触った。次に粘土服のプログラムになり、B、Cと3人でグループになって、1人が床に仰向けに寝て粘土で作った服を着せられる側になり、後の2人が粘土で服を作る側になった。最初に自分が服を着せられる側になっていたところ、被告人が来て、粘土でビキニを作ってそれを自分の体の上に載せてきた。ビキニは、ブラトップとパンツに分かれているものであり、被告人が、ブラトップを自分の胸の上に載せた後、その形を整えるときに、粘土越しや服の上から被告人の手が自分の胸に当たるのを感じた。また、被告人は、パンツの部分を自分の下腹部に載せてきたが、被告人が自分の体に粘土を置いて粘土から手を離す間に、自分の陰部に被告人の指の腹の部分が床から上に動くのを何回か感じた。時間的には10秒はないくらいだった。その後、街作りのプログラムをして粘土教室は終了したが、終了後中庭で足を洗おうとしていたところ、ホースを持った被告人が、自分の膝から下の部分を手でこすって洗ってきた。
  帰宅後、母にその日にあったことを話したが、陰部を触られたということだけは自分の勘違いだったらというのもあり、なかなか言いづらい話だったので、言えなかった。母からは、また粘土教室があるようだったらそのときは具合が悪くなったなどと理由をつけて途中で帰ってくるように言われた。
  2日目の教室は、昼休みが終わる5分ほど前に参加することが分かり、気分が悪いというのも通じないかと思い参加することにした。この日の教室のときは、自分は、上がTシャツ、下がジーンズの服装だった。乗り物のプログラムでは、B、Cと3人で1つの大きな乗り物を作ってその上に乗っていたが、4分の1になると3人で乗るには小さくなり、左からC、B、自分の順番でほぼ横一列に並んで乗るような形で、前日と同じように自分が片足が出た状態で乗っていたところ、被告人が右斜め後ろから来て、前日と同じようにちゃんと乗らなきゃだめだよというようなことを言いながら、右側から片手でお尻を持たれるようにして触られた。次の粘土服のプログラムでは、B、Cと3人で作業をすることにし、最初にCが寝て、自分とBで粘土服を作ろうとしていたところ、被告人が来て加わった。最初にCに粘土服を作って載せ、次の人に替わるときに、自分がBに先にやっていいよと言ったところ、被告人が、リーダーなのに逃げるのかというようなことを言って、自分もBと同時に床に寝て粘土服を載せられる側になった。自分は被告人に、BはCに粘土服を載せられることになった。被告人は、最初にCに載せていたスカートを自分に載せてきた。その際、被告人に粘土が少し割れているのをセクシーだねと言われ、気持ち悪かった。その後、被告人は、ビキニのブラトップを作って胸の上に載せてきた。さらに、被告人は、下もビキニにしないとねと言い、スカートの方の粘土でパンツを作って載せてきた。パンツを載せる際に、被告人は、前日と同じように、指の腹で下から上に数回陰部に触れた。時間的には10秒弱だと思う。その後、被告人にビキニの上部分にひもと飾りを付けられたが、ひもを付けるときに、両脇に手が入り、飾りを付けるときに胸に被告人の両手の甲が当たった。粘土服のプログラムを終わることを被告人が言ったところ、小学生からもうちょっとやりたいという声があり、被告人は30秒くらい延長すると言った。自分は早く粘土服をとりたかったので、起き上がって粘土を外していたところ、被告人が戻ってきて、まだだめだよと言い、自分の肩を押さえてもう1回床に寝かせられ、外した粘土をもう1回載せられた。被告人は、ビキニの下の部分を載せるときに、前日とか前と同じように指の腹で下から上に3、4回くらい陰部に触れた。10秒ないくらいの時間だった。普段ないことが2日連続であって、ものすごく怖かった。街作りのプログラムでは、建物を作っているときに、自分が膝を崩して床に座っていたところ、被告人が自分の膝の上に手を置き、制作の様子を尋ねるような感じで、話し掛けてきた。そこに手を置く必要性はなく、少し気分が悪かったので、膝を動かして手を払った。粘土教室終了後に、被告人から担当しているワークショップのちらしのようなものを渡されたが、その際も1日目の粘土を渡す作業のときのように被告人の手の甲が自分の胸に触った。すごく驚き、怖かった。
  家に帰り、泣きながら、陰部の話を含めて母親に話した。1日目のことだけでは、わざとかどうか、まだ確信し切れない部分もあったが、2日目も同じようなことが続いたので、故意にやっていると確信が持てたことと3日目は行く気分ではなかったので、母親に話をしようと思った。その後、8月25日に、母親に付き添ってもらい、学校の先生に事件の話をした。自分は泣いてしまって話せる状態ではなく、母親が自分から聞いた話を学校の先生に説明してくれた。その後、9月の初めに、母親と共に警察に行って事件の話をした。やはり自分は泣いてしまって話ができず、母親が警察官に説明してくれた。
  (2) Aは、被告人と本件以前に面識はなく、性的被害に遭ったという口外することに羞恥心を感じるような事柄について、敢えて虚偽の被害を作出して被告人を陥れるような理由は考え難い。また、被害に遭ったことを一日目、二日目とも母親に打ち明けたことは、母親の公判供述の内容と符合しており、さらに、被告人が、3人で粘土の乗り物に乗っているA、B、Cの背後の方から近づいて声を掛けたこと、粘土服のプログラムで2人ずつのペアに分かれた際に、被告人が「リーダーが逃げちゃだめだ。」などと言ったこと、被告人が粘土でビキニを作ってAの体の上に載せたこと、1日目の粘土教室終了後、中庭で足を洗おうとしていたAらに対し、ホースを持った被告人が、膝から下の部分を直接手でこすって洗ったことについては、BやCの各公判供述の内容とも整合している。
  以上からすると、Aの供述は、基本的に信用することができ、特に母親やB、Cの公判供述と合致する部分の信用性は高いといえる。
  しかし一方、臀部や陰部に触られた状況に関するAの供述は、Aが目で見て確認した内容ではなく、専ら触られたというAの感触に基づく供述である上、付近にいたB、Cもこれを目撃した記憶がないと供述しており、これを裏付ける客観的証拠もない。また、1日目と2日目とではAの服装が異なり、2日目は下にジーンズをはいていたというのに、陰部に触られた感触が両日とも全く同じという点において、内容的にやや不自然な面も見られる。さらに、Aに殊更に虚偽を述べる理由はないものの、母親に被害に遭ったことを打ち明け、その後母親と共に学校に行って母親に被害の状況を説明してもらい、さらに母親と相談して9月2日に母親と共に警察に行き、母親に被害の状況を説明してもらったという被害申告の状況や経緯に照らすと、捜査機関における事情聴取の過程で被害に遭ったことを明確に説明するために被害の状況が誇張して述べられるようになったおそれのあることは否定できない。
  そうすると、臀部や陰部に触られた状況に関するAの供述の信用性については、より慎重な判断を要する。
  (3) そこでまず、1日目及び2日目の各乗り物のプログラムの際に、それぞれ被告人に臀部を触られた旨のAの供述の信用性について検討する。Aは、粘土の上に左足を乗せ、床につけていたほうの右足の右側のお尻を支えられるように持ち上げられた旨述べており、被告人がその際様子を見に近づいてきたことについては、B、Cの公判供述とも整合していることからすると、その際に臀部を触られた旨のAの供述は、被告人の行動に結びついた動きとして自然な内容であるといえ、その信用性は高いと考えられる。
  (4) 次に、粘土服のプログラムにおいて、被告人に陰部を触られた状況に関するAの供述の信用性について検討する。
  ア まず、Aから被害の状況を聞いたというAの母親は、公判において、要旨以下のとおり供述する。
  8月24日に、Aは、ビキニの下の部分を載せるときに下腹部を触られたということを言った。Aは、最初に足と足の間に手を入れられたと言ったような気がする。嫌悪感が顔に出ていたので、こういう言葉は聞きたくないと思うし、自分も口にもしたくない不愉快な言葉だけれども、我慢して、はっきり聞かなければいけないなどと言って、そこはお股なのと確認したところ、Aはそうだと答えた。主人とも相談して、Aには陰部と言えばよいと教えた。1日目にその話を聞いていたら2日目には職場体験にはやらなかったとAに言ったので、1日目には下腹部の話はしていないと思う。足と足の間を触られたのは、8月23日と8月24日の両方あったという話だった。学校に職場体験に行かせない欠席の理由をいうのに、メモを取ることにした。Aに思い出せる限り正確に、順を追って話をするように言って、メモを取った。8月25日、Aに付き添って2人で学校に行き、担任の先生と記録を取る先生の2人の前で話をしたが、Aはほとんど口をきくことができず、ひたすら泣いていたので、ほとんど自分が話をした。できるだけ正確に話を伝えようと思い、メモを見ながら話をした。当初は警察に行くつもりはなかったが、2日間にわたる執拗な痴漢行為だったので、これを黙っているのはおかしいのではないか、犯罪としてちゃんと表に出すべきではないかと途中から思い始め、Aも自分も行く、行ったほうがいいと思うと言い、最終的にはAの決断で、9月2日に警察に行くことになった。警察に話すときにはいい加減なことを言ってはいけないと思い、前に書いたメモを見ながら、日付を23日と24日に真ん中で分けてメモを書き直した。Aにも、内容に違いがあるといけないので、一応確認して欲しいと言って読んでもらった。確認後修正点や追加点は特になかったと思う。24日に陰部を触られたとき、被告人が水着の下の部分を置くときに、どうやったら触れるのかということをAに聞いたところ、左手で右腰の方、右手で陰部に当たる部分を持って、Aの下腹部に載せたときに、すっと陰部を触っていったという話だった。目で確認はしていないけれども、触られた皮膚感覚でそう思ったという話だった。2日目に30秒延長があった後にもさらに陰部を触られたという被害については、聞いていないと思うが、はっきり覚えていない。9月2日の警察での被害状況の聞取りも、Aと自分の2人で行き、Aが話せる状態ではなかったので、自分が書き直したメモの方を机の上に出して説明した。
  イ Aの母親の上記供述は、学校に説明する際と警察に説明する際にそれぞれ作成したとされるメモ(甲26、27(公判後に修正))によって裏付けられている上、後記のとおり、信用性の認められる警察官E(以下「E」という。)の公判供述の内容とも概ね整合しており、十分信用することができる。
  ウ 次に、Aの母親及びAから9月2日に被害の状況を聞き取ったというEは、公判において要旨以下のとおり供述する。
  Aの母親が実際に話をし、Aはお母さんの後ろに座って、うつむき、時々泣くような状態だった。母親は、Aから聞いた内容を書いたメモを持参して、それを見ながら話をしていた。自分も途中まで手書きのメモを取ったが、母親が持参したメモがあったので、後からコピーを取らせてもらえれば内容としては足りると思い、途中でメモを取るのをやめた。下半身の触られ方についても、確認はしていると思うが、母親自体余りよく分かっていない状態であり、Aの状態も考えて、Aから詳しく聞くことはしなかった。聴取後に、自分の手書きのメモと母親が持参したメモをコピーしたものと自分の記憶に基づいて、係長への報告用のメモを作成した。報告用のメモには、1日目の出来事として、〈1〉「粘土を被害者の股に置く際、置いた後、手を抜くとき股に手の甲が触れるような行為があった」という記載と、2日目の出来事として、〈2〉「昨日と同様下腹部を触るような行為があった。」という記載があるが、意味としては同じ行為である。〈1〉の記載は、「ねんどをのせるさいに下半身をさわる」と書いてあった自分の手書きのメモと「足の間」「に手を入れる」という母親のメモがあったので、粘土を手のひらにおいてただAの下腹部に載せたとすると股は触れないので、手を股の方にずらして手を抜く際に股を触っていくというような状態かと思い、そのような書き方になったが、母親は触り方について手の甲とは言っていなかったと思う。一番最初に粘土を渡すときに手の甲でという話があったので、それが自分の考えとして残っていたのだと思う。
  エ Eに殊更に虚偽を述べるような理由は見当たらない上、上記公判供述の内容は、Aの母親の前記公判供述の内容と概ね整合しており、基本的に信用することができる。
  オ そこで、粘土服のプログラムにおいて、被告人に陰部を触られた状況に関するAの供述とAの母親及びEの各公判供述の内容との整合性についてみる。
  前記のとおり、Aは、証人尋問において、〈1〉1日目及び2日目とも、被告人が、ビキニのパンツの部分を自分の下腹部に載せる際に、10秒弱くらい、指の腹で下から上に数回陰部に触れた旨述べ、触られた指の感触や動き、その回数、触られた時間について具体的に供述しているのに対し、Aの母親は、上記のとおり、Aは、粘土服の持ち方については具体的に述べていたが、触り方については、すっと陰部を触っていったという話をしたというのであり、陰部を触られた状況に関するAの供述内容と事件後にAの母親がAから聞いた内容との間には明らかな違いがある。Aの母親の上記供述は、下半身の触られ方については母親も余り分かっていない状態だったというEの上記供述とも整合している。これに対し、Aは、弁護人の反対尋問に対し、9月2日に警察で下半身の被害の説明をしたときは、自分も母も指で触ったというふうに話しており、手の甲で触ったとは言っていない旨述べているが、この供述は、母親の供述ともEの供述とも整合しない。
  上記のような違いについては、Aが母親らに話した際には、恥ずかしさなどから具体的に話せなかっただけであり、両者に違いはないとする評価も考えられないではない。しかし、上記のとおり、母親は、当初は警察に行くつもりはなかったが、犯罪としてちゃんと表に出すべきではないかと考え直し、警察に話すときにはいい加減なことを言ってはいけないと考えて、あらためてメモを書き直し、Aにも確認してもらった上で警察に行ったというのであり、特に陰部に触れた状況については、水着の下の部分を置くときに、どうやったら触れるのかをAに聞いたところ、上記のような説明だったというのであって、正に触られた状況について具体的な確認がなされていることがうかがわれる。このようなAに対する被害の確認状況を踏まえると、少なくともその時点においてAが陰部の触られ方について具体的な説明ができなかった可能性を否定できない。そもそもAは、1日目も2日目も同じ触られ方であったと供述するところ、1日目の粘土教室が終わった後の段階では、陰部を触られたことは自分の勘違いかもしれないという思いもあって母親に話せなかった旨述べているのであって、証人尋問で述べるほどの具体的な感触を受けていたかどうかについては、疑問が残ると言わざるを得ない。
  また、Aは、証人尋問において、〈2〉2日目の粘土服のプログラムが30秒延長になり、その際にも他の場合と同様に被告人から陰部を触られた旨供述しているのに対し、母親はそのような被害内容をAから聞いていない旨供述しており、母親やEのメモにもそのような記載はないのであって、両者の間に違いがある。この点について、Aは、弁護人からの反対尋問に対し、2日連続で同じような場面のことがたくさんあって、記憶も整理されていなくて、多分、言い忘れたのだと思う旨供述している。しかしながら、Aの母親のメモには、30秒位のばすことになって、Aが起き上がってはずそうとしたら、「まだだめだ」と言って肩をつかまれて押し、寝かされた旨の記載があり、Aが母親に対し、1日目とは異なる場面について、被告人の言動も交えて具体的に話していたことが認められるのであって、その際に被害に遭っていたのであれば、これを話さなかったというのは不自然と言わざるを得ない。
  カ 以上のとおり、被告人に陰部を触られた状況に関するAの供述は、母親の供述内容等とよく整合せず、その後捜査機関から被害を確認される過程で、不確かな感触が誇張され、具体化するに至った可能性を排除できず、少なくともAの上記供述に基づいてその供述どおりの被告人の行為があったと認定することは困難である。
  (5) 以上からすると、Aの供述は、基本的に信用性が認められるものの、陰部を触られた状況については、1日目及び2日目の粘土服のプログラムにおいて、それぞれ被告人がAの下腹部に粘土のビキニのパンツの部分を載せる際に、Aの陰部付近に被告人の手が触れたことが認められるにとどまり、被告人がAの陰部を手指で弄んだことを認めることはできない。
 4 そこで以上の認定事実を前提として、被告人が、Aの身体への接触行為について、わいせつ性を認識していたか否かについて検討する。
  (1) この点について検察官は、Aの供述から認定できる事実によると、〈1〉被告人が触ったAの身体の部位及び触り方、〈2〉連日かつ1日のうちに複数回にわたり、Aの身体の性的部位に接触していること、〈3〉「ちゃんと乗らなきゃだめだよ。」「下もビキニにしないとね。」「リーダーなのに逃げるのか。」などと声を掛けた上で身体に接触している行為があることを指摘して、被告人のAに対する接触は意図しない偶然のものとは考えられない旨主張する。
  一方、弁護人は、本件各行為当時の状況に関し、前記認定のような現場の状況、Aらがいた位置、粘土教室の参加者の人数等を指摘して、被告人が衆目のある状況下で犯行に及ぶこと自体が不自然であると主張する。これに対して検察官は、この種の犯行は人混みに紛れて周囲の無関心に乗じた方が犯行が容易になるとして、本件の状況は、まさに電車内等で痴漢行為が行われる状況と類似しており、犯行が不可能であるとはいえない旨主張する。しかし、電車内等での痴漢行為の場合、被害者を触る犯人が誰なのかわからないくらい不特定人が密集した状態で敢行されることが多いのに対し、本件の場合、ひとたび被害者に声を挙げられれば、犯人が特定される状況にあったものと考えられるから、この点において電車内等での痴漢行為とは大きく異なっている。もっとも、痴漢行為においては、被害者の年齢、性格等により、羞恥心が先に立って被害者が抵抗したり、声を上げにくく、犯人がこれにつけ込んで大胆な行動に出ることも考えられるところ、当時中学生であったAの年齢等も考慮すると、Aが被告人からの接触に対しはっきりした抵抗や拒絶の意思を表していないこと自体を重視することはできない。結局、Aの供述から認められる被告人からの接触行為について、検察官の指摘する接触行為の態様、状況を踏まえて、被告人のわいせつ性の認識を推認できるか否かを検討する。
  (2) そこで、Aが述べる被告人からの体への接触行為について見ると、1日目に、(ア)粘土教室の準備として準備室で被告人から粘土を手渡された際、被告人の手の甲が胸に当たったこと、(イ)乗り物のプログラムで、粘土で作った乗り物に乗る際、4分の1の大きさになった乗り物に左足を乗せ、右足を床につけて立っていたところ、「ちゃんと乗らなきゃだめだよ。」と言いながら、右側のお尻を片手で下から支えるように触られたこと、(ウ)粘土服のプログラムで、B、Cと3人でグループになり、最初にAが服を着せられる側になっていたところ、被告人が来て、粘土でビキニを作ってブラトップをAの胸の上に載せた後、その形を整えるときに、粘土越しなどから被告人の手が自分の胸に当たったこと、(エ)ビキニのパンツの部分を下腹部に載せてきた際、被告人が自分の体に粘土を置いて粘土から手を離す間に被告人の手が陰部に触れたこと、(オ)粘土教室の終了後中庭で足を洗おうとしていたところ、ホースを持った被告人が、膝から下の部分を手でこすって洗ったこと、2日目に、(カ)乗り物プログラムで、B、Cと3人で1つの大きな乗り物を作ってその上に乗っていたが、乗り物の大きさが4分の1になって3人がほぼ横一列に並んで乗るような形で、Aが前日と同じように片足が出た状態で乗っていたところ、被告人が右斜め後ろから来て、ちゃんと乗らなきゃだめだよというようなことを言いながら、右側から片手でお尻を持たれるように触られたこと、(キ)粘土服のプログラムで、B、Cと3人で作業をしていたところ、被告人が加わり、最初に粘土服を着せられる役だったCから次の人に替わるときに、AがBに先にやっていいよと言ったところ、被告人が、リーダーなのに逃げるのかというようなことを言って、被告人に粘土服を載せられることになり、ビキニのパンツを載せる際に、被告人の手が陰部に触れたこと、(ク)ビキニの上部分にひもを付ける際、両脇に手が入り、飾りを付けるときに胸に両手の甲が当たったこと、(ケ)街作りのプログラムで、建物を作っているときに、被告人がAの膝の上に手を置き、制作の様子を尋ねるような感じで話し掛けてきたこと、(コ)粘土教室終了後に、被告人から担当しているワークショップのちらしのようなものを渡された際、被告人の手の甲が胸に当たったことである。
  (3) これらのうち、まず、(オ)は、膝の下という触った部位やホースを持った被告人が手でこすって洗うという触り方からして、わいせつ性を推認することは困難である。(ケ)も、制作の様子を尋ねるときに、膝の上に手を置くという触った部位や触り方、触ったときの状況から、わいせつ性の認識を推認することは困難である。また、(ア)及び(コ)は、触った部位は胸ではあるものの、粘土やチラシを渡すときに、手の甲が当たったという接触の仕方からして、わいせつ性の認識を推認することは困難と言わざるを得ない。
  次に、(イ)及び(カ)は、触った部位は臀部付近であり、被告人は、その際「ちゃんと乗らなきゃだめだよ。」などと声を掛けている。しかし、関係証拠によれば、各行為当時の乗り物プログラムは、小さくなった粘土の乗り物に乗り、被告人が10カウントする間、バランスをとるというゲームを行う形で進められていたことが認められるところ、Aも反対尋問において認めているとおり、Aは、各行為当時、右足を床につけたままの状態でいたというのであるから、被告人が実技室の前方で子供たちのお手本のような形で粘土教室に参加していたAらをゲームに参加させるために、Aを粘土に乗せて支えるための行為として行ったことも十分に考えられる。やはり、接触行為自体からわいせつ性の認識を推認することは困難である。
  さらに(ウ)、(エ)、(キ)、(ク)については、接触の部位は、胸や陰部であり、特に被告人は、(キ)の際に「リーダーなのに逃げるのか。」などと、(ク)の際に「下もビキニにしないとね。」などとそれぞれAに声を掛けている。しかし、(ウ)は、Aの体の上に載せてあった粘土を整形する際の粘土越しなどからの接触であり、(ク)は、粘土のひもをつける際の一瞬の接触であって、それぞれ粘土の形を整えたり、粘土の飾りをつけるための行為と見ることが可能である。「リーダーなのに逃げるのか」という言葉も、B及びCの供述から、被告人がAをリーダーと呼んでいたことが認められるところ、これを前提とすると、Aの粘土教室への積極的な参加を促すために掛けた言葉と見ることもできるのであって、言葉自体が行為のわいせつ性を推認させるようなものとはいえない。さらに、(エ)及び(キ)の陰部の触り方については、前記のとおり、Aの供述をそのまま採用することはできず、陰部に手が接触したことが推認できるにとどまるところ、これを前提とすると、Aの身体の上に粘土の水着を載せたり、これを動かした際の意図しない接触であった可能性を否定することはできない。また、「下もビキニにしないとね。」という言葉も単にこれから粘土で作ろうとするものを述べただけであるともいえ、それ自体が行為のわいせつ性を推認させるものとはいえない。
  上記のとおり、検察官は、被告人が、連日かつ1日のうちに複数回にわたり、Aの身体の性的部位に接触していることを指摘している。しかし、A自身、1日目の(ア)ないし(オ)の接触行為があった後、不快さを感じつつもこれらが意図的なものであるかどうかは分からなかったと供述しており、接触を受けたA自身の感覚からしても、少なくとも1日目は、意図的なものであるかどうか分からない程度の接触であったことをうかがうことができる。また確かに、Aも2日にわたり同じような接触があったことをもってこれを意図的なものであると考えた理由であると述べているが、粘土教室自体が1日目も2日目も同じプログラムで進められており、被告人もAもプログラムにしたがって2日目も1日目と同じような動き方をしていることからすると、プログラム中の同じ機会に無意識的な接触が繰り返された可能性を否定できない。また、関係証拠によれば、2日目にAらが粘土教室に参加することは、その日に急きょ決まったものであり、その決定の過程に被告人が関わった証跡はないから、少なくとも被告人がAにわいせつ行為を行う意図でAを粘土教室に参加させたものでないことは明らかである。さらに、関係証拠(甲25)によれば、Aは、2日目の粘土教室が終了した後、被告人からの写真撮影の呼びかけに対し、Vサインをしてこれに応じていることが認められ、少なくとも外見上Aが被告人からわいせつ行為を受けたことを示す事情は何ら見受けられない。
  (4) 結局、基本的に信用性の認められるAの供述等を前提としても、被告人がわいせつ性を認識した上でAの臀部を触り、Aの陰部を手指で弄ぶなどのわいせつ行為をしたと認めるには、なお合理的な疑いが残る。
 5 よって、本件公訴事実については、犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
刑事第1部
 (裁判官 佐藤正信)

下着が見える状態での写真撮影に応じさせる目的で、他に誰もいない同校1棟校舎東側3階から屋上階に通じる階段に呼び出し、Aに、制服スカートの中に履いていたスパッツを脱ぐよう命じるなどしてこれに応じさせた上、脚を開かせた状態で階段に座らせ、その下方から同人の写真を撮影し、同日午後5時頃までの間、同人をして、その場にとどまらせるとともに、下着が見える状態での写真撮影に応じさせ、」という有害支配(児童福祉法違反)+児童ポルノ所持の事例(堺支部h30.3.19)

 製造は起訴されていません。

大阪地方裁判所支部
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 大阪府B市に所在する中学校の教諭として勤務し、平成25年11月頃から、自己が担任を務めるクラスの生徒で、自己が顧問を務める部活動の部員でもあったAに対し、学習指導等の名目で、部活動中に同人だけを呼び出したり、部活動後に残るよう指示するなどして、他に誰もいない場所で同人の写真を撮影するなどの行為を繰り返していたものであるが、平成26年11月17日午後4時30分頃から、A(当時14歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら、下着が見える状態での写真撮影に応じさせる目的で、他に誰もいない同校1棟校舎東側3階から屋上階に通じる階段に呼び出し、Aに、制服スカートの中に履いていたスパッツを脱ぐよう命じるなどしてこれに応じさせた上、脚を開かせた状態で階段に座らせ、その下方から同人の写真を撮影し、同日午後5時頃までの間、同人をして、その場にとどまらせるとともに、下着が見える状態での写真撮影に応じさせ、もって児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為をし、
第2 自己の性的好奇心を満たす目的で、平成29年9月29日、C市D区の被告人方において、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものであって、いずれも視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ4点を記録及び蔵置した外付けハードディスク1台を所持した。
(事実認定の補足説明)
 弁護人は、判示第1の事実について、被告人はAの下着が写るような写真を撮ったことはなく、無罪であると主張し、被告人もこれにそう供述をする。そこで、判示のとおり事実を認定した理由を説明する。
1 Aの供述要旨
  私は中学2年生のときに判示中学校に転校した。被告人がクラス担任で、部活動の顧問だった。平成25年11月下旬頃、被告人から部室に残って勉強をするよう指示され、これに応じた。その帰り際、被告人から「リフレッシュに写真撮ろうか」と言われ、階段で写真を撮ることになった。階段の踊り場から七、八段上がったところに座るよう指示されたので、そこに座った。私は、毎日スカートの下に下着だけでなくハーフパンツを履いていたところ、被告人は「ハーフパンツが写るとかっこ悪い」「脱いでください」などと言った。ハーフパンツを脱いだらパンツが見えるかもしれないし、そこまでしなければいけないのかと思ったが、反発したら説教されて帰るのが遅くなると思ったので、ハーフパンツを脱ぎ、脚を閉じて座った。すると、被告人は「そうじゃない」と言って、両足首をつかんで私の脚を開き、「脚を閉じているとバランスが悪くて、体勢が不格好だから、どっしりかまえる感じで、ほどよく開いておいてくれるか」などと言った。被告人は、踊り場に降り、立て膝をついてしゃがみ込むような体勢で見上げるようにして写真撮影をし、「写真を撮ったことは、卒業用のサプライズにするから、秘密にしておくように」などと念押ししてきた。パンツが写っているんじゃないかと不安になったが、まさか先生という立場の人がそんなことをするはずがないという気持ちもあった。誰にも言うなという指示を守らないと怒られるし、両親は私より被告人を信用するだろうから、黙っておくことにした。これ以降、毎日のように被告人から同じような写真を撮られた。3年生になっても担任は被告人のままで、写真撮影も続いた。夏休みには、調理準備室で数冊積み上げた本の上に座らされて写真を撮られたことなどもあった。平成26年11月に部活動を引退した後も、被告人から勉強しに来いなどと言われ、部活動の時間の終わり頃に被告人から呼び出され、階段で写真を撮られた。
  私は、部活動を引退したのに写真を撮られたり、被告人から抱きしめられることがあったりしたことなどから、パンツを撮っているんじゃないか、いやらしい写真を撮っているんじゃないかという疑いの気持ちを強めていき、被告人から写真撮影されることを見込んで、同月17日、ハーフパンツの下にスパッツを履いておき、被告人にパンツが見えていたのかを確認することにした。同日、私は、いつものように被告人から呼び出されて階段に行き、ハーフパンツを脱いだが、スパッツは脱がずに、太ももの付け根まで短く折り曲げておいた。被告人は、脚を開いた状態で階段に座った私を見上げるようにして撮影しようとし、カシャと音が鳴った瞬間、怒った表情で階段を上がってきて、私のスカートのウエスト部分から、両手の親指を突っ込み、無言でスカートを上下に揺さぶった。被告人は、私をにらみつけ、強い口調で「何でスパッツ履いてるんや」「脱げ」などと言ってきた。私は、その瞬間、やはり今までもパンツが見えていたのだと確信し、それと同時に怖いと思った。ここで抵抗したら力で負けるし、乱暴されるかもしれないと思って、必死の思いで謝った。スパッツを履いていることが分かった理由を被告人に尋ねると、被告人は「ウエストを揺すったときに、スパッツが見えた」などと言ったが、私はブラウスの裾をスカートに入れていたので、ウエストの隙間からスパッツが見えるとは思えなかった。被告人の口調や表情がとても怖くて抵抗できなかったので、私は、スパッツを脱ぎ、脚を開いた状態で階段に座った。被告人は、階段の下方から見上げるようにして私の写真を撮った。その翌日である同月18日、母に打ち明けた。家族で話し合った結果、高校受験への影響等を考慮し、被告人を避けることになったが、平成27年1月16日、事情を打ち明けていた友人と被告人との口論をきっかけに養護教諭にも事情を話し、学校側の知るところとなった。
2 検討
  被告人から下着が見えているのかを確認するため、あらかじめハーフパンツの下にスパッツを履いていたが被告人に看破されてスパッツを脱ぐよう命じられたなどの本件被害状況等に関するAの供述は、実際に体験した者でなければ語ることが困難な内容であり、写真撮影に応じさせられていた従前の経過を含め、当時の心情を織り交ぜて具体的かつ生々しく語るものであって、そこに不自然な点は見当たらない。また、関係証拠によれば、Aは、本件被害を母に打ち明けて以降、一貫した供述をしているし、Aに虚偽の供述をする動機もうかがわれない。さらに、Aが平成26年11月中旬頃から被告人を避けるようになったという被告人も認める事実は、Aの供述にそうものといえる。そして、被告人は、平成27年1月16日、Aを写真撮影していたことについて校長から事情聴取された際、Aを撮影した写真データが入っている記録媒体を提出するよう求められたにもかかわらず、その事情聴取の合間等に、学校のパソコンのハードディスク等に保存されていたデータを大量に削除したり、デジタルカメラのSDカードをフォーマットした上で校長に提出したりし、かつ、その行動について合理的な説明がされていない事実は、被告人が学校側に知られたくないデータを管理していたことを推認させるものであって、これもAの供述にそうものといえる。
  以上によれば、Aの供述は信用することができ、同供述により判示第1の事実が認められる。
(量刑の理由)
 量刑の中心となる児童福祉法違反についてみると、被告人は中学校教諭という生徒の健全な育成を担うべき職にありながら、被害者の心身への悪影響も自身の職責も顧みずに犯行に及んでおり、強い非難を免れない。当時14歳の被害者が受けた精神的苦痛は大きく、その処罰感情が厳しいのも当然といえる。それにもかかわらず、被告人に反省の態度はうかがわれない。
 そうすると、被告人が児童ポルノの所持については罪を認めていることや、前科前歴がないこと、自業自得であるものの本件により相応の処分が予定されることなどを考慮しても、本件は罰金刑で済まされるような事案ではなく、主文の懲役刑に処してその刑事責任の重さを明らかにした上で、刑の執行を猶予するのが相当である。
(求刑・懲役1年6月)
第1刑事部
 (裁判長裁判官 武田義德 裁判官 櫻井真理子 裁判官 白井知志)

性犯罪・福祉犯判決における「被害者の軽率さ」

 刑事裁判の量刑理由で落ち度とか軽率さが指摘されていることがあります。
 考慮されるのであれば弁護人も主張します。
 裁判員事件用の量刑データベースにも「被害者の落ち度」の項目があります。

坪井祐子「被害者・関係者・第三者の落ち度と量刑」量刑実務体系
第1 はじめに 被害者の落ち度をめぐる今日的状況
被害者の落ち度は,量刑を引き下げる方向で働く事情と考えられている。
実際,殺人.傷害等の動機犯罪,強姦等の性犯罪,詐欺等の財産犯,業務上過失傷害等の過失犯など様々な犯罪に関して. I被害者の落ち度Jが被告人に有利な事情として主張されてきており,その「落ち度」の中身も様々であった。
こうした主張の中には,なるほどと思わせるものもある一方で、,全くのこじつけ,責任転嫁としか思われないものもある。
いささか無理のある「被害者の落ち度jであっても,法律家はある程度寛容に受け入れてきた。
しかし最近ではこのような状況は変化しつつある。
被害者らが声を上げ始めたからである。
酷い犯罪被害を受けた上,落ち度まで指摘されることは,被害者や遺族にとっては耐え難い苦痛で、ある。
横断歩道上で信号無視の自動車に衝突されて死亡したある被害者の父親は加害車両運転者の刑事裁判での弁論要旨において,被害者が信号のみに頼って加害車両の走行状況を注意していなかったことが落ち度と記載されていたことを憤っている1)。
また,原田園男元判事は,普通の主婦が小学校低学年の少女を車で跳ねて死亡させた事件で,被告人が被害者の飛び出しを口にしたことに被害者の母親が激昂し,一切示談に応じず,ひたすら被告人が刑務所に入ることだけを望み,実際に被告人が実刑となった事案を紹介している2)。
我々の主宰する公判でも,被告人や弁護人が被害者の落ち度について述べるのを被害者や遺族が耳にして態度を硬化させ,意見陳述などの要求をし始めることはしばしば経験する事象である。
被害者の意見が何故に量刑に影響する事情になるのか,どの程度の影響力を持つのかも難しい問題であるが,現実問題として被害者の心情を傷つければ新たな不利な情状とされかねないし示談の取りまとめや嘆願書の取り付けなどは到底望み得なくなる。
最近では,このような事態をおそれで,あえて被害者の落ち度を主張しない弁護人も増えてきているように思われる。
実際の公判で,弁論要旨書面中には「被害者の落ち度」の項目が設けているにもかかわらず,弁論では「この部分の朗読は省略致します。」とする弁護人に遭遇したことがある。
被害者を怒らせたくないしかし被告人に有利な事情はきちんと主張しておきたい, と悩んだ末の苦肉の策なのであろうが, これでは弁論と弁論要旨の位置づけが逆転しているではないか, と複雑な思いを抱いた。
平成20年12月の被害者参加制度の施行は,こうした傾向をさらに推し進めるものになっているのであろうか。
被害者参加制度の導入に際し日弁連は幾度か消極的な意見を表明している(平成19年5月l日付意見書等)が,その理由のーっとして「被告人の防御に困難をきたすおそれがある」という点をあげる。
すなわち(被告人は)正当防衛の成否,被害者の落ち度,過失の存否という重大な争点について,結果が悲惨であればあるほど,これらの点を主張すること自体が心理的に困難な状況に置かれている。
法廷で犯罪被害者等から直接質問されるようになれば,被告人は沈黙せざるを得なくなる可能性がある。」(平成19年3月13日日弁連会長談話)というのである。
しかし被害者参加制度の導入後も「被害者の落ち度」が法廷から姿を消すことはないようである。
全国初の裁判員裁判となった殺人事件では,被害者遺族が被害者参加入として参加していた。
被害者参加弁護士を務めた番敦子弁護士の報告4) によれば,被害者参加入は,被告人が被害者の言動が犯行を誘発したと主張していることを知って怒りを露わにし,これを言い訳のための虚偽であると指摘し参加の目的を被害者による犯行誘発行為はないこと,つまり,被害者の名誉回復とすることに決め,この論点に絞って活動することとした,という。
判決は弁護人が主張した被害者の落ち度について,被害者には犯行を誘発する言動はない,として退けたのであるが,こうして裁判員裁判第l号事件は「被害者の落ち度」問題が今日でも重要な量刑事情と考えられていることを再確認させてくれた。
判決を作成する裁判官にとって. 「被害者の落ち度」は悩ましい量刑要素である。
被告人の主張する「被害者の落ち度」が認められない場合や言いがかりに過ぎない場合は,それを指摘すれば足る。
問題は,確かに「落ち度」と目して差し支えない事情が存する場合である3)。
被害結果が軽微であれば. 「落ち度」を指摘することにためらう必要もなかろうが,結果があまりに重いときには被害者をむち打つには忍びない気持ちになる。
かといって,量刑の理由で何も述べずに済ますと量刑不当を理由として控訴をする口実を与えたようなものであるし控訴審判決で「原判決の措辞は適切を欠く」などと指摘されることも覚悟せねばならない。
一方「被害者に落ち度がある」と明示すれば,被害者や遺族の感情を傷つけるし場合によってはマスコミ等からの批判にさらされることもある。
が,そもそも被害者の落ち度は,何故に被告人の量刑において考慮されるのであろうか。
復讐や自力救済が公認されていた時代であれば. I相手も悪い」という言い分が量刑を左右するのは自明の理といえるのかもしれない。
しかし近代刑法はそうした理念を否定し,刑罰は被告人の犯罪行為に対して科されるとしたのであるから,被害者の行為が評価の対象に含まれるいわれはないのではないか。
もし被害者の落ち度が量刑に影響を与えるとすれば,それはどのような理由からか,島酌すべき「落ち度」は何であろうか。
これらを間い直すことは,判決を作成する裁判官のみならず,公判に臨む被告人や弁護人にも的確な量刑要素を指摘する指針を与えることにつながり,ひいては,被害者や遺族を無用に怒らせたり悲しませたりすることを減らせるのではないであろうか。

被害者らは判断力が不十分な年齢とはいえ、金銭ほしさに安易に被告人らの誘いに乗ったもので軽率であったと言われても仕方がない
児童にも軽率な面はあったが、
児童にも軽率な面があったことは否定できない
出会い系サイトを通じて知り合った初対面の男性の誘いにのって、夜間被告人たの車に乗り込んだ被害者に軽率さがある
深夜まで飲酒し早朝の大通りに駐車してドアロックをせずに仮眠していた点で軽率さ
被害児童にも、マッサージのアルバイトを申し込んで警戒せずにホテルに入った点で軽率
児童買春の被害児童は自ら売春しようとしていたものであって、その余も、被告人から誘われて対価の金額にめがくらんで安易に買春に応じている 相当軽率である

初対面の被告人らの誘いにのって夜間人気内場所に同乗したのは軽率であり落ち度
被害者は被告人の難破に応じて 性交に承諾して応じようとしたという軽率な面 落ち度
売春代金3~5万ほしさに被告人の誘いに応じた被害者も軽率のそしりを免れない
被害者も被告人との性交を前提として現場ホテルまで同行しているという落ち度
被害児童らも、小遣い銭ほしさに下着を売ろうとしたり、安易に被告人の誘いに乗ったりして軽率があること
出会い系サイトを通じて知り合った初対面の男性の誘いにのって、夜間被告人の車に乗り込んだ被害者に軽率さがある
被害児童にも、マッサージのアルバイトを申し込んで警戒せずにホテルに入った点で軽率
被害女性にも初対面の車に同乗するのは軽率さ

歳という年齢にしても被害者に軽率な行動があった
被害者らにも軽率がある。
出会い系サイトで知り合った点は被害者に軽率
深夜被告人宅に赴き飲酒したという軽率な点
少女らの軽率さは、条例の趣旨からして、被告人に有利に考慮すべきではない
飲酒後自己の部屋に招き入れそのまま就寝するなど被害者にも軽率
夜間に男性が運転する自動車に一人で乗り込み人気のない海岸にいくことに応じた点で軽率な点がある 落ち度
被害者にも被告人とホテルに入った点で軽率 落ち度があるが年令に照らすと重視することはできない
児童には自ら危険に近づいた点で軽率
被告人を容易に信じて裸体等の映像を所持させた被害者にも軽率であるが 撮影当時の男女関係において被告人に懇願されて撮影に応じたことは愛情に基づくもので了解可能であり 被害者の落ち度とまでは評価できない
被告人と不倫関係にあった被害者にも軽率さは否定できないが 被告人の行為は常軌逸する
被害者が被告人を疑わずに泊めた点で落ち度があるとはいえないが軽率な点はある
飲酒酩酊して男性2名より先に就寝した点は無防備に過ぎ慎重さに欠ける
伝言ダイヤルを利用した児童にも軽率ある
児童は小遣い銭ほしさに安易に撮影に承諾して海外に渡航したという児童の軽率さも無視することができない
被害女性においても被告人に誘われるままタクシーの助手席に乗車するなど軽率と言われかねない面もある
見知らぬ男性と性的経験を話すなど被害者もやや軽率な面がある
わいせつ行為うけても明確な拒絶せず16歳という年齢に鑑みると相当な落ち度があるとはいえないものの やや軽率な面がある
ラブホテルに同行した被害者にも若干軽率な面があったことは否めない
連絡方法はメールに限定されており、児童も積極的に応じており軽率であると言わざるを得ないが、14歳であって未成熟であることを考慮すると被告人に有利に斟酌することには限界がある
被害者も被告人の車に乗車した点でいささか軽率だった 落ち度
被害者にも自ら心神喪失に陥る点で軽率がある 落ち度
被害児童の年齢からみて、軽率な点もある
被害者が被告人の友人宅を深夜訪れた点では軽率な点がある 落ち度とまではい
被害者は当初被告人の誘いを拒絶していたものの、まもなくその甘言に乗って被告人らの車両に同乗することを承諾しており この点被害者の側にもいささか軽率な面があったことは否定できない 落ち度
被害者が安易に出会い系サイトを利用して見ず知らずの被告人らと飲食して 被告人の運転でその知人も同条する車に1人で乗車した経緯には軽率な点があるが 組むべき点は乏しい
被害者は出会い系サイトで知り合った被告人に自ら連絡を取って待ち合わせ、迎えにきた初対面の被告人の車に乗車するなど被害者においてやや軽率な面があったと言わざるを得ない 落ち度
 被害者は自ら服を脱ぎ 陰部撮影に承諾するなど被害者らにも被告人の言をたやすく信じた点で軽率さがある
各被害者は出会い系サイトを利用したという軽率な行動があり それが被害を招いたという側面がある
被害女性は深夜被告人の呼び出しに応じて被告人が単身居住する被告人宅に訪れるなど いささか軽率な面がある
被害者も援助交際目的で被告人と本件当日初対面でホテルに入り、被害者の軽率さは否定できないものの 強姦に遭わなければ成らないほどの落ち度はない
 
被害者は援助交際の金目当てにさしたる警戒心を抱くことなく被告人と待ち合わせ 初対面の被告人を疑うことなく行動を共にしているのであって 落ち度とまではいえないものの 被害者らの年齢を考慮してみても その経緯等においてやはり被害者らにも軽率な面があったことは指摘せざるを得ない

その経緯において 被害者にもさして警戒することなく初対面の男性の車に乗ってしまうという軽率さも指摘せざるを得ない
被害者が登校途中で被告人の車に乗ったのは軽率
被害者が安易に被告人についていったのは軽率である
なお 被害者は同僚の忠告にもかかわらず被告人に電話をかけてその誘いに応じて深夜に一人で会いに行き途中飲酒するなどしておりやや軽率さがいなめないものの 
被害者に軽率な点があったが落ち度はない
児童の行動にも軽率に過ぎる点が多分にあった
被害者深夜長時間にわたり飲酒をつづけ 自ら酩酊状態に陥ったり その過程で被告人を含む男性らと肩くんだり 背後から抱きつくなどの行動をとるなど 被害者にもやや軽率な面があった
被害者が自らの意思で被告人の部屋に入室していることは当時19歳お女性として軽率な行動であったと言わざるを得ない
初対面の被告人から~~を求められるなどされていたのにトイレに二人で入ってしまった被害者の行動にはやや軽率な面がある
被害者が安易に被告人についていった点は軽率である

真夏に窓を開けて裸で熟睡している者を高性能の望遠レンズを用いてこっそり撮影する行為=Bb (性的意図があるので強制わいせつ罪成立),~高橋則夫「強制わいせつ罪における性的意図」論究ジュリスト 第25号

真夏に窓を開けて裸で熟睡している者を高性能の望遠レンズを用いてこっそり撮影する行為=Bb (性的意図があるので強制わいせつ罪成立),~高橋則夫「強制わいせつ罪における性的意図」論究ジュリスト 第25号
 これは窃視罪
 実務感覚としては、目前で撮影する場合のみわいせつ行為にしてますよね。ひそかに児童ポルノ製造罪なんかもそれ前提にした罪で。最近はメールで送らせるのもわいせつ行為だけど。

高橋則夫「強制わいせつ罪における性的意図」論究ジュリスト 第25号
Ⅶ、具体的事案へのあてはめ
それでは最後に,試みとして、本判決の考え方をいくつかの事業にあてはめることにしたい。
前述した, 3段階構造(A・B・C), すなわち,
A=行為に性的性質があるか否か
→B=行為に性的意味があるか否か(a=性的性質が明確な場合→性的な意味あり, b=性的性質が不明確な場合→具体的状況等を巻慮して判断〔性的意図も一つの判断資料〕)
→C=行為に可罰的違法性があるか否か,
という判断構造を具体的争案にあてはめるとどうなるであろうか。
もっとも, 当該行為が行われた際の具体的状況の中で性的意図は一判断要素となり. また. Cの可罰的違法性判断も行われることから.性的意図のみで決定されるわけではないが,一つの指針として検討することにしたい。
①復譽いじめなどの目的の場合において。
(イ)裸にして写真を撮る=Ba (成立),
(ロ)裸にして性器をもてあそぶ=Ba (成立).
(ハ)性器切断のためズボンを脱がせる=Ba (成立)or Bb (性的意図がないので不成立)。
②特殊性癖の場合において,
(イ)幼児とお風呂に入る=Bb (性的意図があるので成立) ,
(ロ)幼児を抱き上げ, スカートの中をのぞく=Bb (性的意図があるので成立)、
(ハ)女性が嘔吐する姿に性的興奮を覚える者が.女性の口に指を入れて嘔吐させる行為(青森地判平成18・3・16裁判所Web [平成17年(わ)第314号] =暴行罪) =Aがない(不成立) ※20) or Bb (性的意図があるので成立)。
③治療行為等の場合において,
(イ) 医師(介護士)が患者(要介護者) を裸にする(患者が暴れるので患者を無理矢理裸にする) =Aがない(不成立)21) orBb (性的意図がないので不成立).
(ロ)医師による診察中の盗撮行為(広島高判平成23・5・26LEX/DB2547144322)=強制わいせつ罪) =Ba (成立)。
④暴行・脅迫時の段階の場合には, 未遂段階での性的性質が問題となるが. 第2行為の性的性質によって決定される23)。
たとえば.客体の性器をもてあそぶため暴行した段階=Ba(成立)。
⑤準強制わいせつの場合において,
(イ)介護のため.寝ている者の服を脱がす=Aがない(不成立) or Bb(性的意図がないので不成立)
(ロ)真夏に窓を開けて裸で熟睡している者を高性能の望遠レンズを用いてこっそり撮影する行為=Bb (性的意図があるので成立),
(ハ)臨床検査技師が女性患者に対して検査名目で肛門部などに検査器具を押し当てる行為(京都地判平成18・12. 18裁判所Web[平成18年(わ)第201号〕=無罪) =Aがない(不成立) or Bb (性的意図がないので不成立)。
⑥本件については, Baであり,成立 ※24)
 これに対して,性的意図不要説(第1審・第2審)によれば,
①はすべて成立.
②はすべて不成立,
③の(イ)は不成立、(ロ)は成立,
④は成立、
⑤の(イ)と(ハ)は不成立、(ロ)は成立となり,
⑥本件については,成立となろう。
 性的意図必要説(最高裁昭和45年判決)によれば, 
①はすべて不成立,
②はすべて成立。
③の(イ)は不成立。(ロ)は成立。
④は不成立、
⑤の(イ)と(ハ)は不成立, (ロ)は成立となり,
⑥本件については,不成立となろう。

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造を観念的競合としたもの 最新版

強制わいせつ罪と児童ポルノ製造を観念的競合としたもの 最新版
 静岡で2件みつけました
 大法廷h29.11.29も判断回避していて、それを見ながら東京高裁H30.1.30も観念的競合としていて、まだまだ流動的です。
 社会的見解上は一個だけど、一事不再理効が拡がるというので抵抗されています。
 製造で逮捕して強制わいせつ罪で再逮捕とかもあるので、弁護人は注意して下さい。
 
名古屋地裁一宮 H17.10.13
東京地裁 H18.3.24
東京地裁 H19.2.1
東京地裁 H19.6.21
横浜地裁 H19.8.3
長野地裁 H19.10.30
7 札幌地裁 H19.11.7
東京地裁 H19.12.3
高松地裁 H19.12.10
10 山口地裁 H20.1.22
11 福島地裁白河支部 H20.10.15
12 那覇地裁 H20.10.27
13 金沢地裁 H20.12.12
14 金沢地裁 H21.1.20
15 那覇地裁 H21.1.28
16 山口地裁 H21.2.4
17 佐賀地裁唐津支部 H21.2.12
18 仙台高裁 H21.3.3
19 那覇地裁沖縄支部 H21.5.20
20 千葉地裁 H21.9.9
21 札幌地裁 H21.9.18
22 名古屋高裁 H22.3.4
23 松山地裁 H22.3.30
24 さいたま地裁川越支部 H22.5.31
25 那覇地裁沖縄 H22.5.13
26 横浜地裁 H22.7.30
27 福岡地裁飯塚 H22.8.5
28 高松高裁 H22.9.7
29 高知地裁 H22.9.14
30 水戸地裁 H22.10.6
31 さいたま地裁越谷支部 H22.11.24
32 松山地裁大洲支部 H22.11.26
33 名古屋地裁 H23.1.7
34 広島地裁 H23.1.19
35 広島高裁 H23.5.26
36 高松地裁 H23.7.11
37 大阪高裁 H23.12.21
38 秋田地裁 H23.12.26
39 横浜地裁川崎支部 H24.1.19
40 福岡地裁 H24.3.2
41 横浜地裁 H24.7.23
42 福岡地裁 H24.11.9
43 松山地裁 H25.3.6
44 横浜地裁横須賀 H25.4.30
45 大阪高裁 H25.6.21
46 横浜地裁 H25.6.27
47 福島地裁いわき支部 H26.1.15
48 松山地裁 H26.1.22
49 福岡地裁 H26.5.12
50 神戸地裁尼崎 H26.7.29
51 神戸地裁尼崎 H26.7.30
52 横浜地裁 H26.9.1
53 津地裁 H26.10.14
54 名古屋地裁 H27.2.3
55 岡山地裁 H27.2.16
56 長野地裁飯田 H27.6.19
57 静岡地裁沼津 H27.7.6
58 広島地裁福山 H27.10.14
59 千葉地裁松戸 H28.1.13
60 静岡地裁富士 H28.2.3
61 高松地裁 H28.6.2
62 横浜地裁 H28.7.20
63 名古屋地裁岡﨑 H28.12.20
64 東京地裁 H29.7.14
65 東京高裁 H30.1.30

1年10月ほどの間に,住居侵入・強姦1件,住居侵入・強制わいせつ2件,路上での強制わいせつ1件,住居侵入・窃盗2件及び邸宅侵入1件を犯した事案について、懲役7年とした事例(京都地裁H29.12.7)

 撮影行為がわいせつ行為とされています。

住居侵入,強制わいせつ,強姦,窃盗,邸宅侵入被告事件
【事件番号】
京都地方裁判所判決平成29年12月7日
【掲載誌】 
LLI/DB 判例秘書登載
       主   文
 被告人を懲役7年に処する。
 未決勾留日数中220日をその刑に算入する。
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1(平成29年3月29日付け起訴状記載の公訴事実)
   正当な理由がないのに,平成27年1月7日午後零時5分頃,K市内の当時のA方に,玄関から侵入し,その頃から同日午後零時54分頃までの間,同所において,帰宅してきた同人(当時20歳)に対し,背後から抱きついてその口を塞いだ上,「叫んだら殺すぞ。」と言い,同人の衣服を脱がして全裸にし,同人の胸部付近に馬乗りになるなどの暴行脅迫を加え,その反抗を抑圧した上,強いて同人を姦淫し
第2(平成29年7月21日付け起訴状記載の公訴事実)
   正当な理由がないのに,平成27年2月15日午前1時45分頃から同日午前1時54分頃までの間,株式会社B代表取締役会長Cが看守するK市所在のマンションの空き室である○-△号及び共用通路等に1階出入り口から侵入し
第3(平成29年6月20日付け起訴状記載の公訴事実)
   正当な理由がないのに,平成27年5月28日午後11時頃から同月29日午前3時頃までの間に,K市内の当時のD方に,無施錠の西側掃き出し窓から侵入し,同人所有の現金約2万5000円を窃取し
第4(平成29年5月18日付け起訴状記載の公訴事実)
   正当な理由がないのに,平成27年9月15日午前7時30分頃から同日午後4時30分頃までの間に,K市内の当時のE方に,無施錠の西側腰高窓から侵入し,同人所有の現金約8万5000円を窃取し
第5(平成29年9月20日付け起訴状記載の公訴事実)
   平成28年1月13日午後11時38分頃,K市内の路上において,F(当時20歳)に対し,いきなり背後から抱きつき,スカート内に手を差し入れてストッキングの上からその陰部を触り,もって強いてわいせつな行為をし
第6(平成29年3月2日付け起訴状記載の公訴事実)
   G(当時18歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成28年10月28日午後7時25分頃,K市内の当時の同人方に,あらかじめ不正に入手していた合い鍵を使って玄関から侵入し,その頃から同日午後7時40分頃までの間,同所において,帰宅してきた同人に対し,その口を布様のもので塞ぎ,「声を出すな。」などと言い,同人の身体をつかんで床に倒すなどの暴行脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,同人のブラジャーの中に手を入れてその乳房をもみ,同人のパンティーの中に手を入れてその陰部を弄ぶなどし,もって強いてわいせつな行為をし
第7(平成29年1月23日付け起訴状記載の公訴事実)
   H(当時19歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成28年11月4日午前9時30分頃,K市内の当時の同人方に無施錠の玄関から侵入し,その頃から同日午前9時49分頃までの間,同所において,同人に対し,その左腕を右手でつかみ,その口を左手で塞ぎ,同人をベッドに押し倒して,両手で同人の首を絞め,「抵抗したら殺すぞ。」と言うなどの暴行脅迫を加えて,その反抗を抑圧した上,同人の衣服を脱がして全裸にし,「舐めたら許したる。」などと脅迫して自己の陰茎を口淫させ,その口淫させている状況をスマートフォンで撮影するなどし,もって強いてわいせつな行為をし
たものである。
(証拠の標目)
 省略
(法令の適用)
 省略
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,1年10月ほどの間に,住居侵入・強姦1件,住居侵入・強制わいせつ2件,路上での強制わいせつ1件,住居侵入・窃盗2件及び邸宅侵入1件を犯した事案である。
 強姦又は強制わいせつを含む4件の犯行のうち,最も重い住居侵入・強姦(判示第1)は,被害女性の自宅に侵入しての犯行という点で大きな恐怖を与えるものであり,姦淫行為の様子を撮影している点でも,被害女性に強い恐怖や不安を与えるものであるから,計画的犯行とまでは認定できないことや,姦淫行為に及んだ時間が長くないことを考慮しても,かなり悪質であり,これが低いなどという弁護人の主張は到底採用できない。住居侵入・強制わいせつ2件(判示第6及び第7)も,いずれも被害女性の自宅に侵入しての犯行であり,そのうちの1件(判示第6)は不正に入手した鍵を使用したという侵入態様の特に悪質なものであることに加えて,いずれの犯行の態様も,下着の中に手を入れて陰部や乳房を弄んだり(判示第6),全裸にした上で自己の陰茎を口淫させて射精し,その様子を撮影するなど(判示第7),被害女性の性的自由に対する侵害の程度の大きいものであり,悪質性が高い。さらに,被告人は,夜間に帰宅途中の被害女性に対して後方から抱きついて着衣の上から陰部付近を触るという路上での強制わいせつ(判示第5)も犯している。これらの犯行の被害女性の肉体的・心理的苦痛が大きく,結果が重大であることはもとより明らかであって,そのことは,各犯行の内容自体に加えて,住居侵入による各犯行の被害者がいずれも事件後に転居していることや,強制わいせつの被害者がいずれも厳罰を望み,示談の申出にも応じていないことなどからも裏付けられている。加えて,被告人は,住居侵入・窃盗(判示第3,第4)や邸宅侵入(判示第2)にも及んでいる。そうすると,被告人については,性犯罪の常習性が認められるだけでなく,規範意識の鈍麻が顕著であるというべきであり,厳しい非難に値する。以上によれば,被告人の刑事責任は重く,侵入類型の強姦1件に加えて複数の強制わいせつ等に及んだ場合の量刑傾向にも照らすと,被告人は相当長期の実刑を免れない。
 他方で,父親の協力を得て住居侵入・強姦,住居侵入・窃盗2件及び邸宅侵入(判示第1から第4)の各被害者との間で示談が成立していること(それ以外〔判示第5から第7〕の各被害者に対しても被害弁償の申出をしている。),被告人に前科前歴がないことは量刑上相応に考慮すべき事情というべきであり,その他,被告人の父親が公判廷において同居の上での監督を誓約していること,被告人が各犯行を大筋で認め,カウンセリングを受けるなどして再犯防止に努める旨供述していることなど被告人のために酌むべき事情も存在するので,これらも考慮して具体的な刑期を量定した。
(求刑 懲役9年)
(検察官江戸まりん及び国選弁護人清水和隆各出席)
  平成29年12月7日
    京都地方裁判所第1刑事部
        裁判長裁判官  橋本 一
           裁判官  奥山雅哉
           裁判官  秦 卓義

TOKIOメンバーの強制わいせつ被疑事件について起訴される可能性を指摘する弁護士。

 判例は、「わいせつとは、「徒(いたずら)に性欲を興奮または刺激せしめ、且(か)つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」」という定義を採っていません。定義は流動的です。

 強制わいせつ罪(176条)については、示談・被害届取下なので、起訴されません。
 刑法改正で、親告罪でなくなったこと(形式的には示談しても起訴される可能性があること)を指摘した上で、それでも被害者の意向を重視するという通達が出ていて、ちゃんと示談ができていれば起訴猶予になるというのが正解になります。
 東京都青少年の健全な育成に関する条例については東京都条例では性交・性交類似行為に至らないわいせつ行為を処罰していないので、そういう行為が無ければ条例で処罰されることはありません。夜間同伴罪とかについては報道されていません。

http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/entry/2017/08/09/135118
法務省刑制第121号(例規
平成29年6月26日
法務省刑事局長(公印省略)
「刑法の一部を改正する法律」の施行について(依命通達)
留意事項
1強姦罪等の非親告罪化について
性犯罪については,もとより,被害者のプライバシー等の保護が特に重要であり,事件の処分等に当たっても被害者の心情に配盧することが必要であることは,強姦罪等を非親告罪化した後も変わるものではない。
したがって,本法施行後においても,引き続き,事件の処分に当たって被害者の意思を丁寧に確認するなど被害者の心情に適切に配慮する必要があることに留意されたい。
経過措置について
本法附則第2条第1項により,本法施行前の行為については,原則として,本法による改正前の規定が適用されることに留意されたい。
なお,本法による改正前は親告罪であり,本法により非親告罪となる罪(施行の際,既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除く。)について,本法施行前の行為に係る事件を本法施行後に不起訴処分に付する場合,当該罪はその処分の時点では非親告罪であるから(第2の4(3)参照),不起訴裁定書の裁定主文は「親告罪の告訴の欠如」,「親告罪の告訴の取消し」等とはなり得ず,「起訴猶予」,「嫌疑不十分」等の主文により裁定されることとなることに留意されたい。

http://biz-journal.jp/2018/04/post_23133.html
ジャーナリズム ジャーナリズム
TOKIO山口達也容疑者、女子高生に強制わいせつ容疑…懲役刑の可能性は?
人気ジャニーズグループ・TOKIO山口達也容疑者が、女子高校生への強制わいせつの疑いで書類送検された。山口容疑者は今年2月、自宅に女子高校生を呼び出し飲酒を勧めた上、無理やりキスなどの行為を行ったとされる。すでに示談が成立し、女子高校生は被害届を取り下げたとの報道もあるが、山口容疑者が起訴される可能性はあるのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏に解説してもらった。

山岸弁護士の解説

「強制わいせつ」での送検(警察が捜査を終え、今後、起訴するか否かの判断を検察官に任せる手続)は、厳しい判断ですね。

 そもそも、わいせつとは、「徒(いたずら)に性欲を興奮または刺激せしめ、且(か)つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」、要するに「一般的に性的な行為」と思われている行為をいいます。これを、有形力を行使したり、相手が脅える言葉を使って行った場合に「強制わいせつ」となります。

 この場合、6月以上10年以下の懲役刑が科せられる可能性があります。

 さて、今後、山口さんが起訴され、有罪となるかどうかですが、報道が事実であれば、被害者の女性と「示談」できるかどうかにかかっています。「一定の金銭を支払い、謝罪する」などの示談が成立すれば、ほぼ間違いなく「起訴猶予」を理由とする不起訴となるでしょう。

 なお、山口さんは身柄を拘束されている(勾留)わけではないので、何日以内に起訴・不起訴を判断しなければならないということはありません。おそらく、検察としても一定の期間をもって、示談が成立するかどうかを見極めることでしょう。

 万が一、示談できなかった場合ですが、次に、その他のあらゆる事情(今回の場合、未成年であること、お酒を勧めたこと、密室であったこと、国民的アイドルであること)を考慮して起訴するかどうかを検討することになります。密室で女子高生に酒を飲ませた国民的アイドルともなれば、起訴は免れないのではないでしょうか。

 この場合の量刑ですが、初犯でしょうから、「懲役1年6月、執行猶予3年」が相場となるでしょう。

 東日本大震災後も変わらず福島を愛してくれた山口さんだけに、福島出身の私としても、大変がっかりな事件です。なにより、この事件が原因で『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)が放送終了になってしまったら泣くに泣けません。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)

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田中弁護士、山口メンバーを「検察が不起訴にすることは明らか」
サンケイスポーツ
 女子高生を自宅に招き無理やりキスをするなどしたとして、警視庁が強制わいせつ容疑で人気グループ、TOKIOのベース担当、山口達也メンバー(46)を書類送検していたことが25日、捜査関係者への取材で分かった。

 山口メンバーの行為について、元東京地検検事の田中喜代重弁護士(栄和法律事務所)は「強制わいせつ罪で起訴されれば6月以上10年以下の懲役刑となる重い罪」と解説する。強制わいせつ罪は、13歳以上に対しては「暴行脅迫を用いたわいせつ行為」で、「女子高生に無理やりキスした」行為はこれにあたる。以前は起訴するのに告訴が必要な「親告罪」だったが、昨年7月施行の改正刑法で規定が撤廃された。田中弁護士は「被害届も取り下げられており、検察が不起訴にすることは明らか。警察も身柄を拘束すれば被疑者の人権を侵害することになるので、逮捕ではなく書類送検にしたのだろう」と説明した。

「強制わいせつ罪の保護法益は一元的なものではなく、一方で、性行為や性的刺激の意味が理解できる被害者にとっては、「いつ、どこで、誰と、どのように性行為をしたり性欲を刺激したりされたりするか、あるいはそれを拒否するのか」についての性的自己決定権であり、他方で、それらの意味がまだ理解できない幼児等にとっては、国家による保護を必要とする児童の権利の一環である性的に健全に成長・ 発達する権利だと解するべき」松宮孝明「平成29年11月29日大法廷判決の意味するもの」季刊刑事弁護No.94

「強制わいせつ罪の保護法益は一元的なものではなく、一方で、性行為や性的刺激の意味が理解できる被害者にとっては、「いつ、どこで、誰と、どのように性行為をしたり性欲を刺激したりされたりするか、あるいはそれを拒否するのか」についての性的自己決定権であり、他方で、それらの意味がまだ理解できない幼児等にとっては、国家による保護を必要とする児童の権利の一環である性的に健全に成長・ 発達する権利だと解するべき」松宮孝明「平成29年11月29日大法廷判決の意味するもの」季刊刑事弁護No.94
 
 「本件の弁護人が主張するように、性的行為ないし「わいせつ行為」の意味を解せず、「性欲」自体をまだ持っていない幼児については、性行為等をする/しないことに関する自己決定権という意味での「性的自由」の侵害は観念し難い。」と主張したんですけど、保護法益からして流動的。

松宮孝明「平成29年11月29日大法廷判決の意味するもの」季刊刑事弁護No.94
5 本罪の保護法益
以上の検討から示唆されるように、本罪の保護法益を「被害者の性的自由」と考えたとしても、それを「性的しゅう恥心ないし性的清浄性」が害されないことと同視することはできない16。
他方、本件の弁護人が主張するように、性的行為ないし「わいせつ行為」の意味を解せず、「性欲」自体をまだ持っていない幼児については、性行為等をする/しないことに関する自己決定権という意味での「性的自由」の侵害は観念し難い。
ゆえに、本罪の保護法益は一元的なものではなく、一方で、性行為や性的刺激の意味が理解できる被害者にとっては、「いつ、どこで、誰と、どのように性行為をしたり性欲を刺激したりされたりするか、あるいはそれを拒否するのか」についての性的自己決定権17であり、他方で、それらの意味がまだ理解できない幼児等にとっては、国家による保護を必要とする児童の権利の一環である性的に健全に成長・ 発達する権利18だと解するべきであろう19。これらは、一般的な人格権の一部と解される。「性的自由」という法益は、実はこのような複合的なものだったといってもよい。
このように考えると、「わいせつ行為」を行為者の性的衝動や性行為をしたいという動機に基づく行為に限るのは狭すぎるといわなければならない。しかし、被害者が行為者や第三者の性的衝動・性的欲求の対象として扱われていない場合には、たとえ被害者自身は性的羞恥心を著しく害されたとしても、それは「わいせつ行為」によるものではない20。ゆえに、「(誰かの性的衝動・性的欲求の対象として扱うという)犯人の性的意図の有無によって、被害者の性的自由が侵害されたか否かが左右されるとは考えられない」という命題自体が、すでに疑われるべきである。

16 にもかかわらず、昭和45年判例の入江裁判官反対意見は、そのように解していた。
17 Vgl., T. Fischer, StGB, 64. Aufl. 2017, Vor§l74, Rn. 5.
18 Vgl., Schonke /Schroder/ Eisele, StGB, 29. Aufl. 2014,§174, Rn.
19 この点で、成瀬幸典「本件l審判決判批」法学教室432号(2016年) 166頁が、「意思に反して、他者の性的衝動・性的欲求の対象として扱われないこと」を本罪の保護法益と解するのは、性的行為に関する意思能力のある被害者に限れば、妥当である。
20 ゆえに、昭和45年判例の結論は正当である。もちろん、場合によって、強要罪とは別に、侮辱罪(刑法231条)が成立することはあろう。

同一児童について「2016年2月中旬ごろ、自宅で当時16歳だった娘に対し、18歳未満と知りながら自分と性交させ、」という児童淫行罪の被疑事実で逮捕したあと、「2012年1月ごろ、自宅で当時13歳未満だった娘とみだらな行為をした」という強姦罪の被疑事実で再逮捕した事例(新潟)


 前回の逮捕は「2016年2月中旬ごろ、自宅で当時16歳だった娘に対し、18歳未満と知りながら自分と性交させ、その様子を撮影して児童ポルノを製造した疑い。」で、
今回は、「2012年1月ごろ、自宅で当時13歳未満だった娘とみだらな行為をした疑い」
のようですが、
 同一児童に対する数回の淫行させる行為は包括一罪ですので、2016の淫行と2012の姦淫とは科刑上一罪になり、同一被疑事実についての再逮捕になります。
 って弁護人は気付くよね。実刑になるし、処断刑期が大きく変わるので、しっかり主張して欲しいところです。
 検察官は、児童淫行罪について起訴して起訴後の勾留つけとかないと。

強姦の疑いで男を逮捕 /新潟県
2018.04.20 朝日新聞
 県警捜査1課と子供女性安全対策課などは19日、上越地方の無職の男(45)を強姦(ごうかん)の疑いで逮捕し、発表した。容疑を認めているという。

 捜査1課によると、男は2012年1月ごろ、自宅で当時13歳未満だった娘とみだらな行為をした疑いがある。16年2月には娘にみだらな行為をさせ、その様子を撮影したとして、児童福祉法違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで今年3月に逮捕されている。
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強姦の疑いで再逮捕=新潟
2018.04.20 読売新聞社
 県警捜査1課などは19日、上越地方に住む無職の男(45)を強姦(ごうかん)(現・強制性交)の疑いで再逮捕した。発表によると、男は2012年1月、自宅で当時13歳未満の娘にみだらな行為をした疑い。13歳未満だったことから、改正前の刑法の規定で強姦容疑を適用した。調べに対し、容疑を認めているという。男は16年2月に同じ娘(当時16歳)にみだらな行為をする様子を撮影したとして、今年3月に児童福祉法違反(児童に淫行させる行為)と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)の両容疑で逮捕され、処分保留となった。

児童福祉法など違反容疑で上越地方の男逮捕
2018.04.01 新潟日報
 県警少年課とサイバー犯罪対策課、子供女性安全対策課などは31日、児童福祉法違反(淫行させる行為)と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、上越地方の無職の男(45)を逮捕した。
 逮捕容疑は2016年2月中旬ごろ、自宅で当時16歳だった娘に対し、18歳未満と知りながら自分と性交させ、その様子を撮影して児童ポルノを製造した疑い。娘から福祉機関に相談があり発覚した。男は容疑を認めている。