児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

監護者わいせつ罪で執行猶予(旭川地裁h30.3.2)

 性交・性交類似行為を処罰する児童淫行罪だと親子だとまあ実刑で、性交(姦淫・口腔性交・肛門性交)を処罰するのが監護者性交等罪になってこれは5年以上とされたのでこれも実刑で、性交・性交類似行為・姦淫・口腔性交・肛門性交以外の性的行為のみが、監護者わいせつ行為になったので、執行猶予もありうるということになります。
 監護者性交罪とともに、保護法益が不明確で、罪数処理も不明です。

「監護者わいせつ罪」15歳娘の実父有罪*道内初判決
2018.03.03 北海道新聞
 【旭川】同居する当時15歳の娘に対し、支配的な立場を利用してわいせつな行為をしたとして、監護者わいせつ罪に問われた宗谷管内の男(41)の判決公判が2日、旭川地裁であり、佐藤英彦裁判官は懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)を言い渡した。

 判決によると、男は昨年11月、親の立場を利用してわいせつな行為をした。

 佐藤裁判官は、「犯行が悪質であり、被害者の性的自由を侵害した」と述べる一方、犯行に常習性がなく、反省の態度を示しているなどとして執行猶予とした。

 監護者わいせつ罪は昨年7月施行の改正刑法で新設され、判決が出るのは道内初。立場を利用して18歳未満の者にわいせつ行為をすれば暴行や脅迫がなくても罰し、罰則は強制わいせつ罪と同じ「懲役6カ月以上10年以下」。

 同じく新設された、より重い罰則の監護者性交罪は昨年12月、札幌地裁小樽支部で後志管内の会社員の男が懲役7年の判決が確定している。

わいせつ目的誘拐罪・強制わいせつ罪で逮捕(否認)→青少年条例違反で罰金(鳥取簡裁h30.2.26)

 
 誘拐と暴行脅迫が落ちました。

強制わいせつ 容疑で71歳逮捕 鳥取署=鳥取
2018.02.06 読売新聞
 10歳代の少女を誘拐してわいせつな行為をしたとして、鳥取署は5日、容疑者(71)をわいせつ誘拐と強制わいせつの疑いで逮捕した。
 発表では、容疑者は1月9日午後3時45分頃、県東部で県内に住む10歳代の少女を自分の車に誘い込み、約1時間連れ回した上、車内で少女の胸を触ったり、キスをしたりするなどわいせつな行為をした疑い。「わいせつな行為はしたが、誘拐はしていない」と一部否認しているという。

わいせつ容疑 男に罰金30万円=鳥取
2018.03.01 読売新聞
 10歳代の少女を車に連れ込んでわいせつな行為をしたとして逮捕された容疑者(71)について、鳥取区検は県青少年健全育成条例違反で鳥取簡裁に略式起訴した。26日付。同簡裁は同日付で、罰金30万円の略式命令を出した。
 県によると、容疑者は2007年から県の非常勤職員として児童委員と民生委員を務めている。

準強制口腔性交罪で懲役3年6月(甲府地裁平成29年10月19日)

口淫させる行為については、強制わいせつ罪の時代よりは重くなりました。

上記の者に対する準強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官宮上泰明及び弁護人渡部美由紀(国選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役3年6月に処する。
 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
理由

 (犯罪事実)
 被告人は,平成29年7月19日午前8時25分頃から同日午前11時8分頃までの間に,市●●●において,かねて顔見知りのAが自動車を運転して仕事に向かう姿を発見するや,同人が知的障害者であり,被告人が指示すれば,それを拒み得ない心理状態になることに乗じて,前記Aを●●●被告人方に連れ込んで性交しようと考え,前記Aに同車から降りるよう命じ,同人が所持していた携帯電話機を取り上げた上で,同車から降車した同人に,同棟最西端に設置された階段を上り前記被告人方に行くよう命じ,階段を上る前記Aの後方に付いて更に同様に命じるなどして,同人を前記被告人方に連れ込み,同所において,前記Aに口腔性交に応じるよう指示し,被告人の指示を拒み得ない心理状態にある前記Aの口腔内に自己の陰茎を入れ,もって同人の抗拒不能に乗じて口腔性交をした。
 (証拠)
 なお,弁護人は,判示事実は間違いないとする一方で,本件は被害者の知的障害に付け込んで行われた犯行ではない旨主張するので,念のため被告人の故意について検討する。
 被告人は,その公判供述によれば,被害者に知的障害があることを知っており,正しい判断に基づけば口腔性交に応じないことも分かっていたというのであるから,被告人が被害者の抗拒不能に乗じて本件犯行に及んだことは明らかで,本件の故意も認められる。
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法178条2項,177条に該当するところ,犯情を考慮し,同法66条,71条,68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中30日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 (量刑の理由)
 被告人は,被害者に知的障害があり,性的行為に関して正常な判断ができないことを知りながら,それに乗じて,携帯電話機を取り上げたり,後方から階段を上ったりするなどして,被害者を自宅に連れ込み,全裸にさせるなどした上で口腔性交をさせているのであって,犯行態様は卑劣で悪質である。被害者は,本件により甚大な精神的苦痛を受けており,厳しい処罰感情を有しているのも当然である。
 以上によれば,被告人の刑事責任は重いというべきであり,今般の法改正により口腔性交が性交と同様の重い類型の犯罪として処罰されることになったことも踏まえると,相当期間の実刑は免れない。
 その上で,被告人が,本件犯行を認めて示談の申入れをするなど,反省の態度を示していること,罰金前科以外の前科がないこと,被告人の姉がきょうだいによる監督を約束していることなどの事情も考慮して,主文の刑を定めた。
 よって,主文のとおり判決する。
 (求刑―懲役5年)
 甲府地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 丸山哲巳 裁判官 望月千広 裁判官 種村仁志)

鉄道営業法34条2項の「婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ」

鉄道営業法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=133AC0000000065&openerCode=1
第三十四条 制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
一 停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ
二 婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ

安西温 特別刑法1 p305
④吸煙、男子禁制場所への立入り(三四条)
『制止ヲ肯セスシテ、(イ)停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ、(ロ)婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ』は、科料に処せられる。「制止」は、権限のある鉄道係員によるものに限られ、私人によるものは含まれない。本条の行為は、このような者の「制止」をきかないで、的停車場その他の「鉄道地内」(後述⑤参照)において禁煙と指定された場所や、禁煙と指定された車両(いわゆる『禁煙車』。車両の一部につき禁煙の指定がされている場合は、車両のその部分)内でタバコを吸うこと、帥婦人のために設けられた待合室または車室等(現在このようなものが存在するか疑わしいが〉に、男子が「妄に」、すなわち、正当な理由がないのに不法に立ち入ることである。

注解特別刑法02 交通編p67
〔吸煙および婦人室立入りに関する罪〕
第三四条
制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
一停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ
二婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入りタルトキ

本条の趣旨
本条は、火災を防止し、社会的礼儀を維持するための罰則規定である。本条の法定刑は、制定当時は科料とされていたが、明治四三年法律第五〇号により「十円以下ノ科料」とされたのである。現在、罰金等臨時措置法四条三号により、単に「科料」と読みかえられ、二条二項により科料は二〇円以上四千円未満ということになる。
本条は、鉄道略則七条に「吸煙並婦人部屋男子出入禁止ノ事 何人ニ限ラス『ステーション』構内吸煙ヲ禁セシ場所並ニ吸煙ヲ禁セシ車内ニテ吸煙スルづヲ許サス且婦人ノ為ニ設アル車及部屋等ニ男子妄リニ立入ルヲ許サス若右等ノ禁ヲ犯シ掛リノ者ノ戒メヲ用ヒサル者ハ車外並ニ鉄道構外ニ直一一退去セシムヘシ」とあり、鉄道犯罪罰例五条に「規則第七条ノ禁ヲ犯ス者ハ払タル賃金ヲ没シ十円以内ノ罰金ニ処ス」とあるのを引き継いだものである。
科料のみが定められているので、逮捕、勾留に制限があるほか 、執行猶予ができず、教唆犯、幇助犯は処罰できず 、刑の時効は一年であり、公訴時効も一年である等の点に留意する必要がある。
行為
「制止ヲ肯セス」とは制止に従わずにという意味であるが、これを要件としたのは、一号および二号の各行為は、旅客が当初気付かず、あるいは故意なくすることがありうるためであろう。制止されたのに、これに従わない場合であるから故意犯であり、制止に気付かない場合とか制止以前の行為は処罰しえない。
制止は、本条の趣旨からみて権限ある鉄道係員によるものでなければならず、私人が制止してもこれにあたらない
三 吸煙禁止の場所
「停車場其ノ他鉄道地内」の意義については、三七条注二参照。「吸煙禁止ノ場所」または「吸煙禁止ノ車内」とは、火薬類の積卸をする場所とか火薬類を積載した貨車内のように法令上定められている場所のほか、寝台使用中の寝台車内とか国電区間で旅客が混雑する車両等鉄道が合理的な基準により指定した場所も含む。なお、「きつ煙は御遠慮下さい」と表示した場所は、本条にいう吸煙禁止の場所とはいえない。また、き煙を御遠慮下さいというマイク放送も制止にはあたらない。

退去強制
本条の違反者は四二条一項二号により車外または鉄道地外に退去させることができ、その場合にはすでに支払った運賃は還付しない(同条2項)

注釈特別刑法第六巻 交通法・通信法編Ⅱp26
第三十四条
制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス
一停車場其ノ他鉄道地内股煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ
二婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等二男子妄ニ立入リタルトキ
一 本条は、火災を予防し、社会的礼儀を維持するための罰則規定である。
本条の法定刑は、法制定当時、単に「科料」とされていたが、明治四三年の改正で「十円以下ノ」が加えられて今日に至っている。
二 本条の行為は、制止をがえんじないで、
(1)鉄道地内で禁煙と指定された場所又は禁煙と指定された車両(車両の一部につき禁煙の指定がされている場合は当該一部)内で喫煙すること(2)婦人のために設けた待合室又は車室等に、男子がみだりに立ち入ること、である。
「制止」は、権限のある鉄道係員によるものと解され、私人によるものを含まない。本条の罪は、制止に従わず、あえてすることによって成立するから、故意犯である。過失による場合はもちろん、制止前の行為もまた処罰の対象とならない。
「停車場」は、「鉄道地内」の例示である。「鉄道地内」の意義については、三七条の注釈二参照。
三 本条の罪の法定刑は、「十円以下ノ科料」とされているが、罰金等臨時措置法四条三号により、単に「科料」と読みかえられる。科料の上限は四千円未満、下限は二十円である。

検察官控訴・検察官上告ではないのに~~村井敏邦「刑事法のなかの憲法(10)強制わいせつ罪の成立に、わいせつ目的を必要とするか」時の法令 第2043号


 被告人控訴、被告人上告でした。検察官は趣意書出してないだろ。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87256
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=86760

強制わいせつ罪の成立についての判例変更
昨年(二○一七年)一一月二九日、最高裁判所は、大法廷判決において、上記一九七○年判例を変更しました。「被告人は、被害者が一三歳未満の女子であることを知りながら、被害者に対し、被告人の陰茎を触らせ、口にくわえさせ、被害者の陰部を触るなどのわいせつな行為をした。」という事案です。
第一審判決は、自己の性欲を刺激興奮させ、満足させる意図はなく、金銭目的であったという被告人の弁解が排斥できず、被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとしたのですが、強制わいせつ罪の成立には、性的意図があったことは必要がないとして、強制わいせつ罪の成立を認めました。
検察官の控訴を受けた高等裁判所は、第一審の事実認定を認めた上で、客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ、行為者がその旨認識していれば、強制わいせつ罪が成立し、行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして、一九七○年判例を現時点において維持するのは相当でないと説示して、強制わいせつ罪の成立を認めた第一審判決を是認しました。
検察官は、一九七○年判例に違反すると主張して上告しました。この上告に対して最高裁判所が下したのが、判例変更によって検察官の上告を棄却するという判断でした

児童ポルノ単純所持の刑事処分と社会的制裁

バラツキがありますね

所属 刑事処分 懲戒 行政処分・影響
新聞社次長 罰金10万円 減給  
漫画家 罰金20万円 なし 連載中断
教諭 罰金20万円 懲戒免職 免許取消
県職員 罰金80万円 停職4月  
高校事務職員 罰金30万円 減給6月  
高知県警 巡査長 30万円 本部長訓戒 依願退職
和歌山県警 巡査長 30万円 本部長訓戒 依願退職
海上保安 30万円 停職2月  
検事 50万円 停職2月 依願退職
教員 20万円 停職6月 依願退職
塾講師 30万円 不明  
検察事務官 20万円 停職1月 依願退職
皇宮護衛官 不明 なし 依願退職
航空自衛隊 不明 停職5日 依願退職
警視庁 不明 無し 依願退職

「いわゆる弁当切り」の時系列

 弁護士ドットコムで、弁当切りが微妙な相談が出ていました。弁護士の回答もぶれています。(最後の検事出身の弁護士の回答は法律を間違っています。)
 大まかな手続きを並べてみると、大至急で手続きされると、4月末には確定させることができます。上訴で最短で4ヶ月半稼げる。

  2017/12/12 第1審判決言渡=懲役4月実刑
   ↓
  2018/4/27 最高裁に到達,即日棄却決定(確定)

 時間稼ぎしやすいのは1審ですのでそこから慎重に審理してもらうことが必要でしょう。

下村忠利弁護士「刑事弁護人のための隠語俗語実務用語辞典」
弁当
執行猶予のこと(刑法25条)。「弁当持ち」が猶予期間を満了させることを「弁当切る」.満了できずに取り消されてしまうことを「弁当食う」という。「先生,弁当切れるように弁護して下さい」「あかん,無理。もうあきらめて弁当食えよ」。
・・・
城祐一郎検事「捜査・公判のための実務用語・略語・隠語辞典」
弁当持ち(べんとうもち)(隠語)
執行猶予期間中の者のこと。その由来の詳細は不明だが.執行猶予判決が弁当に相当するものとして.それを持っていることから言われているものと思われる。

 法定の手続を並べて、必要な日数を予想すると、■■■■■■■の部分が決定・判決を書く期間で未知数ですが、一審判決後最速で5ヶ月で確定する可能性があるようです

最悪最速の時系列
2015/5/13 前刑判決=懲役1年6ヶ月・執行猶予3年
2015/5/27 前刑判決確定
2017/11/28 1審1回目
2017/12/12 第1審判決言渡=懲役4月実刑
2017/12/26 被告人,控訴申立て(法366条1項)
2017/12/27 控訴状が第1審裁判所に到達
2017/12/27 第1審裁判所から高裁に記録到達
被告人に控訴趣意書差出最終日を指定した通知書が送達(規則236条2項)
国選弁護人選任(第1回公判期日指定つき)
2018/2/20 控訴趣意書差出最終日(規則236条3項)に控訴趣意書提出
2018/2/21 控訴趣意書を検察官に送達
2018/2/28 検察官の答弁書差出期間(規則243条)
2018/3/8  控訴審第1回公判期日
最速2018/3/8 即日判決言渡し
■■■■■■■■■■■■■■■■

2018/3/22 被告人上告申立て
2018/3/23 上告状が高裁に到達
2018/3/24 高裁から最高裁に記録到達
2018/3/25 上告趣意書の差出最終日を指定した通知書を被告人に送達(規則252条1項)
2018/4/22 上告趣意書差出最終日に上告趣意書提出
■■■■■■■■■■■■■■■■
最速2018/4/22 上告棄却判決(法408条)又は上告棄却決定(法414条,386条1項3号)
2018/4/23 判決又は決定の被告人への送達
2018/4/26 決定に対して異議申立て(法428条3項,386条2項,385条2項,422条)
2018/4/27 最高裁に到達,即日棄却決定(確定)
2018/5/27 前刑執行猶予期間経過

裁判所も警戒しています。

原田國男「量刑判断の実際〔第3版〕(立花書房・平成11年)」
p44
(3) 執行猶予中の被告人に対して実刑とした場合,その執行猶予期間の満了が迫っているときには,被告人が控訴・上告を行って実刑の確定を遅らせると,前刑の執行猶予の取消しを免れることができる。改正刑法草案73条2項は,このような不都合を回避するために,期間経過後の執行猶予の取消しを認めている。現行刑法には,このような規定がないから,前記のような事態も避け得ない。
そこで,第一審としてもなるべく判決宣告を早める等の措置を取ることは可能である。控訴審の係属期間として約3か月,上告審の係属期間として約2か月が見込まれることを考えておく必要がある。(40)
また,被告人側がその目的で不合理な引き延ばしを図ることもあるので,それに乗じられるようなことがないようにしなければならなに。(41)
もっとも,事実を全面的に否認しているからといって,引き延ぱしのためだけと速断すべきではなく,事案として通常のケースと同様に処理すべきは当然である。
ただ,前記の点も頭の隅に入れておくのが賢明であろう。なお,前刑終了後5年の経過が近いときには,執行猶予の言渡しが法律上可能となるように,被告人が引き延ばしを図ることもある。同様の注意が必要であろう。
(40)この期間は,一応の見込みにすぎなし、から,これよりも長くなることも,逆に短くなることもある。ただ,執行猶予期間の満了が切迫している事件については,上訴審としてある程度処理を早めているのが実情であろう。執行猶予取消しまで、のフロセスとしては,上告棄却決定→異議申立て→同棄却決定(判決確定)→執行猶予取消請求→同取消決定→即時抗告→同棄却決定告知までが考えられる。この告知があれば,特別抗告に対する決定前でも,取消しの効果が発生する(最大決昭和40年9月8日刑集19巻6号636頁等)。
(41) 最決昭和36年5月9日刑集15巻5号771頁は,執行猶予を付し得ることとなる10月余りも先に判決言渡しを延期した期日変更決定を違法であるとしている。

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1092/b_629319/
黒岩 英一 弁護士
長崎 長崎市
弁護士ランキング 長崎県1位
ベストアンサー ありがとう
控訴審の判決日が3月中になるとしても、そこから2週間で上告すると4月になり、上告趣意書の提出期限が通常は1ヶ月以上設けられますので、5月に入ることは間違いありません。

そこから上告審の審理も多少はありますので、ぎりぎりであることはその通りですが、5月を超える可能性は高いと思われます。

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1092/b_613282/
川面 武 弁護士
東京 豊島区
弁護士ランキング 東京都7位
ベストアンサー ありがとう
> ①在宅起訴で、道路交通法違反の軽微な事案でしかも在宅で1年も引っ張られてる事は、判決に影響してきますか?罰金刑で抑えてくださいとこちらは訴えてます。②控訴をした場合、弁当切りできますかね?

①については,在宅事件は検察にとって急いで処理する誘因がないため,伸びただけで,さして判決に影響する事由ではないと思います。

②については,国選の上告事件を扱えるのは東京三会の弁護士だけですので,比較的ノウハウを持っている立場として回答すれば,適切な対応をとれば弁当切りはほぼ固いことを以下に示します。

まず,12日に実刑判決が出たら,控訴期限最終日(26日)の午後に,当該裁判所の事件受付に控訴状を提出します。そうすると原審の記録チェックだけで年を越すことになり,高裁に記録を送るのはどんなに早くても1月4日(通常は1月9日以降)と考えられます。
その後弁護士の選任意向通知が発送されますが,それを無視します。
裁判所が職権で国選弁護人を選任するのが,おそらくどんなに早くても月末くらいになるでしょう。要急事件として処理されるとしても,国選弁護人の控訴趣意書提出最終日まで2.3週間はかかるでしょうら,第1回公判は超特急でも2月末くらいでしょうか。国選弁護人とよく話し合って,この時期は確定申告で忙しいとか色々理由を付けてもらえば判決は3月中旬になるでしょう。
以下上告も同じです。上告期限最終日の午後高裁の事件受付に持参して上告状を出します。
超特急でも弁護人選任は4月になるでしょう。これを無視するのも高裁段階と同じです。
しかも今年は曜日の並びがいい。最高裁判所も質問者の事件など土日に処理はしませんから,最終日は11日です。上告趣意書の提出期限自体がこの日前後かもしれません。
余裕で逃げ切りです。
一つ忘れていました。国選弁護人の中には,弁護士としては有能であっても,弁当切りのことをよく理解しない人もいます。各々最終日に提出するよう強く要望しておく必要があります。
なお最高裁判決には,異議申し立てができこれで10日前後伸ばせます。いずれにせよ質問者の事例は,質問者と弁護人が適切な対応をすれば,弁当切りは余裕で可能な事案です。なお控訴状や上告状の提出を1日でも遅れると逆にアウトですので要注意です。

2017年12月12日 00時18分

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1092/b_613282/
松本 篤志 弁護士
大阪 大阪市 北区
弁護士が同意2
ありがとう
> 控訴をした場合、弁当切りできますかね?
> 30年の5月13日が執行猶予が切れる日です。
一審判決宣告から約半年となると、なかなか楽観的なことは言えないのが実際だと思います。
高裁も最高裁も、本件のような事案については、あまり日をあけずに書面の提出期限を定めたり期日指定したりして、前刑の執行猶予期間中に上告棄却まで済ませてしまおうとする傾向にあります。
ただ、あなた側としては、希望する罰金刑にはならなくとも、できるだけ手続が先延ばしになる方が有利なのは勿論ですから、各弁護人と相談しながら上手に対応する必要があります。 2017年12月11日 21時44分
・・・・
松本 篤志 弁護士
大阪 大阪市 北区
弁護士が同意1
ありがとう
補足ですが、前刑の執行猶予期間満了が近い事案などの場合、控訴裁判所が国選弁護人を選任するにあたり、控訴趣意書の提出期限のみならず初回期日まで指定しており、期日調整を理由とした引き延ばしができないように対策が採られることがあります。

もちろんそれでもなお手を変えて時間稼ぎをすることは可能ですが、上記の例でも分かるように裁判所も黙って引き延ばしを許すことはありませんので、具体的な部分については、手続が進む都度に弁護人等とよく相談することが大切です。 2017年12月12日 00時48分

この回答は、間違っています。確定しないと執行猶予が取り消されることはありません。
 ↓

https://www.bengo4.com/c_1009/c_19/c_1092/b_629378/
小野寺雅之弁護士
質問者がありがとう
控訴が棄却され,上告も棄却されると,第一審判決が確定することになります。
つまり,ご相談の事案では昨年12月12日の判決が確定するということです。
たとえ控訴審判決あるいは上告審決定が執行猶予期間である今年の5月27日の後になされたとして,第一審判決が執行猶予期間中になされたという事実に変わりはありません。
そのため,控訴・上告をしたことによって,いわゆる弁当切れとなることはないはずであり,服役は免れないと思います。
・・・
https://p40.bengo4.com/a_40130/g_40132/l_801539/
検事として刑事事件を扱った17年間の実務経験と,法科大学院教授として刑事法の研究と法曹養成に携わった10年間の学識経験・教育経験とが相まって,より質の高い刑事弁護を提供できる弁護士です <<

追記 令和6(2024)年3月10日
 手持ち記録から上告棄却決定から、異議申立棄却決定までの日数を拾いました。

上告棄却決定 異議申立棄却
7月19日 8月7日 19
3月11日 3月28日 17
9月28日 10月13日 15
7月18日 8月31日 44
12月26日 1月15日 20

「就寝中だった女子生徒の上半身裸の映像をひそかに撮影、保存して児童ポルノを製造した」というひそかに製造罪の被疑事実

 パンツ脱がして撮影とかだと、ひそかに製造ではなく、姿態をとらせて製造罪ですよね。
 準強制わいせつ罪に発展する恐れ




http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/accident/news/20180222/2974510
児童ポルノ製造などの容疑で少年逮捕 県警
2月22日 12:44
 栃木署と県警少年課は22日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで、東京都江戸川区、調理師の少年(19)を逮捕した。
 逮捕容疑は県内在住の中学校女子生徒(14)が18歳未満であることを知りながら、1月24日、女子生徒の持つカメラ付きタブレット端末で自分の裸を撮影させ、少年に送信させたほか、2月5日にも就寝中だった女子生徒の上半身裸の映像をひそかに撮影、保存して児童ポルノを製造した疑い。容疑を認めているという

匿名起訴の6パターン(城祐一郎「殺傷犯捜査全書」)

 福井地裁の事件で、起訴状では匿名だったが、検察官請求証拠に実名が出ていたので、判決では実名が出て、判決書謄本で被害者名をマスクしようとした事件があったので、一応控訴しておいた。

名古屋高裁金沢支部平成27年7月23日
    判    決
 上記の者に対する強要,強要未遂,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成27年1月8日福井地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官立石英生出席の上審理し,次のとおり判決する。
    主    文
 本件控訴を棄却する。
    理    由
 本件控訴の趣意は,弁護人奥村徹作成の平成27年4月6日付け控訴趣意書,同月10日付け控訴趣意書,同年5月19日付け控訴趣意補充書及び同月21日付け控訴趣意補充書のとおりであるから,これらを引用する。論旨は,第1回公判期日における弁護人の釈明内容を踏まえると,不法な公訴受理,審判の請求を受けない事件について判決をした違法,理由不備,訴訟手続の法令違反及び法令適用の誤りを主張するものである。
第1 控訴趣意中,不法な公訴受理(刑訴法378条2号違反)の主張について
 論旨は,要するに,検察官は,起訴状記載の公訴事実において,各被害児童について,それぞれその実名で特定できる証拠があるにもかかわらず,それをしないまま起訴し,変更後の訴因(以下「本件訴因」という。)においても,各被害児童を,その被害当時の居住場所,年齢並びにインターネットアプリケーション「LINE」(以下「LINE」という。)において使用する名前及びユーザーIDで特定した(以下「本件特定方法」という。)だけで,その氏名で特定しなかったところ,個人的法益に対する罪である強要罪並びに平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)7条3項の児童ポルノ製造罪(以下「3項製造罪」という。)及び同法7条4項の児童ポルノ公然陳列罪にあっては,本件訴因は特定されているとはいえないから,刑訴法256条3項に違反しており,公訴棄却されるべきであるのに,公訴を棄却せずに実体判断をした原判決には,不法に公訴を受理した違法がある,というのである。
 そこで検討するに,公訴事実は,裁判所に対し審判請求の範囲を特定するとともに,被告人に対し防御の範囲を特定することを目的とするものであることから,特に個人的法益に対する罪については,犯罪の客体である人についても,それが具体的事実によって特定されている必要があり,一般的には,その実名を記載することが,その特定のための最も確実かつ簡明な方法である。
 しかしながら,人を特定するにあたって,訴因の特定が求められる目的にもとらない限り,必ずしもその氏名を表示しなくても,訴因不特定として違法となることにはならないと解されるところ,本件において,LINE上では,各個人には一つのユーザーIDが付され,他に同一のユーザーIDを使用する者が存在しないことから(原審甲12),各被害児童に係るユーザーIDを付すことで,各被害児童は,客観的に特定されていると認められ,本件特定方法により各被害児童を特定したとしても,審判請求の範囲を画することにおいて,特に支障は生じないというべきである。
 また,本件は,被告人が,LINEを通じてインターネット上で知り合った18歳未満の被害児童2名に対し,同児童らがいずれも18歳に満たないことを知りながら,それぞれ脅迫して,同児童らをしてその裸体等を撮影させ,その写真画像データ等を送信させるなどした上,その画像データ等をそれぞれインターネット上で公然と陳列するなどしたという事案であり(なお,以下では,原判示第1における被害児童を「被害児童A」,同第2における被害児童を「被害児童B」という。),被告人は,各被害児童の実名を知らないことがうかがわれることからすれば,本件訴因で特定された犯行の日時,場所,犯行方法による特定のほか,各被害児童がLINE上で使用していた名前や被害当時の居住場所を併せ考えることで,被告人において,自らのどの行為が犯罪に問われているのか識別することも十分可能であり,被告人自身も,捜査段階において,それらにより,被疑事実を識別した上で,本件各犯行を自白している(原審乙3ないし7)。また,被害当時の各被害児童の年齢が特定されていることから,各被害児童が児童ポルノ法2条1項に定める児童に該当することも明らかとなっている。そうすると,上記のような本件事案の内容,性質から,検察官が,起訴状の公訴事実に各被害児童の実名を特定して記載する証拠を収集していたとしても,その実名を起訴状に記載することにより,各被害児童の名誉等が侵害され,あるいは,被告人が各被害児童の実名を知ることで,再被害を受けることを考慮して,各被害児童につき,実名で特定せず,本件特定方法によって特定した上,公訴を提起したとしても,訴因の特定方法として十分合理性があり,本件訴因については,その特定に欠けるところはないというべきである。
 弁護人は,本件とは全く別の,被害者を,単に「被害者」としか記載せずに起訴された事例を挙げて,種々論難するが,いずれも本件訴因から離れた一般的,抽象的な主張に過ぎず,採用できない。
 以上によれば,本件公訴を棄却せずに実体判断をした原判決に,不法に公訴を受理した違法はなく,論旨は理由がない。
第2 控訴趣意中,審判の請求を受けない事件について判決をした違法の主張について
 論旨は,要するに,本件訴因では,各被害児童の実名を秘匿し,LINEのID等を用いた本件特定方法によって各被害児童が特定されていたのに,原判決は,訴因変更を経ることなく,その罪となるべき事実において,各被害児童をその実名で特定しているから,原判決には,刑訴法378条3号後段にいう審判の請求を受けない事件について判決をした違法がある,というのである。
 しかしながら,証拠によれば,本件訴因に記載された各被害児童と原判決の罪となるべき事実に実名で記載された各被害児童とがいずれも同一人物であることは明らかであって,原判決には,審判の請求を受けない事件について判決をした違法はなく,被告人に対し不当な不意打ちを与えたことにもならない。論旨は理由がない。
第3 控訴趣意中,理由不備の主張について
 論旨は,要するに,弁護人に対して交付された原判決書抄本では各被害児童の氏名がマスキングされており,他に特定事項がないので,被害児童は1名であると解するほかないのに,「争点に対する判断」の第2の3項において,被害児童が別人であると認定した原判決には,理由不備の違法がある,というのである。
 しかしながら,原判示第1の1ないし3における被害児童Aと,同第2の1ないし3における被害児童Bが別人であることは記録上明らかである(なお,原審裁判所が弁護人に対して交付した原判決書抄本においても,各被害児童の年齢(当時17歳と15歳)や所在地(福井県内と北海道内)からすれば,両者が別人であることは極めて容易に見て取れる。)から,論旨はその前提を欠いており,理由がない。
第4 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の主張について
 論旨は,要するに,原審裁判所は,弁護人からの原判決書謄本交付請求に対し,各被害児童名を秘匿した抄本を交付したが,刑訴法46条は,判決書謄本交付請求に対し裁判所の裁量で一部をマスキングした抄本を交付することを認めておらず,弁護人が交付を受けた原判決書抄本によっては,被害児童が何名いるのかも確認できず,控訴審における被告人の防御活動上支障を生じるから,原審裁判所の上記措置には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある,というのである。
 しかしながら,刑訴法379条にいう「訴訟手続」とは,原判決の直接の基礎となった審判手続をいうと解されるところ,弁護人の原審裁判所に対する刑訴法46条に基づく判決書謄本交付請求は,原判決の宣告が終了し,原判決書も作成された後にされたものであることは明らかであるから,同請求に対し判決書抄本を交付した原審裁判所の手続は,刑訴法379条の「訴訟手続」には当たらないというべきである。したがって,その余の点について検討するまでもなく,論旨は理由がない。

城祐一郎「殺傷犯捜査全書」p1070

起訴状における対応
一方,起訴状については,被告人の手元に直接に届くものであるだけに, これに被害者特定事項が記載されるとなれば,被害者の上記意図は全く無視されるということになろう。
(1)近時の取組
この点について, 「近年,性犯罪やストーカー規制法違反等の起訴状の公訴事実において,被害者の氏名を実名で記載せず,氏名とは別の表記によって被害者を特定する実務上の取扱いがなされるようになってきている。」(初澤由紀子「起訴状の公訴事実における被害者の氏名秘匿と訴因の特定について」慶應法学31号229頁) ことが広く知られるようになっている。
そして, その際の被害者氏名の記載に代わる被害者特定のための表記の方法としては,
①被害者の氏名をカタカナ表記にし,被害者の生年月日や年齢とともに記載する')。
②被害者が被害に遭った後婚姻するなどして姓が変わった場合において,被告人がこれを知らない場合,被害当時の被害者の旧姓を記載する2)。
③被害者のいずれかの親の氏名及び続柄,被害者の年齢を記載する3)。
④被害者が自宅で被害に遭った後,転居した場合,犯行場所を記載した上,「当時○○○(犯行場所)に単身居住していた女性(当時○歳)」などと記載する4)。
⑤被告人が被害者の勤務先や学校名を把握していて,被害者の通称名や姓又は名だけを知っている場合, 「○○○(勤務先や学校名)に勤務する(通学する) 『△△△』(通称名,姓又は名) と称する女性(当時○歳)」などと記載する5)。
⑥被告人が被害者の携帯電話のメールアドレスなど電子機器の唯一無二の識別番号を把握していた場合, 「携帯電話のメールアドレスが○○@△△だった女性(当時○歳)」などと記載する6)。
という方法が採られていることが知られている(前出・初澤244, 245頁)。
(2)考察
このような被害者の特定を秘匿する記載であっても,刑訴法256条3項が規定する
公訴事実は,訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには,できる限り日時,場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
との訴因の特定に対する要請に反するものではないと考えられる(もっとも,裁判所がそれでは訴因の特定として不十分であると判断した場合には,公訴棄却判決(同法338条4号)がなされることになる。)。
このような方法を採ることは可能であるにしても,最終的に, そのような記載方法で訴因の特定として十分であるかどうかを判断するのは裁判所であり,現在のところ,個々の裁判所がどのような判断をするかは必ずしも予見できるものではない。したがって,被害者に対し,事前にこのような記載での起訴状で裁判を行うことができると確約することはできないこととなる。
また,仮に, このような記載で裁判が行われたとしても,判決には実名が記載されてしまう例が多く, そのような場合には,判決謄本の交付の際に,当該実名をマスキングすることで対応するしかないという問題も残されている。
l)①の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては,住居侵入,強姦致傷及び強制わいせつ等に関する平成26年7月2日横浜地裁判決(公刊物未登載),電車内におけるいわゆる迷惑防止条例違反事件に関する平成26年7月16日横浜地裁判決(公
刊物未登載),通行中の女性に対する強制わいせつ等事件に関する平成26年8月7日前橋地
裁判決(公刊物未登載),住居侵入, ストーカー規制法違反事件に関する平成25年5月7日前橋地裁太田支部判決(公刊物未登載)などがある。
2)②の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては,住居侵入,強姦事件に関する平成25年6月6日東京地裁判決(公刊物未登載),通行中の女性に対する強制わいせつ事件に関する平成25年9月20日東京地裁判決(公刊物未登載),住居侵入,強盗強姦事件に関する平成26年2月21日横浜地裁判決(公刊物未登載)などがある。
3)③の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては,公園内において行われた女児に対する強制わいせつ等事件に関する平成25年11月12日東京地裁判決(公刊物未登載),駅構内において行われた強制わいせつ事件に関する平成26年1月15日東
京地裁判決(公刊物未登載),電車内における強制わいせつ事件に関する平成25年12月3日東京地裁判決(公刊物未登載),同様の事件に関する平成25年11月28日横浜地裁判決(公刊物未登載)などがある。
4)④の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例はない。逆に,被害者の実名を記載するよう起訴状の補正を検察官に求め,応じなければ公訴棄却判決をするとして,被害者の実名での補正をさせた上で実体判決を行った,住居侵入,強制わいせつ事件に関する平成25年12月26日東京地裁判決(公刊物未登載)がある。
5)⑤の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては, ストーIo74第3篇殺傷犯捜査手続法カー規制法違反事件に関する平成25年7月12日東京地裁判決(公刊物未登載)などがある。
6)⑥の方式での公訴事実による起訴を認めて,判決が言い渡された裁判例としては,児童買春・児童ポルノ禁止法違反,脅迫等事件に関する平成26年6月16日水戸地裁土浦支部判決(公刊物未登載),離婚訴訟中の妻の交際相手に対する脅迫事件に関する平成26年9月30日水戸地裁下妻支部判決(公刊物未登載)等がある(以上,前出・初澤247~250頁参照。)。

「甲野に対し,「俺は若い男をいじめると興奮するんだ。」などと語気荒<申し向け,ライターの火を同人の顔に近付けて脅迫し,その反抗を著しく困難にして同人の陰茎を自己の肛門内に入れさせ, もって肛門性交した」という強制肛門性交罪の犯罪事実(警察官のための充実犯罪事実記載例第4版)

 こういう事件があったんだろうね。

警察官のための充実犯罪事実記載例第4版
【男性による男性に対する肛門性交事例(陰茎を挿入させる)】
被疑者は,強制的に甲野太郎(当時21歳) と性交等をしようと考え,平成○○年○月○日午後○時○分頃,東京都○○区○○7丁目○番○号所在の「ホテル○○」13号室において,上記甲野に対し,「俺は若い男をいじめると興奮するんだ。」などと語気荒<申し向け,ライターの火を同人の顔に近付けて脅迫し,その反抗を著しく困難にして同人の陰茎を自己の肛門内に入れさせ, もって肛門性交したものである。

医師による準強制わいせつ罪(行為否認)で懲役2年実刑(長野地裁H29.12.4)

長野地方裁判所平成29年12月04日
 上記の者に対する準強制わいせつ被告事件について、当裁判所は、検察官大川晋嗣並びに国選弁護人山浦能央(主任)及び同米山秀之出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役2年に処する。
未決勾留日数中170日をその刑に算入する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、(住所略)所在のE病院に精神科医として勤務していたものであるが、自らが担当医を務めていた入院患者の●●●(以下「被害者」という。当時●●●歳。)が自閉症スペクトラムを患っており、かつ、同人の担当医(指導医)としてその退院を決定できることに乗じ、早期退院に必要な行為であるかのように装って同人にわいせつな行為をしようと考え、平成27年12月20日午後9時28分頃から同月21日午前零時8分頃までの間、埼玉県内、群馬県内又は長野県内において、同人に対し、被告人が使用する携帯電話機からアプリケーションソフト「F」を利用して、「今夜診察した方がよければ、それが早期退院につながるかもですね。」「今夜どうしても自分と会って、どんな診察になっても最短で退院になるのを望むしか無いでしょうね」「産婦人科の検査をやらないと退院できない。」などとメッセージを送信し、または、通話した上で、同日午前零時20分過ぎ頃、前記E病院本館1階B病棟●●●において、被害者に対し、「ズボンを脱いで。」「パンツも脱いで。」などと言い、同人に早期退院に必要な行為であると誤信させて同人を抗拒不能の状態に陥らせ、同人の膣内に手指を挿入し、乳房をなめるなどし、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした。
 (証拠の標目)
 (事実認定の補足説明)
1 弁護人は被害者に対するわいせつ行為の事実を争い、被告人からわいせつ行為を受けたとする被害者供述は信用できないと主張する。
  しかしながら、当裁判所は判示の事実を認めたので、以下、その理由を補足して説明する。
5 以上によれば、信用できる被害者供述に沿って、判示のわいせつ行為の事実を認定することができる。
 (法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法178条1項、176条前段に該当するので、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処し、同法21条を適用して未決勾留日数中170日をその刑に算入することとし、訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 (量刑の理由)
 被告人は、被害者の担当医(指導医)として被害者の退院を決定できる立場と、被害者が早期の退院を望んでいることを利用して、早期の退院に必要な検査であるかのように装って、本件犯行に及んだもので、欲求本位の身勝手で卑劣な犯行である。犯行態様は、膣内に指を入れたり、乳房を直接なめるなどしたというものであり、計画性が強いものではないことや、比較的短時間であったと推察されることを考慮しても、比較的悪質な部類に属するものといえる。被害者は、担当医として信頼していた被告人からわいせつ行為を受け、大きな精神的苦痛を被っただけでなく、本件当時未成年であった被害者の人格形成に悪影響を及ぼしかねないといえる。被害者の処罰感情は厳しい。また、被告人は、前記のとおり不合理な弁解に終始しており、これまで被害者に対する慰謝の措置はとられていない。
 以上に鑑みると、被告人に前科がないことなど被告人のために酌むことのできる事情を十分に併せ考慮しても、被告人を主文の刑に処するのが相当である。
(求刑懲役3年)
刑事部
 (裁判長裁判官 室橋雅仁 裁判官 荒木精一 裁判官 加納紅実)

「銭湯浴室内において、同人に対し、いきなりその陰茎を手で弄び、もって強いてわいせつな行為をした」という強制わいせつ事件につき、犯人性に疑いがあるとして無罪とした事例(堺支部h30.1.11)

 防犯カメラ映像について犯人として矛盾しない容貌の人物が、被告人以外に少なくとも数名おり(例えば論告要旨別紙3の番号203、220の人物)、これらの者が犯人である可能性を排斥し去ることはできない。」とされています。

大阪地方裁判所支部
平成30年01月11日
主文
被告人は無罪。

理由
第1 概要
  本件公訴事実は「被告人は、入浴中のA(当時13歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え、平成28年5月29日午後8時45分頃から同日午後8時48分頃までの間に、(住所略)の銭湯浴室内において、同人に対し、いきなりその陰茎を手で弄び、もって強いてわいせつな行為をした」というものである。
  検察官は、被害者であるAの供述に基づいて被告人が犯人であると主張し、弁護人らは、被告人が本件公訴事実記載の日時に同記載の銭湯(以下「本件銭湯」という。)にいたことは争わないが、同記載の事件があったことを争うほか、被告人は犯人ではないから無罪であると主張する。
  当裁判所は、被害者であるAの供述等によれば、Aが本件公訴事実記載の被害に遭った事実は認められるものの、Aの犯人識別供述自体から直ちに被告人が犯人であると認めることはできず、これと他の事実関係を併せ考慮しても、被告人が犯人であると認めるにはなお合理的な疑いが残ると判断した。以下、その理由を詳述する。
第2 争いがなく、かつ、証拠により容易に認められる事実
 1 本件銭湯内部の配置等
  本件銭湯には、脱衣場、浴室及び露天風呂があり、浴室には浴槽のほか、西側に5つの洗い場が並んでおり、洗い場ごとに、東西方向の通路を挟んだ両側にそれぞれ4つのシャワー及び照明が設置されている。
 2 A及び被告人の入退出の時刻等
  (1) 被告人は、平成28年5月28日午後6時54分頃に本件銭湯に入店し、脱衣場と浴室を行き来した後、脱衣場から浴室に移動した。Aの弟、Aの友人、同人の弟(以下、この3名を併せて「弟ら」という。)及びAは、同日午後8時16分頃、脱衣場から浴室に移動した。その後、弟らは、同日午後8時45分38秒頃、被告人は、同日午後8時47分46秒頃、Aは、午後8時48分5秒頃、それぞれ浴室から脱衣場に戻った。
  (2) Aは、通報を受けて本件銭湯に臨場した警察官と共に、同日午後10時00分頃、脱衣場に入り、同日午後10時1分頃、浴室に移動したが犯人を見つけることはできなかった。その頃、脱衣場にいた被告人は、同日午後10時3分頃、脱衣場を出て、同日午後10時4分頃、本件銭湯から退店した。
 3 被告人の身体的特徴等
  被告人は、身長約168センチメートルの男性である。同日当時、27歳で、髪型は、5厘刈り程度の黒髪坊主頭、体格は中肉であった。
第3 事件性について
  本件公訴事実に係る被害状況についてのAの証言は、具体的でその内容からして勘違いするようなものでなく、被害に遭ったとする直後に、母親に被害を申告して警察に通報し、被害届を提出した事実によって裏付けられている。Aの証言は信用できるというべきである。弁護人は、Aの年齢からして、一般論として、周囲の気を引くなどするために虚偽の被害申告をする可能性が高いと主張するが、抽象的な可能性を指摘するにすぎず、その供述の信用性を左右するものではない。したがって、信用できるAの証言によれば、Aが本件公訴事実記載の被害に遭ったことが認められる。
第4 被告人の犯人性について
 1 写真面割状況について
  Aの証言及びBの証言等によれば次の事実が認められる。
  大阪府C警察署の警察官Bは、平成28年10月4日、A宅において、Aに対し、被告人を含む12人の男性の写真が貼付された面割台紙を用いて、いわゆる写真面割を実施した。なお、この写真はいずれも大きさが均一で被告人と年齢が似通ったものであり、被告人の写真番号は6番であった。
  Bは、Aに対し、「事件の犯人を覚えていますか」「もし覚えているなら、今からこちらが用意した写真を見てほしい」「この中に犯人がいるかもしれないし、いないかもしれないんだけど、それを見て犯人がわかれば教えてほしいし、似ている人がいたら教えてほしい、いなかったらいないということを教えてほしい」と事前に説明して写真面割を行った。面割台紙を見せる際に、Aは「覚えているか不安です」と言っていた。Aは、最初にぱっと面割台紙を見たときは「難しい」と言ったため、BはAに1枚ずつ順番に見ていってもらうと、Aは6番だけ似ていると答え、他の11枚については、似てないとか、全然違うとか否定的なことを言った。Bは、Aが6番が似ていると答えたので、どこが似ているかを尋ねると、Aは「最初は髪型が似てると思って目にとまったんだけれども、見てたら顔の感じとか、そんなんもこの人がすごく似てる」と言った。ただ、Aは、顔が似ているとは言っていたが、鼻や口などについて具体的に言っていなかった。
 2 写真面割時におけるAの犯人識別供述の信用性
  被害現場の洗い場にはシャワーごとに照明が設置されており、Aの証言によれば、Aは被害の前後に犯人と約1メートルの距離で会話をしており、その際に犯人の顔等を視認していたというのであって、現に被害直後に似顔絵が描ける程度の情報量の記憶があったのであるから、視認条件はよかったといえる。また、写真面割の実施状況を見ても、面割台紙に貼付された写真の枚数やその内容、写真面割における写真の示し方や尋ね方に暗示や誘導があったなどの問題はみられない。したがって、Aの犯人識別供述は基本的に信用することができる。
 3 写真面割時におけるAの犯人識別供述の評価・位置づけ
  このようにAの犯人識別供述は基本的に信用できるというべきであるが、写真面割は被害時から4か月以上経てなされたものであり、その間に記憶が減退、変容した可能性を否定し難く、現にAは最初に面割台紙を見た際には難しいと言って12枚の写真中から被告人を犯人として選び出すことができなかったのである。また、被告人の写真を選び出した根拠を見ても、犯人の具体的な特徴を指摘してのものではない。このような点に照らせば、この犯人識別供述に、これにより直ちに被告人が犯人であると認定できるほどの証拠価値を認めることはできないというべきである。Aの犯人識別供述は、被告人を含む被告人によく似た人物が犯人であるという限度の評価にとどめるのが相当である。
  そして、Aは、被害直後から公判を通じて、犯人像として、年齢20歳くらい、身長170センチメートルくらい、中肉、坊主頭(なお、Aは写真面割時において、最初は髪型に着目して被告人の写真を選んでいるところ、この写真の被告人の髪は、本件当時の5厘刈り程度ではなく、それなりの長さがあることからすれば、Aの供述する「坊主頭」とは、髪の長さ数ミリメートルから上記写真程度のものをいうものと解するのが相当である。)と語っていることに照らせば、これらの特徴をも併せ持つ者が犯人であると認められる。
  そうすると、被告人は、上記認定のとおり、これらの特徴をよく満たすものであるところ、検察官は、そのような被告人が、たまたま事件とは無関係に本件銭湯にいたという偶然は通常あり得ないから、被告人が犯人であると強く推認できると主張する。しかしながら、容貌以外の犯人の特徴はありふれたものにすぎない上、本件犯行時多数人が本件銭湯に在館していたことを踏まえれば、他人のそら似の可能性を否定しがたい。
第5 本件防犯カメラ映像による犯人の絞り込みの成否
  検察官は、犯行が可能であったとする人物、すなわち弟らが浴室から脱衣場の出入口に現れるよりも前に浴室に入場し、同人らより後に浴室から脱衣場に現れた人物につき、本件銭湯に設置された防犯カメラの映像(以下「本件防犯カメラ映像」という。)を精査すれば、Aの供述する犯人像と整合する人物は被告人以外にいない旨主張する。
  そこで検討するに、Aの供述する犯人像を前提として本件防犯カメラ映像を精査し、犯人を絞り込むに当たっては、画像上の限界や主観的な捉え方の違いによる判断の差異があり得ることを踏まえる必要があるため、通常人なら誰が見ても明らかに犯人像と特徴が異なるといえる人物のみを除くべきであるところ、本件防犯カメラ映像を精査すると、そのようにいえない人物、すなわち犯人として矛盾しない容貌の人物が、被告人以外に少なくとも数名おり(例えば論告要旨別紙3の番号203、220の人物)、これらの者が犯人である可能性を排斥し去ることはできない。よって、検察官の主張は採用できない。なお、本件防犯カメラ映像からは、検察官が指摘するように、被告人が長時間浴室と脱衣場を行ったり来たりし、また、脱衣場に警察官が臨場した後に短時間で本件銭湯を出たなどの不審と評価し得る行動が認められるが、犯人であることを推認させる行動とまではいえない。
第6 結論
  上記のとおり、Aの犯人識別供述から直ちに被告人を犯人と認めることはできないし、これと検察官が指摘する他の事実関係を併せ考慮しても、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない事実関係が含まれているとは認められない。そうすると、被告人が犯人であると認めるには合理的な疑いが残るというべきである。
  したがって、以上のとおり本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
 (求刑・懲役1年6月)
第1刑事部
 (裁判長裁判官 武田義德 裁判官 櫻井真理子 裁判官 白井知志)

陰部触り撮影等したという強制わいせつ罪(176条後段)と、姿態をとらせて製造罪を併合罪にした事例(横浜地裁h29.12.26)

 横浜地裁の別の裁判体は観念的競合にしていて、控訴審でも維持されています。それが横浜地裁に伝わりません。
 東京高裁は併合罪説だと思ってたんですけど、ちょっと観念的競合説に寄りました。ダビングすると併合罪、そうでなければ観念的競合。
 撮影行為を強制わいせつ罪(176条後段)の犯罪事実にも、製造罪にも挙げているから、撮影行為はわいせつでもあり、製造でもあるのに、「直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為とは、本質部分において共通性を欠き、社会的意味合いを異にする別個の意思の発現行為であるから」ってよく言えるよな。観念的競合になっている罪は、普通社会的意味合い違いますよね。そもそも違う罪なんだから。

第1 各児童がいずれも13歳未満であることを知りながら、同人らにわいせつな行為をしようと考え、
 1 (平成28年11月30日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
  平成27年9月21日、神奈川県P市●●●所在の託児所●●●(以下「本件託児所」という。)内において、●●●(当時3歳。以下「A」という。)に対し、その陰部付近を直接触るなどした上、これを携帯電話機付属のカメラで撮影し
 もってそれぞれ13歳未満の女子に対し、わいせつな行為をし
・・・
第2 各児童がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、
 1(平成28年11月30日付け追起訴状記載の公訴事実第2)
  平成27年9月21日午後10時13分頃、本件託児所内において、Aに対し、その性器を露出させる姿態をとらせ、これを携帯電話機付属のカメラで撮影した上、同月22日午前4時1分頃、同所において、その静止画データ2点を、同携帯電話機から同所に設置されたパーソナルコンピュータを介して、電子メールを使用して送信又は下書き保存する方法により、東京都(以下略)所在のRビル内に設置されたS株式会社が管理するサーバコンピュータ内蔵の記録装置に記録させて保存し
もって第2の1について衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造したものである。
・・・
 なお、弁護人は、各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪とは観念的競合であると主張するが、直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為とは、本質部分において共通性を欠き、社会的意味合いを異にする別個の意思の発現行為であるから、両罪は観念的競合の関係ではなく、併合罪の関係にある。

東京高裁h30.1.30
原判決は,同一機会の犯行に係る強制わいせつ(致傷)罪と児童ポルノ製造罪の罪数関係について,被害児童に姿態をとらせてデジタルカメラ等で撮影した行為が強制わいせつ(致傷)罪に該当する場合に,撮影すると同時に又は撮影した頃に当該撮影機器内蔵の又は同機器に装着した電磁的記録媒体に保存した行為(一次保存)を児童ポルノ製造罪とする場合には,これらを観念的競合とし,一次保存をした画像を更に別の電磁的記録媒体に保存した行為(二次保存)を児童ポルノ製造罪とする場合には,併合罪としていると解される(原判決は,罪数判断に当たり,強制わいせつの態様をも併せ考慮していると考えられる。)。いずれにせよ,わいせつな姿態をとらせて撮影することによる強制わいせつ行為と当該撮影及びその画像データの撮影機器に内蔵等された記録媒体への保存行為を内容とする児童ポルノ製造行為は,ほぼ同時に行われ,行為も重なり合うから,自然的観察の下で社会的見解上一個のものと評価し得るが,撮影画像データを撮影機器とは別個の記録媒体に複製して保存する二次保存が日時を異にして行われた場合には,両行為が同時に行われたとはいえず,重なり合わない部分も含まれること,強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,前者が被害者の性的自由を害することを内容とするのに対し,後者が被害者のわいせつな姿態を記録することによりその心身の成長を害することを主たる内容とするものであって,基本的に併合罪の関係にあることに照らすと,画像の複製行為を含む児童ポルノ製造行為を強制わいせつとは別罪になるとすることには合理性がある。原判決の罪数判断は,合理性のある基準を適用した一貫したものとみることができ,理由麒甑はなく,具体的な行為に応じて観念的競合又は併合罪とした判断自体も不合理なものとはいえない。

横浜地方裁判所平成29年12月26日
上記の者に対する強制わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官亀卦川健一、同田中惇也、主任弁護人中野憲司、弁護人金子泰輔各出席の上審理し、次のとおり判決する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 各児童がいずれも13歳未満であることを知りながら、同人らにわいせつな行為をしようと考え、
  (4) 別表1―5記載のとおり、同年1月21日から同年2月21日までの間、前後4回にわたり、●●●(当時1歳。以下「F」という。)に対し、陰部を直接触る、陰部に綿棒様のものを入れるなどした上、これを携帯電話機付属のカメラで撮影し
  (5) 別表1―6記載のとおり、同年1月20日及び同年2月19日の前後2回にわたり、●●●(当時1歳。以下「G」という。)に対し、陰部を直接触る、陰部に綿棒様のものを入れるなどした上、これを携帯電話機付属のカメラで撮影し

 もってそれぞれ13歳未満の女子に対し、わいせつな行為をし
第2 各児童がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら、

  (4) 別表2―5記載のとおり、同年1月21日午前5時57分頃から同年2月21日午前5時12分頃までの間、前後4回にわたり、Fに対し、他人がFの性器等を触る姿態及びその性器等を露出させる姿態をとらせ、これを携帯電話機付属のカメラで撮影し、その動画データ合計5点を電磁的記録媒体である同携帯電話機内蔵の前記記録装置に記録して保存し
  (5) 別表2―6記載のとおり、同年1月20日午後10時19分頃から同日午後10時21分頃までの間及び同年2月19日午後11時55分頃から同日午後11時56分頃までの間の前後2回にわたり、Gに対し、他人がGの性器等を触る姿態及びその性器等を露出させる姿態をとらせ、これを携帯電話機付属のカメラで撮影し、その動画データ合計4点を電磁的記録媒体である同携帯電話機内蔵の前記記録装置に記録して保存し

  さらに、同月4日頃、神奈川県内又はその周辺において、前記第2の4(1)ないし(4)のデータ合計14点を同携帯電話機内蔵の記録装置から同携帯電話機に装着した電磁的記録媒体であるマイクロSDカードに記録して保存し、もって第2の1について衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し、第2の2ないし4について他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し
たものである。
(法令の適用)
 被告人の判示第1の1ないし4の各所為(第1の2及び3(1)ないし(5)は別表の番号ごと)は、いずれも平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段に、判示第2の1の所為は児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号に、判示第2の2ないし4の各所為(第2の2、3(1)ないし(5)及び4(1)ないし(4)は別表の番号ごと)は、いずれも同法7条4項、2項、2条3項2号、3号にそれぞれ該当するが、判示第2の各罪についていずれも所定刑中懲役刑を選択し、前記の前科があるので刑法56条1項、57条により判示第1及び第2の各罪の刑についてそれぞれ再犯の加重をし、以上は同法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い判示第1の3(2)別表1―3番号4の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役15年に処し、同法21条を適用して未決勾留日数中240日をその刑に算入し、訴訟費用は、刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
 なお、弁護人は、各強制わいせつ罪と各児童ポルノ製造罪とは観念的競合であると主張するが、直接的なわいせつ行為とこれを撮影する行為とは、本質部分において共通性を欠き、社会的意味合いを異にする別個の意思の発現行為であるから、両罪は観念的競合の関係ではなく、併合罪の関係にある。
(求刑 懲役18年、弁護人の科刑意見 懲役10年)
第1刑事部
 (裁判長裁判官 深沢茂之 裁判官 伊東智和 裁判官 澁江美香)
別表(省略)

強制性交罪(既遂)につき、酌量減軽した上で懲役3年執行猶予5年とした事例(東京地裁h29.11.15)

 法定刑は上がりましたが、量刑は変わっていないようです。酌量減軽が多用されることになりそうです。
 示談して「告訴を取り下げる」などと述べてもらえば、重視されるようです。

東京地方裁判所平成29年11月15日
主文
被告人を懲役3年に処する。
この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、●●●(当時26歳。以下「被害者」という。)に強制性交をしようと考え、平成29年7月16日午前5時頃から同日午前6時15分頃までの間、東京都(以下略)当時の被告人方において、被害者に対し、その左手首を右手でつかんでベッドの上に引き倒し、同人の両肩を両手で押さえつけながら同人の唇に無理矢理接吻した上、同人の両足を両手で押さえつけるなどの暴行を加え、その反抗を抑圧して同人と性交したものである。
(証拠の標目)
(法令の適用)
 被告人の判示所為は刑法177条前段に該当するところ、なお犯情を考慮し、同法66条、71条、68条3号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し、情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
 被告人は、飲食店で同僚らと飲酒していた際、被害者らに声をかけて共に飲食することとなり、うまくいけばセックスできるかもしれないなどと考えて、酔った被告人を介抱するつもりの被害者に自宅内まで付き添わせ、本件犯行に及んでいる。被告人は、被害者が被告人方から帰ろうとするや、手をつかんでベッドの上に引き倒し、被害者が何度もやめて欲しいと述べて、終始抵抗していたにもかかわらず、これを意に介さず、判示のとおりの暴行を加えて、性交に及んでいる。その犯意は強固であり、被害者の人格を無視した欲望の赴くままの自己中心的な犯行であって、卑劣というほかない。被告人に対しては強い非難が妥当し、その刑事責任は重い。
 もっとも、本件では、被告人は、両親の協力の下、被害者に対して400万円を支払って示談し、被害者が宥恕の意思を示し、被害届、告訴も取り下げる意向を示している。この点は、本件の量刑を決めるに当たって一定の重みを持つ事情である。加えて、本件の暴行は同種事案の中ではそれほど強度のものとは認められないこと、さらに、被告人に前科前歴がなく、被告人の母が出廷し、今後、被告人と同居して監督していく旨述べていることなど被告人にとって酌むべき事情も認められ、これらを併せ考慮すると、被告人に対しては、酌量減軽をした上で、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑 懲役4年)
刑事第15部
 (裁判長裁判官 鈴木巧 裁判官 梶山太郎 裁判官 宇野由隆)

13歳未満の者に裸画像を送らせる行為の擬律

 一昨年くらいまでは、弁護人奥村徹が強制わいせつ罪説を主張して、検察官が「わいせつ行為には当たらない」と反論してましたが、最近の裁判例の流れとしては、強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪ですよね。
 逮捕容疑は製造罪だけ(被疑者国選非適用)で、起訴するときに強制わいせつ罪(176条後段)が追加されるおそれもありますから、弁護人は警戒して下さい。

送らせる行為を強制わいせつ罪とした裁判例
東京地裁H18.3.24
大分地裁h23.5.11
高松地裁H28.6.2
岡山地裁h29.7.25
松山地裁西条支部H29.1.16
高松地裁丸亀支部h29.5.2
札幌地裁H29.8.15(強制わいせつ罪176条後段)

岡山地裁平成29年 7月25日 
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
 上記の者に対する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官武用訓充出席の上審理し,次のとおり判決する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 A関係
 1(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったA(当時歳。以下「A」という)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年9月13日頃から同月21日頃までの間に,大阪市〈以下省略〉被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3,5)からAが使用するスマートフォンにアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「B」を名乗る第三者を装い,Aが「C」を名乗る被告人を怒らせた旨及び「あなたが天誅リストに載っています。」「学校や家にあることないこと言われる。」「実際に学校にも来られる。」「その結果,学校に行けなくなる。」等のメッセージを送信し,さらに「C」を名乗り,「今頃きてなにいってんねんな」「天罰な」「後悔すればいいわ」「おまえがエッチ以外は何でもするって言ったんやろ」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,スマートフォンに送信するよう要求し,同年9月21日頃から同年10月17日頃までの間に,20回にわたり,●●●内のA方において,Aに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Aが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表1記載のとおり,同年9月21日から同年10月17日までの間に,16回にわたり,その画像データ合計20点をAが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,強いてわいせつな行為をし,
 2(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第2(平成29年5月29日付け訴因及び罰条変更請求書による変更後のもの))
 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,平成26年9月21日頃から同年10月17日頃までの間に,20回にわたり,A方において,Aに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Aが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表1記載のとおり,同年9月21日から同年10月17日までの間に,16回にわたり,その画像データ合計20点をAが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を使用して送信させ,日本国内に設置されたa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させ,もって,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより,児童ポルノを製造し,

 (法令の適用)
 罰条 第1の1,3,5,第2の1,第3の1,第4の1,第6の1の各所為
 いずれも刑法176条前段(第1の3,5を除き,包括して)
 第1の2,第2の2,第3の2,第4の2,第5の2,第6の2,第7の2,第8の2,第9の各所為
 いずれも児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ処罰法」という)7条4項,2項,2条3項3号(第9を除き,包括して)
 第1の4,6の各所為
 いずれも児童ポルノ処罰法7条4項,2項,2条3項1号(第1の4は包括して)
 第5の1,第7の1,第8の1の各所為
 いずれも包括して刑法176条
 第10の各所為
 別表番号ごとに,いずれも児童ポルノ処罰法7条6項後段,前段,2条3項3号
 第11の所為
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織犯罪処罰法」という)10条1項前段
 刑種の選択 第1ないし第9につき,いずれも懲役刑
 第10,第11につき,いずれも懲役刑及び罰金刑
 併合罪の処理 刑法45条前段
 懲役刑につき,刑法47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第1の5の罪の刑に加重)
 罰金刑につき,刑法48条1項,2項
 未決勾留日数の算入 刑法21条(懲役刑に算入)
 労役場留置 刑法18条
 没収 刑法19条1項2号,2項本文(平成29年岡地領第188号符号3,5は第1の1の,符号10は第2の1の,符号11,12は第3の1の,符号18は第1の4の,いずれも犯行供用物件)
 追徴 組織犯罪処罰法16条1項本文(第11の罪に係る同法13条1項5号の犯罪収益等に該当するが,既に費消して没収できない)
 訴訟費用の不負担 刑訴法181条1項ただし書


 (強制わいせつ罪の成否と児童ポルノ製造罪との罪数関係)
第1 弁護人の主張
 弁護人及び被告人は,①被害女児が自らの陰部等を撮影して被告人に送信してきた,いわゆる自撮り行為(第1の1,第2の1,第3の1,第4の1,第5の1,第6の1,第7の1(1),第8の1(1))は,わいせつ行為には当たらず,強制わいせつ罪は成立しない,②仮に強制わいせつ罪が成立するとしても,その他の強制わいせつ罪(第1の3,5,第7の1(2),第8の1(2))も含め,各児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあり,一罪であると主張する。
第2 強制わいせつ罪の成否
 1 関係証拠によると,被告人は,インターネット上で知り合った11歳ないし14歳の被害女児に,第三者を装って天誅リストに載っているから被告人に謝った方がいいなどと言うとともに,謝ってきた被害女児にごめんなさいで許すわけがない,胸と顔を出した写メを送れなどと言って脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,被害女児の自宅において,衣服を脱いで乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,被害女児のスマートフォン等付属のカメラでその姿態を撮影させ,その画像データや動画データを被告人が使用するスマートフォンに送信させるなどしたことが認められる。
 2 一般に,被害者を裸にして写真を撮影する行為は,被害者に直接触れていなくとも,わいせつ行為に当たると解されているところ,本件において,被害女児らは,被告人の要求に従い,衣服を脱いで乳房や陰部等を露出したり陰部を指で開いたりする姿態をとり,それをスマートフォン等で自ら撮影して被告人に送信しているのであって,被害女児は被告人と全く面識がないこと,被害女児が撮影して送信した写真や動画は容易に複製や頒布が可能な拡散可能性の高いデータであったことなども考慮すると,被害女児らの性的羞恥心は著しく害されているといえ,被害女児らの性的な自由の侵害という点からみて,撮影者が被告人であるか被害者であるかに質的な違いは見出し難い。
 確かに,女性が密室において一人で自らの陰部等を撮影する行為が,直ちにわいせつ行為といえるかには疑問もある。しかし,本件において,被害女児らは,被告人から衣服を脱いで乳房や陰部等を露出したり陰部を指で開いたりしている写真等を自ら撮影して被告人に送信するよう要求されて,その要求どおりに撮影しているのであって,被害女児らが自らの陰部等を撮影した行為は,被告人に送信することのみを目的として行われたものである。
 また,本件においてわいせつ行為に当たるか否かが問題となっているのは,被害女児らのいわゆる自撮り行為のみではなく,自撮り行為により撮影した写真や動画を被告人のスマートフォンに送信したことまでを含めた一連の行為であって,その一連の行為は被告人も予定していたものであり,被告人は自撮り行為が行われた状況をリアルタイムで認識していないとはいえ,自撮り行為により撮影された写真や動画を予定どおり自撮り行為後間もなく認識している。
 弁護人は,このような行為がわいせつ行為に当たるとすると,子どもが自発的に撮った写真を率先して送信したのでない限り,ほぼ全ての児童ポルノ製造行為が強制わいせつ行為となると指摘するが,強制わいせつ罪の成立には,被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行脅迫が立証される必要があることなどに照らすと,その指摘は当たらない。
 また,弁護人は,同様の事案において強要罪児童ポルノ製造罪の成立を認めた裁判例(東京高判平成28年2月19日判例タイムズ1432号134頁)の存在を指摘するが,強制わいせつ罪ではなく強要罪として起訴された事案における判断であり,本件とは事案が異なる。
 3 以上によると,本件においては,被害女児らが陰部等を自ら撮影して被告人に送信するなどした行為はわいせつ行為に当たるというべきであり,強制わいせつ罪が成立する。
第3 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の罪数
 本件において罪数が問題となっている強制わいせつ罪は,被告人が,被害女児を脅迫してその反抗を著しく困難にした上,被害女児に自らの陰部等を撮影させて被告人に送信させたり,被害女児に被告人の陰茎を口淫させたり,ビデオ通話機能で接続した状態で被害女児に陰部等を露出させて動画配信させたりしたというものである。他方,児童ポルノ製造罪は,被告人が,被害女児に陰部等を撮影させた写真を送信させてそれをa株式会社が管理するサーバコンピュータに記録・保存させたり,被害女児が被告人の陰茎を口淫するなどの姿態を動画で撮影して被告人のパーソナルコンピュータに記録・蔵置したり,ビデオ通話機能で接続した状態で被害女児に陰部等を露出させた動画配信を録画機能を利用して被告人のパーソナルコンピュータに記録・蔵置したりしたというものである。
 これらに照らすと,本件のような場合,強制わいせつ罪の行為と児童ポルノ製造の行為とは,一部重なり合う部分があり,特に,被害女児に陰部等を自ら撮影の上送信させて児童ポルノを製造した場合には,相当部分が重なり合うともいえる。しかし,本件強制わいせつ行為の中核部分は,脅迫により反抗が著しく困難な状態となった被害女児に,陰部等を撮影させて送信させたり,口淫させたり,陰部等を露出させて動画配信させたりしたわいせつ行為にある一方,本件児童ポルノ製造行為の中核部分は,それらをコンピュータに保存・蔵置した製造行為にあるのであって,前記の両行為が,通常伴う関係にあるとはいえず,また,行為に同時性があるとしても,社会的事実として強い一体性・同質性までは認められない。
 そうすると,本件において,強制わいせつ行為と児童ポルノ製造行為とは,社会的見解上別個のものといえるから,観念的競合の関係にはなく,併合罪の関係にあるというべきである。
 (国選弁護人溝渕順子 求刑懲役7年及び罰金100万円,主文同旨の没収・追徴)
 岡山地方裁判所第1刑事部
 (裁判官 後藤有己)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180222-00097200-rccv-l34
広島市の小学校教諭 児童ポルノ禁止法違反で逮捕
2/22(木) 19:32配信  中国放送
出会い系アプリで知り合った小学生の女の子に
わいせつな画像を撮影させて送らせたとして、
広島市の小学校教諭の男が警察に逮捕されました。
児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕されたのは
広島市立緑井小学校の教諭容疑者です。
警察によりますと容疑者は
去年10月、千葉県内に住む小学生の女の子に
わいせつな画像を撮らせ、
その画像をLINEで携帯電話に送らせた疑いがもたれています。
容疑者は、
出会い系アプリを通じて女の子と知り合ったということで、
女の子の保護者が2人のやり取りに気づき、
警察に相談したことから事件が発覚しました。
記者)
「校長によりますと、容疑者の勤務状態はまじめで、
 きのうまでは普通に勤務していたということです」
秋山 哲校長)
「事件のことを聞いて非常に驚いている。
 保護者や子どもたちに
 不安な思いや心配かけて申し訳なく思っている」
校長によりますと容疑者は、
遅刻や欠勤をすることはなく、
担任を務めていた5年生のクラスの運営も
きちんと行っていたということです。
秋山 哲校長)
「あたり子どもたちが安心して学校に通ってこれるよう、
 これから職員と力を合わせ、
 関係機関と協力して頑張っていきたい」
取り調べに対し容疑者は、
「性的欲求を満たすためだった」と供述し、
容疑を認めているということで、
警察は余罪の可能性も視野に捜査を進める方針です。
RCC BROADCASTING CO.,LTD.
・・・
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180222-00000054-asahi-soci
LINEで女児に裸の画像送らせた疑い 小学教諭を逮捕
2/22(木) 14:50配信
 小学生の女児に上半身裸の写真を撮らせ、スマートフォンで送信させたとして、千葉県警は22日、広島市立小学校の教諭の男(34)=同市安佐北区=を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。
 捜査関係者によると、男は昨年10月中旬、18歳未満と知りながら、千葉県内の小学生の女児に上半身が裸の静止画を撮影させ、自分のスマホに送信させて保存した疑いがある。送受信には無料通信アプリ「LINE(ライン)」を使っていたという。通信履歴を見た少女の母親が県警に相談し、事件が発覚した。
 県警は、2人がネット上の「交流アプリ」で知り合った可能性が高いとみている。
朝日新聞社