児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

判示事項 千葉県青少年健全育成条例違反保護事件において少年を第1種少年院に送致した決定に関し,同条例違反を非行事実として認定して保護処分に付することには「この条例の罰則は,青少年に対しては適用しない。」という同条例の規定の解釈を誤った法令違反があること等を理由とする抗告について,同規定は処罰を免除する規定であり,保護処分に付することは可能であるなどとして,これを棄却した事例[東京高裁平成28.6.22決定]

千葉県の解説書では、罰則適用しない趣旨がよくわかりません。
 決定でも千葉県の解説が構成要件非該当(s63)から「罰則不適用」(h25)と左右していると指摘されています。

s60千葉県青少年健全育成条例の解説
免責規定なし

s63千葉県青少年健全育成条例の解説
第30条 この条例に違反した者が青少年であるときは, この条例の罰則は,青少年に対しては適用しない。ただし営業に関し成年者と同ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用については, この限りではない。
追加 (昭和60年条例第36号)
〔要旨〕
本条は、罰則適用の例外規定である。本条例上青少年は、保護・育成の対象であり、いわゆる有害環境の責任を成人に求めているので、青少年が行った条例違反行為については、営業に関し成年者と向ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用を除いては、罰則を適用しないこととしたものである。
[解説)
l 営業に関し成年者と向ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する条例違反行為は罰則の適用がある。
2 婚姻成年は、本条の対象外である。
3 本条の罰則を適用しないことの法的意義は、次のとおりである。
犯はは、犯罪の構成要件に該当し、違法かっ有責な行為である場合に成立する。
本条の罰則を適用しないという意義は、青少年の造反行為は、構成要件にそもそも該当しないということである。
第13条の2と第20条第l項の関係で説明すると、第20条第1項の構成要件は、第13条の2の規定を受けて定まっているが、第20条第1項の構成要件は、本条の規定により、行為者(犯罪の主体)から青少年を除くものとして修正されている。
したがって、青少年の行為は、第13条の2の禁止規定に該当しでも第20条第l項の犯罪構成要件には該当しないこととなる。
ちなみに、少年法の関係でいえば、同法第3条第1項第1号ではな〈同項第3号に該当することになる。

h06
本条は,罰則適用の例外規定である。本条例上,青少年は保護・育成の対象であり,青少年健全育成の責任を成人に求めているので,青少年が行った条例違反行為については,営業に関し成年者と同ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用を除いては,罰則を適用しないこととしたものである。

h09
本条は,罰則適用の例外規定である。本条例上,青少年は保護・育成の対象であり,青少年健全育成の責任を成人に求めているので,青少年が行った条例違反行為については,営業に関し成年者と同ーの能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用を除いては,罰則を適用しないこととしたものである。

h17
【解説】
本条は、罰則適用の例外規定である。本条例上青少年は、保護・育成の対象であり、青少年健全育成の責任を成人に求めているので、青少年が行った条例違反行為については、営業に関し成年者と同一の行為能力を有する青少年が営む当該営業に関する罰則の適用を除いては、罰則を適用しないこととしたものである。
 営業に関し成年者と同一の行為能力を有する青少年が営む当該営業に関する条例違反行為は罰則の適用がある。

少年法
第三条(審判に付すべき少年)
 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
2家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる

       千葉県青少年健全育成条例違反保護事件
東京高等裁判所決定平成28年6月22日
       主   文
 本件抗告を棄却する。
       理   由

1 本件抗告の趣意は,要するに,①原決定は,千葉県青少年健全育成条例の解釈を誤って適用しており,決定に影響を及ぼす法令違反がある,②少年は,友人に命令されてやむなく本件非行に及んだものであり,本件非行事実の認定には重大な事実の誤認がある,③本件非行事実及び要保護性の判断を誤り,試験観察を経ずに第1種少年院送致とした原決定は,著しく重い処分であり不当である,というのである。
2 法令違反の論旨について
 (1) 原決定が認定した非行事実は,少年が,深夜,当時の少年方において,被害女性(当時17歳)が18歳に満たないものであることを知りながら,同人と,単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為をしたという,千葉県青少年健全育成条例違反(同条例20条1項。以下「本条例」という。)の事実である。
   本条例は,青少年に対し,単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為またはわいせつな行為をすることを禁止し(本条例20条1項),「この条例に違反した者が青少年であるときは,この条例の罰則は,青少年に対しては適用しない。」と定めているところ(本条例30条本文。なお,「青少年」とは「小学校就学の始期から18歳に達するまでの者」と定義されている(本条例6条1号)。),所論は,少年は当時17歳であったから,本条例違反を非行事実として認定して保護処分に付すことは,本条例30条本文の解釈を誤ったものであるというのである。
   この点について,原決定は,本条例20条は,青少年の性が欲望の対象とされやすいという社会的背景を前提に,性行為やわいせつな行為が未成熟な青少年に与える影響の大きさに鑑み,このような行為から青少年を保護するために定められたものであるところ,このような目的は,行為者が青少年か否かで異なるものではないこと,本条例20条1項が「何人も」と規定しているのは,その趣旨の表れと考えられること,本条例30条本文の規定は,行為者が青少年である場合に,構成要件該当性や違法性を阻却する規定ではなく,処罰を免除する規定であり,少年法が定める保護処分は,少年の保護,教育を目的とするもので,処罰ではないから,保護処分に付すことは可能であることなどを説示した上,少年に対し,本条例20条1項を適用して,前記のとおりの非行事実を認定し,少年を前記保護処分に付した。
 (2) 原決定の判断は概ね相当であり,当裁判所も是認することができる。
   所論は,①本条例30条本文は,「罰しない。」ではなく,罰則規定を「適用しない。」としており,処罰阻却事由と捉えることは,文言の解釈として不自然である上,そのように解すると,例外的に青少年でも本条例が適用される場合を定める同条ただし書の規定の意味がなくなる(すなわち,同条本文の場合でもただし書の場合でも,本条例に違反した青少年は「罪を犯した少年」(少年法3条1項1号)として保護処分に付され得ることになり,検察官送致の可能性の有無しか異ならないことになる。)こと,②本条例の制定過程における議論によれば,本条例は,青少年の性を欲望の対象とする大人の身勝手な行為を取り締まることを前提に,青少年が違反行為を行った場合は,補導等による対応を想定していたといえること,③昭和63年度版の本条例の解説によれば,本条例30条本文の規定は,行為者が青少年である場合には,構成要件該当性自体を排除しているものであるとの解釈が示されていること,④平成16年から平成26年まで,千葉県において,本条例違反で青少年を検挙したことは一度もないところ,本件は,当初,集団強姦の罪で逮捕,勾留されたが,捜査の結果,集団強姦での送致が難しかったことから,十分に検討することなく本条例違反での家庭裁判所送致となったものと思われることなどを指摘し,少年に対し,本条例20条1項違反の非行事実を認定して保護処分を言い渡すことはできないと主張する。
   しかし,まず,①について,本条例は,20条1項において,何人に対しても,単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為またはわいせつな行為をすることを禁止し,30条本文において,「この条例に違反した者が青少年であるときは」,罰則を適用しない旨を定めているのであって,このような本条例の文言の解釈として,30条本文が構成要件該当性が欠け,あるいは違法性を阻却するという趣旨ではなく,むしろ,処罰阻却事由ととらえる方がその文理に忠実であるというべきである。また,このような解釈をしても,刑事処分に処せられることを前提として検察官送致されることと保護処分に付されることとは,それぞれの性質に照らして意味あいが大きく異なるのであるから,同項本文とは検察官送致の可能性の有無が異なるだけであるといっても,同項ただし書の意味が失われることにはならない。②についても,所論が指摘する本条例の制定過程において,主として成人による行為を念頭において議論されていたとしても,必ずしも,青少年による本条例20条1項該当の行為を,本条例30条本文によって保護処分の対象とすることを許さない趣旨であるとは解されない。③についても,所論指摘のような解説もされている一方で,例えば,平成25年度版の同解説では,本条例20条1項の「何人も」について,「成人であると少年であるとを問わず,現に県内にいるすべての者」との解釈が示され,さらに,平成6年度版の同解説では,本条例30条について,「本条は,青少年に対する罰則のみの適用を除外するものであり,行為を合法化するものではない。したがって,青少年が本条例に違反した場合は,保護,補導の対象となる。」との記載もあるなど,本条例の解説は必ずしも一定の解釈を前提としたものとは解されない上,県の本条例の運用担当者の解釈がいずれであっても,本条例30条本文の趣旨を処罰阻却事由とみることの妨げとなるものではない。さらに,④についても,上記のとおり,本条例の解説に様々な解釈が示されていることなどの事情に照らすと,そもそも,本条例について一定の解釈を前提とした明確な運用方針があったとはいい難い上,所論が指摘するように,本条例違反による青少年の検挙実績がなかったとしても,青少年の性が欲望の対象とされやすいという社会的背景を基に,性行為やわいせつな行為から未成熟な青少年を保護するという本条例20条1項の趣旨に照らせば,本件を同項の非行事実に該当するとして保護処分の対象とすることが,他の事例と比較して不公平な取扱いであるとして許されないということはできない。また,本件においては,当初,集団強姦の被疑事実で逮捕,勾留された少年が,本条例20条1項の非行事実により送致されたという経緯が認められるが,このような経緯から,少年を上記非行事実により保護処分の対象とすることが不当であるともいえない。
 (3) 次に,所論は,原決定が,「単に自己の性的欲望を満足させる目的で」と非行事実に記載していることから,本条例20条1項違反の非行事実が成立するには,上記目的が必要であると解釈している点,及び条文上要求されている「不当な手段による」行為であることが認定されていない点について,本条例の解釈適用の誤りを主張する。
   しかし,本条例20条1項は,「何人も,青少年に対し,威迫し,欺き,または困惑させる等青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段によるほか単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為またはわいせつな行為をしてはならない。」と定めているところ,少なくとも,少年がほか4名の者と共に被害女性を取り囲み,4名の者に続いて同女と性交したという本件非行事実が,単に自己の性的欲望を満足させる目的で行った性行為であって,本条項に該当することは明らかであるから,原決定の非行事実の認定はやや不正確であるものの,本条項違反の非行事実の成立に上記目的が必要であるという解釈を前提とするものとは解されない。また,不当な手段による行為であることが認定されていないという点については,条文上「不当な手段によるほか」と規定されていることからして,不当な手段によらなければならないものでないことは明らかである。
   よって,原決定が,少年に対し,本条例20条1項違反の事実を非行事実として認定し,保護処分に付した点に,本条例の解釈適用を誤った法令違反はなく,所論は採用できない。
3 重大な事実誤認の論旨ついて
  この点に関する所論は判然としない点があるが,要するに,少年は,不良グループの中心的存在であるA(以下「A」という。)から命令され,暴行を受けるなどしたため,やむなく本件に及んだものであり,少年には意思決定の自由がなかったのであるから,本件非行事実は成立しない,あるいは,本件非行事実を行うことについて故意がなかったという趣旨であると解される。
  関係証拠によれば,少年が,本件以前から,少年らの中で中心的存在であり粗暴性もあったAを恐れていたこと,本件の際も,Aがその場にいた少年らに被害者との性交を命じるような発言をしていたことが認められ,少年は,自ら積極的に本件非行に及んだものではないことが認められるが,少年に意思決定の自由が全くなかったという状況になかったことは,証拠上明らかである。また,Aに命じられて断りきれず,他の少年らに続いて本件非行に及んだとしても,少年と被害女性との間に真摯な交際等の関係があったわけではないから,「単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為」に該当することは明らかであり,また,この点に関する故意があったことも明らかである。結局,Aに命じられたという事情があったとしても,非行事実の重大性や少年の非行性の程度等を考える上で,少年が非行事実を行うことについて積極的ではなく,追従的であったとして,考慮されることはあるとしても,本件非行事実の成立自体を妨げる事情となるものではない。
4 処分の著しい不当の論旨について
 (1) 原決定は,本件処分の理由について,本件は,当時の少年方において,5名の男子少年で被害者を取り囲み,いわゆる野球拳を行った後,順次性的行為をさせられて心身ともに疲弊状態にあった被害者に対し,少年が性的行為に及んだものであり,前記のとおり,Aから指示されて本件非行に及んだものではあるとしても,Aに強い抵抗を示すことができず,被害者の気持ちを慮ることもなく,自己防衛のために本件非行に及んだという経緯や態様に酌むべき点は乏しく,被害者の苦痛や将来に与える影響等も考慮すると,本件非行を軽くみることはできないこと,前回,詐欺未遂(いわゆる振り込め詐欺の受け取り役)の事実で逮捕され,観護措置を経て,平成26年11月に保護観察処分となり,不良仲間との交際の禁止や就労の継続が特別遵守事項として定められたにもかかわらず,不良仲間と同居してスロット等の遊びを中心とする昼夜逆転の生活を送るようになる一方,担当保護司への来訪の約束を守らず,指導に応じないことが増えていく中で,本件非行に及んだこと,本件後,実兄の指導の下,不良仲間との関係を経ち,複数のアルバイトを試みるなどしたものの,結局,生活は安定しなかったこと,鑑別及び調査の結果によれば,少年は,主体性に乏しく,集団に追従的であり,自ら問題を設定してその達成に取り組むことが苦手であるとされていることなどの事情からすれば,少年が,これらの問題性を改善しない限り,再非行に及ぶ可能性が否定できず,少年の保護者による指導及び監督にも限界があることなどを指摘して,少年の要保護性は低くなく,社会内での処遇には限界があるといわざるを得ないとし,短期処遇の意見を付けた上,少年を,第1種少年院に送致するのが相当であると判断した。
 (2) この原決定の判断は,処遇意見を含め,概ね相当であり,当裁判所としても是認することができる。
   所論は,①本条例30条本文を処罰阻却事由であると解しても,本条例上,主体が青少年である場合には一定の配慮をしているのであるから,その趣旨をくみ取れば,本件非行事実は軽いものと評価すべきである,②少年は,前件時は保護観察制度について十分な理解をしておらず,現在では,保護観察中に本件非行に及んだことを後悔し,内省を深めており,試験観察への意欲を示している,③少年は,本件非行前後,土木作業員として真面目に勤務するなど一定の稼働実績をあげているのに,原決定はこの点を過小評価しており,少年自身,試験観察を希望し,実際に,補導委託先となる施設も存在するから,試験観察を行うべきであるなどと主張する。
   しかし,①について,条例上,罰則の適用が免除され,検察官送致が行えないことをもって,本件非行が軽いものと評価することはできない。②についても,少年が本件後に内省を深め,自己の問題を認識し,転居して交友関係を絶とうとするなどしていたことはうかがえるものの,原決定が認定するような従前からの経緯,鑑別及び調査の結果を踏まえると,少年が実際にその問題点を決められた枠組みのない中で自力で改善していくのは困難と思われ,一定期間,施設内での矯正教育が必要であるというべきである。また,③についても,少年が就労の意欲を持ち,少年なりに仕事を中心とした生活を送ろうとしていたことはある程度評価できるものの,他方,特別な事情もないのに短期間で仕事をやめるなど,実際に就労を試みながらなかなか生活が安定しなかったという点は軽視できないのであって,必ずしも試験観察を経ることが相当であるとはいえず,短期処遇の意見を付した上,第1種少年院送致とした原決定が著しく不当であるとはいえない。
5 よって,論旨はいずれも理由がないから,少年法33条1項により本件抗告を棄却することとして,主文のとおり決定する。
  平成28年6月22日
    東京高等裁判所第10刑事部
        裁判長裁判官  朝山芳史
           裁判官  永渕健一
           裁判官  市原志都

家庭の法と裁判10号p106
4検討
 各都道府県の条例において,本条例と同様の規定がある例は少なからず見受けられる。
しかしながら,そのような同種の条例の事例を含め,本件のような場合に,条例違反(青少年への淫行)を非行事実とする保護処分をすることが可能か否かについて, 直接判断された事例は見当たらない(なお,本条例と同様の規定をもつ福岡県青少年保護育成条例違反の事案に関する事例(最大判昭和60年10月23日刑集39巻6号413頁)において,「18歳に満たない少年が, 同じく18歳に達しない少女を淫行の対象としたときは,互いに性的行為についての判断・同意能力に欠陥があると法的にみなされている者同士の間における性的行為等として当罰性を欠き, また,相互に健全育成についての努力義務を負うとは考えられない者に,刑罰制裁を科することは適切でない」. 「もっとも,本条例の右罰則にふれない性的行為等であっても,「自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること」(少年法3条1項3号)に当たる状況にあるときは(中略)家裁の審判に付することができることはいうまでもない。」などとして.本件のような場合に, ぐ反として扱うことを前提としているとも解される長島裁判官の補足意見が付されている。)。
また,千葉県の担当者による本条例の解説をみると,本条例30条本文の趣旨については,時期によって異なる趣旨と解される記載がされており,条例制定者(立法者)の意思は必ずしも判然としない。
すなわち‘本条例の平成25年版の解説には,本条例30条の趣旨として,条例上,青少年は,保護.育成の対象であり,青少年の健全育成の責任を成人に求めているので,青少年が行った条例違反行為については, 罰則を適用しないこととしたものであると解説されており,平成6年版の解説でも, 同条について,青少年に対する罰則のみの適用を除外するものであり,行為を合法化するものではなく,青少年が本条例に違反した場合は,保護,補導の対象となる旨の記載がある◎他方,昭和63年版の解説には,青少年の違反行為は,構成要件にそもそも該当しないということであり,少年法の関係でいえば, |司法3条1項1号ではなく, 同項3号に該当する旨の解説がされたこともある。
なお,運用の実情は必ずしも明らかではないが.付添人弁護士の主張によると。
青少年については,本条例20条1項違反による検挙には消極的であったとのことである。
以上のとおり,本条例が禁止する青少年に対するみだらな性行為等を行った主体が, 「青少年」である場合における. 同事実を非行事実とする保護処分の適否については,必ずしも定まった見解等がないところ,本決定は,本条例の趣旨及び文理解釈の観点等から,青少年についても,本条例が定める青少年への淫行を非行事実とする保護処分が可能であるとの判断を示したものである。
この点については,前記のとおり,保護処分が可能とする積極説,消極説, いずれの考え方にも根拠があるものと思われるが,本決定が初めてこの点に関する解釈を示したことには, 同種事案を取り扱う上で,先例としての意義を有すると思われるため,紹介する次第である。

解説 判例タイムズ1442号
4検討
都道府県の条例において,本条例と同様の規定がある例は少なからず見受けられる。
しかしながら, そのような同種の条例の事例を含め,本件のような場合に,条例違反(青少年への淫行)を非行事実とする保護処分をすることが可能か否かについて,直接判断された事例は見当たらない(なお,本条例と同様の規定をもつ福岡県青少年保護育成条例違反の事案に関する最大判昭60.lO.23刑集39巻6号413頁,判夕571号25頁において, 「18歳に満たない少年が同じく18歳に達しない少女を淫行の対象としたときは,互いに性的行為についての判断・同意能力に欠陥があると法的にみなされている者同士の間における性的行為等として当罰性を欠き, また,相互に健全育成についての努力義務を負うとは考えられない者に刑罰制裁を科することは適切でない」, 「もっとも,本条例の右罰則にふれない性的行為等であっても, 『自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること』(少年法3条1項3号)に当たる状況にあるときは(中略)家裁の審判に付することができることはいうまでもない。」などとして,本件のような場合に, 虞犯として扱うことを前提としているとも解される長島裁判官の補足意見が付されている。)。
また,千葉県の担当者による本条例の解説をみると,本条例30条本文の趣旨については,時期によって異なる趣旨と解される記載がされており,条例制定者(立法者)の意思は必ずしも判然としない。
すなわち,本条例の平成25年版の解説には,本条例30条の趣旨として,条例上,青少年は,保護・育成の対象であり,青少年の健全育成の責任を成人に求めているので,青少年が行った条例違反行為については,罰則を適用しないこととしたものであると解説されており,平成6年版の解説でも,同条について,青少年に対する罰則のみの適用を除外するものであり,行為を合法化するものではなく,青少年が本条例に違反した場合は,保護,補導の対象となる旨の記載がある。
他方,昭和63年版の解説には,青少年の違反行為は,構成要件にそもそも該当しないということであり,少年法の関係でいえば,同法3条1項1号ではなく, 同項3号に該当する旨の解説がされたこともある。
なお,運用の実情は必ずしも明らかではないが,付添人弁護士の主張によると,青少年については,本条例20条1項違反による検挙には消極的であったとのことである。
以上のとおり,本条例が禁止する青少年に対するみだらな性行為等を行った主体が, 「青少年」である場合における,同事実を非行事実とする保護処分の適否については,必ずしも定まった見解等がないところ,本決定は,本条例の趣旨及び文理解釈の観点等から,青少年についても,本条例が定める青少年への淫行を非行事実とする保護処分が可能であるとの判断を示したものである。
この点については,前記のとおり,保護処分が可能とする積極説,消極説,いずれの考え方にも根拠があるものと思われるが,本決定が初めてこの点に関する解釈を示したことには,同種事案を取り扱う上で,先例としての意義を有すると思われるため,紹介する次第である。

福祉犯罪の被害弁償につき、請求額1000万円のところ、250万円で示談した事例

 裁判例によれば、民事訴訟になれば認容額100万円くらいになるような事案でしたが、被害者に状況をよく聞くと、代理人に着手金を約100万円払っているということなので、そういうのを含めて交通費とか日当とかの諸経費を積算して250万円で示談しました。被害者の手元に100万円が残る計算です。
 
 

合法的なデリヘル営業は「善良の風俗と清浄な風俗環境」なのに、「道徳的に適切でなく、不徳の致すところ」と陳謝した市長

 本番行為=売買春行為がないのなら、合法だし、その業態は「善良の風俗と清浄な風俗環境」なのだから一般的な道徳に反することもない。よほど高度の道徳観の持ち主なのか
 もし売買春があれば、違法行為となる恐れがあり、一般職であれば、信用失墜行為として懲戒される可能性がある。

http://www.sankei.com/west/news/170831/wst1708310057-n1.html
選挙前、週刊誌で「公務出張中に性的サービス利用」報道の天理市長「不徳の致すところ」
 31日発売の週刊誌で、東京への公務出張中に性的サービスを利用したと報じられた奈良県天理市並河健市長(38)が報道陣の取材に応じ、記事の内容をおおむね認めた上で「道徳的に適切でなく、不徳の致すところ」と陳謝した。
 市役所で行われた定例会見の後、報道内容について問われた並河市長は「プライベートな時間の中でのことだが、市民の皆さまや市職員、そして家族に申し訳ない。痛切に反省している」と陳謝。一方、「法律に抵触する行為はなかった」と釈明した。

https://www.dailyshincho.jp/article/2017/08301659/?all=1
天理市長、公務出張中に風俗サービスを利用 “本番行為”も要求
政治週刊新潮 2017年9月7日号掲載
 と証言するのは、市長のお相手をした20代半ばのマッサージ嬢だ。同店は客が受け身の形になるシステムだが、
「彼は“したい”“入れたい”と2~3回言ってきて、私も断っていたんですけど……」
 交渉の末、5000円で“本番”行為に及んだという。
 管理売春とは違うため、罰則は伴わないものの、れっきとした違法行為である。当の並河市長に取材をすると、当初は「記憶にない」と回答したものの、その後、“本番要求”を否定した上で、「性的サービスが伴う店を、出張中、2度利用したことは深く反省したい」と認めた

売春防止法
第一条(目的)
 この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。

第二条(定義)
 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
第三条(売春の禁止)
 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
・・・
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
第一条(目的)
 この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。
第二条(用語の意義)
 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
7この法律において「無店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの
二 電話その他の国家公安委員会規則で定める方法による客の依頼を受けて、専ら、前項第五号の政令で定める物品を販売し、又は貸し付ける営業で、当該物品を配達し、又は配達させることにより営むもの

「今日は入りにくいわ」「硬い」などと言いつつ,陰茎を手でしごくなどし,陰茎を当該被害女児の陰部に擦りつけるなどして挿入を試みている状況は確認できるものの,陰茎を当該被害女児の性器に一部なりとも没入して姦淫にまで至ったことはこれを十分に確認することができない。として、強姦既遂とした原判決を事実誤認で破棄して強姦未遂罪とした事例 (広島高裁H22.3.16)


 件数多くなると、立証もいい加減になって、「(2) 論旨②について」では、ビデオも自白もないのに強姦既遂になってる事件があるようです。
 「(5) 論旨⑤について」では、動画では一部没入が確認できないのに、原判決では強姦既遂になっていました。

第1 本件控訴の趣意及び答弁
   本件控訴の趣意は,弁護人新川登茂宣作成の控訴趣意書及び控訴趣意の補充書(ただし,控訴趣意の補充書第2の1及び2(2)を除く。)に,これに対する答弁は,検察官村瀬正明作成の答弁書(ただし,第2の2を除く。)にそれぞれ記載されているとおりであるから,これらを引用する。
第2 当裁判所の判断
 1 訴訟手続の法令違反及び事実誤認の主張について
   論旨は,①原判示第1別表1番号1及び番号4の強姦の各開始時間及び終了時間,同番号2の強姦の終了時間,同番号3及び番号5の強姦の各開始時間,原判示第2別表2番号1,番号3及び番号4の児童福祉法違反の各開始時間,同番号5の児童福祉法違反の終了時間,原判示第3別表3番号1の強姦の開始時間,原判示第4別表4番号2の強姦の開始時間,同番号3の強姦の開始時間及び終了時間,原判示第5別表5番号6の児童福祉法違反の開始時間及び終了時間,原判示第7の1別表7-1番号5の強制わいせつの終了時間,原判示第7の2別表7-2番号3,番号7及び番号14の強姦の各開始時間,同番号16及び番号19の強姦の各開始時間及び終了時間,原判示第9の2別表9-2番号3,番号7及び番号10の強姦未遂の各開始時間,同番号4の強姦未遂の終了時間,同番号8の強姦未遂の開始時間及び終了時間,原判示第9の3別表9-3番号4,番号12及び番号16の強姦の各開始時間,同番号6及び番号14の強姦の各開始時間及び終了時間,同番号8及び番号9の強姦の各終了時間について,DVD-Rに録画された画像中の上記開始時間ないし終了時間を証明する静止画の証拠書類は存在せず,DVD-Rの高速再生による証拠調べでの確認は著しく困難であり,刑訴法317条の証拠裁判主義に違反しており,これらの開始時間ないし終了時間を認定した原判決には,訴訟手続の法令違反及び事実の誤認があり,②原判示第7の2別表7-2番号16のうち開始時間午後6時31分ころ,終了時間午後6時42分ころの強姦について,被告人が被害女児を姦淫したと認めるに足る証拠はなく,口淫させるなどしたにとどまるのに,姦淫を認定した原判決には事実の誤認があり,③原判示第9の3別表9-3番号9の強姦について,被告人が被害女児を四つんばいにさせたことを認めるに足りる証拠はなく,DVD-R中の四つんばいの静止画像の証拠もないのに,その旨認定した原判決には事実の誤認があり,④原判示第7の2別表7-2番号18及び番号19の各強姦について,被告人は,各犯行当時,被害女児が13歳以上の年齢であると認識していたと解されるのに,被害女児が13歳未満であることを知っていた旨認定した原判決には事実の誤認があり,⑤原判示第1別表1番号3及び番号5並びに原判示第4別表4番号1の各強姦について,合理的な疑いをいれない程度に膣内まで陰茎が挿入されたとは認定できず,いずれも強姦未遂にとどまるのに,強姦既遂を認定した原判決には事実の誤認があり,⑥上記⑤の犯行を含むすべての強姦未遂について,被告人は,被害女児との間で「痛い」と言えばそれ以上は姦淫行為をしないと約束し,被害女児が「痛い」と訴えたため姦淫を中止したものであるから,いずれも中止未遂であるのに,障害未遂である旨認定した原判決には事実の誤認があり,⑦原判示第9の1別表9-1番号11の強制わいせつについて,被告人が被害女児の下着姿を所携のビデオカメラで数秒間にわたり撮影するなどした行為は,被告人にとって自らの性的欲望を充足するには足りず,記念撮影か,単なる試し撮りにとどまり,強制わいせつとはいえないのに,その旨積極に認定した原判決には事実の誤認があり,これらの違反ないし誤認がいずれも判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。
   そこで,以下,記録を調査し,検討する。
  (1) 論旨①について
    捜査状況報告書(原審検甲162ないし167,169,173ないし175,134ないし137,144,177,186,116,70,108,109,112,114,73,74,76,69,96,66ないし68,71,ただし,同検甲163ないし167,174,175,134ないし136,186はいずれも抄本)及びDVD-R(当庁平成22年押第1号符号8,9,7,6,4,3)によれば,論旨指摘に係る各犯行の開始時間ないし終了時間については,原判決がそれぞれ認定しているとおりであることが認められ,原判決に事実の誤認はない(ただし,原判決が,原判示第4別表4番号3の強姦の終了時間を午後9時40分ころと判示しているのは,午前9時40分ころの明白な誤記であると認められる。)。そして,原審において,被告人及び弁護人は,上記各犯行の開始時間ないし終了時間をいずれも争わず,これらの犯行に係るDVD-Rの取調べに際しても,その取調べ方法を含めて何ら異議を述べていないことが明らかであり,DVD-Rにそれぞれ録画された画像を確認することにより,上記各犯行の開始時間ないし終了時間を認定することに証拠裁判主義に違反した違法があるとすることもできない。
  (2) 論旨②について
    捜査状況報告書(原審検甲116)によれば,検察官において,被告人撮影に係るビデオテープをテレビ画面に映し出し,被告人が原判示第7の2別表7-2番号16の開始時間午後6時31分ころから終了時間午後6時42分ころの間に当該被害女児を姦淫したことを確認し,特定したとされている。しかし,DVD-R(当庁平成22年押第1号符号6)によっても,上記の犯行が行われたとされる時間に,自動車内で,被告人において,当該被害女児に自己の陰茎を口淫させるなどしている状況が撮影されていることが認められるのみであり,被告人において,自動車内で当該被害女児を座席に仰向けに寝かせてその上に覆い被さるなどし,姦淫したことを確認することはできず,なお,画像を確認する内容の捜査状況報告書(同検甲112)によっても,姦淫行為は確認されておらず,被告人においても,上記時間帯に当該被害女児を姦淫したことを認める供述はしていない(警察官調書(同検乙26))のであり,上記の時間に被告人が当該被害女児を姦淫したと認めるに足りる証拠はなく,被告人が原判示第7の2別表7-2番号16の開始時間午後6時31分ころから終了時間午後6時42分ころの間に当該被害女児を姦淫したとの事実を認定した原判決には事実の誤認があるといわざるを得ない。
  (3) 論旨③について
    当該被害女児において,自分が四つんばいの姿勢で後ろから陰茎を挿入されるなどしたこともあった旨供述しており(警察官調書抄本(原審検甲97)),DVD-R(当庁平成22年押第1号符号3)によれば,原判示第9の3別表9-3番号9の強姦の犯行に際し,被告人が当該被害女児をパソコンルーム内の床面に四つんばいにさせ,背後から被害女児を姦淫している状況が録画されていることが認められ,原判決に事実の誤認はなく,その静止画像を抽出した証拠がないことが証拠裁判主義に反するともいえない。
  (4) 論旨④について
    被告人は,バレー部の顧問として,バレーボール大会にエントリーする選手の年齢を知っていなければならなかったことから,当該被害女児の年齢も把握しており,特に,被害女児が被告人と同じ10月生まれであることを覚えていた旨供述しており(警察官調書(原審検乙31)),当該被害女児においても,中学1年生の平成18年9月終わりころ,13歳の誕生日の直前に,被告人に呼び出されて会った際,被告人が運転する車の中で,被告人から「もうすぐ誕生日じゃろ。今度,誕生日プレゼントをあげるけぇ」と言われた旨供述しており(警察官調書抄本(同甲120)),これらの供述は具体性があり,被告人において,同年6月17日及び同年7月15日当時,当該被害女児が未だ12歳であることを認識していたと十分に認められ,原判決に事実の誤認はない。
  (5) 論旨⑤について
    強姦罪にいう姦淫とは,性交であり,男性性器の少なくとも一部を女性性器に没入することをいうと解するのが相当であり,被告人の警察官調書(原審検乙42,43,36,ただし,同検乙42,43はいずれも抄本)によれば,被告人は,捜査段階において,犯行状況を撮影したデジタルビデオカセットテープの再生画面を見て,原判示第1別表1番号3の犯行について,陰茎の一部が陰部に入っている状況を確認した旨を,原判示第4別表4番号1の犯行について,陰茎が陰部に入っていることに間違いはないが,亀頭部分くらいしか入っていないと思う旨をそれぞれ供述し,原審公判廷においても,原判示第1別表1番号5の強姦に関して,既遂に達したか否かよく分からない旨供述したものの,同番号3及び原判示第4別表4番号1の各強姦における姦淫の事実はいずれも間違いない旨供述しており,捜査状況報告書抄本(同検甲165,134)及びDVD-R(当庁平成22年押第1号符号8,7)によれば,原判示第1別表1番号3及び原判示第4別表4番号1の各犯行において,被告人が,原判示のパソコンルームで,各当該被害女児に対し,それぞれ姦淫に及んだことはこれを十分に認定でき,これらの強姦の事実を認定した原判決に事実の誤認はない。
    しかし,原判示第1別表1番号5の犯行については,被告人は,上記のとおり,原審公判廷において,既遂に達したか否かよく分からない旨供述しているところ,DVD-R(当庁平成22年押第1号符号8)によれば,被告人において,「今日は入りにくいわ」「硬い」などと言いつつ,陰茎を手でしごくなどし,陰茎を当該被害女児の陰部に擦りつけるなどして挿入を試みている状況は確認できるものの,陰茎を当該被害女児の性器に一部なりとも没入して姦淫にまで至ったことはこれを十分に確認することができない。この点,上記画像を確認する内容の捜査状況報告書抄本(原審検甲167)によれば,「被告人が自己の陰茎をしごき,さらに自分の唾を亀頭に塗り付ける状況が認められる。その後,さらに左手中指を被害女児の性器に挿入しながら,陰茎をしごく。被告人が自己の陰茎を右手で持ち,午後4時14分25秒から午後4時14分30秒の間に,被告人が陰茎を被害女児の性器に挿入しようとし,被告人の亀頭部分が被害女児の性器に没入する。直ぐに被告人の亀頭が被害女児の性器外へ出る」ことを確認したと記載されているものの,その確認結果によっても,挿入を試みるに当たり陰茎を勃起させる行為をしなければならない状況にあり,没入したとされる陰茎の亀頭部分が直ぐに被害女児の性器外へ出たとされており,また,被告人も,警察官調書抄本(同検乙43)において,「午後4時12分20秒の場面で,私の陰茎の一部,陰茎の先端部分が被害女児の陰部に入っている状況が撮影されている映像の確認をした」と供述しているにとどまり,上記のとおり,犯行を録画したDVD-Rによって陰茎の没入が確認できない以上,姦淫の事実を認めることはできないといわざるを得ず,被告人の犯行は強姦未遂の限度で認定できるにとどまるというべきであり,原判決には事実の誤認があるといわざるを得ない。
  (6) 論旨⑥について
    被告人は,原審公判廷において,被害女児との間で,どうしてもやめてほしい場合には,「やめてくれ」とか,「もう我慢ができない」とか,何か合図をするよう決めていたので,嫌だという言葉を被害女児が発していても,行為を続けたことはある旨供述し,また,嫌がるのを無理をしてすると,その子が誰かに言ったりなどして,自分がしていることが発覚するのが一番怖かったからである旨供述しており,これらの供述に照らせば,被告人において姦淫を途中で止めたことがあったとしても,専ら又は主として自身の犯行の発覚を恐れたためであり,自己の任意の意思により自発的に犯行を中止したとはいえないから,中止未遂と認めることはできない。なお,被告人は,当審公判廷において,原判示第1別表1番号1ないし番号3及び番号5,原判示第3別表3番号1及び番号2,原判示第4別表4番号1ないし番号3,原判示第7の2別表7-2番号1ないし番号5の各強姦について,いずれも陰茎が膣には入っておらず,原判示第8の2別表8-2,原判示第9の2別表9-2番号1の各強姦未遂も含めて,いずれも膣の中にまで入れるつもりはなかった旨供述しているが,原審公判廷においては,原判示第1別表1番号5の強姦については,既遂に達したか否かよく分からない旨供述していたものの,他の強姦における姦淫の事実及び強姦未遂の事実をすべて認める旨供述していたにもかかわらず,合理的な根拠もなく,その供述を変遷させるものであり,信用できず,強姦未遂の各犯行について,中止未遂の成立を認めなかった原判決に事実の誤認はない。
  (7) 論旨⑦について
    被告人は,原審公判廷において,上半身裸の女児が写っているようなグラビアを見るのが好きで,自身でも同じような写真を撮ってみたいという気持ちはあった旨供述しており,捜査状況報告書(原審検甲96,72)及びDVD-R(当庁平成22年押第1号符号5)によれば,被告人は,原判示第9の1別表9-1番号11の所為に及んだ際,当該被害女児のスカートをめくり,その右腿内側を触りながら,パンティを撮影するなどしたことが認められ,被害女児が下着を着用し,その陰部等を直接撮影することはなかったとしても,その行為が性欲を刺激興奮させ,又は満足させるという性的意図をもって行われたと認めるに十分であり,原判示第9の1別表9-1番号11の事実を認定し,強制わいせつ罪の成立を認めた原判決に事実の誤認はない。
  (8) 職権調査を求める事実誤認の主張について
    弁護人は,①原判示第1別表1番号2の強姦について,被告人は,机上に仰向けに寝ている当該被害女児に対し,机の傍らに立ったまま姦淫したのであり,被害女児を机上に仰向けに寝かせてその上に覆い被さるなどし,被害女児を姦淫した旨認定した原判決には事実の誤認があり,また,②原判示第9の2別表9-2番号3ないし番号6,同番号9及び番号10の各強姦未遂,原判示第9の3別表9-3番号6ないし番号8,同番号12ないし番号16の各強姦,原判示第7の2別表7-2番号9ないし番号13の各強姦について,自動車内で行う場合には,被害女児は自ら仰向けに寝るのであって,被告人が仰向けに寝かせることはないのに,いずれも被告人が車内の座席に仰向けに寝かせた旨認定した原判決には事実の誤認があると主張し,職権調査を求めている。
    しかし,①については,DVD-R(当庁平成22年押第1号符号8)によれば,被告人が姦淫の際に当該被害女児の上に覆い被さっているとまでは認められないが,そのような行為は姦淫の際に通常付随して行われる有形力の行使でもあり,その誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。また,②については,小学生である被害女児らに対する上記各犯行の内容及び経緯等にかんがみれば,仮に犯行現場において被害女児らが自ら仰向けに寝たことを前提にしても,その実質は,被告人が被害女児らに上記の行動をとらせたと認めるに十分であり,原判決の認定に誤認があるとはいえない。
   以上に検討,判断したとおりであり,原判示第7の2別表7-2番号16の開始時間午後6時31分ころ,終了時間午後6時42分ころの間に当該被害女児を姦淫した事実及び原判示第1別表1番号5の強姦の事実を認定した原判決にはいずれも事実の誤認があり,これらの誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであり,論旨はその事実誤認をいう限度で理由があるが,その余の訴訟手続の法令違反ないし事実誤認をいう論旨はいずれも理由がない。
 2 法令適用の誤りの主張について
   論旨は,①原判示第9の3別表9-3番号9及び番号10の各強姦は,被告人が同じ日に同じ場所で同一の被害者に対して行なった犯行であるから,包括一罪とすべきであり,同番号15及び番号16の各強姦も,同様に包括一罪とすべきであるにもかかわらず,これらを併合罪とした原判決には法令適用の誤りがあり,②原判示第8の1別表8-1番号2及び原判示第9の1別表9-1番号3の各強制わいせつは,2名の被害女児に対し,同じ日のほぼ同じ時間に同じ場所でわいせつ行為に及んだものであることに照らすと,1個の行為として評価し得るものであり,観念的競合とすべきであるにもかかわらず,これらを併合罪とした原判決には法令適用の誤りがあり,③原判示第2別表2番号1ないし番号6,原判示第5別表5番号1ないし番号6,原判示第6別表6の各児童福祉法違反は,それぞれ被害女児ごとに包括して一罪が成立するにもかかわらず,これらの各所為を併合罪とした原判決には法令適用の誤りがあり,これらの誤りがいずれも判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。
   そこで,検討する。
  (1) 論旨①について,
    原判示第9の3別表9-3番号9及び番号10の各強姦の所為については,同番号9の終了時間から同番号10の開始時間までに約6時間34分の間隔があり,同番号15及び番号16の各強姦の所為については,同番号15の終了時間から同番号16の開始時間までに約1時間46分の間隔があり,なお,同番号15及び番号16の各強姦の所為については,普通乗用自動車の駐車場所が特定されるまでには至っておらず(捜査状況報告書(原審検甲96)),この所為を含めて,それぞれの犯行場所が同一であることを考慮しても,それぞれ2個の罪が成立するとして罰条を適用した原判決に法令適用の誤りがあるとまではいえない。
  (2) 論旨②について
    原判示第8の1別表8-1番号2の強制わいせつの所為は,当該被害女児の着衣を脱がせて,その陰部等を所携のビデオカメラ等で撮影するなどしたものであり,原判示第9の1別表9-1番号3の強制わいせつの所為は,別の被害女児の着衣を脱がせて,その陰部等を舐めるなどしたものであり,被害者が異なっており,これらの行為が同じ場所でほぼ同時間帯に行われた所為であることを考慮しても,行為者の動態が社会的見解上1個のものと評価することはできないことは明らかであり,これらの所為を併合罪とした原判決に法令適用の誤りがあるとはいえない。
  (3) 論旨③について
    原判示第6別表6の児童福祉法違反の所為は,その行為が1個しかなく,この所為についての論旨は前提を欠き失当である。また,原判示第2別表2番号1ないし番号6及び原判示第5別表5番号1ないし番号6の各児童福祉法違反の所為については,前者の各所為は約1か月半の間に6回にわたり,後者の各所為は3か月余の間に6回にわたり,それぞれ同一被害女児に対して反復して行われたものであり,それぞれ包括して1罪と解するべきであるところ,原判決は法令の適用の項においてその旨明示しておらず,各所為を併合罪と認めたとする余地もあるが,本件においては,これらの罪と原判示の他の罪とが併合罪の関係にあり,結局,併合罪の処理を経た処断刑に変わりはないことに照らすと,上記の誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない
   論旨はいずれも理由がない。

「「美人だから」検事、弁護士からの被害女性に不適切発言」なんて、刑事局長通達と添付資料の附帯決議が徹底されてないな。

 通達と添付資料の附帯決議が徹底されてないな。

法務省刑制第121号(例規)平成29年6月26日法務省刑事局長(公印省略)「刑法の一部を改正する法律」の施行について(依命通達)
留意事項
1強姦罪等の非親告罪化について 性犯罪については,もとより,被害者のプライバシー等の保護が特に重要であり,事件の処分等に当たっても被害者の心情に配盧することが必要であることは,強姦罪等を非親告罪化した後も変わるものではない。
したがって,本法施行後においても,引き続き,事件の処分に当たって被害者の意思を丁寧に確認するなど被害者の心情に適切に配慮する必要があることに留意されたい。
附帯決議本法の国会審議に際し,衆議院法務委員会において別添1の,参議院法務委員会において別添2の附帯決議がそれぞれなされているので,留意されたい。

・・・
別添1衆議院法務委員会における附帯決議
政府及び最高裁判所は,本法の施行に当たり,次の事項について格段の配慮をすべきである。
一性犯罪が,被害者の人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であることはもとより, その心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続ける犯罪であって,厳正な対処が必要であるものとの認識の下,近年の性犯罪の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処をするための法整備を行うという本法の趣旨を踏まえ,本法が成立するに至る経緯,本法の規定内容等について, 関係機関及び裁判所の職員等に対して周知すること。
二刑法第百七十六条及び第百七十七条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第百七十八条における「抗拒不能」の認定について,被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み, これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに, 司法警察職員,検察官及び裁判官に対して,性犯罪に直面した被害者の心理等についてこれらの知見を踏まえた研修を行うこと。
三性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程において,被害者のプライバシー,生活の平穏その他の権利利益に十分な配慮がなされ,偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようにし, 二次被害の防止に努めるとともに,被害の実態を十分に踏まえて適切な証拠保全を図り, かつ, 起訴・不起訴等の処分を行うに当たっては,被害者の心情に配慮するとともに,必要に応じ,処分の理由等について丁寧な説明に努めること。
四性犯罪被害が潜在化しやすいことを踏まえ,第三次犯罪被害者等基本計画等に従い,性犯罪等被害に関する調査を実施し,性犯罪等被害の実態把握に努めること。
刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号)附貝ll第九条第三項の規定により起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置についての検討を行うに際しては,性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の実情や,被害者の再被害のおそれに配盧すべきであるとの指摘をも踏まえて検討を行うこと。
六性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上,性犯罪被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であるという性犯罪による1,-被害の特性を踏まえ,被害者の負担の軽減のため, 第三次犯罪被害者等基本計画に従い,被害者の負担の軽減や被害の潜在化の防止等ワンストップ支援センターの整備を推進すること。

別添2
参議院法務委員会における附帯決議
政府及び最高裁判所は,本法の施行に当たり, 次の事項について格段の配慮をすべきである。
一性犯罪は,被害者の心身に長年にわたり多大な苦痛を与え続けるばかりか, その人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であって,厳正な対処が必要であるところ,近年の性犯罪の実情等に鑑み,事案の実態に即した対処をするための法整備を行うという本法の適正な運用を図るため,本法の趣旨,本法成立に至る経緯,本法の規定内容等について, 関係機関等に周知徹底すること。
二刑法第百七十六条及び第百七十七条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第百七十八条における「抗拒不能」の認定について,被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み, これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに, これらの知見を踏まえ, 司法警察職員,検察官及び裁判官に対して,性犯罪に直面した被害者の心理等についての研修を行うこと。
三性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の過程においては,被害者のプライバシー, 生活の平穏その他の権利利益に十分配慮し,偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようにするとともに, 二次被害の防止に努めること。
また,被害の実態を十分に踏まえた適切な証拠保全を図ること。
四強制性交等罪が被害者の性別を問わないものとなったことを踏まえ,被害の相談,捜査,公判のあらゆる過程において,被害者となり得る男性や性的マイノリテイに対して偏見に基づく不当な取扱いをしないことを, 関係機関等に対する研修等を通じて徹底させるよう努めること。
五起訴・不起訴等の処分を行うに当たっては,被害者の心情に配慮するとともに, 必要に応じ,処分の理由等について丁寧な説明に努めること。
六性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上,性犯罪被害者がその被害の性質上支援を求めることが困難であり, その被害が潜在化しやすいという性犯罪被害の特性を踏まえ,第三次犯罪被害者等基本計画等に従い,性犯罪等被害に関する調査を実施し,性犯罪等被害の実態把握に努めるとともに,被害者の負担の軽減や被害の潜在化の防止等のため, ワンストップ支援センターの整備を推進すること。
刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号)附則第九条第三項の規定により起訴状等における被害者の氏名の秘匿に係る措置についての検討を行うに当たっては,性犯罪に係る刑事事件の捜査及び公判の実情や,被害者の再被害のおそれに配慮すべきであるとの指摘をも踏まえること。
八児童が被害者である性犯罪については, その被害が特に深刻化しやすいことなどを踏まえ,被害児童の心情や特性を理解し, 二次被害の防止に配慮しつつ,被害児童から得られる供述の証明力を確保する聴取技法の普及や,検察庁,警察,児童相談所等の関係機関における協議により, 関係機関の代表者が聴取を行うことなど,被害児童へ配慮した取組をより一層推進していくこと。
九性犯罪者は,再び類似の事件を起こす傾向が強いことに鑑み,性犯罪者に対する多角的な調査研究や関係機関と連携した施策の実施など,効果的な再犯防止対策を講ずるよう努めること。

http://www.sankei.com/west/news/170829/wst1708290008-n1.html 
関係者によると、検事は6月下旬に実施した女性への聴取で「(弁護士は)旧司法試験を複数回受験して合格した努力家だ」と伝え、弁護士の立場にも理解を示すよう求めた。
さらに「あなたは美人だから(弁護士が)舞い上がったのだろう。
(弁護士の気持ちは)男として分からなくもない」と弁護士を擁護するかのような発言もあった。
こうした検事の態度に女性はショックを受けたが、被害を受けたのに泣き寝入りしたくないと説明。
検事は聴取の後半になって、発言の一部が不適切だったと認めたが「(聴取内容を)マスコミには言わないでほしい」と口止めしたという。
 地検は聴取に問題があったのではとの指摘を受け、内部調査を実施。
28日に女性と面会し、検事の発言について「弁護士をかばうような発言があった」と認めたうえで「被害者の心情に全く配慮していなかった」と謝罪した。
 一方、問題の発言をした検事は地検の調査に対し、仮に弁護士が起訴されて公判になった場合、女性が弁護側からの尋問を受ける立場になることから「弁護側の厳しい質問にも耐えられるようにと聴取したら、こういう発言になった」と説明したという。
女性「二次被害受けた」 「被害者ではなく、犯罪者として扱われているように感じた。
二次被害を受けたような気持ち」。
強制わいせつ事件の事情聴取で、男性検事から不適切な発言をされた女性は取材にそう打ち明けた。
地検からの謝罪には「十分に反省していることは伝わった」と評価する一方で、「弱い立場の被害者に配慮した捜査をしてほしい」と求めた。
 性犯罪の事件では、捜査機関からの聞き取りでも被害者にとっては心理的な重圧となり、それを避けるために告訴を取り下げることも少なくなかった。
このため近年は、被害者への聴取を女性警察官が担当するなど、より細かな配慮がされるようになってきた。
 あるベテラン検事は「被害者に誠実な対応をすることは議論するまでもない基本中の基本。
今回は個人の資質が問われる問題だ」と話している。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件についてストレージサービス「Aボックス」に公開設定をして、公開用のURLの発行を受けた段階で、画像データ及び動画データの内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置いたとみるべきであるから、被害者以外の者に対して公開用のURLを伝えていないとしてもいずれの罪も既遂に達している(大阪地裁H28.12.15)

高裁で一部無罪になっています。

大阪地方裁判所平成28年12月15日
上記の者に対する強要未遂、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件について、当裁判所は、検察官皆川剛二、弁護人奥田昌宏(国選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 平成28年8月28日午後11時44分頃、
  被告人方において、同所に設置されたパーソナルコンピュータを使用して、元交際相手 (以下「被害者」という。)が使用するメールアドレスに、裸の同人を撮影した画像データ等とともに「0時までに返信なかったらばらまく」などと記載した電子メールを送信し、その頃、同人にこれを閲読させて、同電子メールに返信をするよう要求するとともに、その要求に応じなければ同人の名誉に危害を加える旨告知して、同人を怖がらせ、同人に義務のないことを行わせようとしたが、同人がこれに応じなかったため、その目的を遂げず、
第2 平成28年8月29日午後3時15分頃から同日午後6時29分頃までの間、前記被告人方において、前記パーソナルコンピュータを使用して、インターネットを介し、被害者の顔を撮影した画像データとともに、別表記載の同人の露出した胸部等を撮影した画像データ及び動画データ25点及び同人の陰部を撮影したわいせつな画像データ5点(前記25点中の5点)を、A株式会社が管理する東京都(以下略)内に設置されたサーバコンピュータ内に開設された「Aボックス」に送信して記憶、蔵置させるとともに、不特定多数のインターネット利用者に対し、前記各画像等の閲覧が可能な状態を設定し、もって第三者が撮影対象者を特定できる方法で、衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものである私事性的画像記録物を公然と陳列するとともに、わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列し
たものである。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
 判示第1の所為 刑法223条3項、1項
 判示第2の所為
  私事性的画像記録を公然と陳列した点
  私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律2条1項3号、3条2項
  わいせつ電磁的記録の記録媒体を公然と陳列した点
  刑法175条1項前段
科刑上一罪の処理
 判示第2の罪 刑法54条1項前段、10条(1罪として重い私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反罪の刑で処断)
刑種の選択
 判示第2の罪 懲役刑を選択
併合罪加重 刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
刑の全部執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用 刑事訴訟法181条1項本文(負担)
(弁護人の主張に対する判断)
 弁護人は、判示第2事実につき、被告人は公然と陳列していないので、いずれも無罪である旨主張する。被告人は、判示第2事実に係る画像データ及び動画データを「Aボックス」に記憶、蔵置させ、公開設定したものであるところ、刑法175条1項前段及び私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律3条2項にいう「公然と陳列」するとは、画像データ及び動画データの内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいい、実際にそれらの内容を再生閲覧することまでは必要ではないと解すべきである。そうすると、本件においては、被告人が「Aボックス」に公開設定をして、公開用のURLの発行を受けた段階で、画像データ及び動画データの内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置いたとみるべきであるから、いずれの罪も既遂に達していると解すべきこととなる。被害者以外の者に対して公開用のURLを伝えていないとの弁護人の主張を前提としても、判示第2の各罪が成立することは明らかである。
(求刑・懲役2年)
第7刑事部
 (裁判官 長瀨敬昭)
別表

▽児童の姿態が描写されたCGについて、そこに記録された姿態が、被写体の全体的な構図やその作成経緯等を踏まえへつつ、一般人からみて、架空の児童の姿態ではなく、実在の児童の姿態を忠実に描写したものであると認識できる場合には、実在の児童とCGで描かれた児童とが同一性を有すると判断できるとして、児童ポルノ製造罪及び児童ポルノ提供罪の成立を認めた事例(東京地判平28・3・15)判例時報2335号p105

▽児童の姿態が描写されたCGについて、そこに記録された姿態が、被写体の全体的な構図やその作成経緯等を踏まえへつつ、一般人からみて、架空の児童の姿態ではなく、実在の児童の姿態を忠実に描写したものであると認識できる場合には、実在の児童とCGで描かれた児童とが同一性を有すると判断できるとして、児童ポルノ製造罪及び児童ポルノ提供罪の成立を認めた事例(東京地判平28・3・15)判例時報2335号p105
 判例時報の解説では保護法益については言及されていません。

一 本件は、被告人が、①衣服の全部又は一部を着けない実在する児童の姿態が撮影された画像データを素材として描写したコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。
)の画像データ一六点(以下「本件一六点」という。)を含むCG集(以下「本件CG集l」という。)をパーソナルコンピュータのハードディスク内に記憶、蔵置させ、もって児童ポルノを製造し、②本件CG集l及び前記同様のCGの画像データ一八点(以下「本件一八点」といい、本件一六点と併せて「本件cG」という。)を含むCG集(以下「本件CG集2」という。)を、インターネット通信販売サイトを通じて、不特定の者二名にダウンロードさせ、もって不特定又は多数の者に児童ポルノを提供したとして、平成二六年法律第七九号による改正前の児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という。)違反の罪に問われた事案である。
本件においては、
①本件一六点を含む本件CG集1の画像データが記録されたハードディスクが児童ポルノ法2条三項の「電磁的記録に係る記録媒体」として児童ポルノに当たり得るか否か、また、本件CGの画像データが同法七条四項後段の「電磁的記録」に当たり得るかが争われたほか、
②本件CGと検察官がその基となったと主張する写真とが同一であるか、
③本件cGの女性が実在したか、
④本件CGの女性が一八歳未満か、
児童ポルノの製造又は提供の罪が成立するためには、本件CGの基となった写真の被写体の女性が製造又は提供の時点及び児童ポルノ法の施行時点において一八歳未満でなければならないか否か
など争点は多岐にわたった。
本判決は、結論として、本件一六点のうち一三点及び本件一八点については②ないし④のいずれかにおいて否定し、残りの本件一六点のうち三点について、児童ポルノ製造罪及び児童ポルノ提供罪の成立を認めた。
ここでは、今後も特に問題となると思われる①の争点(以下「本争点」という。)について触れる。
二 本争点について、弁護人は、機械的な複写の場合を除いては、実在の児童を被写体として直接描写するものでない限り、児童ポルノ法二条三項にいう「児童ポルノ」あるいは同法七条四項後段の「電磁的記録」に該当せず、前記のようなものではないCGについてはこれに当たらない旨主張した。
これに対し本判決は、児童ポルノ法の目的や児童ポルノ法七条の趣旨などを踏まえて、「同法二条三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したと認められる物については、CGの画像データに係る記録媒体であっても同法二条三項にいう『児童ポルノ』に当たり得、また、同画像データは同法七条四項後段の『電磁的記録』に当たり得るというべきである。
そして、このような児童ポルノ法の目的や同法七条の趣旨に照らせば、同法二条三項柱書及び同法七条の『児童の姿態』とは実在の児童の姿態をいい、実在しない児童の姿態は含まないものと解すべきである」とし、CGであっても、同法二条三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したと認められる物であり、かつ、そこに描写された姿態が実在の児童の姿態であるlと認められる場合については、児童ポルノ法の規制対象となり得ると判示した。
その上で、本判決は、CGに描かれた児童と実在の児童とが同一であるか判断する際の基準及びその際に考慮すべき要素について、「被写体の全体的な構図、CGの作成経緯や動機、作成方法等を踏まえつつ、特に、被写体の顔立ちゃ性器等(性器、肛門又は乳首)、胸部又は臀部といった児童の権利璽の観点からしても重要な部位において、当該CGに記録された姿態が、一般人からみて、架空の児童の姿態ではなく、実在の児童の姿態を忠実に描写したものであると認識できる場合には、実在の児童とCGで描かれた児童とが同一である(同一性を有する)と判断でき、そのような意味で同一と判断できるCGの画像データに係る記録媒体については、同法二条三項にいう『児童ポルノ』あるいは同法七条四項後段の『電磁的記録』として処罰の対象となると解すべきである。」とした。
三 児童ポルノ法は、二条三項において「児童ポルノ」の定義を規定しているが、そこにいう「児童」が実在する児童である必要があるか否かについては一般に肯定されている(大阪高判平12.10.24高刑速平12・―四六、森山真弓11野田聖子編著・よくわかる改正児童買春・児童ポルノ禁止法(ぎょうせい、二00五)七七、一八一、一八七、園田寿II曽我部真裕編著・改正児童ポルノ禁止法を考える(日本評論社、二0―四)一六等。
また、児童ポルノ法の法案に関する第一四五回国会法務委員会における参議院議員からの説明(同委員会議事録―一号、―二号)も同様。)。
そして、例えば絵であっても、実在する児童の姿態を描写したものと認められる限り、児童ポルノに当たり得るとされ、当該事案で、実在の児童を描写した「児童ポルノ」といえるか否かについては、個別具体的な判断となるが、実在する児童について、その身体の大部分が描写されている写真を想定すると、そこに描写された児童の姿態は「実在する児童の姿態」に該当し、そこで、その写真に描写されていない部分に他人の姿態を付けて合成すれば、児童ポルノに当たる場合があると文献等で示されている(森山11野田.前掲書一八一、一八七、前掲議事録―二号)。
前掲文献では、CGについて直接触れられていないが、本判決は、本争点について、CGであっても、実在の児童の姿態を描写したと認められる物に,ついては児童ポルノ法の規制対象になり得るとした上で、CGに描かれた児童と実在の児童とが同一であるかを判断する際の基準及びその際に考慮すべき要素を示したものである。
四 児童ポルノ法については、平成二六年に児童ポルノのいわゆる単純所持等に係る罰則が新設されるなどその処罰範囲を拡大する改正が行われたとーころであり、本判決は、同改正前の事案であるものの、その趣旨は同改正後にも妥当すると考えられる。
本争点については、これまでに裁判例が見当たらず、同種事案における今後の実務の参考になると思われる。
本判決の評釈等として知り得たものとして、①佐藤藤・研修八一八・一三、②渡部直希・警論六九•八•一六六、③上田正基·立命館法学三六七・ニ〇八がある(なお 控訴審の東京高判平29.l.24〔公刊物未登載〕では、事実認定及び本件争点を含む第一審の期日間整理手続で確認された争点判断については概ね相当とされて是認された。
もっとも児童ポルノ提供罪についての罪数判断において、本件CG集lの提供行為と本件CG集2の提供行為とは、併合罪関係に立つとみるのが相当であるとして、本判決を破棄し、本件CG集2の提供行為の点について無罪を言い渡し、また、本件CG集ーのうち有罪認定したCG三点に係る児童ポルノの製造提供の各行為については、児童の具体的な権利侵害は想定されず違法性の高い悪質な行為とみることはできないなどとして罰金刑が言い渡された。)。

13歳未満が関与する強制性交等罪は、どっちが主体になったかどうかで成否が変わるのか


説例2
 12歳男が、20歳女性に暴行・脅迫して、膣に陰茎挿入したら、12歳が強制性交等罪(但し刑事未成年)ですよね。この場合は、20歳女性が「膣に陰茎挿入した」「性交した」とは評価しない。
 12歳男が、20歳女性に暴行脅迫なく、性交=膣に陰茎挿入したら、20歳女性が強制性交等罪ですか?
 法務省の解説によれば、この場合は、どちらが主体になったかで異なり、20歳女性が主体となって「膣に陰茎挿入した」「性交した」ら、20歳女性が強制性交等罪になる。20歳女性が主体となってなくて「膣に陰茎挿入した」「性交した」ら、20歳女性が強制性交等罪にならない。強制わいせつ罪(176条後段)になる可能性があるんですよね。ここまで了解。

説例2
 12歳女性が、20歳男性に暴行・脅迫して、女性口腔に陰茎挿入したら、12歳女性が強制口腔性交罪(但し刑事未成年)ですよね。この場合は、20歳男性が「口腔に陰茎挿入した」とは評価しない。
 12歳女性が、20歳男性に暴行脅迫なく、女性口腔に陰茎挿入したら、12歳女性が強制口腔性交罪ですか?
 法務省の解説によれば、この場合は、どちらが主体になったかで異なり、20歳男性が主体となって「女性口腔に陰茎挿入した」ら、20歳男性が強制口腔性交罪になる。20歳男性が主体となってなくて「女性口腔に陰茎挿入した」ら、20歳男性が強制口腔性交罪にならない。強制わいせつ罪(176条後段)になる可能性があるんですよね。ここまで了解。

考察
 どちらが主体なのかで決まるというのですが、当事者が13未満の場合、暴行脅迫がないので、主体の認定というのは微妙じゃないですか。
 12歳女性と交際している20歳男性がいて、12歳女性が主体となって「女性口腔に陰茎挿入した」ら、強制口腔性交ではなく、せいぜい強制わいせつ罪(176条後段)になって、20歳男性が主体となって「女性口腔に陰茎挿入した」ら、強制口腔性交になるということですか。
 もう12歳には主体性認めないということにしますか?



法務省刑事局付今井將人 「刑法の一部を改正する法律」の概要 研修830号
(2)要件
「性交」とは,改正前の刑法177条の「姦淫」と同義であり,膣内に陰茎を入れる行為をいう。
「肛門性交」とは肛門内に陰茎を入れる行為をいい, 「口腔性交」とは口腔内に陰茎を入れる行為をいう(注4)。
「性交」, 「肛門性交」及び「口腔性交」を合わせて「性交等」ということとされており, これらの行為には, 自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内等に入れる行為だけでなく, 自己又は第三者の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為(入れさせる行為)を含む。具体的には,女性が行為主体となって,男性の陰茎を自己の膣内に入れさせる行為や,男性が別の男性の陰茎を自己の肛門内に入れさせる行為も,強制性交等罪による処罰対象となる。
(注4)例えば,陰茎を口腔内に全く入れずに単に舌先でなめる行為や,女性の外陰部をなめる行為などは, 「口腔性交」には当たらない。

法務省刑制第121号(例規
平成29年6月26日
法務省刑事局長(公印省略)
「刑法の一部を改正する法律」の施行について(依命通達)
イ要件「性交」とは,改正前の刑法第177条の「姦淫」と同義であり,膣内に陰茎を入れる行為をいう。
「肛門性交」とは肛門内に陰茎を入れる行為をいい,「口腔性交」とは口腔内に陰茎を入れる行為をいう。
「性交」,「肛門性交」及び「口腔性交」を合わせて「性交等」ということとされている。
これらの行為には,自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内等に入れる行為だけでなく,自己又は第三者の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為(入れさせる行為)を含む。
すなわち,「性交,肛門性交又は口腔性交」とは,相手方(被害者)の膣内,肛門内若しくは口腔内に自己若しくは第三者の陰茎を入れ,又は自己若しくは第三者の膣内,肛門内若しくは口腔内に相手方(被害者)の陰茎を入れる行為をいうものである。

http://www.moj.go.jp/content/001162242.pdf
別紙
要綱(骨子)
第一強姦の罪(刑法第百七十七条)の改正
暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の者を相手方として性交等(相手方の膣内、肛門内若しくは口腔内に自己若しくは第三者の陰茎を入れ、又は自己若しくは第三者の膣内、肛門内若しくは口腔内に相手方の陰茎を入れる行為をいう。以下同じ。)をした者は、五年以上の有期懲役に処するものとすること。
十三歳未満の者を相手方として性交等をした者も、同様とすること。

法務省刑事局付今井將人 「刑法の一部を改正する法律」の概要 研修830号

法務省刑事局付今井將人 「刑法の一部を改正する法律」の概要 研修830号
 刑事局長通達のマニュアルとこれとで、法務省の解釈は明らかになりました。
 後は警察学論集と警察公論と法曹時報に出ると思います。

(2)要件
「性交」とは,改正前の刑法177条の「姦淫」と同義であり,膣内に陰茎を入れる行為をいう。
「肛門性交」とは肛門内に陰茎を入れる行為をいい, 「口腔性交」とは口腔内に陰茎を入れる行為をいう(注4)。
「性交」, 「肛門性交」及び「口腔性交」を合わせて「性交等」ということとされており, これらの行為には, 自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内等に入れる行為だけでなく, 自己又は第三者の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為(入れさせる行為)を含む。具体的には,女性が行為主体となって,男性の陰茎を自己の膣内に入れさせる行為や,男性が別の男性の陰茎を自己の肛門内に入れさせる行為も,強制性交等罪による処罰対象となる。
(注4)例えば,陰茎を口腔内に全く入れずに単に舌先でなめる行為や,女性の外陰部をなめる行為などは, 「口腔性交」には当たらない。

4監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪(刑法179条)を新設すること
(1)概要及び趣旨
ア本法により,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪(刑法179条) として, 18歳未満の者を現に監護する者がその影響力があることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした場合について,強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同様の法定刑で処罰する規定が新設された。
イこれまで,実親,養親等の監護者が18歳未満の者に対して性交等やわいせつな行為(以下,両者を合わせて「性的行為」という。)を継続的に繰り返し,監護者と18歳未満の者との性的行為が常態化している事案等においては, 日時,場所等が特定できる性的行為の場面だけを見ると,暴行及び脅迫が認められず, また,抗拒不能にも当たらないため,刑法上の性犯罪として訴追することが困難なものが存在していた。
もっとも, 18歳未満の者は,一般に,精神的に未熟である上,生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に経済的にも精神的にも依存しているところ,監護者が,そのような依存・被依存ないし保護・被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて18歳未満の者と性的行為をすることは,強制わいせつ又は強制性交等と同様に, これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであるといえる。
そこで, このような事案の実態に即した対処を可能とするため,本法により,刑法176条から178条までの罪とは別に,監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設することとされた。
(2)要件
ア「監護する」とは,民法820条に親権の効力として定められているところと同様,監督し,保護することをいい, 18歳未満の者を「現に監護する者」とは, 18歳未満の者を現に監督し,保護している者をいう。
「現に監護する者」に当たるといえるためには,本罪の趣旨に照らし,法律上の監護権の有無を問わないが,現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や,生活上の指導監督などの精神的な観点から,依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ,かつ,その関係に継続性が認められることが必要であると考えられる。
具体的には,
①同居の有無,居住場所に関する指定等の状況
②指導状況,身の回りの世話等の生活状況
③生活費の支出などの経済的状況
④未成年者に関する諸手続等を行う状況
などの諸事情を考慮して, 「現に監護する」といえるかどうかという観点から判断されるものと考えられる。

イ「現に監護する者であることによる影響力」とは,現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や,生活上の指導監督などの精神的な観点から,現に18歳未満の者を監督し,保護することにより生ずる影響力をいう。
したがって, 「現に監護する者であることによる影響力」には,ある特定の性的行為を行おうとする場面における,その諾否等の意思決定に直接影響を与えるものだけではなく,被監護者が性的行為に関する意思決定を行う前提となる人格,倫理観価値観等の形成過程を含め,一般的かつ継続的に被監護者の意思決定に作用を及ぼし得る力が含まれるものである。
ウ「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」とは, 18歳未満の者に対する「現に監護する者であることによる影響力」が一般的に存在し, 当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で,性的行為をすることをいう。
その上で,被監護者である18歳未満の者を現に監護している者は,通常,当該18歳未満の者に対し,このような影響力を及ぼしている状態にあるといえるので,一般的には, 「現に監護する者」であることが立証されれば,当該性的行為の行為時においても, 「現に監護する者であることによる影響力」を及ぼしていたこと,すなわち, 「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」いたことが認定できることとなる。
したがって, 「乗じて」といえるためには,通常は,性的行為に及ぶ特定の場面において,影響力を利用するための具体的行為は必要ない。
エ本罪の趣旨に照らし,本罪の成否を論ずるに当たり, 18歳未満の者の性的行為に対する同意の有無は問題とならず,外形的に18歳未満の者が性的行為に同意していたとしても,本罪の成否は妨げられないと考えられる。
したがって, 18歳未満の者が性的行為に同意があったとの行為者の誤信は,故意の存否には影響しないものと考えられる。
(3) 監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設することに伴う改正
監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪について,強制わいせつ罪
又は強制性交等罪等と同様に,いわゆるビデオリンク方式による証人尋問(刑訴157条の4第1項1号)及び被害者特定事項秘匿制度(刑訴290条の2第1項1号),犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律7条の損害賠償命令(同法23条1項2号イ)並びに心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察に関する法律によるいわゆる医療観察制度(同法2条1項2号)の対象犯罪とされた。

控訴審における即決裁判の活用と妙味 横川敏雄「刑事控訴審の実際」1978日本評論社

 奥村の事件では即決判決は経験ありません。
 札幌でしかやってないというのは、無理があるんじゃないかな。

横川敏雄「刑事控訴審の実際」1978日本評論社
第5 控訴審における即決裁判の活用と妙味
第五章控訴審における即決裁判の活用と妙味
十数年来一審では、簡単な事件について即決で(つまり結審後直ちに、あるい
は暫くして)判決を言い渡すことは、ら珍らしいことではない。
しかし今なお控訴審では、即決裁判は、例外的なものとされているようである
(第一章一の統計によれば、三・五パーセントにも満たない)。
まして私が東京高裁の裁判長になった六年前には、即決裁判に対する控訴関係
者の関心は薄く、一部には「どうしてそんなに裁判を急ぐのか」という疑問さ
えあったような気がする。
ではなぜそのような状況のもとで、敢て即決裁判に踏み切り、今日までつづけ
てきたのか。
この理由および実施の結果を報告するのは、その口火を切った私の義務である
と思われる。
一即決裁判をするに至った動機と経緯。
私は高裁にきて間もなく、ある事件の記録を検討するうち、こんな事件につい
ては、手控えを作るひまに判決が書けるのではないかと思った。
というのは、被告人に前科が数犯あるほか、この事件は、全然事実に争いがな
く、他の共犯者二人は実刑を受けて確定している、趣意書には被告人の家庭の
事情などがるる記されているが、原判決はこれらの事情も踏まえたうえで量刑
したと認められるものだったからである。
そこで私は、何年か高裁の経験のある両陪席に、その事件に関連し高裁では即
決することはないのか」とたずねてみた。
これに対し二人は、即座に自分達にはそんな経験は全くないし、他の部でそん
なことが行なわれているときいたこともない」と答えた。
しかし私は、この答に満足できなかったので、そのとき考えていたことについ
てさらにあれこれ問いただした。
「するには、法廷で心証をとりながらその間に結論を出し判決の構想を練らな
ければならない。これにくらべると、あらかしめ資料を検討することができる
控訴審では、即決もはるかにやりやすいのではないか。」とか、「これまで控
訴審で即決しなたのは、一審で集中審理方式が実施される以前に確立された古
い慣行にかっ従っているだけのことではないか。」とか等。
すると、陪席の一人が苦笑しながら実は自分は、問題がないと思われる事件に
ついては、記録を読むさい同時に判決も書いてしまう。そしてその結論が合議
の結果に一致すれば二、三日たってから裁判長に差し出す。裁判長が即決しよ
うというのなら自分に異存はない。」といい出し、他の陪席も直ちに賛成し
た。
そこで、記録をよんだうえで誰がみても問題がないように思われる事件につい
ては、判決原案を準備してもらうことにした。
ここで「問題がない」という意味は、被告人に不利益な結論になる場合とは限
らない。
なぜなら窃盗、横領、詐欺などの財産犯で、被告人に前科がなく示談ができれ
ば執行猶予が相当と考えられるような事件について、原判決後に示談のできた
ことが趣意書に明記されているような場合もあるからである。
正直なところ数ある控訴事件の中には、単に刑の確定をおくらせるため控訴
たと思われるもの、原判決と趣意書をよんだだけでも控訴理由がないと判明す
るものなど、いわば上訴権を濫用したと考えられるものが稀れでない。
また趣意書をみると、いかにも事実誤認や量刑不当がありそうにみえるが、記
録をよむと、かような点がほとんど問題にならない事件もある。
通常裁判官は、記録をよむさいメモをとるが、判決を書くときには、メモだけ
ですまされないことが多い。
したがって普通の方法によれば、結局主任裁判官は二度記録をよむことになる
わけである。
この点だけを考えても、ある程度即決裁判の意義は理解されると思われる。
しかし、その真の価値は、後に説くとおり、別な点にあることを忘れてはなら
ない。
二 即決に欠くことのできない前提と即決裁判の方法。
総ての事件について事前合議が十分行なわれることによって初めて即決裁判も
可能になるといってもいいすぎではない。
一言でいえば、事前合議は、即決に欠くことのできない前提であり、即決裁判
の生みの親であるとも考えられるのである。
私の部で行なってきた即決をするまでの経過をやや具体的に説明すると、事前
合議のさい何ら問題のないことが判明し二人の意見が完全に一致したときは、
裁判長が主任裁判官に判決原案が準備されているかどうかを確める。
そのあと裁判長は、結審まぎわにもう一度秘かに両陪席の意見を徴し、即決に
異論がなければ結審のうえ、10分ないし15分休廷してから判決を言い渡す
旨告知する(ただし事案によっては、午前に結審し午後に言い渡すこともあ
る)、休廷中さらに正式に合議し、判決原案に適宜手を加えてから判決を言い
渡すという順序をとるわけである。
ただかような方法をとるについては、万一にも被告人の不利益にならないよう
に、また関係者に無用な不安を与えないように特に配慮することとした。
その一は、判決原案ができていてもこれに捉われず、いつでも必要に応じて書
き改めるという柔軟な態度で法廷にのぞみ、予想外の事態が発生したときは、
むりに即決などしないこと、
その二は、慎重審議を忘れた片づけ主義などと誤解されないように配慮するこ
とである。
このため当初のうちは、即決は、刹当事者に異議がないかどうかを確認したう
えで初めてすることにしていた。
しかし漸時運用に改善を加え、一、二年たってからは、逆に積極的に異議が申
立てられないかぎり即決することにした。
改善された点は、
1およそどんな場合に異議があるといわれるか分ってきたので、これをあらか
じめ察知して無理な即決をしないようにしたこと、
2何ら証拠の取調請求がない場合でも、裁判長が必ず簡単な被告人質問を試
み、時には陪席裁判官も補充質問をして、裁くものと裁かれるものとの心の触
れあいをはかるようにしたこと、
3そして状況によっては、問答の過程で被告人に対し控訴の理由のないことを
示唆し、それとなくその覚悟を促したこと、
4さらに被告人質問等を通じて事件の関係者に裁判官が記録を細かく検討し深
く考えていることをほのめかし、彼らに心理的動揺・不安を与えないようにし
たこと等である。
一言でいえば機の熟するのを待ち、あるいは盛りあがったふんいきの中で、で
きるだけ自然な形ですするよう心がけたのである。
このように事を運ぶには、ある程度の演出が必要であると感ぜられることもな
いではない。
しかしそれは、意識的・作為的・技術的にすべきことではない。
むしろそのような意識が働くと、かえって芝居がかったものになり、被告人ら
の反発を招くおそれがある。
結局は裁判官が豊かな裁判経験とその持ち味を基礎に、被告人やその家族に対
する暖かい配慮を忘れずに、ジャスティスの実現につとめる過程で自然に判決
の機が熟し、ふんいきが盛りあがるようにするのが望ましいということになる
であろう。
三 即決裁判の成果と妙味。
右のようにして私の部では、自然に即決の割合がふえ、最近では処理件数の約
二〇パーセントに達し、しかも上告率は他の場合よりはるかに低いという結果
になっている。
試みに昭和五一年一月一日から同年一二月末までのわが部の処理状況をみる
と、判決総数二二〇件、うち即決によるものは六六件で三〇パーセント、その
結果は棄却が五九件、破棄が七件(量刑不当によるもの四件、法令適用の誤に
よるもの三件)ということになっている。
また即決裁判に対する上告率は二〇パーセントで、通常の上告率三二パーセン
ト前後(司法統計年報参照)にくらべ、はるかに低い(ちなみに右期間中のわ
が部の全判決に対する上告は七二件でその率は三二・七パーセントである)。
事柄の性質上一部の数字だけをあげるにとどめたが、その前後の状況もほぼ右
と同じで、即決裁判は三〇パーセント前後、これに対する上告率は二〇パーセ
ント前後である。
過去約五年間の経験に徴すると、即決の場合には時折り法廷で被告人から「上
訴権を放棄したい」とか、「直ちに服罪したい」とかいわれることがあるが、
即決によらない場合には、かようなことは一度もなかった。
いずれも思いがけない興味深い現象であるが、恐らくこれは、対象となる事案
が比較的簡明・軽微なものであったこと、盛りあがつたふんいきの中で言い渡
されること等によるのであろう。
これまでの即決裁判の中で特に私の印象に残っているのは、ある地方から出て
きた保釈中の被告人に対し、その家族・知人などが多数傍聴している状況下に
即決で原判決を破棄し、執行猶予を付する旨の判決を言い渡したとき一瞬法廷
に劇的なふんいきが漂ったこと、前科数犯の勾留中の被告人に対し、情状証人
の取調や被告人質問をすませたあと即決で控訴棄却を言い渡しこれを簡単な説
示で結んだとき、被告人がこれでさっばりしたというよぅな表情をみせて深々
と頭をたれ、直ちに服罪したこと等である。
即決裁判は、裁判官にとっても、書記官にとっても事務の簡素化・能率化に役
立ち、きわめて有意義であるが、私はむしろ刑事裁判そのものの在り方、特に
血のかよった生きた裁判をめざすという観点から軽視できないと考えている。
率直にいうと、私は数年来生きた裁判の必要ということを事あるごとに痛感し
ている。
「生きた裁判」というと、「死んだ裁判」という反語が連想され語弊があるか
も知れないが、私の意見は、生き生きした説得力のある裁判というほどの意味
である。
いわばこれは、真のジャスティスの実現(第四章二(1)参照)といってもよ
く、このためには、審理・判決の全過程でタイミングをあやまらないこと、問
題の単なる理論的・論理的究明に終らないこと等が要求されると思われる

強制わいせつ未遂により保護観察付き執行猶予中に痴漢行為をした被告人を罰金10万円に処した原判決の量刑が不当であるとして破棄したものの、罰金刑の選択自体は不当とはいえないとされた事例(東京高裁H29.5.17) 速報番号3603号

       ○裁判要旨
 原判決が被告人を罰金10万円に処したことは、同種犯罪の量刑傾向を逸脱しており、不当に軽いというほかないから、原判決は破棄を免れないが、犯行態様等の犯情を総合的に考慮すると、原判決が罰金刑を選択したこと自体は、量刑の大枠の範囲内のものとして、不当とはいえない。

       ○裁判理由
 被告人には保護観察付き執行猶予の同種前科があるのであるから、本件が同種犯罪の中でも軽い部類に属するとは到底いえない。そうすると、原判決が、被告人を、同種犯罪の中でも軽い部類に属する犯罪に課せられる罰金20万円より、さらに軽い刑である罰金10万円に処したことは、明らかに同種犯罪の量刑傾向を逸脱しており、不当に軽いというほかなく、原判決は破棄を免れない。
 しかし、量刑に当たっては、前科が重要な量刑要素になるにしても、それは単なる一要因に過ぎないのであるから、犯行態様や犯行の計画性等の、その余の犯情をも総合的に考慮する必要がある。そして、本件の犯行態様を見ると、本件は、被告人が被害女性の後方を通り抜けざま、極めて短時間、その臀部を着衣の上から触ったというものであり、犯行態様としては軽い部類に属する。また、本件は、偶発的、機会的な犯行という側面が強い。しかも、被告人が、前刑の判決後、本件に至るまでの間に、他に同種犯罪に及んだ形跡はうかがえない。そうすると、本件は痴漢行為の中でも中間的な部類というべきである。そして、これを前提に、量刑傾向を見ると、中間的な部類に属する痴漢犯罪に対する量刑としては、上限に近い罰金額から懲役3、4月(実刑)程度までの計が考えられるところ、原判決の指摘する被告人に有利な一般情状に加え、被告人が、原判決後、弁護人に示談金を預け、被害弁償の努力をしていることなどを考慮すると、本件に対し、罰金刑を選択すること自体は、量刑の大枠の範囲内のものとして、不当とはいえない。

「児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,写真の被写体である児童を描写したといえる程度に,被写体と同一であると認められるときは,全く同一の姿態,ポーズがとられなくても,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当する。」「児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する

「児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,写真の被写体である児童を描写したといえる程度に,被写体と同一であると認められるときは,全く同一の姿態,ポーズがとられなくても,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当する。」「児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていたとしても,児童ポルノ製造罪は成立する」(東京高裁H29.1.24)
という高裁判例になりました。
 但し、原判決破棄で大部分無罪になっています。

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=87027
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/027/087027_hanrei.pdf
事件名 ?児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
裁判年月日 ?平成29年1月24日
裁判所名・部 ?東京高等裁判所
結果 ?破棄自判
高裁判例集登載巻・号・頁 ?第70巻1号1頁
原審裁判所名 ?東京地方裁判所
原審事件番号 ?平成25特(わ)1027
判示事項 ?
1 児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当するか
2 児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていた場合の児童ポルノ製造罪の成否(積極)
裁判要旨 ?
1 児童の写真を素材にしたコンピュータグラフィックス(以下「CG」という。)画像等における描写が,写真の被写体である児童を描写したといえる程度に,被写体と同一であると認められるときは,全く同一の姿態,ポーズがとられなくても,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律2条3項3号の「児童の姿態」に該当する。
2 児童の写真を素材にしたCG画像等の被写体である児童が,CG画像等の製造の時点及び児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の施行の時点において,18歳以上になっていたとしても,児童ポルノ製造罪は成立する

スーパーフリー事件を受けて集団強姦罪ができて、最近でも集団強姦事件もあるのに、集団強姦罪は無くなったこと

 

 スーパーフリー事件を受けてH16改正ではこういう条文になりましたが、

第一七七条(強姦かん)
 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦かん淫いんした者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
〔平一六法一五六本条改正〕
第一七八条の二(集団強姦等)
 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。
〔平一六法一五六本条追加〕

 スーパーフリー事件は通常の強姦罪で裁かれています。

 その後、集団強姦事件は発生していますが、
  集団強姦罪の量刑が通常強姦罪の法定刑の範囲内であること
  集団強姦罪の件数がそう多くなかったこと
ということで、H29改正で強制性交等の法定刑が5年以上になったついでに消滅したということです。
 集団強姦罪の必要性が強ければ無くならなかったんですが、最近でも学生のそういう事件もあったんですが、法制審議会の議論とはずれてしまって無くなりました。
 凶悪な性犯罪には厳しく臨むという姿勢を示すために集団強制性交等罪として6年以上くらいの法定刑で残しておいてもよかったんでしょうが、そういう意見は強くなかった。

[007/008] 161 - 衆 - 法務委員会 - 5号
平成16年11月09日
○江田委員 わかりました。
 次に、強姦罪等についてお伺いをいたしたいと思っております。
 凶悪犯罪の中でも、この強姦罪や強制わいせつ罪等の性犯罪は、暴力によって被害者の人格や人間性、人権を著しく破壊するものでありまして、このような犯罪に対しましては、加害者の刑事責任を厳正に追及する必要があると思っております。
 最近の新聞報道でございますけれども、婦女暴行等の事件につきまして検察官の求刑十二年を上回る懲役十四年の判決が出されたとのことでありますが、近年の強姦罪に関する裁判所の科刑状況はどのようになっているか、法務当局にお伺いします。
 また、集団による強姦につきましては、皆さんも御存じだと思いますが、私大生らがサークルを利用して女性をパーティーに誘って泥酔させて集団で強姦をしていた、いわゆるスーパーフリー事件の主犯格の判決が最近ございました。これで共犯者全員の一審判決が出そろいましたけれども、この判決結果についてあわせて法務当局にお伺いいたします。
○大林政府参考人 通常第一審である地方裁判所における平成六年から平成十五年までの過去十年間の強姦罪の科刑状況につきましては、平成七年から判決が増加傾向にございます。三年を超える、いわゆる三年超の懲役刑の判決を受けた者の数がおおむね増加にありますけれども、特に三年超五年以下の懲役刑の判決を受けた者は、平成六年から平成七年までの間は六十人台でございましたが、平成十一年から百人台を推移しております。平成十五年には百四十六人となっております。そして、十五年超二十年以下の懲役刑の判決も、平成九年の一名に対する判決以降で初めて平成十四年に二件なされ、平成十五年に三名の者が判決を受けております。
 また、御指摘のいわゆるスーパーフリー事件につきましては、第一審において、主犯格とされた被告人に対し懲役十四年が言い渡されたほか、これ以外の被告人十三名に対しても、その関与の程度等に応じてそれぞれ懲役二年四月から懲役十年までの実刑判決が言い渡されております。

○江田委員 今申されましたように、検察官の、そこを申されたかどうかわかりませんが、最近では、このような強姦罪、婦女暴行事件に関して、検察官の求刑では甘過ぎるということで、裁判所の判断はさらなる長期の判決が出ている、そういう現状にあるかと思っております。
 ましてや、このスーパーフリー事件というのは集団強姦罪としてまことに許せない事件でございまして、そのような事件に対しまして、女性の人権を擁護するということのためには、強姦罪の罰則を強化して集団強姦罪を新たに創設するなど、強姦罪の罰則強化、性犯罪の罰則強化に取り組む必要があると強く考えます。
 公明党は、集団強姦罪の創設を昨年の衆院選マニフェストに掲げて、全力でこれまで取り組んでまいりました。さらに、南野大臣を座長、公明党の浜四津議員を座長代理とする与党女性と刑法に関するプロジェクトチームで、強姦罪や強姦致死傷罪の罰則強化、集団強姦等罪や集団強姦等致死傷罪の創設を当時の野沢法務大臣に強く申し入れてきたところでございます。これらの要望につきましては今回の法案にすべて反映されておりまして、評価するところでございます。
 大臣自身の活動も含めまして、今回、強姦罪を初めとする性犯罪の罰則を強化したその趣旨について、改めてお伺いいたします。

[005/008] 161 - 衆 - 法務委員会 - 7号
平成16年11月12日
○伴野委員 ぜひ、画一から個々対応といいますか、きめ細かな、しかもめり張りをつけた対応を期待していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、治安回復のお話はこれぐらいにさせていただきまして、今回の実体法の改正の方へ入らせていただきたいと思います。
 明治以来なかなか見直しができなかった、どういう見直しをするかという中身は別として、見直しを今回やったという点は私は評価したいな、そんなふうに思っているわけでございますが、では、その見直しがどうであるかということを少し議論させていただければ、あるいはその原因に関連して、今回の実体法の改正に即しているのかどうか、ちょっとお話をさせていただければと思います。
 まず、強姦は魂の殺人だという、先般、参考人の先生方も言っていらっしゃいましたし、私も、ある意味殺人よりも卑劣な行為なんじゃないかなと思います。
 先般、与党の女性議員も訴えていらっしゃいましたが、確かに、身内だからというわけじゃないんですが、自分の娘があるいは自分の周りの女性がということを考えただけでもぞっとしますし、そういった中で、残念ながら、今回の改正のきっかけになったスーフリ問題、スーフリ事件。数字をいろいろ拾っていくと、残念ながら性犯罪がふえていると言わざるを得ないこの状況。しかも、それは凶悪化している。
 この原因は一体どこにあるのか。やはり原因を究明していかないと、なかなか、先ほど申し上げたように、いろいろな対症療法的なことがあるんだと思いますし、対処法だけではいけない、熱が出たから解熱剤だけをやっていればいいんじゃなくて、そもそも体質改善に相当する全体のお話もしなきゃいけない。
 そういった中で、この性犯罪の増加、凶悪化の原因はどこにある、あるいはどうお考えになっているのか、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

○南野国務大臣 本当に先生御指摘のとおり、近年の性犯罪、その認知件数も増加しております。十年前と比較しますと、強姦が約一・五倍、強制わいせつが約二・八倍の認知件数となっている。また、凶悪化と言えるかどうかはともかく、凶悪な性犯罪も引き続き起きている。凶悪化しているかどうかということはともかくとして、そのような事実があるということでございます。
 性犯罪を含めまして、犯罪の動向にはさまざまな要因、また複雑に絡み合っておりますので、これを一概に言うことは困難であろうと思いますけれども、性犯罪の中で、特に小学生や中学生を含む少年が被害に遭う事件の増加が著しいということからいたしますと、性に対する意識の変化や、また性に関する情報のはんらんなどによって少年が性犯罪の被害に遭う機会がふえていることも一つの要因として挙げられるのではないかな、そのように思います。
 ちなみに、いわゆる出会い系サイトが性犯罪のきっかけとなるという場合もふえておるのではないかな、そのようなことを考えております。
○伴野委員 今大臣がおっしゃられたこともごもっともだと思いますし、さきのスーフリの事件を考えますと、行われた事柄と同時に、一般的には高学歴で、しかもそれがブランドであると思われる教育を受けている人間がああいう卑劣なことを、しかも集団で、組織的に、継続的にやっているというので今回の厳罰が下されたんだと思うんですね。
 私自身も、まだ小学校三年生なんですけれども、一人の娘を持つ身として、日々本当に教育、一人でも大変です。だけれども、そこへ立ち返らないと、この根本原因は解決できないんじゃないか。女性を暴力で行為たらしめることがどれだけ卑劣かという、この倫理観を植えつけないと、これはどれだけ重罰化しても、これがあるから、殺人罪に問われるあるいは死刑になるからといって思いとどまる人がいればまだいいぐらいの話で、多分、やる人間は、よほど計画犯じゃない限り、衝動的で理性を失ってやっているんだと思うんですが、ぜひそこへ立ち返らないといけないんじゃないのかなと思っております。
 そうした中で、男女平等参画社会という一方で、大人の社会でも見直していかなければいけないことは多々ある。そして、今回の見直しの背景なんかをいろいろ読ませていただいたり、聞かせていただきますと、先ほど言った、やはりどこかに刑法を見直したいという長年の空気があって、そこに今回のスーフリ事件等々、多少、国民的な要求と言っていいのか、この辺はちょっと言葉を選ばなければいけませんが、強姦罪というものが非常に着目されて、クローズアップされて、与党の先生方、女性議員、あるいは我が党の女性議員なんかもそこにやはり目が行って、いろいろ調べていくと、どうも強盗より強姦の方が軽んじられていないか、これは人の軽んじと同時に女性を軽んじているんじゃないかというところの議論もあって、今回、こういう見直しの空気が出てきたんだと思うんです。
 先般、与党の松島みどり議員が熱弁を振るっていらっしゃいました。私もその心情はよくわかりますし、質問をされた内容もじっくり聞かせていただきました。
 今回、集団強姦というのを創設されたりあるいは強姦罪の下限を上げるというようなことが、国民に対するアピール性を含んでいるとすれば、残念ながら、与党の女性議員ですら、そのアピールに対して、そのとおりだというところに落ちついていないようなやりとりに聞こえたんですね。
 また、たしかそのときは政府参考人の方だったと思いますけれども、説明を後から読み返しても、私の頭が悪いのかもしれませんが、そういう説明を受けても、まだちょっと女性を軽んじていないか、あるいは女性を軽んずるなというアピールに対してこたえているメッセージにはどうも読めないあるいは聞こえなかったんですが、このあたり、いま一度、強姦罪と強盗罪を比較して、そうじゃないんだとおっしゃるんでしたら、ぜひもう少しわかりやすく御説明いただけないかな。

iPhoneユーザを狙った不正アプリによるセクストーション被害が発生 iPhoneの不正アプリによるセクストーションを狙った手口

 iPhoneについて。
 

http://www.ipa.go.jp/security/anshin/mgdayori20161110.html
IPAでは2014年12月の呼びかけ(※1)でプライベートな動画を電話帳の登録者である友人、知人にばらまくと脅迫して金銭を要求する「セクストーション(性的脅迫)」について取り上げました。以降、件数としては多くないものの2015年には19件、2016年も11月までに14件の相談が寄せられている状況です。
2016年4月、iPhoneの不正アプリを用いた手口によって電話帳情報が窃取され、その宛先に動画をばらまくと脅迫されているという相談がありました。これまでにもiPhoneユーザがセクストーション被害に遭ったという相談は寄せられていましたが、不正アプリを用いた手口ではありませんでした。
図1:iPhoneの不正アプリによるセクストーションを狙った手口のイメージ
図1:iPhoneの不正アプリによるセクストーションを狙った手口のイメージ
過去、Android端末においては不正アプリによって電話帳を窃取されるセクストーション被害はありましたが、iPhoneでは原則として公式マーケット以外から入手したアプリをインストールすることができないため、不正アプリによる被害は確認されていませんでした。
しかし、その後7月、8月にもiPhoneの不正アプリを用いた手口のセクストーション被害に遭ったという相談が寄せられ、10月にも同様の相談が寄せられました。それらの相談によれば“詳細な操作は覚えていないものの、相手から「セキュリティを解除する操作」と案内され、言われるがまま操作を行った後、指示されたアプリをインストールして被害にあった”というものでした。
これらの状況から、言葉巧みに操作を誘導し、iPhoneを脱獄(※2)させてから電話帳を窃取する機能を有した不正アプリをインストールさせる手口であると推測されます。最近、このようなiPhoneの不正アプリによるセクストーション被害と考えられる相談が複数寄せられている状況(※3)から、「iPhoneならば基本的に不正アプリのインストールはできないから安全」という油断が被害を招いている可能性が考えられます。スマートフォンを利用している場合は、端末のOS種別を問わず、不正アプリによるセクストーション被害に遭わないためにも以下に挙げる点について改めて注意してください。
アプリのインストールは公式マーケットから

公式マーケット以外から入手したアプリの場合、不正な機能が含まれている可能性があります。特にSNSを通じて知り合った相手から、公式マーケット以外での入手方法によるアプリのインストールを促された場合はインストールを控えることが賢明です。
他人に見られたら困るプライベートな写真や動画は撮ったり第三者に送ったりしない

SNSやメールを通じて第三者に送ったプライベートな写真や動画は、セクストーションやリベンジポルノに悪用される可能性があります。そのほか、ウイルス感染等により、写真や動画を送った相手だけでなく、本人の不注意が原因でインターネット上に流出する可能性もあります。他人に見られたら困るような写真や動画は、そもそも撮影しないことが賢明です。

https://www.is702.jp/news/2191/
独立行政法人情報処理推進機構IPA)は8月10日、あらためて「セクストーション」への注意を呼びかけました。

セクストーション」(性的脅迫)とは、「sex(性的な)」と「extortion(脅迫)」を組み合わせた造語で、プライベートな動画や写真を不正入手したうえで、友人・知人にばらまくと脅迫し、金銭を要求する手口です。類似する犯罪として「リベンジポルノ」がありますが、相手への嫌がらせが主目的であるリベンジポルノに対し、金銭やさらなる画像の入手を主目的とするのがセクストーションだと言えます。

当初セクストーションは、スマートフォン内の情報を詐取する不正アプリ等を通じて、プライベートな写真や画像を盗み、それを元に脅迫するという、不正技術を駆使したサイバー犯罪でした。しかし近年は、言葉巧みにSNS上の相手をそそのかし、プライベートな写真や動画を送らせる「自画撮り被害」が増加しています。

警察庁文部科学省が6月27日に公開した文書「夏休みを迎える君たちへ」によると、2016年に自画撮り被害に遭った子供は480人で前年より104人増加。内訳は、半分以上の52.7%が中学生でした(高校生39.2%、小学生5.8%等)。またこれらの被害者の7割以上が、スマートフォンを使用してコミュニティサイトにアクセスしたことで、自画撮り被害に遭っていました。

一方で、IPAが実施した「2016年度 情報セキュリティの倫理に対する意識調査」では、「SNSで性的な写真や動画を撮影・投稿する事に問題がない」と回答した10代は、49.4%と、ほぼ半数を占めています。中高生のセクストーション被害が増加している背景には、こうした問題意識の希薄さがあると、IPAでは推察しています。

夏休み期間を迎える青少年においては、今一度、プライベートな写真や動画をやりとりする危険性を認識してください。また保護者においては、子どものSNS利用状況等に注意を払ってください。

強制わいせつ未遂により保護観察付き執行猶予中に痴漢行為をした被告人を罰金10万円に処した原判決の量刑が不当であるとして破棄したものの,罰金刑の選択自体は不当といえないとされた事例(東京高裁H29.5.17 判決速報3603号)